« ポップコーンはみな一斉に弾けるわけではない。だがすべてが熱せられている。(マネーの支配者/トウモロコシ) | トップページ | つまんね~ はけなしていますが、くっだらね~はホメ言葉です。たぶん(南極/葦(あし)) »

人類滅亡テーマのSFに”少子高齢化系”ってのもありでしょうか?(イン・ザ・ヘブン/黄昏)

 

えっと、あとがきです(*1)
 すいません、間違えました。2人の子持ちのおぢさん、たいちろ~です。
 図書館で新井素子の新作をめっけたんで読みました。けっこうこの人の作品ファンなんでだいたい読んでたんですが、この本出てたの知らなくて。なんでも33年ぶりの短編集だとか。読みだすとかつての新井文体そのままでやっぱしいいな~とか思ってましたが、中身は油断してましたね~ なんたって少女同士の会話だと思ってたらなんと80代と50代の女性同士。で、読み進めるとこれって人類滅亡の物語?!
 ということで今回ご紹介するのは、そんな新井素子のファンタジ~っぽいSF小説”イン・ザ・ヘブン”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。黄昏時の富士山。丹沢山系塔ノ岳山頂付近にて

Photo


【本】イン・ザ・ヘブン(新井素子 新潮社)
 余命少ない今日子さんにこう尋ねられた。
  ”ねえ、史子ちゃん、天国ってあると思う?
 答えにこまった私は、天国では自分の好きな歳になれるとか、小さい時に死んだ子供を育てる”天国互助会”があるとか、物故作家による天国図書館(*2)とか、今日子さんを励ますお話をいっぱい考えた。
 やがて今日子さんの心臓の鼓動が止まる時、若き日の旦那さん”ノリさん”が現れ・・・
(イン・ザ・ヘブン)
【自然】黄昏(たそがれ)
 夕方。wikipediaでは”日没直後の雲のない西の空に夕焼けの名残りの「赤さ」が残る時間帯”だそうです。このイメージから”盛りを過ぎて終わりに近づこうとする”の比喩に。”神々の黄昏(*3)”なんかです。


 さて、SFファンにとって、人類滅亡テーマってのはメインストリームのネタです。これを滅亡する原因別に分類すると、

〔宇宙人が攻めてくる系〕
 別名、”侵略モノ”。それこそ”宇宙戦争”から始まって”宇宙戦艦ヤマト”だの”宇宙の戦士”だの”エンダーのゲーム”だの作品てんこもり。このジャンルでの最大の謎は近場の火星人ならいざしらず、なんでわざわざ14万8千光年の遥かかなたから攻めてこにゃならんのだ?

〔訳のわからんモノが攻めてくる系〕
 代表例が”新世紀エヴァンゲリオン”。使徒という訳のわからん生物?が攻めてきて、ジオフロントにいるリリスと接触するとサードインパクトが起きるという設定。まあ起爆装置みたいなもんでしょうか?

〔隕石が落ちてくる系〕
 ”ディープ・インパクト”(馬の名前じゃありません)や”アルマゲドン”など。なぜだかこの2本の映画は同じ1998年に公開されましたが、この年何かあったっけ? まあ、”ノストラダムスの大予言(*4)”の前の年ではありましたが・・・

〔コンピューターの反乱系〕
 コンピューターが自我をもってじゃまな人類を排除するってモノ。”ターミネーター”なんかがこれ。フランケンシュタイン・コンプレックス(*5)の代表例です。

〔パンデミック系〕
 致死率が高い病気が流行して人類が滅亡しかけるというもの。最近だと”天冥の標”とか。咬まれると伝染するという意味では、ゾンビ映画の”ワールド・ウォーZ”も広義ではこのジャンルかな?

〔核兵器系〕
 いわゆる核ミサイルが飛びまわって地球が滅亡するもの。確信的に発射ボタンを押すってより、きっかけは精神に異常をきたした指揮官の命令だった”博士の異常な愛情”とか、コンピューターがかってに戦争始めちゃった”火の鳥 未来編”だったり。
 だいたい戦争なんて相手の国のリソース(地下資源、農工業生産物、人、土地)を利用したいわけであって、人も住めないような土地を占領したってしょうがないワケで・・

 まあ、書き出すときりがないですがここにきてちょっと気になるのが”少子高齢化系”としか言いようのないのがでてきてること。(ここからが本題です。前置き長くてすいません)

 今回ご紹介の”イン・ザ・ヘブン”で描かれているのは超少子化、つまり出生率が急激に下がって=社会全体として子供が生まれなくなって、最後にはきわめて少数のお年寄りしかいなくなった世界。本書に掲載されている”つつがなきよう”も同様で人口が飽和してしまい衰退に至る世界です。
 ”少子高齢化系”の特徴って、明確な敵(宇宙人とか)や脅威(核兵器とか隕石とか)が不在で、長期的かつゆるやかに進行するとこ。少子高齢化の議論って、原因が経済的な理由(給料が安くて家庭が持てない)とか、社会的な風潮とか(結婚するより自由な独身)とか、子育て環境が弱い(待機児童が多い)とかいろいろ複雑に絡み合ってってしかも決定打がないような、連帯責任のノリだとか。それに今日明日ど~のこ~のという話ではなく何十年、百年単位の話なんで、なんとなくなっちゃったな~的なノリもあるし。

 それだけにこの系ってみょ~に達観したような明るさがありそうな気がします(いや、見方によっては悲劇的ではあるんですけど)。上記の”宇宙人が攻めてくる系”だの”隕石が落ちてくる系”ってのはそれを阻止するのに(あるいは滅亡の危機から立ち上がるのに)がんばるぞ!的なドラマがあるわけですが、”少子高齢化系”って”いろいろやってみたけどダメでした”みないにさらっと流れちゃってるような気がします。
 それだけに、責任者出て来い!みたいなノリじゃなくて、”長い間でこ~なっちゃったから、まっ、しょうがないか”みたいな空気かな。最近だと”人類は衰退しました”みたく、新人類”妖精さん”に”あとはよろしくね”って感じでとけっこう仲良く暮らしてく感じ。まあ、今更じたばたしたってしょうがないし、人類より優秀な種があればいいんじゃねってのはあんましなかったノリですね。

 SFってジャンルも社会から独立して存在してる訳ではないので、世相(冷戦、核戦争の脅威、世界的な疫病の流行、テクノロジーへの不信感うんぬん)を繁栄してはやりすたりはありそうです。そういった観点で見ると”少子高齢化系”ってのは今風なのかなぁ
 新井素子がこの系の名作”チグリスとユーフラテス(*6)”を書いたのは1996~98年。書籍になった1999年ってのは”少子化対策推進基本方針”だとか”新エンゼルプラン”なんかが策定された年。つまり、国家レベルでさすがにヤバイからなんかせんといかんと動き出した頃。まあ、十数年以上前の話ですからテーマとしてはなかったわけではないんですが、当時と切迫感が違うというかあんまし効果上がってないんじゃね? ってとこでしょうか・・・

 ”イン・ザ・ヘブン”はSFファンでなくても面白い本ですが、こんなことうだうだ考えちゃうってのは古いSFファンの性なんでしょうかねぇ。 ああ、これって”せい”じゃなくて”さが”ですから。


・宇宙戦争:H・G・ウェルズ 創元SF文庫
・宇宙戦艦ヤマト:西崎義展、松本零士 バンダイビジュアル
・宇宙の戦士:ロバート・A・ハインライン ハヤカワ文庫
・エンダーのゲーム:オースン・スコット・カード ハヤカワ文庫
・新世紀エヴァンゲリオン:庵野秀明、GAINAX キングレコード
・ディープ・インパクト:ロバート・デュヴァル、ミミ・レダー パラマウント
・アルマゲドン:ブルース・ウィリス、マイケル・ベイ ブエナ・ビスタ
・ターミネーター:アーノルド・シュワルツェネッガー、ジェームズ・キャメロン
         20世紀フォックス
・天冥の標:小川一水 ハヤカワ文庫
・ワールド・ウォーZ:ブラッド・ピット、マーク・フォースター 角川書店
・博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか
     :ピーター・セラーズ、スタンリー・キューブリック ソニー・ピクチャーズ
・火の鳥 未来編:手塚治虫 小学館他
・人類は衰退しました:田中ロミオ ガガガ文庫


《脚注》
(*1)えっと、あとがきです
 初期の新井素子の本にでてくるあとがきの書き出し。現在は”あとがきであります”。往年のSFファンならこれ読んだだけで”新井素子だ!”とわかる有名なフレーズです
けっこう、このあとがき読みたくて新井素子の本読んだんだよな~
(*2)物故作家による天国図書館
 シェイクスピアや紫式部ら物故作家による新刊が納められてる図書館。読んでみて~
そういえば落語のネタに天国の寄席には名人上手が多数出演! ってのがあって、その看板を見た天国の新参者が”○○って、まだ生きてまっせ?”って質問に”横に書いてあるやろ、近日来演予定って”というブラックなのが。けっこう好きな笑いです。
(*3)神々の黄昏
 リヒャルト・ワーグナーの楽劇”ニーベルングの指環”四部作の四作目。ワーグナー好きでレーザーディスク買ったんだけどまだ見てないな~~ プレーヤー、まだ動くかな?
(*4)ノストラダムスの大予言
 ”1999年7の月、空から恐怖の大王が来るだろう”で有名な予言書。
五島勉が”ノストラダムスの大予言”(祥伝社)を執筆したのは意外と早く1973年。そのころはまだ先のことと思ってましたが、98~99年頃はマジなネタで盛り上がってましたな~~
(*5)フランケンシュタイン・コンプレックス
 神にかわってロボットや知性を創造するあこがれと、それに反乱を起こされるんじゃないかという不安がまじった感情のこと。命名はロボットSFの大家”アイザック・アシモフ”で、これへのアンチテーゼが有名な”ロボット工学三原則”だそうです。
(*6)チグリスとユーフラテス
 惑星ナインに移住した人類は原因不明の人口減少をたどる。最後に生き残った子供”ルナ”は話相手を求めてコールドスリープ装置で眠る人を次々に起こしていく・・
 1999年日本SF大賞受賞の名作

« ポップコーンはみな一斉に弾けるわけではない。だがすべてが熱せられている。(マネーの支配者/トウモロコシ) | トップページ | つまんね~ はけなしていますが、くっだらね~はホメ言葉です。たぶん(南極/葦(あし)) »

小説」カテゴリの記事

自然」カテゴリの記事

コメント

新造人間キャシャーンでは、ブライキングボスは地球の環境破壊の要因を取り除くために作られて、それを忠実に実行するためのプログラムが組み込まれていたんです。
最初は落雷の衝撃でそのプログラムが誤作動して自我を持ち、人類に逆らいだしたということでしたが、じつは何の問題もなく作動していて、地球環境の最大の悪因は人類の存在だとの結論を出しただけだったんですね。
地球環境を改善するためのプログラムそのものが、人類滅亡の危機を招くものだったことは東博士はすぐにわかったのでキャシャーンを造ったということです。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/528774/59930884

この記事へのトラックバック一覧です: 人類滅亡テーマのSFに”少子高齢化系”ってのもありでしょうか?(イン・ザ・ヘブン/黄昏):

« ポップコーンはみな一斉に弾けるわけではない。だがすべてが熱せられている。(マネーの支配者/トウモロコシ) | トップページ | つまんね~ はけなしていますが、くっだらね~はホメ言葉です。たぶん(南極/葦(あし)) »

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

無料ブログはココログ