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ポップコーンはみな一斉に弾けるわけではない。だがすべてが熱せられている。(マネーの支配者/トウモロコシ)

 ども、金のなる木があるじゃなし♪(*1)なおぢさん、たいちろ~です。
 さて、問題です。

  Q:お金を増やすにはどうすればよいでしょうか?
  A:中央銀行がお札の輪転機を回せばよい

 いやいや、お金自体が銀行のコンピューター上でやりとりされる昨今、ボタンをポチっとなすればどんどん増えるのかもしれません。まあ、サラ金にいってキャッシングすればお金が出てくるのと見た目は同じで、違うのは何のために、何を裏付けにお金を出すのかってことでしょうか。
 ということで今回ご紹介するのは、そんな現在の錬金術師の頂点に立つ男達の物語”マネーの支配者”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。私んちで植えてる”トウモロコシ”です。

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【本】マネーの支配者(ニール・アーウィン 早川書房)
 世界経済を安定に導くため、巨大な権力を握る中央銀行総裁。連邦準備制度理事会(FRB)議長”ベン・バーナンキ”、欧州中央銀行総裁の”ジャン・クロード・トリシェ”、イングランド銀行総裁の”マービン・キング”。彼らは何を成し、何を成しえなかったのか。リーマンショックやギリシャ危機などに立ち向かうマネーの支配者たちを描いたドキュメント。
【動物】トウモロコシ
 イネ科の一年生植物ということで意外なことにお米や麦と同じ括りです。
 お菓子のポップコーンはトウモロコシの中でも爆裂種という危ない名前の種を乾燥させて炒っったもの。wikipediaによるとポップコーンの人気が出たのは世界恐慌時代のアメリカで、インフレで物価が上がる中ポップコーンは比較的値段が上がらなかったからだとか。今回のネタ向きとしては出来過ぎ?


 さて、日本銀行の金融政策には”公定歩合操作”、”預金準備率操作”(*2)、”公開市場操作”というのがあります。社会の時間に習いましたが覚えてますか? で、本書に出てくる話題の中心は”公開市場操作”。簡単にいうと国債や債権などを市場で買ったり(買いオペ)、持っている債権を売ったり(売りオペ)するもの。中央銀行が債権を買えば世の中に流れるお金の量が増え金利が下がり、売ればお金の量が減って金利が上がります。ってなことを習ったような気がしますが、本書でやっているのはまったく別次元の話。平たく言えば、誰も買わなくなった(価値が著しく棄損している、あるいは棄損するリスクの高い)債権(とそれを保有する企業価値)を中央銀行が下支えするって感じです。この操作をできるのは現在では中央銀行だけ(*3)

 ただ、中央銀行だって無制限に買えるかというとそんなわけゃなくて、実体経済を無視してお金をどんどん作ればお金の価値が下がる=インフレが発生するし(*4)、それは物価安定を目標とする中央銀行の依って立つところに反するし、ルール上、救える所と救えない所がある。リーマン・ショックの時、FRBがリーマン・ブラザースを救えなかった(救わなかった)のはある意味ルールに則った行動であり、保険会社のAIG救われたのは反則ぎりぎりの行動だったり。中央銀行は”最後の貸し手(レンダー・オブ・ラスト・リゾート)”と言われますが、誰彼かまわず救える魔法使いじゃないんですね。

 これがもっとでかくなったのがEU危機で、代表的だったのが”ギリシャ危機”。放漫財政の結果、破綻の瀬戸際だったギリシャ(というかギリシャ国債)をどう救済するかってのがテーマ。本書を読んでると、ユーロという統一通貨がありながら、政治や財政はバラバラ、でもどっかがずっこけると対岸の火事ではすまない運命共同体のEUの経済を引っ張る中央銀行の男達の苦悩がよくわかります。

 話は飛びますが、実は昔”経営管理システム”の拡販ってのをやってました(これは本当)。この手のシステムってのはまず言葉がわかんないとお客様と会話が出来ないわけで、簡単な用語集を作って配布しました。といえばカッコいいんですが、こんなブログ書いてるおぢさんが作るモンだからまともなシロモンであるはずがなく(*5)、そこに書いたのがこんなの  

  マリリン、ソブリン、ゆうこりん

 マリリンというのは、往年の大スター”マリリン・モンロー”、ゆうこりんというのは当時ブレイクし始めてたアイドル”小倉優子”のニックネーム。で、ソブリンというのは政府や政府関係機関が発行し又は保証している債券(国債など)のこと。たしか、”国家が保障しているため、その国では一番信用格付けが高く、デフォルト(債務不履行)になる可能性が最も低い(*6)”てな説明をしてました。
 当時はロシア危機(1998年に発生したロシア中央銀行による対外債務の90日間支払停止)の後なんで、国家レベルのデフォルトリスクがなかったわけじゃないんですが、少なくとも西側諸国でデフォルトが発生するとかってあんま想定してなかったですね~
 素朴な疑問に”なぜ、ギリシャ国債みたいなヤバそうなのをいっぱい買ってたんだ?”というのがありそうですが、これは後知恵であって”もっとも高格付け=安全な債権”だと思ってりゃ買うわな普通

 本書の中で面白かった言葉を。負のスパイラル(連鎖反応)をよくドミノ倒しに例えますが、当時の様子の記載をちょっと長いですが引用すると

  2008年秋を表す常套句は、「ドミノ倒し」である
  ある投資銀行が破綻し、それが保険会社を倒し、それが商業銀行を倒し、
  という具合だ。
  しかし、ブッシュの顧問だったエドワード・P・ラジアーがのちに語ったように
  それは「ポップコーン」と言う方がふさわしい。
  一社の破綻が順番に次の破綻につながるのではなく
  金融機関がフライパンの上のポップコーンの粒のように、
  バラバラに弾けていたのである。
  その熱源はひとつ。
  モーゲージ証券をはじめとするさまざまな証券の損失が、
  だれも想像しなかったほどに巨額にのぼることがわかったことだ。
  ポップコーンはみな一斉に弾けるわけではない。
  まったく弾けないポップコーンをある。
  だがすべてが熱せられている。
  AIG後の世界の中央銀行の挑戦は、コンロの火を止めることだった。

言いえて妙な言葉です

 本書の原題は”Theと”Alchemists”。直訳すると”錬金術師”ですが、錬金術師と言われても”ハガレン(*7)”ぐらいしか思いつかない日本で”マネーの支配者”って題名は直線的ながらなかなかの名訳。ちょっと前の話ですが、まだまだ危なっかしい世界経済を知るには良い本かと。


《脚注》
(*1)金のなる木があるじゃなし♪
 植木等の往年の名曲”ハイそれまでョ”(作詞 青島幸男、作曲 萩原哲晶)より。
(曲はこちらからどうぞ)
 もっともベンケイソウ科クラッスラ属の多肉植物に”金のなる木”ってのはありますが、当然お金がなるわきゃありません。
(*2)”公定歩合操作”、”預金準備率操作”
 公定歩合操作は日銀が民間銀行にお金を貸す金利=公定歩合を変更すること。金利を上げればお金の流通量が減り、下げれば増えます。昔は民間銀行の金利を決める基準だったんですが、現在は民間銀行金利が自由化されたため短期金融市場金利(無担保コール翌日物の金利)を操作してるんだとか。
 預金準備率操作は、日本銀行が民間銀行に預金や金融債などを一定率、無利子で日銀に預け入れさせること。預金準備率を上げるとお金がへり、下げると増えます。
(*3)現在では中央銀行だけ
 売り買いすれば誰がやっても同じことが起きるんで、”だけ”というのは語弊があるんですが、こんだけ巨大化しまくった世界経済で、巨大金融資本を協調させたりとか保証の重みの安心感という意味で、圧倒的な存在感を持ちうるのは中央銀行だけといってもいいでしょうか。
(*4)インフレが発生するし
 本書の中で第一次世界大戦の敗戦国であるドイツが巨額の賠償金に苦しむ中発生したハイパーインフレ。1923年11月には1ドル4兆2000億マルクになったそうですが、ほとんどお金の体をなしてなかったんじゃないかと。
 本書にライヒスバンクのハーフェンシュタインが
  あと数日のうちに、我々は(通貨)総流通量の三分の二を
  一日で供給できるようになるのです

という演説をしたエピソードが出てますが、まともな経済政策じゃないです。
(*5)まともなシロモンであるはずがなく
 題名が当時流行ってた”サルでも描けるまんが教室”(竹熊健太郎、相原コージ 小学館)のもじりで”サルでもわかる経営管理入門”、表紙のイラストが綾小路きみまろ。今にして思えば、当時の上司がよく許可してくれたよな~~
(*6)デフォルト(債務不履行)になる可能性が最も低い
 BIS2(当時)の標準的手法の場合、S&Pの格付ベースで民間企業の格付け”AAA~AA-(超優良企業と思ってください)”でもリスクウェイトが20%、無格付けだと100%だったのに対し、ソブリンのそれは”AAA~AA-”なら0%、”A+~A-”で20%と優遇された扱い。つまり、”国家”というのはそれだけ信用がある(あった?)ってことです。
(*7)ハガレン
 荒川弘の漫画”鋼の錬金術師”(スクウェア・エニックス)の通称。
 アニメにもなった大ヒット作なんですが読んでません。魔法使いとか出てくるファンタジー系苦手なんです・・

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