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ファイナンスに関わる人間は正義の味方か、悪魔の手先か?(それでも金融はすばらしい/レモン)

 ども、金融機関の人間ではないですが、金融機関相手に商売やってるおぢさん、たいちろ~です。
 職業に貴賎はないと言いますが、正義の味方っぽい職業となんだか悪っぽい職業ってイメージってのはありそうです。正義の味方の代表のような警察官だって犯人を逮捕するって面では正義の味方だけど、誤認逮捕だってあるし、ヤ○ザの人だってボラアンティアやることだってあるし(*1)。自衛隊なんてかなり微妙な職業じゃないかと。まあ、正義の味方であんまし突っ込まれなさそうなのは消防署ぐらいでしょうか(*2)。
 で、今回のお題のファイナンスに関わる人間ってのはどっちかというと分が悪い方でしょうか、別に他意はないんですけど。2013年度に流行った”半沢直樹(*3)”に登場する大和田常務なんて、貸しはがしはするわ、私利私欲で融資を決めるわ、権力闘争に明け暮れるわとかなり悪い人っぽい。半沢直樹だって見方によっては同じ穴のムジナだし。
 ということで今回ご紹介するのはそんなファイナンスに関わる人に勇気を与える本”それでも金融はすばらしい”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。近所で見かけたレモンの花です。

5190429


【本】それでも金融はすばらしい(ロバート・J・シラー  東洋経済新報社)
 2013年にノーベル経済学賞を受賞したロバート・J・シラーによるイェール大学のファイナンス講義の生徒に向けた内容をベースに書かれた本。
 日本語のサブタイトルは”人類最強の発明で世界の難問を解く”ですが、原題は”Finance and the Good Society(金融ファイナンスと良い社会(*4))”とけっこうあっさりしたもの。
【花】レモン
 ミカン科ミカン属の常緑低木。実はよく見る柑橘ですが、花は写真のようなかわいいのが咲きます。ファーストキスはレモンの味などとロマンチックなイメージがありますが、英語では”不良品”というあまり良くないいイメージって本書で初めて知りました。でも花言葉は”心からの思慕”、”愛に忠実”、”心からの思慕”とプラスイメージなんですな。


 さて、結論から。本書に記載されているモンテスキューの”法の精神”より

  商売の精神は生来から慎ましさ、節制、穏健、労働、節度、静謐さ、
  秩序、ルールを伴うものだ
  この精神が続く限り、それらがもたらす富は悪影響を持たない
  よくないのは、過剰な富が商売の精神を破壊するときである
  するとそのとき、格差の不都合が感じられはじめるのである

 この”精神”ってのが曲者で、個人であれ会社であれ社会であれ、この精神が守るべきものを守っていればそうそう問題にはならんわけで、ちゃんとやっていけばすばらしい金融マン=正義の味方になれまっせというのが本書の主題かな?
 でもまあ、これがなかなか守れんわけで、というか金融システム、広げて言うと人間の中にこれが破壊される方向のナニかがビルドインされているんじゃないかと。
 てなことを踏まえて、本書に出てくる職業をいくつか。

〔住宅ローン業者と証券化業者〕

 初手から悪モン代表みたいになってますが、本書が書かれたのは2012年とリーマン・ショックの悪夢醒めやらぬ(今でも醒めてませんか?)ころだから。
 元々抵当証券化とCDO市場(*5)がうまく機能する理由ってのは”レモン(不良品)問題”=不良品だけが市場に放出され、機能不全の市場が生まれること解決すると考えられてました。本来は住宅ローンを使って家を買える人が増えるのは良いことだし、CDOってのもリスクを分散させるはずのものだったし。でも失敗しちゃったのは本来は住宅ローンを借りて返せなそうにもない人にも”貸しちゃえ貸しちゃえ!”って感じで貸しちゃった業者がたくさんいたこと。城南信用金庫の第3代理事長、小原鐵五郎の名言に”貸すも親切、貸さぬも親切”と位のがありますが、まあお客さまのためにならない金なら貸ししないことが親切だってこともあるわけです。CDOも本来リスク分散であるべき商品がいつの間にかどこに何のリスクがあるか分かんなくなっちゃったし。
 でも、本書で最大の誤りは”住宅価格は絶対に下落しない”と多くの人が思いこんだ点をあげてます。まあ、今ならなんでそんなこと思ってたんだ?!と言いそうですが、日本だってバブルのころはみんなそう思ってたんですよ~~
 まあ、形は変わっても住宅ローン業者と証券化業者は今後もあるというのがシラーのご意見。

〔トレーダーとマーケットメーカー〕
 代表的なのは株取引の専門家。秒刻みで株の売買をやって価格変動から利益を得てたりしますが、これがシラー曰く”最も敵視されている存在”。その理由として

  通常、トレーダーが直接的な形で社会に役立つ存在として姿を見せることはない
  かれらは自分の儲けのために売買しているにすぎない

  その活動は賭博を思い起こさせ(*6)
  秀でたトレーダーの成功は時に人の苛立ちを誘う

ずいぶんな言われようって気もしますが、まあ、個人のお金を自分でリスクとってやる分にゃ文句も言いますまい。でも、公的年金積立金の運用で株式の運用比率を高める見直しを前倒しでやってる昨今(田村厚生労働相は2014年6月6日、閣議後記者会見)、この人達に老後の年金たくさにゃならんのだろ~な~
 金融資本主義システムを変革していくにはこの人達が必要ってのが、シラーのご意見。

〔デリバティブ業〕
 この章の書き出しが”近年、「金融派生商品(デリバティブ)」という言葉は汚い言葉とみなされるようになった”。なんつ~言い方だと思いますが、その直後の

  デリバティブ市場を動かす専門家たちは評判が悪いが
  実は、かれらはもっとも創造的で複雑な金融の側面に関わっているのだ

とフォローしてます。
 じゃあ何が悪い印象かというと、オプション(デリバティブの一種)を売るセールスマンがいかがわしい(微妙に誤解を招く議論)とかやってる過去の悪しき慣行のせいではないかと指摘してます。これを無くすためには一般大衆に公平な金融アドバイスを提供すればいいと言ってます。でも、めっちゃ難しいんだよな~ これって。はっきりいって自分の理解できない商品には手を出さない、手を出すなら勉強しろ!ってとこでしょうか
 デリバティブによって市場の有用性と、本当の利益がさらに公平にカバーされるようになるかもしれない、ってのがシラーのご意見。

 まあ、500ページ近くある本だし、上記もかなりはしょっているのでアバウトなところもありますが、本書の言わんとするところは”金融ファイナンスは社会を良いものにするから、がんばれ!”というエールでしょうか。
 帯部分にある

  

すべての金融関係者に勇気と希望を与える書

 ってのは言いえて妙。世間からいろいろ言われてへこんでる金融関係者には絶好の本かも。


《脚注》
(*1)ヤ○ザの人だってボラアンティアやることだってあるし
 1995年の阪神淡路大震災で、山口組が被災地での支援活動を行ったということで話題になりました。
(*2)正義の味方であんまし突っ込まれなさそうなのは~
 消防車や救急車にあんまし悪いイメージ持っている人はいないんじゃないかと。どうも”生命や財産を守ってくれる”からかなぁ。別に義兄が消防署員だったから言うわけじゃないですけど。
(*3)半沢直樹
 池井戸潤の小説”オレたちバブル入行組”、”オレたち花のバブル組”を原作としたTBSのテレビドラマ。いや~銀行員の視聴率を調べたら100%に近いんじゃないかと思うぐらい話題になりました。
 半沢直樹は主人公ですが、国税局や金融庁を出し抜くわ、上司の弱みを出世の取引に使うわと正義の味方ってわけじゃないな~ 大和田常務は半沢直樹の敵役で上記の通りやりたい放題やってます。演じる香川照之がいい味出してました
(*4)金融ファイナンスと良い社会
 訳では”金融ファイナンス”とことさら書いてますが、”Finance”の元はラテン語の”finis”で、これには”目標”や”終了”なんつー意味もあるそうです。
(*5)抵当証券化とCDO市場
 抵当証券は不動産に対する抵当権を小口証券にして、一般の人でも買えるようにした有価証券、CDO(Collateralized Debt Obligation 債務担保証券)は大口金銭債権を裏付資産とした証券化商品でデフォルトなどの際に元本が優先的に確保される順位があるのが特徴。
(*6)その活動は賭博を思い起こさせ
 ファイナンス活動が博打かどうかは未だに結論がでてない問題だそうですが、不確実な未来に資本を投下するって行為は、融資だろ~がトレーディングだろ~が宝くじだろ~が競馬だろ~が同じだと思います。個人的な意見ですけど。

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まったく関係ないことで申し訳ないけど、北方謙三の”三国志”が気になっている。ブックオフに全巻揃っているからすぐにでも手を出せるんだけど、ハードボイルドな三国志?どんな世界観なんだ?
いつのまにか歴史小説のコーナーに分類されているハードボイルド屋謙ちゃん、ハマるとえらいことになりそうな予感。
関係ないついでに、新日本プロレス所属の”タイチ”選手が、不倫騒動のために2か月の出場停止処分だそうで。そんな度胸も甲斐性も無いとおっしゃるでしょうけど、子供たちもそろそろ自立しそうだしここらでひとつはじけてみませんか?

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