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まあ、もしドラ系推理小説とでも言いましょうか・・・(エウレカの確率/錨)

 ども、行動経済学はけっこう気に入っているなおぢさん、たいちろ~です。
 行動経済学ってのはなにモンかというと、経済学の一分野なんですが、人間行動原理への立ち位置が違うんですな。今までの経済学ってのは経済人(ホモ・エコノミクス homo economicus)という経済的合理性のみに基づいて個人主義的に行動するという人間を前提にした学問なんですが、行動経済学ってのは思い込みや状況に流されるわ、状況に引っ張られるわ、損は大きく得は小さく感じちゃうわというい~かげんな、つまり私のような人間を想定している学問です。
 で、そんな行動経済学者が犯罪捜査をしたらど~なるかというのが、今回ご紹介する”エウレカの確率”であります。

写真はたいちろ~さんの撮影。海上自衛隊横須賀基地の錨です。

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【本】エウレカの確率(石川智健 講談社)
 女性ばかりをねらう連続殺人事件が発生した。特捜本部は犯人逮捕に全力を尽くすが1ケ月たっても犯人の手掛かりすらつかめない状態だった。そんな時、2人の人間が捜査に投入された。一人はプロファイリングのスペシャリスト”盛崎”、そしてもう一人はなんと経済学者の”伏見”だった・・・
 サブタイトルが”経済学捜査員 伏見真守”とありますが、本書内で伏見は”僕は経済学者ではなく、行動経済学者です”とわざわざことわってんだからそのように付けてやれよ~~
【乗り物】(いかり)
 英語で書くと(Anchor アンカー
 本書の中で”アンカリング Anchoring)てのが出てきますが、これは最初に感じたことなど特定の状況=錨を降ろした地点に引っ張られるという認知バイアス(*1)の一種です。


 本書では三つのタイプの捜査官が出てきます。一人目は捜査本部のリーダー、刑事一課長の”阿久津”。推理がどうのこうのというより現場を指揮する実行の人です。二人目はプロファイリングのスペシャリスト”盛崎”。”プロファイリング”というのは犯罪の性質や特徴から犯人の特徴を推論すること。本書の中では”犯行がずさんなので知能指数高くなく、精神的に不安定、女性の下着を盗ってないので男性、お金や宝石を取ってないので生活に困っおらず犯行時間から不労所得のある失業者、ホラー映画好き”ってなぐあい。だもんで、捜査本部は犯行現場の近くでレンタルビデオショップでホラー映画や猟奇モノばかりを借りてる人間を探せ!(*2)となってます。それっぽいっちゃそれっぽいですが、外した時の反動でかそうだな~~

 話は飛びますが、今でこそ”プロファイリング”って時々聞くようになりましたが、私が最初に見たのが”俺の空 刑事編(*3)”。手元にないんで記憶で書いてますが確か主人公の安田一平が財力に任せて私設警察作って、大学の先生とか集めてプロファイリングやって犯人を特定して、いきなり全国手配をかけるってかなりムチャぶりな話だったような。正直”マジでやったらかなりヤバイ”と思ったもんです。

 で、三人目の捜査官がそんな”プロファイリング”の危なっかしさを認識しつつ、”行動経済学的アプローチ”で補完できないかと考えてる”伏見真守”。この人もやってることは”プロファイリング”と良く似てるんですが、こだわっているのは”何故、この犯罪を起こしたのか”。まあ、徹底した”ホワイダニット(*4)”の人でしょうか。
 でも、本書の中で伏見もちらっと言ってますが、”犯行が行われて一番得をしたのは誰か?”、”この犯罪を行うだけのメリットがあるか?”という古典的なテーマを行動経済学だのゲームの理論(*4)だの持ってきて小難しく展開してんだよな~ 確かにこう言った犯罪を経済的なアプローチで理屈こねたのは新しいっちゃ新しいですが。でも分析結果から状況証拠を無視して犯人を決めつけてるんですが、いいんかい?!

 まあ、犯人探しという意味では二転三転あって推理小説としても面白いんですが、読後感としては”もしドラ(*6)”思い出しちゃいました。この本で行動経済学に興味を持たれた方は経済書の本も読んでみてください。そっちも面白いから。


《脚注》
(*1)認知バイアス
 意思決定に偏りを生じさせる要因となるもの。適切な情報を無視したり(事前確率無視)、不適切な情報に影響されたり(フレーミング効果)、重要ではないが突出した部分を課題に重視したり(アンカリング)など。ある程度のレベルで正解に近い解を短時間で得ることのできる”ヒューリスティクス”などもこれ。
 と書くと難しそうですが、要は先入観と偏見。”お前の意見は偏見だ!”と言うと喧嘩になりそうですが”君の意見には認知バイアスがかかっている”と言えば喧嘩にはならないかも。無理かなぁ
(*2)レンタルビデオショップでホラー映画や猟奇モノばかりを~
 こういうの見てると、そのうちamazonやyahoo!、google、Facebookなんかの情報をビック・データ解析して犯人捜査なんかやりそうだな~~ やってるかもしれんけど
(*3)俺の空 刑事編(本宮ひろ志 集英社)
   安田グループ総帥の御曹司にして頭脳明晰、剣道大会で優勝するスポーツマン、イケメンという完璧超人な”安田一平”を主人公とした漫画。でもなぜか刑事やってます。
 まあ、漫画版”富豪刑事”(筒井康隆 新潮文庫)といったとこです。
(*4)ホワイダニット
 推理小説のアプローチは大きく3つに分かれます。
  フーダニット (Whodunit = Who (had) done it):誰が犯人なのか
  ハウダニット (Howdunit = How (had) done it):どのように犯罪を成し遂げたのか
  ホワイダニット (Whydunit = Why (had) done it):なぜ犯行に至ったのか
一言で言うと、”犯人探し”、”トリック”、”動機”です
(*5)ゲームの理論
 フォン・ノイマンが体系化した”合理的な意思決定者間の紛争と協力の数理モデル
 本書の中では明示していませんが、得失点のマトリクスを作ってマクシマックス(maximax 最もうまくいった場合の利得が最大となる)、マクシミン(maximin 最悪の場合の利得が最大となる)なんてやるのはゲームの理論の考え方です。
(*6)もしドラ
 正式名称は”もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら”(岩崎夏海 ダイヤモンド社)。公立高校野球部のマネージャーみなみがドラッカーの経営書”マネジメント”を読んでチームを甲子園に出場させるという小説。
 話題になる前に読んでて”この本、売れるんかい?”と思ってたんですが、ダイヤモンド社初のミリオンセラーになったとか。

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