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”遠野”ってコンテンツーリズムのはしりだっかもしれませんねぇ(遠野物語/遠野物語remix/遠野物語バス)

 ども、出不精なわりには旅行は好きなおぢさん、たいちろ~です。
 話は前後しますが、”遠野物語”を読みました(*1)。夏休みに思い立って遠野に行ってきたわけですが、けっこう面白かったです。”遠野物語”は民間伝承を集めた本ということで、文学というより民俗学のジャンルの学術書に近いんかもしれませんが。ただ、明治の本ということで古文に近く難儀をしていると、現代語訳とでもいうか京極夏彦の”遠野物語remix”というのもあったんで、こっちも並行して読了(てか、こっちがメインかな)
 ということで、今回のテーマは”聖地巡礼、遠野物語の里に行く”であります。

写真はたいちろ~さんの撮影。
遠野駅前に停車していた遠野物語百周年記念のラッピングバスです。

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【本】遠野物語(柳田國男、角川ソフィア文庫他)
【本】遠野物語remix(京極夏彦、柳田國男、角川文芸出版)
 岩手県遠野の民話蒐集家であった佐々木喜善によって語られた遠野の説話を民俗学者”柳田國男”が編纂した本。天狗や河童、座敷わらしといったメジャーな妖怪からオシラサマといった土着の物語なんかも載っています。
 ”遠野物語remix”は原典を妖怪研究家”京極夏彦”(*2)が現代語訳して順番などを再編集した本。
【乗り物】遠野物語バス
 遠野物語の登場人物を漫画家水木しげるがキャラクター化してバスにラッピングしたもの。中央が”河童”(かたるくん)、右側が”ザシキワラシ(座敷童子)、左側が”オシラサマ”

 ”遠野物語”には、数々の奇異、神様、妖怪のたぐいが登場します。まあ、バスのキャラクターにもなってるのをご紹介。

〔河童〕
 置き去りにされた馬を淵に引きずり込もうとして逆に陸に引きずられた河童。村人に見つかり危うく殺されそうになるが、もういたずらをしないということで放された。その後、河童は村にいない(No.58(*3))
 ということで、下の写真が”カッパ淵”。子供たちが竿の先にキュウリをつけたのでカッパ釣りをして遊んでました。

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 ところでこの河童、人妻んとこに忍び込んで間男して子供を孕ませるというなかなかにスケベなとこもあるようです(No.55)。人間のほうも生まれた子供が気味悪いと村はずれに捨てさりますが、見世物小屋にでも売れば金になるかと引き返すともういなかった(No.56)とか、牧歌的とか言い難い生臭い内容も。
 ちなみに、他の土地の河童の顔は青いんですが遠野の河童は赤いんだそうです(No.59)。確かにバスのキャラクターも赤色ですね。河童の色ってあんまし意識したことなかったんですが、どうも河童って初めてちゃんと見たのって特撮番組の”河童の三平 妖怪大作戦(*4)”で、まだモノクロの時代。あんまし”色彩”って意識なかったんかなぁ・・・
 河童の蘊蓄は京極夏彦の”塗仏の宴-宴の支度-”をどうぞ(”ひょうすべ”の章)

〔ザシキワラシ〕
 旧家にはザシキワラシという神様が住んでいることが少なからずある。この神様は12~13歳の男の子の姿をしている。この神様いる家は豊かになるという(No.17)
 またザシキワラシは女の子の場合もある。ある男が道を歩く娘にどこから来たかと問うと豪農の孫左衛門の家から来たという。ほどなくしてこの家は主従ともに20数人がが死に絶え、生き残った7歳の子供も子供をなすことなく死んでしまった(No.18)

 

福の神の眷属であるザシキワラシですが、バスの写真にあるようなおかっぱ頭に着物というイメージなので小さな女の子だとばっかり思ってたんですが、そうとも限んないんですね。ま、そっちのほうがかわういけど(きまぐれそうで怖い気もありますが・・・)
 ザシキワラシの蘊蓄は京極夏彦の”姑獲鳥(うぶめ)の夏”をどうぞ

〔オシラサマ〕
 昔、ある農家に美しい娘がいた。娘は飼い馬と仲が良くとうとう夫婦になってしまった。父親は怒ってその馬を殺して桑の木に吊り下げた。娘は馬の死を知って驚き、その首にすがりついて泣いた。父親はさらに怒って斧でその馬の首をはねたところ、娘は馬の首に乗ったまま天に昇って行った。オシラサマはこの時神様になったという(No.69)

 下の写真は遠野市”伝承園”にある御蚕神堂(おしらどう)に安置されていたオシラサマ。実はオシラサマって知らなかったんですが、オシラサマは蚕、農業、馬の神さまだそうで、願いをこめた布をオシラサマに着せるという信仰だそうです。

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 まあ、1日かけて遠野あたりをぶらぶらしてたんですが、ふと考えると”遠野”って
日本の原風景
っていうか、田舎なんだな~。住んでいる人には申し訳ない言い方ですが、遠野市社会科副読本ってhpを読んでみると、人口減少に高齢化の進行、農業分野での労働力・後継者不足の深刻化、積極的に工業誘致をしているものの、従業員1人当たりの出荷額は岩手県平均をかなり下回っている状況。つまり、日本の抱えている地方の課題が典型的に表れている町なんじゃないかと。昔の民家を見て回っても歴史的建造物といいうより”昔はどこにでもあった建物をちゃんと保存するって感じだし。
 にもかかわらず”遠野に行ってみよう!”って思ったのって”遠野物語”っていうコンテンツがあったから。そうやって考えると”遠野”って聖地巡礼=コンテンツーリズムのはしりだっかもしれませんねぇ。
 ”民俗学の記念碑的作品をアニメやラノベと一緒にするな!”とか”水木しげる先生のイラストを萌え絵扱いするのか!”とかお怒りの方もいるかもしれませんが、”物語”の世界をリアルに感じたいってニーズはコンテンツーリズムと共通する感覚じゃないかな? 柳田國男が”遠野における民話伝承の研究”ではなくて”遠野物語”、つまり物語という名前にしてそれを一般の人にも分かりやすく紹介、今風に言えば”消費されるコンテンツ”にしたのって、ある意味先見性だったのかな~って気もします。

 ”遠野物語”の原典っては文学の香りのする名文ですが、若い人にはちょととっつきにくいかも。そんな人はぜひ京極夏彦版をどうぞ。昔の日本人がなじんでいた民話・伝承の世界を感じるには良い本だと思います。で、ぜひ遠野を訪れてみてください

《脚注》
(*1)話は前後しますが、”遠野物語”を読みました
 なぜ、前後するかというと”遠野物語”を読みながらふと”知的生産の技術”(梅棹忠夫、岩波新書)なんぞを先に読んじゃったわけで。こういうランダムウォークというか千鳥足というかの本の読み方ってやっちゃうんだよな~~
 そのへんの事情はこちらをどうぞ。
(*2)妖怪研究家”京極夏彦”
 百鬼夜行シリーズで妖怪をベースにした推理小説を書いている京極夏彦ですが、世界妖怪会議評議員という肩書もあるんだとか。まあ、あんだけいろいろ語れればなるわな~
 百鬼夜行シリーズは異色の推理小説ですが面白いんだこれが。お勧めですが文庫1冊1000ページ近いんで、読むには根性がいります、はい。
(*3)No.58
 ”遠野物語”にはひとつの題目につき通し番号がふられています。特にカテゴライズ順に並んでるわけではないのでこういったブログを書くにはとっても便利。”遠野物語remix”にも付けて欲しかったですねぇ。
(*4)河童の三平 妖怪大作戦
 1968~69年にNET系(現テレビ朝日系)で放送された特撮。原作は水木しげるの”河童の三平”。連載したの少年サンデーだったかな。
 主人公の三平を演じたのが”仮面の忍者 赤影”の青影さんこと”金子吉延”。ほかにも白影さんこと”牧冬吉”や、”悪魔くん”のメフィスト、後に”仮面ライダー”で地獄大使を演じる 怪優”潮健児”なんかが登場。今考えるとすごいキャスティングだな~

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コメント

妖怪というのは、本来はっきりとした姿・形は無いんだけど、鳥山石燕や水木しげるが具体的な形を与えたから、みんなそれにとらわれているそうです。
河童と天狗、まったくの別物とみんな思ってませんか?じつはどちらも言ったもん勝ちなんですよ。
日本中いたるところに伝説や伝承が残っているし、それぞれ全く異なる姿だったりします。じつは明確な境目が無いんです。
河童なんかは製鉄に関係が深く、古代製鉄のころは川で採取できる砂鉄が原料だったこともあるし、秦氏の存在も深くかかわってきますよね。古代史・民俗学・オカルトなど、妖怪の世界はけっこう奥が深いですよ。

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