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2014年1月

この話の結末を知りたくないですか?(ビブリア古書堂の事件手帖5/ブラックジャック/ブラックジャック像)

 ども、ミステリーやSF分野が得意な古本屋(*1)とはな~んも関係ないおぢさん、たいちろ~です。
 やっと出ました”ビブリア古書堂の事件手帖5”! 発売日の1月24日にいそいそと本屋さんへ行ってさっそく購入、一気読みしました。今回ネタになっているのは古本屋さん向けの雑誌”彷書月刊”に寺山修司の”われに五月を”、そしてなんとあの手塚治虫の”ブラック・ジャック”! ”ビブリア古書堂の事件手帖”って、マンガでは2巻で足塚不二雄の”UTOPIA 最後の世界大戦”(*2)を扱ってますが、まさかブラック・ジャックが古書扱いされるとはね~~
 ということで、今回ご紹介するのは”ビブリア古書堂の事件手帖5”より、ブラック・ジャックのネタであります。


Photo_2
写真はたいちろ~さんの撮影。ブラックジャック像です。


【本】ビブリア古書堂の事件手帖5(三上延 メディアワークス文庫)
 就職浪人の五浦大輔は、亡くなった祖母の夏目漱石の本が縁での篠川栞子の経営する古本屋”ビブリア古書堂”でアルバイトをすることになった。栞子は極度の人見知りながらで古書については超絶的な博識を持つ美女。その知識でさまざまな謎を解明していく。
 5巻は4巻に引き続き栞子さんと栞子さんに輪をかけた本の読み手”智恵子お母さん”との確執のお話です。
 2013年に剛力彩芽主演でTVドラマ化されました。
【本】ブラック・ジャック(手塚治虫 秋田書店)
 天才的な技術を持ちながら無免許、高額な手術料を要求する孤高の医師”ブラック・ジャック”を主人公とする手塚治虫の代表作の一つ。
 ”鉄腕アトム”もそうですが、このマンガを読んで医師を志した人がいるぐらい影響力のあるマンガです。
【旅行】ブラックジャック像
 宝塚の”手塚治虫記念館”(*3)にありましたが、あんまり似てないなぁ・・・
 手塚治虫の描く曲線美ってピカソに匹敵する美しさと思っていますが、やっぱり再現するのは難しいんでしょうか・・・


 なんかで読みましたが、手塚治虫は完成した原稿に手を入れる人だったそうで、雑誌の連載時と単行本、単行本でもいくつかのバージョンが存在するとのこと。しかし、ネタバレになりますが単行本に収録されてる作品を入れ替えてるとは思わんかったな~~ ってのも”ビブリア古書堂の事件手帖”で推理のキーになっているのが単行本第4巻に収録された”植物人間”というお話、なぜ依頼人が複数の第4巻を持っているか(*4)、なぜ奥さんが危篤状態だったにも関わらず旦那さんが古本屋に寄ったのかの謎の答えがこの”植物人間”にあります。

 ”植物人間”は、行き違いでブラック・ジャックの治療が遅れて植物人間になってしまい、その息子の脳髄と彼女の脳髄とを電極で接続するという話。どうも脳手術ってのがいろいろと問題がらしく(らしくとしかわからないんですが)、この話って単行本の途中の版数から別の話に差し替えたんだそうです。
 実はこの話、読んだことあります。ブラック・ジャックはリアルタイムで読んでた世代なんですが(*5)、”植物人間”はけっこう印象に残っている作品。ちょうどユリ・ゲラー(*6)が来日するなどサイコキネシスだテレパシーだと超能力ブームのころ。それでなくても超能力に憧れる時期。まあ自分にそんな力がないことは分かってましたが、脳と脳を電線につなげばテレパシーっぽいことができるって科学的だかないんだかわからない設定がみょ~に説得力ありましたねぇ。

 さて、ビブリア古書堂のエピソードで気になったのがこのフレーズ。ファンの会報の投稿欄に載ってた記事で

  横浜のすみっこに住んでる「BJ」の大大大ファンどぇす。
  やっと単行本を集めおわって、親に隠れてよんでます。

 これを受けて

  俺にもやっと理解できた。
  ファンクラブの会報で「相田美香」は文通の相手を募集していた。

とワトスン役の大輔君はコメントします。
 おおっ、文通! SNSまっさかりでLINEでは5秒以内に返事しないとハブられる今の若い人にはピンとこないかもしれませんが、昔は雑誌で募集して手書きのお手紙をやりとりするってのが普通だったんですね~~ そりゃ、スマホどころかパソコンすらなかった時代ですから。”日ペンの美子ちゃん(*7)”が流行るはずです。

 で、気になったってのは”親に隠れてよんでます”の一言。マンガって今やクールジャパンの中核で、ルーブル美術館で手塚治虫のアニメが上映される昨今(*8)、あんましピンとこないかもしれませんが、当時はまだ”悪書追放運動”という名の漫画バッシングだったのが普通だった時代、マンガを集めたり読んだりするのって”悪いこと”って感覚がまだあったんですね。だからこんな発言になるわけです。今やヒューマニズムの作家と思われている手塚治虫にしてもそのやり玉にあがってるぐらいですし。もっとも”ブラックジャック”も初期の単行本では”恐怖コミックス”って表紙に書いてあるぐらいだから作り手もそういう意識だったのかもしれませんが(後半では”ヒューマンコミックス”に変更)
 まあ、そんなこんなを考えると、”ブラックジャック”も古書扱いされてもしょうがないのかなぁ・・・

 本書の中で、栞子さんが

   

この話の結末を知りたくないですか?

 本書では書いていませんが、少年は母と心を通わせ母を直すために医師を志すというものです(”ブラックジャック訳あり未収録作品”のhpで見ることができます)
 この作品は上記のように単行本未収録となっていますので入手が難しそうですが、”栞子さんの本棚”(角川文庫)という絶版も含めた本書に出てきた話を集めた本も出てるぐらいなんで、復刻してくんないかな~とおぢさん世代は思うのであります。

《脚注》
(*1)ミステリーやSF分野が得意な古本屋
 ビブリア古書堂と確執のあるヒトリ書房店主”井上太一郎”さんのこと。
 TV版では佐野史郎が怪演してました。
(*2)足塚不二雄の”UTOPIA 最後の世界大戦”
 足塚不二雄は”藤子不二雄”のペンネーム。本書の発刊は1958年だそうですので古書扱いされるのはわかりますが・・・
 ちなみに、2011年に本書の完全復刻版が小学館から発刊されましたが、本屋で見つけた時は”小学館もよ~やる!”と思っちゃいましたね。ビブリアがなければなかった企画だと思います。
(*3)手塚治虫記念館
 手塚治虫が少年~青年時代を過ごした宝塚市にある記念館。JR/阪急宝塚駅から花のみちを通り宝塚大劇場を抜けた先にあります。ユニバもいいけど大阪に来られた際はこちらもぜひどうぞ。(HPはこちらから)
(*4)依頼人が複数の第4巻を持っているか
 最近のヲタの人は”実用、保存用、布教用”と3冊本を買うってネタがありますが、今回の理由はそれじゃありません。ちなみに私は単身赴任中ですので”自宅用、単身赴任先用”と2冊持ってるのも何冊かあります、はい。
(*5)ブラック・ジャックはリアルタイムで読んでた世代なんですが
 ブラック・ジャックが少年チャンピオンに掲載されていたのは1973年~78年(以後不定期掲載)。ですんで、ちょうど中学生~高校生ぐらいの時だったでしょうか。頭悪かったんで医者を目指すことはなかったですが・・・
 ”植物人間”は雑誌掲載が1974年9月23日号ですんで、たぶん中学校ぐらいで読んでます。
(*6)ユリ・ゲラー
 超能力でスプーンを曲げるという超能力者。1974年に来日し超能力ブームの火付け役になりました。ご年配の方ならカレースプーン擦りながら”曲っが~れ!”なんてやったことあるはず。
 ”ポケットモンスター”に出てくる”ねんりきポケモン ユンゲラー”のモトネタがこれですが、ポケモン世代の子供たちにはわからんと思うぞ~~
(*7)日ペンの美子ちゃん(にっペンのみこちゃん)
 ボールペン習字通信講座を紹介する1ページマンガのイメージキャラクターで、当時の少女漫画雑誌の裏表紙には必ず載ってました。おそらく掲載された雑誌数では手塚治虫をしのぐぶっちぎりの第一位ではないかと。
 手書きしかなかった時代、美しい字が書けるってのは美少女の必須要件でしたので、けっこう流行ってたんでしょうね、”テキストはバインダー式よ!”とか。
 ある世代のお嬢様方には受けるネタです。年齢を突っ込まなければですが・・・
(*8)ルーブル美術館で手塚治虫のアニメが上映される昨今
 アニメ映画「BUDDHA2 手塚治虫のブッダ-終わりなき旅-」(2月8日公開、小村敏明監督)のワールドプレミアが、ルーブル美術館で行われた。世界遺産にも登録されている同美術館で、映画の新作が上映されるのは史上初。(nikkannsports.comより)


まあ人間、竹を割ったようにスパっとはいかな不合理な存在のようで。(ずる/竹)

 ども、人生をごまかしごまかし生きているおぢさん、たいちろ~です。
 ほとんど勉強はしませんでしたが、いちおう経済学部の卒業です。だからというわけではないんですが、最近”行動経済学”というのが気に入ってます。これは簡単に言うと”人は経済人(経済的合理性のみに基づいて個人主義的に行動する人)ではなく、もっと不合理でいいかげんに行動する”という考え方に基づいて経済を考えるって学問です。
 まあ、私が学問した時代(マルクス経済学か近代経済学か(*1))から見れば根性曲がりと言えなくもないですが、面白いんだな~これが。ダン・アリエリーの”予想どおりに不合理(*2)”なんてはまりましたね。この人の出した新刊があったので読んでみました。ということで今回は”ずる”のご紹介であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。偕楽園の孟宗竹です。

0405


【本】ずる(ダン・アリエリー、 早川書房)
 サブタイトルに”嘘とごまかしの行動経済学”とあるように、人はどんな時に嘘やごまかしをするのかというのを、報酬を貰えるアルバイトをエサに数々の実験をして確かめた本。この人は”高価な偽薬は安価な偽薬よりも効力が高い”ことを証明してイグノーベル賞(*3)(なぜか医学賞)を貰った人でもあります。
【花】
 イネ目イネ科タケ亜科のうち、茎が木質化する種の総称。繊維が縦に走っているのでまっすぐ割りやすいため、気性がまっすぐで,悪いことのできない性格のことを”竹を割ったような性格”といいます。


 本書の論旨を簡単にまとめると、人は
  ごまかしをして利益を得たい    = 合理的、経済的な動機付け
  自分を素晴らしい人間だと思いたい = 心理的な動機付け

の二つがあって、この矛盾する目的を達成するためにつじつま合わせをする(つじつま合わせ仮説)。なんでちょっとだけ”ずる”をしても自分を誤魔化しちゃう。まあ、銀行強盗はしないけど、おつりが多めに渡されても”まっ、いいかこんぐらい”と思って貰っちゃうっていうようなことです。

 まあ、感覚的には”そ~だろ~な~”ってとこですが、ダン・アリエリーはこれらを実験によって証明しています。まあ、人が悪い実験っちゃ実験ですが。これらの実験によって分かったことで印象的なのをあげると(*4)

〔”ずる”を抑制する要素〕
  あまり親しくない人の監視
  道徳的・宗教的戒め(ただし短期的)
〔ほとんど影響のないもの〕
  不正から得られる金額
  捕まる確率
  文化的、国家の違い
  知能(問題解決能力、知覚能力、一般常識)
〔”ずる”を増長する(抑制しない)要素〕
  まわりの人もやっている、”ずる”は感染する
  自分に対する”嘘”はいつのまにか本当にそうだと思いこむ
  ニセモノを身につける
  親しい人の監視(まあ、なれあいになるって感じ)
  創造性

 ”不正から得られる金額”なんてのは捕まる確率が同じなら、合理的に考えると”大金をがっぽり手に入れる”=経済的効用の最大化を図りそうなモンですが、”オレはそんなに悪い奴じゃない”=心理的な動機付けにより金額が大きくなったらかえってそんなことしないらしいです。まあ、言ってみれば”ビビる”ってことでしょうか。ほかにもそうだろうと思うものも意外だと思うものもおありでしょう。

 この中でもっとも興味深かったのが”創造性の高い人は誤魔化しをしやすい”ってとこです。これはどういうことかというと、創造性の高い人は言い訳=自分を正当化する物語を作りやすいからだそうです。
 ちょっと長くなりますが、本書から引用すると

  創造性は、厄介な問題を解決する斬新な方法を生み出す助けになるのと同じように
  規制をかいくぐる独創的な方法を生み出し、
  情報を自分勝手な方法で解釈し直す助けにもなる
  独創的思考をはたらかせることで、欲張りな願望をかなえる口実を思いついたり
  自分が悪漢ではなくいつも英雄であるような物語を創作することができる
  もし不正へのカギが、ごまかしから利益を得ながら、
  自分を正直で道徳的だと考える能力にあるのだとすれば、
  わたしたちは独創性のおかげてもっと「よい」物語を
  --もっと不正なことをしても、自分をすばらしく正直な人物だと思い続けるのに
  役に立つような物語を--紡ぎだすことができるのだ。

 自分が独創的だと思っている人には頭に来るような話かもしれませんが、かつての堀江貴文村上世彰なんかを思い出してもらえれば分かりやすいかも。元ライブドアの社長だった堀江貴文という人は、ニッポン放送を買収してその子会社のフジテレビとライブドアとの”テレビとウェブの融合を図る”とか、野球球団を買収してコンテンツ化するとか(*5)いろいろ独創的なことやってるんですね。規制業種の代表みたいなテレビ局を買収し、既得権益の塊みたいなプロ野球界に殴りこみかけるとかできる”独創的”な人だってのは否定できないんじゃないかと。
 村上世彰は”村上ファンド”を創設した人で、株の持ち合いが中心で経営関与に消極的な一般の株主と違い、経営者に対して積極的にアプローチするという、まあ日本人離れした”もの言う株主”として当時としては独創的な存在。二人とも時代の寵児から一転ヒール(悪役)になっちゃいましたが、ある時期は”独創的な日本人”を代表する人だったと思います。
 二人がどれだけ(結果として)”不正”(と判断されるような行為)を働いたという認識があったかどうかは分かりませんが、少なくとも絶頂期には日本中が二人の紡ぎだす”物語”に酔ったからこそ時代の寵児になりえたんではないかと。そういう意味では”独創性=物語の構成力”ってのはダン・アリエリーの言うようにもろ刃の剣なのかもしれませんね。

 本書の結論としては”たいていの人は普通の経済理論が予測するよりは道徳的。ただしまったく”ずる”をしないほど正直でもない(*6)”というもの。まあ人間、竹を割ったようにスパっとはいかな不合理な存在のようで。

 ところでこの本の原題ですが

  THE (HONEST) TRUTH ABOUT DISHONESTY
    HOW WE LIE TO EVERYONE
   - ESPECIALLY OURSELVES

  不正に関する(正直な)真実 
  我々はどのようにすべての人、特に自分自身に対して、嘘をつくのか

といったもの。大体原題は説明的なので邦題に訳す時にヘンにひねったりして元々のテイストが無くなっちゃうのが多いんですが、この”ずる”ってのは秀逸。まさに内容を一言で表した題名です。ぜひご一読のほどを。


《脚注》
(*1)マルクス経済学か近代経済学か
 マルクス経済学は、カール・マルクスによって提唱された経済理論で社会主義国家のイデオロギーの根幹。通称”マル経”。近代経済学はこれに対し資本主義国家の経済理論。通称”近経”。ゼミなんかを選ぶ時には”マル経か近経か”なんつー選択肢でしたが、最近でもやってんでしょうか?
(*2)予想どおりに不合理 増補版(ダン・アリエリー 早川書房)
 サブタイトルは”行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」”。
 人がいかにい~かげんにモノゴトを決めているかがよくわかります。詳しくはこちらをどうぞ。
(*3)イグノーベル賞
 人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究に対して与えられる賞(wikipediaより)。好きですね~、こういったシャレの効いたの。
 2013年には帝京大学の新見正則准教授が”心臓移植をしたマウスにオペラの「椿姫」を聴かせたところ、モーツァルトなどの音楽を聴かせたマウスよりも拒絶反応が抑えられ生存期間が延びた”という功績で医学賞を受賞した時にネズミの格好をした学生を連れてきたことで話題になりました(映像はこちらから)
(*4)印象的なのをあげると
 卒業論文を書いてる訳ではないので全項目を網羅する必要はないんですが、適当に読んでてモレがあるのを”印象的”って言葉で誤魔化してます、はい。
(*5)野球球団を買収してコンテンツ化するとか
 当時経営難だったオリックスを買収しようとして失敗、このことを契機として誕生したのが”東北楽天ゴールデンイーグルス”。設立は2004年とたった10年前のできごとですが、楽天優勝で大騒ぎしてる人のほとんどは忘れてるんだろ~な~、そんなこと
(*6)まったく”ずる”をしないほど正直でもない
 ダン・アリエリーが数千人を対象にした実験の費用のうち、犯罪的にごまかしをした人分の損実総額が数百ドルだったのに対し、ちょっとだけ”ずる”をした人のそれは数千、数万ドルになったとのこと。これは一人一人の”ずる”分は少額だけどあまりに人数が多いんでこうなったんだとか。まあ、それはそれで問題っちゃ問題なんですが・・・

Q:欲しい物は何ですか? A:過去を消せる消しゴム(塗仏の宴 宴の支度/塗仏の宴 宴の始末/5円玉を糸で吊ったの)

 ども、人生=黒歴史(*1)なおぢさん、たいちろ~です。
 世の中ではオウム真理教”平田信被告”の裁判員裁判が話題になっています。平田被告が関与したとされる”仮谷清志さん拉致事件”や”地下鉄サリン事件”などが発生したのが1995年。奇しくも阪神淡路大震災が起こった年でもあり、20世紀末の最も暗い年であったような気がします。
 でも、この事件の最大の謎は本来は人を救済するはずの宗教団体が暴走のはてに大量殺人に走ったかということ。ということで、今回ご紹介するのはそんなテーマを扱った百鬼夜行シリーズの第6作”塗仏の宴”であります。
(ネタバレありますので、できれば本書を読んでからどうぞ)


写真はたいちろ~さんの撮影。5円玉を糸で吊ったのです。

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【本】塗仏の宴 宴の支度(京極夏彦、講談社文庫)
 作家 関口巽の元に元警察官の光保公平が訪れる。かれはかつて勤務していた韮山の”戸人村(へびとむら)”が存在しなくなっているのでそれを調査して欲しいと依頼する。その村で起こった”大量殺人事件”もなかったことにされている謎とは・・
(ぬっぺっぽう)
【本】塗仏の宴 宴の始末(京極夏彦、講談社文庫)
 宗教団体、徐福の研究者、武道家集団、占い師。事件にかかわる人々は存在しないはずの”戸人村”に向かう。妹の中禅寺敦子は誘拐され、友人の関口巽は逮捕され、刑事の木場修太郎は行方不明。そんな中憑物落としの”京極堂”こと中禅寺秋彦もまた事件の解決のために戸人村へ向かう。自分の黒歴史と対峙するために・・・
【道具】5円玉を糸で吊ったの
 いわゆるダウジング(占い?)で使う”ペンデュラム”というやつです。
 昔の催眠術の表現というと、この5円玉を振り子のようにゆらゆら揺らして目で追っかけさせると催眠術にかかるってのがありましたね、効くかどうかはしらんけど。


 この小説の事件の背景になっている事件がひとつ。それが1938年に発生した”津山三十人殺し”といわれる大量殺人事件です。犯人は祖母の首を斧ではね、近所の人々を次々と改造猟銃と日本刀で殺害たという、犠牲者数がオウム真理教事件の27名をしのぐ30名という大事件でした。(wikipediaより)。この事件は横溝正史の”八つ墓村(*2)”のモデルとなった作品でもあるので、ご年配のミステリーマニアならご存知かと。

 で、今回のお題はこのような事件を人為的に起こさせることができるかどうかということです。これがまあできちゃったというか犯人にやっちゃったと思わせることができてるんですね、これが。いわゆるマインド・コントロールというやつです。
 ”塗仏の宴”ではこのテクニックが満載! 催眠術に始まって薬物は出るわ、気功は出るわ、宗教的ななんだかが出るわ、音響操作(*3)は出てくるわと。これら自体が悪いってわけではないんですが、悪用すればやりたい放題ってことです。

 この作品の犯人の一人に出てくるのが超絶的テクニックを持つ催眠術師。この人は5円玉を糸で吊ったのをぶらぶらさせたりしないですが(やったら一発で怪しまれますが)、会話の中で術中に落としてまうというスゴイ人です。どこまでスゴイかというと過去改変までやっちゃうんですね。”百鬼夜行シリーズ”の根底に流れる考え方ってのに”現実は脳が認識するもの”つーのがありまして、言い換えると”脳が現実だと認識したものが現実になる”ということです。なので、たとえそれが事実でなくても脳が”現実”だと思えばそれが現実になる。
 子供(隆之)との辛い過去が明るみにでて苦悩する親に対して”過去を変えられる”という催眠術師の甘言に乗って記憶を操作された妻と、乗らなかった旦那(貫一)の話がでてきますが、その旦那のモノローグから。

  あの○○によって妻の歴史から貫一の記憶は抹消されるのだ
  そして妻の歴史は、隆之と二人切りの甘っ怠るい思い出で、満々と満たされるのだろう
  貫一は眼を閉じる
  慥かに、真実は人の数だけあるのだろう。
  ならばその時、妻にとってそれが真実になるのだ。
  でも、貫一の事実は違う。
  貫一にとって、仮令壊れてしまっていても永遠に妻は妻のままだし、息子は息子なのだ。
  貫一にとってそれは事実だ。

 まあ、個人の記憶を改ざんしてその人が幸せになっても、まわりの人間が幸せになるとは限んないということでしょうか。本書の中では記憶が正しいかどうかわからなければ依って立つ価値判断もできなくなるという話も出てきますが、逆にいうと過去改変ができれば人の判断をかなり操作できるってことでしょうか。実際本書ではいいように操られる人が出てきますし。

 で、この”宴”を画策したのがかつて戦時中に京極堂もやらされていた”他国の民族に対する宗教的洗脳の研究”プロジェクトの面々。ナチス・ドイツのオカルトへの傾倒なんってのもありましたので、なんとなく”ありそ~”って思っちゃう話です。
 かつてカール・マルクスが”宗教は民衆のアヘンである(*4)”てなことを言ってますが、ようは現実が苦しいからと言って、神頼みだとか怪しげな技に頼ったりするんはアヘンでラリって現実を見ないという”現実逃避”以外の何物でもないのかもね。

 ”塗仏の宴”って2冊合わせて2000ページを超える本なので(*5)、ネタを書き出すといっぱいあるんですが、今回はこのへんで。
 ところでこの本、過去の”百鬼夜行シリーズ”の登場人物が再登場。”できれば本書を読んでからどうぞ”と書きましたがこの全シリーズを読んどいた方が面白いかも。ただ、各巻1000ページ程度の本ですから、けっこう気合要ります。京極堂に洗脳されたい方はぜひどうぞ。


《脚注》
(*1)黒歴史
 人には言えない過去の恥ずかしい言動(デジタル大辞泉)
 まあ、”無かったことにしたい事”です。モトネタは”∀ガンダム”(総監督 富野由悠季、サンライズ)だそうです。ちなみにこの作品のノベライゼーション(”月に繭 地には果実” 幻冬舎文庫)を福井晴敏が担当。
(*2)八つ墓村(横溝正史 角川文庫)
 戦国時代、8人の落武者たちをだまし討ちにして呪われた”八つ墓村”。
 大正時代、八つ墓村で田治見家当主の要蔵が発狂し、村人32人を惨殺事件が発生。
 昭和、要蔵の子孫である寺田辰也が八つ墓村に帰郷すると、次々と殺人事件が発生する・・
 名探偵金田一耕助シリーズ長編第4作。詳しくは次回で。
(*3)音響操作
 本書の中では無意識のうちにいらいらした気分にさせるといった使い方をしています。まあ”環境音楽”をネガティブにして超強力にしたようなモンだと思ってください。
(*4)宗教は民衆のアヘンである
 宗教上の不幸は、一つには現実の不幸の表現であり、
 一つには現実の不幸にたいする抗議である。
 宗教は、なやめるもののため息であり、
 心なき世界の心情であるとともに精神なき状態の精神である。
 それは民衆のアヘンである

  ”ヘーゲル法哲学批判・序説”より。詳しくは”しんぶん赤旗”でどうぞ。
(*5)2冊合わせて2000ページを超える本なので
 上巻の”塗仏の宴 宴の支度”は6つの短編の構成で1ケ平均160ページ。次に読もうと思っている福井晴敏の”人類資金”(講談社文庫)は1冊200ページ前後ですから、読むのも大変です。

なぜ中年のオッサンが特撮モノに出たがるのだ?!(真田志郎/仮面ライダースカル/仮面ライダーソーサラー/デカスワン)

 ども、50歳過ぎてていまだに特撮モノを観ちゃってるおぢさん、たいちろ~です。
 日曜日の朝っぱらからすることもないので”獣電戦隊キョウリュウジャー(*1)”なんぞ観てましたらなんと主人公の親父役で出てた山下真司がキョウリュウシルバーつ~スーパー戦隊のコスチュームに変身! さすがにサンバのダンスはきついのかエレキギターのサウンドで! あの”食いしん坊! 万才(*2)”の親父がねぇ・・
 なんでも山下真司は62歳で史上最年長の戦隊ヒーローなんだそうです。
  Photo_2
 そういえば、藤岡弘が新作の映画で38年ぶりに本郷猛として仮面ライダー1号に変身するってテレビのニュースでたってたし(*3)。藤岡弘ってもう御年67歳。普通のサラリーマンならとっくに引退してる年ですから、まあお元気なことで。
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 どうも、最近おっさん世代が特撮モノによくでてるんじゃね~かな~という気がしてたんでちょっと思い出してみました。


【真田志郎 = 柳葉敏郎】”SPACE Battleship ヤマト”に登場
  Sanada
  ”宇宙戦艦ヤマト”の実写版でヤマト技術班班長(技師長)を演じたのが柳葉敏郎。
 実は今回のネタで一番最初に思い出したのがこの人。柳葉敏郎ってなんだか苦虫かみつぶしたような難しそうなおっさんってイメージあったんですが、実写版公開直前にやってたTVの特番で真田志郎役をやるにあたって満面の笑みを浮かべてインタビューに応えてました。この人ってこんな嬉しそうな顔できるのかぁってとっても印象深かったです。


【仮面ライダースカル = 鳴海荘吉 = 吉川晃司】”仮面ライダーW ビギンズナイト”に登場
  Kikkawa
 ”仮面ライダーW”って特撮モノとしてもそうですが、ミステリーマニアにはすんごい面白かったんですね、けっこうミステリーのモノネタをひねってたりして。で、ハードボイルドな探偵の主人公の師匠が吉川晃司演じるやたらと渋い”おやっさん”こと鳴海荘吉。仮面ライダースカルに変身。
 でも、あの”吉川晃司”がねぇ・・ ”吉川晃司”って”すかんぴんウォーク(*4)”で意味もなく海を泳いでるに~ちゃんって印象しかなかったんですが。なんでこんな映画を観てたかというとこの映画と同時上映されてたのが”うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー”(原作 高橋留美子、監督 押井守)だったから。当時、映画は2回観るものだったので、同時上映されると興味あるなしにかかわらず観るしかなかったんですね~~ でも、ファン層の全く違う作品を同時上映にしたのかはいまだにナゾです。
 余談ですが、この年(1984年)(*5)はアニメ、特撮の当たり年でアニメだと”風の谷のナウシカ”(監督 宮崎駿)、”超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか”(監督 石黒昇、河森正治)、TV版”北斗の拳”(原作 武論尊、原哲夫)、特撮だと”さよならジュピター”(原作 小松左京)、”インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説”(監督 スティーヴン・スピルバーグ、主演 ハリソン・フォード)、”ゴーストバスターズ”(主演 ビル・マーレイ、ダン・エイクロイド)などなど。こうやって並べると、けっこうオールディズだなぁ・・・


【仮面ライダーソーサラー = オーマ大臣 = 陣内孝則】
 ”仮面ライダーウィザード in Magic Land”に登場。

  Jinnai  
 陣内孝則演じるオーマ大臣はヘタレのマヤ王子(ファンの方、すいません)をいいように操つる悪役。インタビューで”いずれはライダーと戦わなければならないと思っていた”とまあ、こっちもノリノリみたいです。上記の復帰した藤岡弘を除けば史上最年長の54歳(*6)。
 この人も最近でこそおっさん役やってますが、昔は婚約者が沢口靖子で結婚のドタバタを描いた”結婚物語”(1988~89年 日本テレビ)でダンナさまのま~さんだったんだよな~。原作者の新井素子が先日続編の”銀婚式物語”を出版しましたが、みんな年とるはずです。


【デカスワン = 白鳥スワン = 石野真子】”特捜戦隊デカレンジャー”に登場
  Photo_5
 今回のネタでは紅一点。元アイドルの石野真子。最初にこの番組に出てるの観た時にはけっこう驚きましたねぇ。”あなたも狼に変わりますか♪”とか歌ってましたが、本人がデカスワンに変わっちゃいました

 まあ、つらつら眺めて見ましたがやっぱし増えてるような気がするんだよな~
 なんでだろうと考えてみたんですが、こんな感じでしょうか?

1.演じる側がけっこうノリノリ
 今回登場した6名を年齢順に並べて見ると
  藤岡弘 :67歳
  山下真司:62歳
  陣内孝則:54歳
  柳葉敏郎:53歳
  石野真子:推定50数歳
  吉川晃司:48歳

   (2014年1月現在 wikipediaより)
 本人が演じた藤岡弘は別として、みんな仮面ライダーとか観てた世代なんだな~(山下真司も二十歳ぐらいだから、観てたんじゃないかと)。まあ、自分が子供の頃に観てたヒーローモノに出演できるとなれば、そりゃノリノリで出るわな~~
 番組の監督なんかもいま40代~50代の人が多いんで、オファーも出しやすいんだろうしね。

2.観ているお父さんお母さんがけっこうウキウキ
 ”仮面ライダークウガ”のオリダギリジョーを始め、”あまちゃん”でブレイクした福士蒼汰が”仮面ライダーフォーゼ”の主人公のリーゼントのに~ちゃんだったり、おばあちゃん子の”仮面ライダーカブト”の主人公が仮面ライダーが水嶋ヒロだったりと、今や特撮モノはスターへの登竜門
 まあ、お母さんたちがきゃ~きゃ~言って観てるんでしょうが、こうなってくると作り手側だってワキを固めるのに若い人だけじゃなくちょいと渋い目の中年も出しとこかってなりそうなもの。ましてや、お母さん達が若いころに観たトレンディドラマ(死語)のイケメンやアイドルなんかもでんでんOKではないかと。

3.2世モノがけっこうウケウケ
 最近、結構2世モノってのがはやりです。観ている側が2世代にわたってるんだから長期化するコンテンツに”次の世代の物語”っぽいのが出てきそうなのはありでしょうね。
 山下真司は主人公のモロ父親。吉川晃司は”おやっさん”と呼ばれてるし、陣内孝則は王子の後見人(=父親代わり)という位置づけっぽいので、こういった疑似的な親子関係も入れると”2世モノ”の流れではないかと。主人公がなまじスター予備軍なだけに父親役を出すにもそれなりのをひっっぱって来ないとカッコつかないんじゃないかと・・

 まあ、”あまちゃん”で小泉今日子薬師丸ひろ子が再ブレイクする時代だから、特撮モノがきっかけで再ブレイクするアイドルもいっぱい出てくるんじゃないかと。
 でも、どんどん変身ヒーローが高齢化してくるなぁ そのうち千葉真一が”仮面ライダーJAC”とかで出てきたりして・・・(*7)

《脚注》
(*1)獣電戦隊キョウリュウジャー
 テレビ朝日系列で放送中の”スーパー戦隊シリーズ”の第37作目の作品。第一作の”秘密戦隊ゴレンジャー”が1975年の放映開始なので、もう40年近くやてんだな~このシリーズ。
(*2)食いしん坊! 万才
 1974年からフジテレビで放送されている料理レポート番組。山下真司が1994年から97年までを担当。こっちも40年近くやてんだな。
(*3)本郷猛として仮面ライダー1号に変身~
 ”仮面ライダーシリーズ”の第一作が放映されたのは1971年とこっちは40年以上前。50過ぎのおぢさんがまだ小学校の頃だですから。
 変身シーンは2014年3月公開の”平成ライダーVS昭和ライダー”で登場予定。
(*4)すかんぴんウォーク
 監督 大森一樹、主演 吉川晃司で1984年に公開された青春映画。ストーリーはまったく覚えてません、はい。
(*5)この年(1984年)
 ロサンゼルスオリンピックが開催されて、インディラ・ガンジーが暗殺されて、ソ連のアンドロポフ書記長が亡くなって福澤諭吉の1万円札が発行されて、アップルコンピュータのマッキントッシュタカラ缶チューハイが発売された年です。また、ジョージ・オーウェルの小説”1984年”みたいにならなくて良かったね~というのがSFファンのお約束の年でした。
(*6)史上最年長の54歳
 ライダーフォームに変身したというだけなら、同じ映画に登場した小倉久寛のほうが上だと思うんですが(御年59歳)。まあ、話題性の違いですかねぇ。エンドロールでは変身ポーズなんかやってます。
(*7)千葉真一が”仮面ライダーJAC”~
 千葉真一は往年のアクションスター。御年74歳。子供の頃”キイハンター”(1968~73年 TBS)とか観てたなぁ。”JAC”は千葉真一が創設した”ジャパンアクションクラブ”の略称から。ちなみに”帰ってきたウルトラマン”の名前が”ウルトラマンジャック”なので、これはないか・・・

ぜひ”カーンの逆襲”も合わせてご覧ください!(スター・トレック イントゥ・ダークネス/カーンの逆襲/DNA)

 ども、50歳過ぎてもいまだにトレッキーなおぢさん、たいちろ~です。
 いや~、待ってました”スター・トレック イントゥ・ダークネス”! J・J・エイブラムス監督版の第2作目スタトレってことで期待大!! 前作に引き続きヤングカークにクリス・パイン、ヤングスポックにザカリー・クイントということで、さっそくDVD借りてきて視聴。そ~すると、なんとキャロル・マーカス博士が登場(*1)、ひょっとしてこれはカーンネタか?!
 ということで、今回ご紹介するのはスター・トレックシリーズの最新作”イントゥ・ダークネス”であります。
(ネタバレ含みますので、DVD観てからどうぞ)


写真はたいちろ~さんの撮影。日本未来館にあったヒトのDNA(顕微鏡写真)です
Dna


【DVD】スター・トレック イントゥ・ダークネス
 (監督 J.J.エイブラムス、主演 クリス・パイン、ザッカリー・クイント)
 宇宙歴2259年。発生ケルヴィン記念記録保管庫が何者かの手によって爆破された。そこは実は宇宙艦隊の秘密兵器開発施設で、爆破の犯人はジョン・ハリソン中佐。艦隊司令部を襲撃した彼はクリンゴン帝国の本星クロノスに逃亡する。
 追跡してきたエンタープライズのカークに投降した彼だが、そこで驚愕の事実を告白する・・・
【DVD】スター・トレックⅡ カーンの逆襲
 (監督 ニコラス・メイヤー、主演 ウィリアム・シャトナー、レナード・ニモイ)
 かつてエンタープライズ号の乗っ取りを図り、セティ・アルファ5に置き去りにされた元地球の帝王だったカーン。彼は調査に来ていたリライアント号を奪取し、さらに“ジェネシス”と呼ばれる惑星改造システムを兵器を強奪する。
 カークへの復讐に燃えるカーンはさらにエンタープライズへの攻撃を仕掛ける・・
【生物】DNA(染色体)
 遺伝子は生物の遺伝情報を担う主要因子であると考えられている。全ての生物でDNA(デオキシリボ核酸)を媒体として、その塩基配列にコードされている。(wikipediaより)。遺伝子操作はこのDNAを切ったりつないだりするものみたいです。


しかしまあ、エンタープライズがヤマトよろしく海から飛び出すわ(*2)、スポックとウフーラが痴話喧嘩をするわロボコップが提督してるわ(*3)、となかなかおちゃめなシーン満載な”イントゥ・ダークネス”です。
 で、今回のサプライズはテロの犯人”ジョン・ハリソン中佐”が”カーン”だってこと。まさに”カーンの逆襲”ネタではないか!! ”カーンの逆襲”ではバーバリアンっぽい感じの”カーン”でしたが”イントゥ・ダークネス”では紳士然としたクールなイケメン。同じ設定とは思いませんでしたね~~
 ”カーン”は遺伝子操作によって生まれた優生人類(*4)。300年前の技術ですが、以後に同様のキャラクターが出てこないところを見ると、この世界ではけっこうヤバい技術のようです。現実では写真のように顕微鏡レベルで切ったりつないだりとかスーパーコンピューターでのゲノム解析だとハイテク技術ですが、この世界だと量子レベルで人間を分解・再構成できる”転送装置”があるんだからやる気になりゃ簡単にできそうなんですが・・・
 ちなみに、wikipediaの記載によるとエンタープライズの就航が2258年ですので、ボーンズの”300歳”という言葉が正しいなら1960年ごろにはカーンは誕生していたことになります。カーンが”当時の戦乱の世を導くために生まれた”って言ってますが、これって冷戦(*5)のことでしょうか?

 さて、この映画の最大の見どころの一つはエンタープライズのパワーを回復させるために機関室でコアを修復させるところ。ここって、”イントゥ・ダークネス”は”カーンの逆襲”の鏡像になってるんですね、カークとスポックが。修復が終わってガラス越しに手を合わせるシーン。”イントゥ・ダークネス”での瀕死のカークとスポックの言葉

  カーク :俺も、お前ならこうしただろう。唯一論理的だ。
       俺は怖いよ、スポック、どうすればいい?
       どうすれば何も感じない?
  スポック:いや、分からない、今は私にもできない。
  カーク :俺がなぜ火山でお前を見捨てられなかったか、なぜ戻ったかわかるか?
  スポック:君が友人だからだ

 これが”カーンの逆襲”ではコアを修復したのがスポックで、彼をみとったのがカーク。その時のスポックの言葉

  スポック:悲しまないで、ください、論理にしたがったのです
       (中略)
       たとえ死んでも、私は永遠にあなたの友人です
       あなたに長寿と繁栄を

泣かせる名シーンです。
 ”イントゥ・ダークネス”ではこのあと”カーン”と絶叫しますが、これは”カーンの逆襲”ではカーンによって地下洞窟に置き去りにされたカーク提督の叫びを彷彿とさせます。

  ”スター・トレック”の新シリーズって、けっこう旧シリーズの世界観をうまく引き継いでいるんで、これを機会に若いぜひ昔の映画版も見て欲しいもの。特に”カーンの逆襲”は単独で見ても面白いので、ぜひ両方ともご覧いただきたいものです。

《脚注》
(*1)キャロル・マーカス博士が登場
 キャロル・マーカス博士は”スタートレックⅡ カーンの逆襲”に登場したカークの元恋人でカークの息子を生んだ人。ちなみに、彼女が友達と言ってる”クリスティン・チャペル”はTV版のオリジナルシリーズに出てくるエンタープライズの看護婦さんにしてスポックに想いを寄せる女性。このDVDではカークが手を出しているようですが・・
 チャペルの名前を聞いてああっと思うのは古くからのファンなんだろうなぁ
(*2)エンタープライズがヤマトよろしく海から飛び出すわ
 ”宇宙戦艦ヤマト”といえば、岩盤を割っての発信シーンが有名ですが、”宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち”では海から発進しています。古くは”轟天号”(海底軍艦 東宝)、”万能戦艦マイティ号”(マイティジャック 円谷プロ)など、巨大戦艦の海からの発進シークエンスは男のロマンです。
(*3)ロボコップが提督してるわ
 マーカス博士のお父さんで宇宙艦隊提督の”マーカス提督”って、どっかで見た顔だな~と思っていたら演じているピーター・ウェラーって”ロボコップ”(1987年版のほう ワーナー・ブラザーズ)のアレックス・マーフィー(=ロボコップ)の人だったんですね。しかしまあ歳とりましたねぇ、この人も・・・
(*4)優生人類
 日本語吹き替え版では”超人類”、”カーンの逆襲”では”優生人類”と訳されていますが、”イントゥ・ダークネス”の英語では”genetically engineered to be superior(優秀になるように遺伝子操作された人)”です。ここではオリジナルに敬意を表して”優生人類”にしました。
(*5)冷戦
 第二次世界大戦後の資本主義陣営(アメリカ合衆国など)と社会主義陣営(ソビエト連邦 現ロシア)の対立のこと。
 この前会社で新人のお嬢さんがこの映画を観に行ったってましたが、この人たちにとっては解説が必要な歴史なんだろうなぁ。ソ連のゴルバチョフ議長とアメリカのブッシュ大統領(パパブッシュの方)がマルタ会談で冷戦終結を宣言したのが1989年ですからマジに生まれたころの話だし・・・

世の中って、理不尽だね。原作をここまでぐちゃぐちゃにしちゃうほどに(戦力外捜査官/マッチ棒)

 ども、わりとミステリーなんかも読むおぢさん、たいちろ~です。
 この前、会社で”今年の新番組って刑事モノ多いね~”との話が出ました。まあ、警察関係のテレビドラマってけっこうヒット作も多いし、続編なんかも作っちゃってるので作り手側の気持ちもわからんでもないですが、確かに新番組を調べて見るとテレビ朝日では定番の”相棒”、”科捜研の女”に加え、”緊急取調室”や探偵モノだけど”私の嫌いな探偵”、TBSの”S-最後の警官-”,”隠蔽捜査”、日本テレビの”戦力外捜査官”などなど。確かに多いなぁ。
 ということで、今回は原作も読んでた”戦力外捜査官”のご紹介であります。


Photo
写真はたいちろ~さんの撮影。木のマッチ棒です。


【本】戦力外捜査官(似鳥鶏 河出書房新社)
 ある日、捜査第二係の巡査”設楽恭介”は警視庁の玄関で迷子になっている少女に出会う。身長150センチ弱、色白眼鏡で15~6歳にしか見えない少女”海月千波”が実は警部。そして千波とコンビを組まされた設楽巡査の苦難の日々が始まる・・・
【TV】戦力外捜査官(原作 似鳥鶏、主演 武井咲、TAKAHIRO)
 こんど、捜査第18係にキャリアが配属されるという。”キャリアの経歴に傷をつけたら現場の責任になる”という現場の配慮からお守り役を押し受けられた設楽巡査(TAKAHIRO)。そして登場したのは黒スーツに身を固めた迷子癖で空気の読めない海月千波警部(武井咲)だった。
 日本テレビで1月11日より放映開始。
【道具】マッチ棒
 マッチは火をつけるための道具で、木や紙などの棒の頭に発火性のある頭薬をつけたもの。ってか、マッチ棒って見なくなりましたね~~。今の若い人にはマジで説明しないと分かんないんじゃないかと思うぐらい。”憧憬生活”のHPによるとマッチの生産量は1970年のマッチの生産量は並型で54.7億個から2010年には1億個と激減しているんだそうです。
 TV版で海月警部と越前警視総監(柄本明)がタブレットでマッチ棒パズルをやってますが、そんな時代ですかねぇ


 さて、原作版の”戦力外捜査官”から。

〔原作版”戦力外捜査官”〕
 海月千波の容姿は上記のとおりですが、それ以外にも迷子癖だの、木に登っておりかれなくなるドジッ娘属性だの、もんぼ好きなアーティストは印象派だの、趣味はお菓子作りにピアノにハープといったお嬢様キャラ(*1)。周りを混乱させるだけのたとえ話とか、けっこうユニークなキャラクター設定。
 戦力外扱いされてるってのも現場でのいきなりのドジっていうまあ、身から出たサビっちゃサビなんですが、それを”単独遊軍捜査班”っていい変えちゃうポジティブさも好感持てるお嬢さんです。

 海月警部とペアを組まされる貧乏クジを引かされた設楽巡査優秀な刑事にさらに優秀な上司の組み合わせというと”薬師寺涼子の怪奇事件簿(*2)”なんかを思い出しちゃいましたが、きっと設楽巡査と泉田警部補の”ヤキボの相方”って立ち位置が似てるからかなぁ。海月警部も薬師寺警視も毛色が違うものの優秀ですが、まわりを振り回すってとこも同じだし。

 あと、越前刑事部長口から出まかせでみんなを丸めこむスチャラカだけど実は深謀遠慮というのは”空飛ぶ広報室(*3)”に登場した”詐欺師 鷺坂”こと鷺坂広報室長を彷彿とさせるキャラ。腹を刺されていながら”・・・ふふっ。一回、やってみたかったんだよね。こういうの”とか言いながら犯人に手錠をかける芝居気たっぷりさで部下を掌握するってのもおちゃめだし。

 まあ、推理小説というよりライトノベルに近いでしょうかね。推理もわりとちゃんとしてるし、放火事件を発端とした大量殺人計画ってドラマももりあがってるし小説としても面白かったです。

〔TV版”戦力外捜査官”〕
 日本テレビで武井咲とTAKAHIROの写ったポスター観た時、やな予感はしてたんですが・・・
 海月警部はパンツスーツに黒メガネって、どっちかというとピシッとした感じのいでたち、ポニーテールって武井咲のイメージなんでしょうが・・・ 原作の表紙のイラスト観てるとなんで、きゃろらいんちゃろんぷろっぷきゃりーぱみゅぱみゅ(*4)”にやらせなかったんだろう? って思ってましたが、原作のイメージとはかなり違ってますねぇ。
 自室の本棚にはシャーロックホームズに京極堂シリーズに名探偵コナンにとけっこうな推理モノ好きのようですが、週刊クイズっぽいのでマッチ棒パズルを遊んでるとこなんか”クイズマニア”といったほうがいいのかも。自宅のシーンを見る限りお嬢様キャラってわけでもなさそうだし。
 戦力外扱いされているのも上層部や現場の思惑での既定路線ってのもなんだかなぁ。ドラマの中で海月警部と設楽巡査が”いじめられっ子はいじめられっ子かどうかなんとなくわかる”みたいな会話をしていますが、このことかと思ってました。

 職務質問をされて逃げたした少年が”警部って偉いの?(*5)”という質問に、設楽巡査が警部を説明するのに古畑任三郎や番組登場時の杉下右京が警部補で一つ上、青島刑事が巡査部長で二つ上、設楽巡査が三つ上という説明に対し、少年が

  世の中って、理不尽だね

とつぶやいてますが、なんで原作をここまで理不尽なほどにぐちゃぐちゃに変えちゃうかなぁ。
 まあ、佐野史郎とか木下隆行とかいい味だしてるキャラもいますが、わざわざ原作にない仙人みたいな役を関根勤にやらせるんだったら、江藤君を出せ!(*6)
 すいません、失礼しました。

 まあ、”ビブリア古書堂の事件手帖(*7)”ん時もそうでしたが、せっかく原作に立ってるキャラがいるのにどうして変えちゃうんでしょうね? アイドルを出すなとは言いませんが、せっかく出すんだったらもうちっとイメージ合ってるのを採用すりゃいいのに

 TV版は武井咲ならOKという人にはOKでしょうし、作品そのものはちゃんと作っているようですので、原作にこだわらなければ面白いかも。ってか、こだわる方が少ないか・・・


《脚注》
(*1)ピアノにハープといったお嬢様キャラ
 私んちにもピアノにハープがありますが、決して、間違いなく、何があってもうちの奥様や娘がお嬢様ってことはありません。楽器の値段ってのはピンキリですが、小型のハープであれば20万円しないものもありますので、庶民が買えないってこともないです、はい。
(*2)薬師寺涼子の怪奇事件簿(田中芳樹、講談社)
 絶世の美女で社長令嬢、大金持ちながら”ドラよけお涼”の異名を持つ薬師寺涼子警視の活躍と、その部下である泉田準一郎警部補の不運を描いた伝奇系推理小説。垣野内成美によるコミック化やアニメ化もされた傑作です。
(*3)空飛ぶ広報室(有川浩 幻冬舎)
 防衛省航空自衛隊航広報室、通称”空飛ぶ広報室”の元パイロットで広報官の空井2等空尉とディレクターの稲葉リカを主人公とした自衛隊系ラブコメ。TBSのTVドラマでは鷺坂正司役を柴田恭兵が好演。鷺坂室長って適当キャラに見えますが、1等空佐(大佐)と実はとっても偉い人です。
(*4)なんで、きゃろらいんちゃろんぷろっぷきゃりーぱみゅぱみゅ~
 きゃりーぱみゅぱみゅの正式な芸名はこれだとか。アナウンサーいぢめとしか思えん・・・
(*5)警部って偉いの?
 人様の組織でその人が偉いのかどうかってのはわかりにくい物ですが設楽巡査の説明は(イメージ的には)よくわかります。もうちょっと並べて見ると
 警視長:飛葉大陸(ワイルド7 瑛太)
 警視 :薬師寺涼子(薬師寺涼子の怪奇事件簿)
 警部 :加納 倫太郎(警視庁捜査一課9係 渡瀬恒彦)
      藤堂俊介(太陽にほえろ! 石原裕次郎)
      大門圭介(西部警察 渡哲也)
      銭形幸一(ルパン三世)
      目暮十三(名探偵コナン)
 警部補:土門薫(科捜研の女 内藤剛志)
      後藤 喜一(機動警察パトレイバー)
 巡査長:両津勘吉(葛飾区亀有公園前派出所 香取慎吾)

こうやって見ると、警部ってのはおっさんキャラの定番ですが、キャリア組なら最年少なら23歳でなれるそうなので(wikipediaより)あながち若い警部さんがいないわけでもなさそうです。
(*6)江藤君を出せ!
 海月警部が喫煙を注意した不良少年の仲間の空手使いの少年。のちに二人を姐さん、兄貴としたうことになります。いいキャラだと思うんですが、TV版にはでないのかなぁ・・
(*7)ビブリア古書堂の事件手帖(三上延、メディアワークス文庫)
 古書店”ビブリア古書堂”の主人で超人的な古書の知識を持つ篠川栞子を探偵役とした推理小説。TVドラマ化にあたりロングヘア、巨乳の栞子さんをベリーショート、○乳の剛力彩芽を演じたということでけっこう物議をかもしました
 まあ、ストーリー自体はわりと原作に忠実で、剛力彩芽がそれはそれとして雰囲気出してたので、それなりに楽しめましたが。

電子書籍が星の数ほどある名作たちと出会う扉となることです、だから欲し~よ~(重版出来/iPad)

 あけまして おめでとうございます、たいちろ~です。
 本年もよろしくお願いいたいます。
 さて、年始早々することもないので、郊外の大型書店&TSUTAYAに行って来ました。店内にはなんと楽天の”Kobo(*1)”の展示が! そ~か~、本屋さんも電子書籍とコラボする時代になったんだな~っと。そのあと行った家電量販店でも息子がiPADにハマりまくりだし。”Kindleも欲し~な~(*2)”とか言ってると奥様がめずらしく”買ってもいいわよ”とのお返事。なんでも先日行った海外旅行で、空港でタブレットを見ていた外人さんがすんごくカッコよかったとのこと。もっとも本音は増殖する本の量を少しでも抑えたいってとこでしょうが・・・
 ということで、今回ご紹介するのは出版業界での電子書籍の話題の出ている本”重版出来”であります。


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写真はたいちろ~さんの撮影。
ちょっと懐かしいiPad初期型です(2010年5月28日 銀座Appleストアにて)。


【本】重版出来(松田奈緒子、小学館)
 ”じゅうはんでき”ではなく”じゅうはんしゅったい”と読みます。
 出版社で働く新人女性編集者”小熊”こと”黒沢心”を中心に阪神タイガースの熱狂的なファンの編集長(*3)、人格者の社長、個性的な先輩、書店員、苦悩する漫画家達など本を売るためにかかわる人達を描いたマンガ。出版関連の本ってけっこう好きなのでよく読みますが、ここまで関連の人を広範囲に書いたのはめずらしいかも。
【道具】iPad
 Appleが販売するタブレットPC。上記の初期型から比べると最新の”iPad Air”はCPUの高速化に加え解像度4倍(1024×768ピクセル⇒2048×1536ピクセル)と高性能化にも関わらず重量2/3(680g⇒469g)、厚さ約半分(13.4mm⇒7.5mm)と2年半そこそこで長足の進歩。本読むだけでもいいから欲し~よ~


 さて”重版出来”ですが、年をとってきた漫画家の復活の話や、かつては売れていたが今は零落している漫画家の家族の話、社長が若い時に出会った”聖なる預言者”の話など”え~話や!”ってエピソードが多いんですが、そういう話は他の人が書きそうなんで、ちょっと視点を変えて電子書籍をめぐるお話なぞ。

 私が知らんかっただけかもしれませんが、電子書籍とか漫画家や編集者のSNSのことをちゃんと扱った漫画を読んだのってこれが初めてなんですね。なんせこのブログ書いてる人がい~かげん年をとってきてるのでわりと古い本のことも書いてるんですが、Amazon.comで探しても”出品者からお求めいただけます=絶版(*4)”ってのがけっこうあって。小説なんかだと図書館を探せばなんとかなるものもありますが、漫画だとそれも難しい。そういった人には電子書籍化ってのはありがたいんですが、出版社と電子書籍をする人の対立みたいのが長く続いてて、最近やっと改善してきた状況(*5)。

 本書の中で、大家っぽい岸和田先生ってのが、過去の作品を電子書籍書籍化して”名作アーカイブ”を作るって話に対し

  和田先生:私は過去の作家じゃないぞ、現役だ!! 
       連載ももっとる!! 書店で売ってる!!

        (中略)
  編集者 :残念ながら 今だに・・・ 電子書籍を「都落ち」と思っている、
       作家さんや読者さんがおられます。
       しかし実際には「電子書籍でなければ漫画を読まない層」も出てきており
       無視できない数にのぼっております

        (中略)
       何より素晴らしいのは この一枚(電子ブックリーダー)が、
       星の数ほどある名作たちと出会う扉となることです
       充電さえしていれば、場所を選ばない、国を選ばない、時間を選ばない
       この巨大な図書館に、先生の作品群を置かせていただきたいんです

 この和田先生って人は現実対処能力が高いのか、その後印税の話を初めて”ま、いいか”って了解してこれてます。また別のエピソードでは牛露田先生ってのが

  牛露田先生:電子書籍だのなんだの・・・
        あんな小さな画面で1コマ1コマ漫画は読むもんじゃねえ!
        漫画は紙で読むもんだ!!

 これに対して、編集の人は

  編集者 :ただ、昔からの作家さんは---
       紙に対する思い入れが強いゆえに、電子書籍が苦手な先生も多くて・・
       なかなか許可がもらえなかったり。
       紙にも電子にも特性があって、
       両立させたほうが出版界も出版物も豊かになると思うんだけど。

なんだかこれを読んでて、似たような話があったな~と思ってたら、これって映画からテレビへの過渡期の状況とよく似てるんですね。”映画は映画館で見るもんだ!”という作り手のプライドとか、映画の全盛期に各社専属の監督、俳優の引き抜きを禁止する既得権益の保護のための”五社協定”とか。これにより追放されたり嫌ったりした才能が当時普及・拡大期にあったテレビに流れてって、映画産業の衰退とテレビ業界の盛隆につながったんですね。まあ、現時点と同じ”娯楽の多様化の時代(*6)”でうまく流れを作ったテレビと旧来に固執した映画の違いの相似形のような・・・
 まあ、コマ割の違いとかSNSによる作家とファンの関係性の変化とかいろいろあるんでしょうが、温故知新を含めて新しい時代にあった娯楽を提供していったモンの勝ちなんでしょうかね。

 ”重版出来”は前から気になってたんですが、背中を押したのが日経新聞のプラス1で”マンガを読んで仕事を知ろう(2013年12月28日版)”のテーマでぶっちぎりの1位になってたのを読んだから(このあたりがオールド世代?!)。なんせ、2位の”島耕作シリーズ(弘兼憲史 講談社)”、3位の”宇宙兄弟(小山宙哉 講談社)の約1.5倍の525ポイント!(*7) この記事で読む人増えて重版されると嬉しいです。でも、電子書籍になると印刷量を増やすっていう”重版”そのものが無くなるんでしょうねぇ。そういった意味ではそれはそれで時代の変わり目ではあるのかもね。

 あ~、電子書籍、欲しいよ~~
 iPadかKindleか迷うなぁ~~


《脚注》
(*1)Kobo
 楽天の子会社で電子ブックリーダーと電子書籍を販売する会社名及び、そこから販売されているタブレット型リーダー。何でもできるというより”本を読む”という機能に重点を置いてるようです(ex 電池が長持ちする電子ペーパーの採用)
(*2)Kindle
 ”Kindle”はAmazon.comが販売する電子ブックリーダー端末と電子書籍関連サービス。Amazonでの扱い本数が多いのが魅力。欲し~よ~
(*3)阪神タイガースの熱狂的なファンの編集長
 調べてみると、松田奈緒子のダンナさんて西原理恵子の漫画で熱狂的な阪神タイガースファンの編集者としていじられキャラだった”新保信長(南信長)”なんだとか。狭い業界だ・・・
(*4)出品者からお求めいただけます=絶版
 古書だからといって必ずしも安いとはかぎらないのも難点。先日”ハレンチ学園 (永井豪 徳間コミック文庫)”をBOOKOFFの105円棚で見つけたのでまとめて買いましたが、これがAmazon.comだと安いので6巻セットで3,400円、状態の良い物だと1万円近くします、はい。
(*5)最近やっと改善してきた状況
 てか、出版社や著者者が”さすがにヤバイ”と思いだしたってことかも。
 ちなみに著作物を電子書籍へダウンロードさせることの権利保護を”電子出版権”とする方針を文化庁が決定したのが2013年12月20日。14年の通常国会に法改正案を提出する予定だそうです。 
(*6)娯楽の多様化の時代
 YouTubeやiTunesといった映像・音楽系、パズドラ(やったことないけど)みたいなゲーム、facebookやツイッターといったSNSまで入れりゃ、スマホいっちょで楽しめる娯楽なんて山のようにあります。最近、通勤電車の中でスマホを見てる人はいっぱいいますが、新聞や本を読んでる人がへったような感じがするのは気のせいでしょうか?
(*7)なんせ、2位の”島耕作シリーズ”~
 一般の感覚とちょっとズレてる感があるのは、選者が小野耕世、竹内オサムといった評論家や、電子書籍のバイヤー、本屋さん、編集者、漫画館館長といったその筋の専門家の人だからかも。でも、確かな選択だったと思いますよ。

ビッグデータって使い方を気をつけないとけっこうアブナイ側面も(ビッグデータの正体/スーパーコンピュータ”京”)

 ども、意外と流行語に弱いおぢさん、たいちろ~です。
 年末になると”ユーキャン新語流行語大賞”なるものが発表されます。2013年度は”今でしょ!”、”お・も・て・な・し”、”じぇじぇじぇ”、”倍返し”と過去最多の4語が選出されました(*1)。
 まあ、流行り廃りは世の常ですが、私のやってるコンピュータ業界だと今年の流行語大賞が”ビッグデータ”でしょうか? この”でっかいデータってなんやねん?”と一度ちゃんと本を読もうと思ってたんですが、それが今回ご紹介する”ビッグデータの正体”であります。


Photo
写真は富士通のhpより。理化学研究所に導入されたスーパーコンピュータ”京”です。


【本】ビッグデータの正体
 (ビクター・マイヤー=ショーンベルガー、ケネス・クキエ、講談社)
 原書のサブタイトル”A Revolution That Will Transform How We Live, Work, and Think(私達の生活、仕事、意識を変えていく革命)”とあるようにビッグデータが私達を変えていくという状況を解説した本。ビクター・マイヤーはネット上に誤ったデータでもネット上に永遠に残ってしまう現状を指摘し”忘却される権利”という概念を提示した人でもあります。
【道具】スーパーコンピュータ”京”
 文部科学省の次世代スーパーコンピュータ計画の一環として、理化学研究所と富士通が共同開発したスーパーコンピュータの愛称。計算速度が毎秒1京回できるから。2011年に世界最高速を達成しました。


 ぶっちゃけ、”京”のような想像もできないような超高速コンピュータが登場する一方、個人でもテラバイトクラスのハードディスクが買える昨今(*2)、何を今さら”ビッグデータなん?”と思ってましたが、どうもそうじゃないみたいです。そりゃ確かにGoogleのような世界中のhpが検索でき、facebookみたく世界の人々がお友達状態になる世の中ですが、こういった情報の爆発的な増大とそれを扱えるシステムとの組み合わせで今まで見えないものが見えてくるんだとか。
 本書によると、ビッグデータによる変化ってのは以下の3つだそうです

  第一の変化:すべてのデータを扱う
  第二の変化:精度は重要ではない
  第三の変化:因果から相関の世界へ

 簡単に言うと、第一の変化はコスト的や時間的な問題でサンプリング調査しか出来なかったものが、Googleやfacebookなどに沢山のデータ(ビッグデータ)が蓄積されていてそれをハンドリングできるシステムが実現した、第二の変化はオリジナルのデータの精度(正確さ)がまちまちなので細かい事は気にしない、第三の変化は分析して出てくるのはあくまで相関や頻度の結果であって”なぜそうなるのか=因果関係”までは提示されないってことのようです。
 まあ、ビッグデータとは言いませんが、いちおうデータ分析みたいな仕事もやっているんで、明細データベースでおっかけないとわからない事も多いし、10億円単位の将来予測をやるのに数十万円単位で精度を期待しても意味ないし、”なんでやねん?!”みたいなのって結局人間の想像力を働かせないと出てこない(まあ、データ使って類推と検証はやりますが)ので、経験的にはなるほどと思う事も多数あります。

 でも、ビッグデータ(とそのビジネス)って使い方を気をつけないとけっこうアブナイ側面も。


〔ビッグデータだけでなく付帯的なデータ(知識)も重要〕
 Googleとかで検索すると”○○ではありませんか?”みないなメッセージを見る事があります。これは入力ミスや言葉の思い違いを指摘してくれてるんですが、こういう辞書機能みたいなのって、あまり話題になりませんが実はGoogleのすごい強みなんじゃないかと。本書でもマンホール火災の分析で記録形式がばらばらで苦労した話がでてきますが、これ、とってもよくわかります。
 昔、売上の過去明細データ(数十万件ぐらいあったかな?)から商談の相関分析をやったことがあります。まあ、相関の可視化ツールみたいなのが使えたんで遊んでみようかと。で、みごとに挫折しましたね~~ なぜなら、類語辞書が無かったから。逆にいうとこれ作んないと役に立たないとわかったから。たとえば自由に入力可能な商談件名から”携帯電話”を引っ張ってこようとすると、”携帯電話”、”ケータイ”、”ガラケー”、みたいな一般名称から”らくらくホン、AQUOS、VIERA、Cyber-shot”みたいな商品名称までを同じ”携帯電話”として認識をさせないと使えないんですね。ましてやスマートフォンを携帯電話に入れるか入れないかなんて利用目的によって違うし。こんなんを汎用的な辞書として作るのがと~~っても大変なのって、データ見てからわかりました


〔因果関係って作っとかないといけないんじゃ?〕
 ビッグデータをブン回して出てくるのはあくまで相関関係であって因果関係じゃありません、当たり前だけど。本書のなかでgoogleが検索データからインフルエンザの流行を予測したって話が出て来ますが、これってたぶんビッグデータ利用でイメージするものに近いんでしょうが、”なぜインフルエンザが流行するか?”には答えてないんですね、当然だけど。それは医者や科学者のお仕事。
 本書の中でクリス・アンダーソン(*3)の”理論の終焉”ってのを紹介してます

  厖大なデータと応用数学の組み合わせが、あらゆるツールにとってかわる
  十分なデータがあれば、数字自体が何かを語りだす
  ペタバイト(のデータ)があれば『相関で十分』と言える

 さすがに挑発的すぎたのかすぐに主張を取り下げたそうですが、一面真実で一面暴論でしょうね。人間は”因果関係を知りたがる生き物”なんだそうですが、いいじゃないですが、理論の構築したがっても(たまには屁理屈だったりしますが・・・)
 ビッグデータを分析する人のことを”analyst(アナリスト 分析家)”ではなくて”curator(キュレーター)”(*4)というんですが、こういうアカデミックへのみょ~な対立構造みたいになんなきゃいいんですがねぇ・・


〔結果はあくまで”確率的”であって、必ず”そうなる”わけではない〕
 べつにビッグデータに限らずですが、統計分析の結果ってのはあくまで確率的分布であって約束された未来ってわけではないです。昔”犯罪を犯したヤツは必ずもう一度犯罪を犯す”という信念のもと、元犯罪者を追っかけまわす刑事の話なんてのがありました。フィクションの世界でやってる分にはエンタテインメントで済みますが、これが”ビッグデータにより検証された”なんつ~ことになってくるとかなりアブナイ。予防措置と更生支援のバランスをどこでとるかは難しいでしょうが、行きすぎると”ロンブロ~ゾ~~~”(*5)の世界になっちゃいます。

 まあ、ビッグデータが流行語に終わるか社会に定着するかはわかりませんが(*6)、まあ、ビックデータをビックブラザー(*7)にしない為にも知っとくにこしたことはない話。コンピューター関連の本って流行りもんにヨイショするのが多いですが、本書はビックデータの功罪とりまぜてバランスの取れてる本だと思います。

 てなことをつらつら書きながら”来年もよろしく”で締めようとしたら、おおっ、もう年が明けているではないか!!
 ということで、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします


《脚注》
(*1)”今でしょ!”、”お・も・て・な・し”~
 今でしょ!:予備校の現代文の林修先生がCMで使った言葉
 お・も・て・な・し:オリンピック招致の最終プレゼンでの滝川クリステルの言葉
 じぇじぇじぇ:NHKの朝ドラ”あまちゃん”より。驚いた時の岩手県久慈市の方言
 倍返し:池井戸潤の小説を原作としたTBSドラマ”半沢直樹”の堺雅人の言葉
こういうのも書いとかないと3年もたちゃわかんなくなるかもしれないし・・・
(*2)個人でもテラバイトクラスのハードディスクが買える昨今
 wikipediaによると米国議会図書館の情報の総量がおおむね100テラビット=12.5テラバイトだそうです。パソコン用の4テラバイトのハードディスクが2万円そこそこですから、容量の点だけでいえば、図書館の全情報が6~7万円程度で格納できる計算になります、はい。
(*3)クリス・アンダーソン
 アメリカの雑誌”Wired”の元編集長で”ロングテール”という概念を提唱した人。”ロングテール”、”フリー”、”メイカーズ”なんつ~本を出してますが、けっこう面白いです。
(*4)curator
 美術館や博物館などで、展示する作品の企画から運用まで全般を請け負う仕事。日本語では”学芸員”と訳されますが、それよりは仕事の範囲が広いんだそうです。
 わかりやすく知りたければ”ギャラリーフェイク(細野不二彦、小学館)”なんかをどうぞ。
(*5)ロンブロ~ゾ~~~
 ご年配の方には”黄金バット”に登場する犯罪者”ナゾー”の雄たけびを連想されるかもしれませんが、”ローンブローゾ”は実在するイタリアの犯罪人類学の創始者。厖大なデータを検証して犯罪者は先天的に犯罪者になるという”生来的犯罪人説”を提唱した人です。
(*6)ビッグデータが流行語に終わるか社会に定着するかはわかりませんが
  テクノロジーが主導するバブルとその崩壊の繰り返しを
  「過熱(ハイプ)のサイクル」と呼んでいる。
  「行きすぎた期待のピーク」のあとに、「幻滅の谷間」が訪れる。
  そして、「悟りの坂」を登って最後に「生産性の大地」に行き着くという。

 ガードナーグループの言葉(”メイカーズ(クリス・アンダーソン)”より抜粋)
(*7)ビックブラザー
 ”ビックブラザー”はジョージ・オーウェルの”1984年”に登場する独裁者の名前ですが高度なネットワークによる監視社会のアナロジーとしての意味合いもあります。
 そう言えば、この本もまだ読んでないな~~

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