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”設定資料”というビジネスを考える(ロマンアルバム 他/バベルの塔)

 ども、モノゴコロついたころからアニメを見てた世代のおぢさん、たいちろ~です。
 とある大人の事情がありまして”バビル2世(*1)”の昭和版アニメを10数話ぶっとおしでみました。まあ、現在のアニメの作画レベルとは比べようもないレトロな作品ですが、それはいいとしてと~っても気になったのが”バベルの塔”のデザインが話数によって違うこと。コンピューターのデザインがあるのはまだ許せるとしても、なんで建物が複数あるんだ?!(*2) 設定資料は見てるのか?! と突っ込んでしまいました。で、ふと我に返ると本来作成者側の内部資料である設定資料なんぞを何故、知っているのか? まあ、昔はこの手の本をけっこう買ってたんですが、買ったということは売った人がいるわけです。
 ということで、今回のお題は”設定資料というビジネスを考える”であります。


写真は”バビル2世”のDVDより。デザインの違うバベルの塔です。

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【建築物】バベルの塔
 旧約聖書の「創世記」中に登場する巨大な塔。人類が天に届く”バベルの塔”を作り、これに怒った神(エボバ)がこの塔を破壊し、人々の言葉を通じなくしたというもの。
 ”バビル2世”では不時着した宇宙人”バビル”が救難の目印として建設したが事故により破壊されたという設定です。


 今回のお話は、1970年代後半から1990年代後半に至る設定資料ビジネスの変遷。まあ、おぢさん世代の昔話と思ってお付き合いください


〔”宇宙戦艦ヤマト”とロマンアルバムの誕生〕
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 アニメに最初の転換期をもたらしたのが1974年に放映された”宇宙戦艦ヤマト”。企画・原作に”西崎義展”、監督に戦場マンガシリーズの”松本零士(*3)”。この作品の解説本として徳間書店より発刊したのが今に続く”ロマンアルバム”の第一作”宇宙戦艦ヤマト”です。”テレビランド”という子供向けアニメ雑誌の増刊号としての発刊ですが、この本のヒットによりアニメ雑誌”アニメージュ”も誕生したというエポックメイキングな本でもあります。
 子供向けだったアニメが当時でいう”ヤングアダルト(*4)”向けビジネスとして成り立つ(ぶっちゃけ儲かる)ということが証明されたわけで、これからアニメ雑誌や設定資料を載せた本が登場していくことになります。


〔”さらば宇宙戦艦ヤマト”とアニメ解説本の拡大〕
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 ”宇宙戦艦ヤマト”のヒットを受け続編として1978年に公開されたのが”さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち” このあたりからアニメがサブカルチャーとして定着し始め、1977年に”月刊OUT(みのり書房)”、1978年に”Animec(ラポート)”、1979年に”ジ・アニメ(近代映画社)”、1980年に”ふぁんろ~ど(ラポート)なんつー雑誌が次々発行されます。
 この時期はディープな設定資料が出版されてまして、思い出深いのが”さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち 精密図解集”という登場するメカのブループリント(*5)を集めた本。メカの3面図を載せた本ですが、けっこうそれらしい雰囲気でお気に入りでした。


〔”機動戦士ガンダム”と設定の精緻化〕
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 ヤマトに続いてエポックメイキングだったのが1979年に放映された”機動戦士ガンダム”。ワンアンドオンリーだった巨大ロボットを単なる”兵器”として位置付けたこの作品は”なぜ人型ロボットが必要なのか(*6)”を論理的に突き詰めた最初でもありました。
 で、この方向性を決定したのが月刊OUT増刊号の”ガンダムセンチュリー”。"ミノフスキー物理学"や"AMBAC"といったSF用語満載で、本家のサンライズが採用した設定もあるという画期的な本でした。
 ガンダム人気を受けて後発である”月刊ニュータイプ(角川書店)”が創刊したのが1985年のことです。


〔VTRの普及と”超時空要塞マクロス”〕
 本ではないですが、このあとの時代のエポックメイキングなテクノロジーだったのがVHS(今のDVDみたいなモンと思ってください)。オタク評論家の岡田斗司夫がなんかで書いてましたが(”東大オタク学講座”だったかなぁ)、VHSの登場によってアニメの見方が決定的に変わったとのこと。今風に言うならフロー(流れて消えていく)のエンタテインメントだったアニメがストック化(蓄積、再生)でしょうか。つまりほとんど見直しのできなかったTVアニメが、ストップモーションやスロー再生ができるようになってより分析的な見方ができるようになったということです。上記の”バベルの塔”だってTV放送なら、あれっ? と思ってる間に過ぎちゃってってるんで、おぢさんにこんなにぐだぐだ言われることもなかったろうに・・・
 国立科学博物館の査主任調査員 川村俊明氏の論文によると家庭用VHSの普及期が1975年~84年頃で、普及期が1985年~94年頃だそうです。(私が初めてVHSを買ったのも確か84年頃でした。
 で、VHSの普及と時期を一にするのが1982年放映の”超時空要塞マクロス”。上記の岡田斗司夫がやってましたが”板野サーカス(*7)”と呼ばれる演出をコマ送りで見るなど、より分析的な視点で見ることが可能になった時期です。

〔”ウルトラマン研究序説”とエヴァンゲリオンの登場〕
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 1991年にあるユニークな本が発行されました。その名も”ウルトラマン研究序説”。若手学者による”ウルトラマン”の学術的考察といった内容で、後の謎本ブームの元祖となったような本ですが、この系譜にもっともマッチしたのが1995年に放映された”新世紀エヴァンゲリオン”。この作品が特徴的なのはモノゴコロついたころからアニメを見て”宇宙戦艦ヤマト”で思春期を送った世代(私と同じ世代です)が作り手に回ったこと。さらには監督の庵野秀明を始め、主要メンバーが大学のSF研究会出身ということです。”千冊読んだらSFってなんだかそろそろ分かるんじゃないかな(*8)”みたいなディープなSFの読み手が作った作品ですので、内容がとってもハード。SFから宗教学に至るまで、広範な知識がないとなにいってるか分かんない内容がてんこもりで、それを解説するのには”研究序説”的な本が必要だったんですね。

 まあ、この手の話題をやりだすと”宇宙戦艦ヤマト全記録集”や”機動戦士ガンダム 記録全集”といった豪華本から”ケイブンシャ 大百科シリーズ”まで枚挙に遑がないんですが。で、ひるがえって平成の御代。デアゴスティーニライクな分冊百科があり~の、ネットでいろいろ調べられ~の、映画館で公開中にDVDが出ぇ~の、放映直後に動画がネットにアップされ~のと情報満載です。思うに、作品のシリーズ化や、ドラマの複雑化大人の鑑賞に堪える作品の増加など作り手側の事情もあれば、マーケットの拡大や、アニメを卒業しない大人の増加(つまり私です)(*9)、SNSに代表される深読みする人のネットワークの形成なんかいろいろからみあって、現状、つまり儲かるビジネスになってるんでしょうなぁ。
 学生のころ、少ない小遣いはたいて本を買ってた、でも出版された本はだいたい買えた世代にしたらうらやましいのやら、驚いてよいのやらではあります。


《脚注》
(*1)バビル2世
 原作は漫画界の巨匠”横山光輝”、主人公”バビル2世”のCVはこれが初主演の神谷明、主題歌は”アニキ”ことアニソンの帝王”水木一郎”となかなかに豪華なメンバー。それなりにちゃんと作った作品だと思うんですがねぇ。
(*2)なんで建物が複数あるんだ?!
 ”バビル2世”では、バベルの塔は目印(救難信号)の為に建築されたものです。したがって、電波望遠鏡が複数の小さいアンテナから構成されているように、バベルの塔も高出力を得るために複数で構成される”群”であったと予想されます。事故により破壊されたのはアンテナではなく中枢コントロールである可能性が高く、これにより電波の発信ができなくなったのではないかと推測されます。
 といったことを考えるのがSF考証。まあ、”理屈と膏薬はどこへでも付く”とでも申しましょうか・・・
(*3)松本零士
 SFモノ、ミリタリー漫画を得意とした漫画家。いろいろ大人の事情があってリメイク版”宇宙戦艦ヤマト2199”に名前が出てこないのはオールドファンとしてはさびしい限りです、はい。
(*4)ヤングアダルト
 おおむね12歳(中学生)から19歳(大学生)あたりの世代。今ならライトノベルの読者層とでも言いましょうか。
(*5)ブループリント
 CAD(computer aided design)世代の若い人には分かんないかもしれませんが、昔は設計図はすべて手書きで、これをコピーするのにジアゾ式複写機(通称 青焼き機)が使われてました。このコピー機は原理上青い紙に白い線がでるというシロモノで、機械図面=ブループリントって時代でした。
(*6)なぜ人型ロボットが必要なのか
 レーダーが機能しない状況では人間なのか人型ロボット(モビルスーツ)なのかが判別できないもの。この”レーダーが効かない”状況を作り出したのがミノフスキー粒子に代表されるミノフスキー物理学。で、本来はデッドウェイトである手足をぶんまわすことで推進材を使わず姿勢制御をやる技術が"AMBAC(Active Mass Balance Auto Control 能動的質量移動による自動姿勢制御)”。
 まあ、今見ても良くできた設定です。
(*7)板野サーカス
 演出家”板野一郎”による立体的超高速戦闘アクションシーンのこと。そのスピード感やアクロバティックな動きって、斬新で驚きましたね、目がついてけなかったけど。
(*8)千冊読んだらSFってなんだかそろそろ分かるんじゃないかな
 はっきり言って、昔のオタクってすごい読書家だったんですよ。この辺の話は”オタクはすでに死んでいる”をご参照ください。
(*9)アニメを卒業しない大人の増加(つまり私です)
 アニメのではないですが、日経新聞にライトノベルの”涼宮ハルヒの憂鬱”の広告が掲載された時はちょっと驚きましたね。ビジネスマン=大人向きの新聞なのに、広告出して元取れるほど、大人の世界に浸透してるんだなぁ~ と。

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