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2013年11月24日 - 2013年11月30日

まあ、フェミニズムをこう言った文脈で持ってくか~みたいな驚きがありました

 ども、蜘蛛というとどうも女性だと思っちゃうおぢさん、たいちろ~です。
 昔読んだ”ピグマリオ(*1)”という漫画に”糸つむぐおばば”という蜘蛛の妖魔というか鬼子母神のようなキャラクターが出てきます。どうも蜘蛛というのは糸を出す=機織りという連想からか”女性”というイメージを持っちゃうんですが、この糸でからめとられるとなると話は別。この代表選手が”絡新婦(じょろうぐも)”。ということで、今回ご紹介するのは”Qさま!!”に登場しそうな難読漢字の本”絡新婦の理(じょろうぐものことわり)”であります。


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写真はたいちろ~さんの撮影。上は賢淵にある”妙法蜘蛛之霊”の記念碑、下は国道48号線から見た賢淵付近。


【本】絡新婦の理(京極夏彦、講談社文庫 他)
 刑事”木場修太郎”は目潰し魔による連続殺人事件の捜査を進めるうちに友人である川島新造が関与しているのではないかとにらむが「蜘蛛に訊け」という言葉を残して失そうする。一方、聖ベルナール女学院では悪魔を崇拝する”蜘蛛の僕”による殺人、学校内売春事件が発生する。一見、なんの関係もない事件が地元の名士”織作家”の未亡人、美人姉妹を中心に蜘蛛の糸にからめとられるように収斂していく。”憑物落とし(つきものおとし)”を依頼された拝み屋の”中禅寺秋彦”の推理とは・・・
 京極夏彦による”百鬼夜行シリーズ”の第五作目。
【旅行】賢淵
 仙台市の広瀬川にある淵。ここにはこんな”化け蜘蛛”伝説があります。
 昔、この淵で釣りをしていると、一匹の蜘蛛がやってきて男の足に糸を引っかけた。男はそれを柳の大木の根元に掛けておいた。何度か同じことを繰り返すうちに、突然柳の木が淵の中に引きずり込まれ、水の中から「賢い、賢い」という声が聞こえてきたという。(えきねっとhpより)
 この大蜘蛛は水難除けの神として信仰されるようになったそうで”妙法蜘蛛之霊”の記念碑は作並街道(国道48号線)の賢淵の上にあります。特に看板もないのでわかりにくいですが、作並街道を大崎八幡宮から西側に走って牛越橋への分岐のやや先、広瀬川側にある沼田駐車場の端にあります。ご興味のある方はどうぞ。


 さて、圧倒的な知識と理屈で相手をけむに巻く”京極堂”こと中禅寺秋彦ですが、今回のテーマは女性解放論(フェミニズム)。しかしまあ、出るわ出るわ頭パンクしそうな知識と詭弁のオンパレードが。今回のお話の横の糸になっているのが”不特定の男性とSEXをする女性”の民俗学的考察。ネタバレになりますが、これにからめとられたのが織作家の女性たちです。織作家には羽衣伝説(*3)を持つ家系ですがこの”織”というのは機織りにつながります。まあ、羽衣伝説と鉄(*4)、機織と巫女と遊女と辺境(水辺)と一見関係なさそうなお話の連環がめんめんと続きます。写真にある”賢淵”もその一つ。で、これらの話を京極堂に男性原理と女性原理の両面からこんこんと諭されて次々と憑物を落とされてくのが織作家の女性たち。

 まずは四女の”織作碧”。聖ベルナール女学院の創業者一族の末裔にして成績優秀、容姿端麗というアニメのヒロインもかくやかくやという美少女。この子は出生の秘密から”悪魔崇拝”に走ってサバトを主催するという困ったちゃん。”使い魔”を使って邪魔になる人を次々と殺人してるように見えますが、一方”学園内売春”という男性原理の片棒を担がされているという結果に。京極堂に悪魔崇拝の根拠そのものを否定され、陥落。

 三女の”織作葵”。女性の権利向上の活動家で論理的で厳しい人。あの”京極堂”が高く評価しているぐらいですがら、そこいらの刑事たちが歯が立たないのも当たり前です。この人と京極堂とのフェミニズムに関する会話は秀逸。織作の家の秘密を男性原理として”売春の家”と見るか、女性原理として”貴種を受け入れる女系家族の継続”と見るかってのは目からうろこであります。まあ、この女性原理の家系に男性原理を持ち込んだ織作家の当主ってのがある意味物語の元凶なわけですが。
 この二人は”一夫一婦制”というか”長男の家督相続”なんかの話なんかもしてるんですが、この制度って元々武家=男性原理のための制度で、法制化されたのは実は明治以降という比較的新しいものなんだとか。(長男相続制が廃止されて、配偶者や子供が平等に相続権を持てるようになったのは戦後のことです)。婚外子(結婚していない男女間の子)の遺産相続分を嫡出子(法律上の夫婦の子)の半分とする法律が違憲だという判決がでたのが2013年9月のことですが(*5)、この議論を京極堂にやらせりゃもっと盛り上がっただろうにねぇ
 織作葵が生きていれば”平塚らいてう(*6)”の優秀な後継者になってそうなに、残念です。

 この二人の母親が”織作真佐子”。織作家の成り立ちにプライドと羞恥を持った人
京極堂が巫女と娼婦についてこんな話をしています

  近代化に因って民族社会は緩やかに崩壊し、巫女は娼婦になってしまったーー
  何人にも量りえない神性は、誰にも勘定できる貨幣に置き換えられた
  そして売春宿が生まれた
  彼女達から神性は剥奪され、代わりに恥辱が与えられて、巫女は女郎になった

まさにこれを体現するような人です。

 それ以外にも、かつての織作家の伝統復活を願うば~さんだとか、戦後のアメリカ軍相手の国家設立の娼館の女性だとかまあ、いわくありの女性が多数登場します。まあ、フェミニズムをこう言った文脈で持ってくか~みたいな驚きがありました。

 で、推理小説の構成としてこれらをつなぐのが縦の糸。犯人が捕らえられるとその後ろに黒幕がいて、そいつが捕まるとまた後ろに黒幕がいてとの入れ子構造。というか横糸をたぐって縦糸との交差点(犯人の逮捕)に行きつくと縦糸で別のステージに進むというまさに蜘蛛の巣状態です。それに犯人たちは自分の考えて行動しているようでいて、まさに糸に操られるマリオネット(*7)のごとく。けっこうずるずる巻き揉んでっちゃうのは京極夏彦の面目躍如です。1400ページ弱ある分厚い本ですが、けっこう楽しく読ませていただきました。

ps.
 賢淵の大蜘蛛は水難除けの神様ですが、女難除けではないようです。除けなくてもいいから一度女難には会ってみたいものですが・・・

 世の中に金と女は仇敵なり、どうか仇敵に巡り逢いたい


《脚注》
(*1)ピグマリオ(和田慎二、白泉社、メディアファクトリー)
 小国ルーンの王子クルトが妖女メデューサによって石像の変えられた母ガラティアを救うために、メデューサを倒す旅にでるというファンタジー漫画。どちらかというとファンタジーは苦手なんですが、この作品は楽しめました。
(*2)Qさま!!
 テレビ朝日で放送されているクイズ番組。難読漢字に関する問題もよく出題されますが、けっこう勉強になります。
(*3)羽衣伝説
 いろいろバリエーションがありますが”天女が水辺に降りてきて水浴びをしていると、その美しさに心を奪われた男が天女をが帰れないように羽衣を隠してしまい帰れなくなってします。天女は天に帰れなくなっって男と結婚し子供を残すが、後に天女は羽衣を見つけて天上へ戻る”といった内容。日本だけでなく、けっこう世界中に同類の話があるんだとか。
(*4)羽衣伝説と鉄
 羽衣伝説の伝播と鉄の資源産地がおおむね一致するって話がでてきますが、これって”宗像教授伝奇考”(星野之宣、小学館)でも読んだな~ これって一般的な学説なんでしょうか? でも、”鉄産地に遊郭はつきものだ”って言われてもねぇ。
 羽衣伝説の話”白き翼 鉄(くろがね)の星”は1巻に収録
(*5)婚外子の遺産相続分を嫡出子の半分とする法律が違憲~
 民法改正案が衆議院本会議で可決されたのが2013年11月21日。それでも、”伝統的な家族制度が崩壊する”という意見もあるようです。でも、金と力を持ってる男性が愛人と子供を作ってもOKみたいに歪んで捉えられちゃうと、それでなくても結婚できない男たちは益々(以下自主規制)
(*6)平塚らいてう
 戦前と戦後に活躍した女性解放運動の指導者。雑誌”青鞜”の創刊の辞
  元始、女性は実に太陽であつた。真正の人であつた。今、女性は月である。
  他に依つて生き、他の光によつて輝く、病人のやうな蒼白い顔の月である

が有名。
(*7)マリオネット(Marionette)
 正確にいうと、ピノキオのように糸で操るものが”マリオネット”。この進化系でサンダーバードで使われたのは”スーパーマリオネーション”。”ひょっこりひょうたん島”のように下から棒で操作するのが”ロッド・パペット(棒遣い人形)”というんだとか。へぇ~

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