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つまんね~ はけなしていますが、くっだらね~はホメ言葉です。たぶん(南極/葦(あし))

 ども、さすがに後頭部の髪の毛がささやかになってきたおぢさん、たいちろ~です。
 なぜこれに気がついたか言うとか、私んちのエレベーターに監視カメラとモニターがついてるんですね。ちょうど後ろ頭が映る位置にカメラがあって、入り口横にモニターが付いていて、それはもうバッチリ!
 まあ、多かれ少なかれおぢさんってのは歳をとればハゲてくるのは自然の摂理ですが、いっぽうそれを隠したいと考える人はいるわけで。典型的なのは頭頂部から額にかけてすっかりつるっと禿げ上がっているのに、後頭部に僅かに残存する毛髪を伸ばして前に回し、前髪に見せかけるべく垂らしている、俗にいう”簾禿げ(すだれはげ)”。そういや”バーコード禿げ(*1)”って言い方もあったな~
 ということで今回ご紹介するのは、そんな簾禿げのおっさんの物語”南極”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。
川崎マリエンにあった葦(あし)と簾(すだれ)を作る道具です。

071347


【本】南極(京極夏彦 集英社)
 人気ミステリー作家”大握寿司昌”の別荘で子供の幽霊やらタケノコを煮る婆ァが出るらしい。売れない小説家”赤垣廉太郎”は小説シュバルの鬼編集長”椎塚有美子”の依頼(命令? パワハラ?)を受けて除霊をするハメに。しかも毒マッスル海胆(海胆)のマー君と一緒に。別荘を訪れた一行の前に、椎塚の天敵である文芸評論家”北極星ヒカル”が除霊対決をするために立ちはだかる・・・
 (毒マッスル海胆ばーさん用米糠盗る)
 史上最低の売れないカス作家、簾禿げこと”南極夏彦”を主人公とした(主人公か?)連作集。
【花】葦(あし)
 。イネ科ヨシ属の多年草。簾(すだれ)や舟を作ったり(*2)なんかに使います。
”あし”が忌み言葉”悪し”といくことで別名は逆の意味の”よし(良し)”。なんで簾のことを葦簀(よしず)とも言います。


 さて、上記のあらすじ説明に登場しない”南極夏彦”とは何者か? 実はこの人、先日読んだ”どすこい(*3)”に収録されてる”すべてがデブになる”に登場するダメな小説家。最初のころは単なるダメな小説家だったのが、後半になると悪口雑言罵詈讒謗を一手に引き受ける史上最低のホームレスに。最後にはとうとう妖怪扱いです。
 これに合わせるように、不運の編集者から編集長に出世した”椎塚有美子”もパワーアップ。パワハラに言葉いぢめ、暴力のキレのスルドさはもう少年ジャンプ的パワーインフレ(*4)の世界です。
 で、本作から登場した”北極星ヒカル”こと”大森望”。宍道湖鮫”で登場した時はかわいいけど頭悪そうな女子高生で、後半からは有美子達をおちょくりまくる新進気鋭の美人書評家。パワーアップした有美子とタメはれるというかほとんどコブラ対マングースというか竜虎相打つというか

 てな風に書いてますが、内容は一言でいうと”くっだらね~~~~”。題名は有名な推理小説やホラー小説のパロディ、登場人物は有名作家の名前のもじり、マンガの名言満載と、ど~しようもない話。でも、これがとんでもなく面白いんダよな~~ いや、コトの良し悪しじゃなく、くだらなさも突き抜けると名作になるという。漫才の世界で”笑われるのと、笑わせるのは違う”なんてこと言いますが、まさにくだらないことを意図的に、かつ小説でやるって大変みたいですな。本書で掲載されてる赤塚不二夫とのコラボ”巷説ギャク物語”の中で”荒唐無稽なのと漫画的なのは同義ではない”てなことを言ってますが、確かに小説という文字の世界でこの手のノリをやるのはたいへんなんだろ~な~

 しかし、あの京極夏彦がこんな作品を書くとはね~ しかもノリノリで。でも理屈言いの京極らしいのもあって、これは妖怪研究家らしい言葉。”毒マッスル海胆ばーさん用米糠盗る”で、だれかれ構わず祟る”貞○”っぽいネタへのつっこみ

  まあ、とりあえず怨みはあるんだろうが、怨みを晴らす訳ではなく、
  誰彼かまわず八つ当たりするのだ、最近の幽霊は。
  もう通り魔か無差別テロである

   (中略)
  もし、幽霊を捕まえたとして、犯行動機を尋問できたとしても、きっと犯行の理由は   「あのー、別に誰でもォ、良かったんですよォ。
    なんかぁ、自分だけ不幸ってのはぁ、納得いかないつうかぁ
    ドイツもコイツも道連れってゆうかぁ」
  ってな具合なのだ。

言われてみると、昔の怪談って理不尽な理由で殺された怨みで化けて出る、だから祟られる人が特定できてて、道徳的には”だからそんなこと止めようね”みたいな説話的な側面がありましたが、最近はね~。まあ、街中でナイフ振り回したあげく”誰でもよかった”みたいな犯人だとか、脱法ハーブ吸って車で歩道を暴走するとか理由にならない理不尽があるからなー、リアルで。

 もうひとつは、憑き物落としの”京極堂”らしい一言。同じく”毒マッスル海胆ばーさん用米糠盗る”より。除霊する廉太郎に対する有美子の言葉。

  いい? 除霊だの憑き物落としだのってのはね、パフォーマンスなのよ
   (中略)
  だからね、演出が大事なのよ。
  呪文だの呪具だの、そういう決めゼリフやら持ち道具やらというのは、要は演出。

   (中略)
  だから、専門も蜂の頭もないの。使い手の腕次第、技量次第でどうにでもなるもんなのよ
  鰯の頭も信心からとはそういう意味なのよ

 ”詳しいっすね、椎塚さん”という廉太郎の質問に有美子の答え

  中野の古本屋のお爺さんに聞いたのよ(*5)

どうも、京極堂もご健在のようです。

 ”南極”はどこからどう読んでもくっだらない本。でも、これって最大級の賛辞ですから。だから私に祟らんで下さい・・・
 本に為になることを期待するとか、文学は人生を考えるためにあるとか言ってる頭の固い人意外はぜひご一読のほどを。


《脚注》
(*1)バーコード禿げ
 昔、この手の禿げに若い女性が”そこのバーコード!”って怒鳴りつけるってCMがあったな~ 調べたんですけど何のCMかわかんなかったんですが、どなたかご存知ありませんか?
 ちなみに、上記の簾禿げの文章は本書からの引用。だから私を責めないでください。
(*2)舟を作ったり
 ”古事記”にイザナギとイザナミの最初の子供”蛭子”(ヒルコと読みます、エビスではないです)が葦の舟に入れて流されるという話があるそうな。リアルでやったら間違いなく保護責任者遺棄罪。神話って怖い・・
(*3)どすこい(京極夏彦 集英社)
 ”地響きがする―と思って戴きたい”という出だしで始まる力士パロディ小説集。妖怪系推理小説の第一人者、京極夏彦が”僕だってたまには書きたいよギャグ”というだけで書いた本。何があったんだ、京極夏彦!
 詳しくはこちらをどうぞ。
(*4)少年ジャンプ的パワーインフレ
 敵や味方の強さが急激に高まる”パワーインフレ”、武術の達人を決める大会からいつの間にか地球の命運をかけた戦いになっちゃった”ドラゴン・ボール”とか、中学生のボクサーがいつのまにか、ど~みてもそんなパンチはできね~だろ~というスーパーブローで神様がどうしたこうしたの話になっちゃった”リングにかけろ”とか、喧嘩自慢の集まる高校がいつのまにかそりゃ間違いなく死ぬわな的な戦いをやってる”魁!!男塾”とか。
 ネタが古くて申し訳ない。なんせさすがに最近は少年ジャンプ読んでないんで・・
(*5)中野の古本屋のお爺さんに聞いたのよ
 京極夏彦の”百鬼夜行シリーズ”の主人公でしょう、間違いなく。
 このシリーズは本が分厚いので有名ですが、どうも原因は有美子の発言にありそう
  いつだって、中々本題に入らないのよ。
  無駄な部分こそが小説だと思ってるのよ、きっと

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コメント

怪談・妖怪・ホラー・ミステリーなどの作家には、こんな人本当に多いんですよ。
ネアカでいたずら好きでものすごくアクティブな人、京極夏彦・平山夢明・中山市朗などなど・・・
みんな本来が膨大な資料や知識を駆使して書き上げる人ばかりだから、ギャグやいたずらに
走る時もこれまた全力でやるから、でてくるものもハンパじゃない!

ところがマンガの世界になると、同じジャンルでもなぜか陰気くさいやつや怪しげとういうかうさんくらい
のが多くいる気がする。怪談・心霊・ミステリー好きからすると、突っ込みどころ満載!調査・資料集め
が足りないんだな。なぜ?私の見解ですが、本気で全力で楽しんでいるかいないかの違いじゃないの
かな、という気がする。

中山市朗(新耳袋なら知っているかな?)の怪談イベントには何度か行ってますが、よく言っているの
が”心霊スポットには遊び半分で行ってはいけません!そんなことしたら憑かれたり祟られたしします
よ。遊び全開で楽しみに行きましょう!”

以下のリンクで、動いてしゃべる京極夏彦を見れますよ。
中山市朗の東京でのイベント時、休憩中に京極夏彦が遊びに来たそうです。
この二人、つき合いも長いしけっこう仲もいいんですよ。

https://www.youtube.com/watch?v=H_VR0nCkG3k&feature=em-uploademail

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