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2013年8月4日 - 2013年8月10日

理屈と膏薬はどこにでもくっつくんですよね、バリスタ(珈琲店タレーランの事件簿/古典部シリーズ/コーヒーの木)

 ども、夏と言えば冷コーなおぢさん、たいちろ~です。
 昔、関西では冷たいコーヒー=アイスコーヒーのことを”冷コー(レーコー)”と呼んでました。今の若い人には死語ですかねぇ。で、喫茶店にコーヒーを呑みに行くのが”茶ぁ、しばき行く(*1)”です。まあ、全国区のド○ールやワールドワイドのス○バが主流の喫茶店ですんでこんな注文の仕方をしても通じないんでしょうが(試したこたないですが)、この喫茶店では通じるんでしょうか?
 ということで、今回ご紹介するのは京都にある本格派喫茶店を舞台にした推理小説”珈琲店タレーランの事件簿”であります。


写真はたいちろ~さんの撮影。北海道大学植物園のコーヒーの木”です

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【本】珈琲店タレーランの事件簿(岡崎琢磨 宝島社文庫)
 京都の小路の一角にある珈琲店”タレーラン”。恋人と喧嘩した”青野大和(通称 アオヤマさん)”は、この店で理想のキーヒーとそれを淹れてくれた女性バリスタ(*2)”切間美星”に出会った。一見、女子高生にしか見えないこのバリスタは実はとんでもない推理力の持ち主だった・・
 京都と珈琲店を舞台にした日常系喫茶店ミステリー。
【本】古典部シリーズ(米澤穂信 角川文庫)
 ”省エネ主義”を信条とする高校1年生の折木奉太郎(ホータロー)は、姉の命令で神山高校の古典部に入部することになる。そこにはいたのは一身上の都合で入部した黒髪の美少女”千反田える”。彼女は清楚な容姿とは裏腹に好奇心の猛獣だった。
 高校を舞台にした日常系青春ミステリー。
【花】コーヒーの木
 アカネ科コーヒーノキ属の植物の総称。アラビカ、ロブスタなどの種があります。写真はアラビカ種のもので、右下に実が付いているのがわかりますがこれを集めて焙煎して粉にして成分を抽出したのがコーヒー。
 コマーシャルなんかだとコーヒーの木は低木のイメージがありますが実際には9~12mに達する高木で背が低いのは実を採取しやすいように剪定しているからだとか。
 単なる蘊蓄です。すいません。


 さて、”珈琲店タレーランの事件簿”ですが、amazon.comの”この商品を買った人はこんな商品も買っています”では”ビブリア古書堂の事件手帖(*3)”とセットで売れているようです。まあ、私もビブリア古書堂を読んでから本書を読みだしたんでなんとなくわかりますが。どうも専門的な職業を持つ女性が主人公つながりだし、日常系ミステリーってとこも同じだし。でも、なんとなく似てるようで似てないんですねぇ、この2つのシリーズって。ビブリア古書堂は、主人公の栞子さんが持っている超絶的な本の知識ースに推理がベースになってますが、タレーランのほうはそういいのは特になし。切間美星と青野大和のかけあいのコーヒーの蘊蓄(それはそれで楽しいですが)が推理につながってるってのはあんまりありません。

 では、この作品の魅力ってのはキャラ設定が美味いってことでしょうか。白いシャツに黒いパンツ、紺のエプロン姿でコーヒーを挽きながら推理する切間美星ってのが日常とちょっと非日常の接点みたいでちょっとすてきです。クラシックな喫茶店どころかス○バですらほとんど行けない貧乏暮らしとしては、こういった隠れ家的な喫茶店でコーヒーのアロマを愉しみながら美人バリスタの推理に耳を傾けるっていいですねぇ。

 本書は”第10回 このミステリーがすごい!大賞(*4)”の最終選考まで残った作品で解説を書いている作家の北原尚彦によると”文章は達者だし、設定やちりばめられたコーヒー蘊蓄も面白い”との評価。でも、推理部分についてはなかなか厳しくて本書の出版にあたっては大幅に書き直したんだとか。でも、推理としては本格ってよりもむしろ現状にうまく適合する理屈を考えるってゲーム感覚に近いかな?

 話は飛びますが米澤穂信の”古典部シリーズ”で探偵役の高校生折木君とワトソン役の千反田さんがこんな会話をしています(*5)。

  折木 :『理屈と膏薬はどこにでもくっつく』。
      たまたまうまく膏薬がうまいところにくっついたとしても、
      そんなのは知ったことじゃない

       (中略)
  千反田:ですが推論・・・、膏薬をくっつける、ですか、
      それができるのはそれだけで一つの才能だと思いませんか?
      蒔いた種が実るかどうかは運だとしても、
      種を蒔くことができなければ話になりませんから

 別にこういうゲームが面白くないとかって意味ではなくて、そういう推理小説もありってこと。てか、日常系の推理小説ってこっちの楽しみがメインかな。大ヒットした”謎解きはディナーのあとで”(*6)なんかもそうですが、キャラが立っていて上手い理屈づけができてれば作品的にはOKってのが今の推理小説の流れでしょうか。
 そういった意味では、タレーランもキャラクター設定が秀逸なので30分モノのアニメ化なんかすればはまりそうな感じ。
 ちょっと古びた喫茶店あたりでのんびり読むには良い本です。


《脚注》
(*1)茶ぁ、しばきにいく
 しばくは”鞭や細い棒で強く叩く”、”~へ行く”という関西弁。こっちも死語みたいですが、たまに関西から友人(おぢさん)が来るとこれ使ってます。ちなみにご飯を食べに行くのが”飯(めし)いわす”です。
(*2)バリスタ(イタリア語 barista)
 バール(お店)でエスプレッソなどコーヒーを淹れるのがバリスタ、酒類を扱うのがバーテンダーです。響きは似てますが”バチスタ”は拡張型心筋症に対する手術術式でぜんぜん別物。
(*3)ビブリア古書堂の事件手帖(三上延 メディアワークス文庫)
 就職先の会社が倒産して就職浪人となった”五浦大輔(AKIRA)”は、亡くなった祖母の本に書いてあった夏目漱石のサインの鑑定を頼みに”ビブリア古書堂”を訪ねた。そこには古書については人見知りで超絶的な博識を持つ人見知りの美女”篠川栞子”がいた・・・
 北鎌倉を舞台にした推理小説にして、ちょっと大人なボーイ・ミーツー・ガールの物語。
(*4)このミステリーがすごい!大賞
 宝島社、NEC、メモリーテックの3社が創設したノベルス・コンテスト。略称”このミス大賞”。後に大ブレークする浅倉卓弥の”四日間の奇蹟”や、海堂尊の”チーム・バチスタの栄光”なんかも受賞しています。
(*5)こんな会話をしています
 古典部シリーズ、”心あたりのあるものは”より。第4巻”遠回りする雛”に収録。
 ちなみに米澤穂信はこのミス2010年度作家別得票数の第1位。こっちはこっちで面白いシリーズです。
(*6)謎解きはディナーのあとで(東川篤哉 小学館)
 国立署の新米警部にして大金持ちのお嬢様である”宝生麗子”と彼女に使える毒舌執事の”影山”のコンビが事件を解撤するというユーモア本格ミステリー。といっても、解決しているのは影山の方ですが。
 2011年度の”本屋大賞”1位にして、2011年に櫻井翔、北川景子の主演でテレビドラマ化、13年には映画化もされました。詳しくはこちらをどうぞ。

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