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体制に対する民衆の信頼をえるには、公平な裁判と、公平な税制度があればいい(国家はなぜ衰退するのか/銀河英雄伝説/食虫植物)

 ども、脱税どころか節税するお金もないおぢさん、たいちろ~です。
 消費税が5%から8%に上がることが決まったようです。まあ、食べ物と酒と本以外にほとんどお金を使わない人なので、上がるからと言って節税ができるようなもんじゃありません。せいぜい”B○○K○FFの105円棚は110円になるのか? 108円になるのか?”が気になるぐらいでしょうか。
 さて、今回の税金のアップが景気にどう影響するかが焦点になってますが、税制ってもっと根深くて国家が繁栄するのか衰退するのかのターニングポイントでもあります。ということで、今回ご紹介するのはそんな国家の繁栄・貧困の起源を分析した本”国家はなぜ衰退するのか”であります。


Photo

写真はたいちろ~さんの撮影。
尾瀬牛首十字路付近に自生するナガバノモウセンゴケです。


【本】国家はなぜ衰退するのか
 (ダロン・アセモグル、ジェイムズ・A・ロビンソン 早川書房)
 サブタイトルが”権力・繁栄・貧困の起源”とあるように、世界にはなぜ豊かな国と貧しい国が存在するのかを古代ローマから、名誉革命期のイングランド、日本、ソ連、ラテンアメリカとアフリカ諸国までの事例を分析し繁栄と衰退の要因を分析した本。
【本】銀河英雄伝説(田中芳樹、創元SF文庫他)
 銀河系にまでその範囲を拡大させた人類は銀河連邦を成立させるが、社会が閉塞感する中、ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムは独裁政権を確立し”銀河帝国”を建国した。帝国暦164年、アーレ・ハイネセンは帝国からの逃亡に成功し、民主共和政治を礎とする”自由惑星同盟”を建国した。その後、退廃と停滞の続く”銀河帝国”、政治的な腐敗にみまわれる”自由惑星同盟”は150年にわたる戦争状態に陥る。その状況を打破したのが帝国軍の”常勝の英雄”ラインハルト・フォン・ローエングラムと同盟軍の”不敗の名将”ヤン・ウェンリーであった・・・
 銀河系に広がる人類の興亡を描いた一大SF長編小説。お勧めです。
【花】食虫植物
 食虫という習性を持っている植物の総称。一般的には光合成はするんですが、土地が痩せてるんで虫を食べて栄養補給をしてるんだとか。上記のモウセンゴケも湿地帯に自生しています。先端の花っぽいのは実は葉で、粘毛から甘い香りのする粘液を分泌して虫を捕獲します。


 結論から言うと国家が繁栄するか衰退するかの最大の要因は地理でも、気候でも、文化でも、為政者の無知でもなく、政治・経済上の”制度”と結論づけています。まあ、東西ベルリン(*1)や韓国と北朝鮮なんて分断されたのは第二次世界大戦後の話ですし、この期間での経済発展差の発生は地理や、気候、文化の差では説明しにくいでしょうね。

 では、なぜ国家の繁栄にはどんな”制度”なのかというとポイントは2つ

〔包括的制度〕
 制度には”包括的制度”と”収奪的制度”があるそうで、”収奪的”とははエリート層(国王や貴族、独裁政権のトップ)が利益を独占するための制度。これに対応するのが”包括的”。多元的つまりステークホルダーがたくさんいる中で、体制のトップを選挙によって選出でき、利益が適正に分散されるような制度です。
 まあ、政治的制度と経済的制度とがあるんで4つの象限に分かれるんですが、ここではひとまとめにしときます

〔中央集権体制〕
 発展をするためには”制度”を施行(強制)するための体制が必要で、それが国家内で集権的である必要があります。まあ、現代日本が中央集権的、群雄割拠した戦国時代が分権的といえばわかりやすいかも(*2)。現代では中央集権が成立せず分権的勢力が権力闘争をすると”内乱”になります。

 で、繁栄をするためにはこの組み合わせで、中央集権体制でかつ、包括的制度が確立しているのが望ましいとのこと。でないと革新に至るモチベーションが発生しないからだそうです。
 社会が”繁栄=成長”するには従来と違うやり方(発想や技術、生産体制)などが必要になります。で、こういったものを作りだそうというエンジンがモチベーション。ところが、モチベーションというのは

  ①自分が行ったモチベーションに対する受益が保証されている
    (少なくとも得られるであろう利益を理不尽に収奪されない)
  ②モチベーションに対して不当な弾圧が加えられない

が担保されている必要があります。

 ①はたとえば、春に自分の植えた野菜が、秋の収穫期に土地ごと持ってかれる可能性があれば、だれも真面目に耕作しようとは思いません。ですので、モチベーション以前に生産性の向上自体が望めません。
 ②はちょっと解かりやすいにくいです。普通なら”モチベーションによる生産性や利便性の向上は社会にとって良いこと”と思いがちですが、モチベーションには創造的破壊という側面があって、ここで”破壊”されるのが往々にして旧勢力や職を失う人だったりします。モチベーションにより経済的利益を得るのが新興の商人だったりすると彼らが力をつけることで政治権利を求めるようになり、旧勢力の王族、貴族にとって望ましいものではないですし、機械による生産性の向上は旧態然とした作業に従事している労働者の職業を奪われるんじゃないかと恐れられちゃいます。その典型が”ラッダイト運動(*3)”。世界史でやったけど覚えてますか? 歴史上の話と思われるかもしれませんが、パソコンの登場期に”IT革命に取り残されたおぢさんの仕事がなくなる!”みたいな話が真面目にあったんですから、まあ、いつの時代でも起こりうることなんでしょう。
 一時期のソ連や現在の中国のように、中央集権体制で収奪的制度の社会でも繁栄がないわけではないんですがモチベーションがなければ長続きしないんじゃないかとも言ってます。また、このような社会では”親の総取り”的な様相があるんで、政権交代(クーデターとか)が起こっても独裁的な性格がそのまま(場合によってはより悪く)継承されるだけってケースもあります。
 このような繁栄しない社会=痩せた土地でなにが起こるかというと、エリート層はより簒奪的に富を集中させ、権力基盤をより強固にしようという行動に移ります。仮に一時期は利益誘導(甘い香りのする蜜)でいい目にあっても、トップの気まぐれでいつパクっと食べられちゃうかわかんないという不安定な状況でもあります。

 上下2冊の分量があるので、かなり大まかに丸めてますが、だいたいこのような話が歴史的な事実をもとにまとめられているのがこの本です。

 話は飛びますが”銀河英雄伝説”というSF歴史小説の中に銀河帝国皇帝になるローエングラム侯がこんなことを言っています

  体制に対する民衆の信頼をえるには、ふたつのものがあればよい。
  公平な裁判と、同じく公平な税制度。ただそれだけだ。 

   (ラインハルト・フォン・ローエングラム 第3巻”雌伏篇”より)

 ここで”公平な裁判”を政治的な、”公平な税制度”を経済的な権利と捉えると(*4)、同じようなモンかなと思っちゃいます。

 本書のユニークなのは、数々の事例を引きながら、”中央集権体制でかつ包括的制度が歴史の必然”とはしていないこと。むしろ、現在繁栄しているアメリカ、ヨーロッパ諸国、日本などは歴史の偶然によってこのような制度になったと考察しています。まあ、北京の蝶々(*5)よろしく小さな初期条件の違いが後に大きな差異を生み出すものだと。ましてや、中央集権は権力を握るとより大きい権力を手に入れたいという権力者のモチベーションが発生するので、国民がしっかりしていないと収奪的な方向に流れかねません(*6)。
 歴史的な発展認識としては、資本主義の高度な発展にが共産主義社会を生み出すとした”カール・マルクス”や、すべての社会が民主化へ向かうとした”シーモア・リプセット”の”近代化理論”なんかがありますが、それらとは一線を隔した”突き放した感”がけっこうお気に入りです。経済学としても、歴史学としても面白い本です。


《脚注》
(*1)東西ベルリン
 冷戦の象徴だった”ベルリンの壁”が建設されベルリンが東西に分断されたのは1961年。この壁が破壊されたのは1989年11月10日のこと。もう四半世紀近く経つんですねぇ。”サイボーグ009”の第一話(初出は1964年)で”004(ハインリヒ)”が東ベルリンから亡命を図るというエピソードが出てきますが、今の若い人にはもう歴史上の話なんでしょうか。
(*2)現代日本が中央集権的~
 ”地方分権”はなにかと言われそうですが、これは機能の問題。国防や外交なんかを県レベルでやるのは現実的ではないってことです。仮にTPP交渉なんかを県単位でやってたら、きっとぐちゃぐちゃになるんでしょうねぇ(ちょっと見たい気もしますが・・)
(*3)ラッダイト運動
 1811年~1817年頃にイギリスの織物工業地帯に起こった機械破壊運動。産業革命にともなう機械使用の普及で、失業のおそれを感じた労働者が起こした、まあ反産業革命みたいなものです。
(*4)”公平な裁判”を政治的な~
 なぜ”公平な選挙”ではないかというと、元々銀河帝国には民主主義的な選挙制度なるものが存在しないのでそのような発想がないから。同じくラインハルトは
  民主共和政とは、人民が自由意志によって自分たち自身の制度と
  精神をおとしめる政体のことか

   (第5巻”風雲篇”より)
とヤン・ウェンリーに質問していますが、対立勢力たる自由惑星同盟が政治的な腐敗に陥ってるんだから、そんな疑問も出てこようと言うものです。
(*5)北京の蝶々
 別名”バタフライ効果”。通常なら無視できるような小さな差が、大きな結果の違いをもたらすというカオス理論で使われる比喩です。
(*6)収奪的な方向に流れかねません
 ”銀河英雄伝説”では民主共和制の銀河連邦から銀河帝国が成立過程をちゃんと書いてるんですが、まさにこれです。(第1巻”黎明篇 銀河系史概略”他)

 

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