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2013年5月26日 - 2013年6月1日

どこぞで見たようなタピスリーを見に行ってきました(機動戦士ガンダムUC/貴婦人と一角獣展)

 ども、貴婦人とお付き合いをしてみたいな~と思ってるおぢさん、たいちろ~です。
 先日、街を歩いていると貴婦人と一角獣が描かれているポスターを見かけました。
 このデザイン、どこぞで見かけたような・・・
 おぉ、これは”ガンダムUC”でビスト家に飾ってあったタピスリー(*1)ではないか!! なんでも、国立新美術館で展示会があるとのこと。ということで、さっそく見に行ってきました。


Photo
写真は”貴婦人と一角獣展”のポスターです。


【本】機動戦士ガンダムUC(福井晴敏 角川文庫)
【DVD】機動戦士ガンダムUC(原作 福井晴敏、制作 サンライズ、バンダイビジュアル)
 宇宙世紀0096年。政財界に絶大な影響力持つビスト財団は、ネオ・ジオン残党軍に”それが開かれる時には連邦政府が滅びる”と言われる”ラプラスの箱”を託すことで新しい時代を拓こうとしていた。しかし、それには鍵である”ユニコーンガンダム”と箱に至る道をクリアしていく必要があった。
 戦争の危機を阻止するために、ザビ家の遺児であるミネバ(オードリー・バーン)と、その争いに巻き込まれたバナージ・リンクスは・・・
【旅行】貴婦人と一角獣展
 フランス国立クリュニー中世美術館所蔵のタピスリー”貴婦人と一角獣”の展示会。
国立新美術館にて2913年4月24日より7月15日まで開催されています(大阪に国立国際美術館は7月27日~10月20日まで)。
 詳しくは公式HPをどうぞ。


 私は知らんかったんですが、この”貴婦人と一角獣”ってもともと有名な作品だったそうで、リルケの”マルテ・ラウリス・ブリッケの手記”にも出てくるんだとか。リルケの”オルフィイスのソネット”という詩も”機動戦士ガンダムUC”に引用されているので、因縁浅からぬ作品です。

 タピスリーは”触覚”、”味覚”、”嗅覚”、”聴覚”、”視覚”に”我が唯一の望み”を加えた6枚。で、これがまたでかいんだな~~。最大の”我が唯一の望み”で高さ約3.8m、幅約4.7m。6枚並ぶとさすがに迫力あります。

 展示会に行って初めて知ったことも結構ありました。
 まずは、このタピスリーの発注者ですが”ル・ヴィスト家”とのこと。えぇっ、ヴィスト家ですか!? ”機動戦士ガンダムUC”でこのタピスリーを所有して、ユニコーンガンダムを開発(発注)したのがビスト家当主のカーディアス・ビスト。ここから持ってきてるんだ!

Photo_2
 アニメを見てた時には気が付きませんでしたが、侍女の持っている白い箱。これはガンダムでは”ラプラスの箱”と対になっているんですね。

  侍女が小さな櫃の蓋をあけた。
  その中かから貴婦人は鎖をひとつ取りあげる
  ずうっと蔵いこまれていた重い、立派な装身具。

   (リルケ”マルテ・ラウリス・ブリッケの手記”)

 箱をあける貴婦人と侍女がオードリーとバナージ鎖がビスト家を縛りつけたもの装身具がビスト家に繁栄をもたらした価値ずうっとしまいこまれていたというのは宇宙世紀の誕生から1年戦争~シャアの反乱に至る歴史の流れのメタファーでしょうか。

池田昌子(*2)が語る音声ガイドでは、貴婦人はこの装身具を箱へしまおうとしている説と、出そうとしているという説があるんだとか。このあたりも、ラプラスの箱の秘密を明かすか明かさないかというガンダムのストーリーとの重ね合わせになっているような。

 当日の展示会の様子ですが、タピスリーということもあってか、年配のご婦人方が多いように見受けられましたが、ハイティーンや20代前半ぐらいの若者もちらほらと。2~3割ぐらいかなぁ。きっと、ご婦人方は純粋に”中世フランス芸術としての貴婦人と一角獣”を見に来てて、若者は”ガンダムUCに出てたタピスリー”を見に来てんだろ~な~

 不思議に思ってたんですが、この展示会の宣伝に”ガンダムのネタ”ってのをほとんど使ってないんですね。配布用のパンフレットには一言も触れていないし、公式HPを見ても

  詩人リルケの小説『マルテの手記』を朗読するのは、
  「機動戦士ガンダムUC」フル・フロンタル役でも知られる池田秀一さん!

とあるだけ。こっちは絶対狙ってやってるキャスティングなんだから、角川書店やサンライズとコラボして宣伝すればもっと若者が集客できるだろうに。なんだか大人の事情があるんでしょうか?

 逆に図録のほうには新国立美術館の南雄介副館長(*3)が解説で

  ≪我が唯一の望み≫に描かれた宝石箱は「ラプラスの箱」に重ね合わされ、
  また「第六感」がガンダム・サガを通じて登場する「ニュータイプ」
  (直感力や反射神経が常人より優れた新人類)と関係づけられるなど、
  タピスリーは小説版で全8話・10巻に及ぶ長大な物語全体の鍵となっている。

と書いてます(*4)。
 まあ、こっちは年配のご婦人方にはなんのこっちゃまったくわからんだろうなぁ・・

 ”貴婦人と一角獣”はガンダムうんぬんは別にしてもそれ自体が高い美術的価値を持つ作品。一見の価値はある作品だと思います。


《脚注》
(*1)タピスリー
 壁掛けなどに使われる室内装飾用の織物のこと。
 タピスリー(tapisserie)はフランス語で、英語だとタペストリー(tapestry)。
 ”我が唯一の望み”はフランスの作品ですので説明はタピスリーになってました。
(*2)池田昌子
 貴婦人のイメージということで、”ローマの休日”のアン女王=オードリー・ヘプバーンの吹き替えをされた池田昌子さんになったんでしょうか?
 ミネバ・ラオ・ザビの偽名”オードリー・バーン”のモトネタがオードリー・ヘプバーンなので意外とかぶっているのかも。
(*3)南雄介副館長
 1959年生まれとのことですので、私と同世代。ファーストガンダムから見てるガンダムファンだったりして?!
 今回の展示会を仕掛けたのもこの人でしょうかね?
(*4)と書いてます
 こういった展示会の図録でアニメ作品の解説を半ページ以上にわたって、しかもアニメの図入りで入れるってけっこう異例じゃないかなぁ。少なくとも私は初めて見ました。

隠しごとのある人間にとって会話ほど危険なものはないんです(ABC殺人事件/クドリャフカの順番/藍)

 ども、連続殺人事件の犯人、たいちろ~です。(ウソです、ホントに)
 先日、古典部シリーズの第3作”クドリャフカの順番”を読みました。文化祭の最中、アイウエオ順にモノが盗まれるというお話ですが、このモチーフになっているのがアガサ・クリスティーの名作”ABC殺人事件”。昔読んだんですが、記憶もあやふやだったので、久しぶりに再読いたしました。


0414
写真ははたいちろ~さんの撮影。駒込で見かけた藍です。


【本】ABC殺人事件(アガサ・クリスティー ハヤカワ文庫)
 名探偵”エルキュール・ポアロ”に届いた一通の手紙、それが始まりだった。アンドーヴァーでアッシャー夫人が殺され、ベクスヒルでバーナード嬢が殺される。地名と名前がABCの順に発生する連続殺人事件。犯人は逮捕されたがその裏に隠された真犯人とは・・・
【本】クドリャフカの順番(米澤穂信 角川文庫)
 古典部の面々は手違いで大量に出来上がった文集に困っていた。そんなころ、神山高校文化祭でアイウエオの部活の名前順にアイウエオの名前のつくモノが盗難されるという”十文字事件”が発生した。事の真相を推理した古典部の折木奉太郎はこの事件を使って文集の販売を思いつく・・・
【花】藍(あい)
 タデ科イヌタデ属の一年草。藍染めに使われる植物です(*1)。
 おそらく日本の植物図鑑では一番最初に出てくる名前かと。
 そんだけです、すいません。

 ネタバレになりますが、2作品の共通点って

  ①ABC(アイウエオ)順に事件が起こる
    クドリャフカの順番:クラブの名前と盗難されたモノ(くだらないモンばっかですが・・)
    ABC殺人事件  :地名と殺される被害者
  ②犯行現場に順番を示唆する遺留品がある
    クドリャフカの順番:文化祭のパンフレット
    ABC殺人事件  :ABC時刻表

 ぐらいかな。まあ、あえて言うなら犯行声明があるぐらい(”ABC殺人事件”は事前にポアロに届いてますが”クドリャフカの順番”は事件現場の慰留品)

 だもんで、読後感はずいぶん違います。方や名探偵が主人公で殺人事件、方や高校生が主人公で日常系ミステリーなんで当たり前ちゃ、当たり前ですが。

 まあ、大きく違ってるのは主人公のアクティブさ。
 ”ABC殺人事件”の名探偵ポアロと友人でワトスン(*1)役の会話。

  ヘイスティングズ:
      あなたに協力するためには、一緒に<こってりした(クリーミー)>な
      犯罪を探さなければならないですね
  ポアロ:この前あなたが言ったことを覚えていますか。
      ディナーを注文するように犯罪を注文できるとしたら、あなたは何を選びますか
  ヘイスティングズ
     :そうですねえ。メニューを見てみましょう。
      強盗かな? 贋金造り? いや、ちがうな。それじゃヴェジタリアン向きだ。
      殺人じゃないといけないな--- 血のしたたる殺人---
      もちろん、添え物を付けて
  ポアロ:そうですとも。オードヴルをね

 別にポアロが殺人事件好きってわけでもないんでしょうが、けっこう物騒な会話です。
 一方、”クドリャフカの順番”の探偵役”折木奉太郎”はといえば

   やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に

をモットーとする省エネ主義者(好きです、こういう生き方!)。むしろアクティブなのはヒロイン役の”千反田える”だったりします。

 あと、推理の手法も違っていて、ポアロは会話から犯人を見つけるタイプ。

  言っておきますがね、ヘイスティングズ
  隠し事のある人間にとって会話ほど危険なものはないんです!

    (中略)
  人間というものは、ヘイスティングズ、会話が与えてくれる機会を利用して
  自らを暴露し、自己を表現せずにはいられないものなんです。
  そのたびに、自分をさらけ出してしまうんです

とはポアロの言葉。なんで、一見、意味のなさそうなことを質問したり、ブラフをかけたりしています。
 折木奉太郎というと手掛かり(状況証拠)から真実を推論するタイプなので、どっちかというとホームズ型かな。本人は推論が当たっているかどうかは運の良さと考えてる自覚のなさだし(*3)。むしろその実力を高く評価してるのはまわりのほうだったりします。
 ”クドリャフカの順番”の場合だと推理に関する会話って犯人に対する推理の説明ぐらいで、

  名探偵、皆を集めて”さて”と言い

すらやってないし。

 まあ、かなりテイストは違いますが両方とも面白い作品です。
 読み比べて見るのも一興かも。


《脚注》
(*1)藍染めに使われる植物です
 ”青は藍より出でて藍より青し”と言いますが、別に葉っぱが青いわけではないです。葉を傷つけると傷口が藍色になるんだそうです。人んちの植木なので試してませんけど。
 ちなみに、現在の青色の染めは化学合成したインディゴ染料が主流で、藍はあんまり使われなくなったとか。
(*2)ワトスン
 ”シャーロック・ホームズ”に登場するホームズの友人にして語り部役。
 ”ABC殺人事件”はヘイスティングズスの記述という形で書かれています。
(*3)推論が当たっているかどうかは運の良さ
 ある日俺がマイクを持ち”本日は晴天なり”と言ったとする
 それを聞いたものはこう思うだろう。折木君はマイクのテストがしたいのだなと。
 しかし、別のものはこう思うかもしれない。”今日は晴れている”と主張したいのだなと
 どちらの推論も理にかなっている
 どちらが正解かを言い当てるのは運としか言いようがない

  (アニメ版”氷菓”、”心あたりのあるものは”より)

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