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”姑獲鳥の夏”って、押井守監督でプロダクション・アイジーあたりでアニメ化するのも面白かったかもね(姑獲鳥の夏/ダチュラ)

 ども、見たくないものは見ない主義のおぢさん、たいちろ~です。
 最近、”さらっと系”の推理小説ばっか読んでるので、そろそろ”どろどろ系”のを読もうかと思ってたところ、高校時代の友人でこのブログにつっこみをくれるYO~YO~氏から京極夏彦の”百鬼夜行シリーズ”を送ってくれました。前々から読みたいな~とは思ってたんでこれ幸いと読書開始。妖怪の名前のついた本ぐらいしか予備知識がなかったんですが、読むと面白かったんだなあれが。推理小説としては、かなり少ない状況証拠と残された被害者の日記から壮大な推理を展開する拝み屋とか、”過去の記憶が見える”という”見崎鳴か!(*1)”と突っ込みたくなるような探偵とか、けっこう掟破りなとこもありますが、今までにないシロモノです
 ということで、今回ご紹介するのは”百鬼夜行シリーズ”の第一作”姑獲鳥の夏(うぶめのなつ)”であります。


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写真はたいちろ~さんの撮影。近所で見かけた”ダチュラ”です。
私が栽培してる訳ではないですから、いやマジで。


【本】姑獲鳥の夏(京極夏彦、講談社文庫)
【DVD】姑獲鳥の夏
    (原作 京極夏彦、監督 実相寺昭雄、出演 堤真一、永瀬正敏、原田知世)
 戦後間もない昭和二十七年夏、作家の関口巽は古くからの友人”京極堂”こと中禅寺秋彦の家を訪ねる。関口は”二十箇月もの間子供を身籠っていることができると思うか”と京極堂に問う。身籠った女性”久遠寺梗子”、梗子の姉”久遠寺涼子”、その母”久遠寺菊乃”・・・ 憑物筋の家系”久遠寺”にまつわる呪いを京極堂は祓うことができるか?
【花】ダチュラ
 チョウセンアサガオ属の一年草または多年草。別名”チョウセンアサガオ
 全草にアルカロイドを含んでおり、本書で使われているように摂取すると全身の弛緩、意識混濁、見当識障害、譫妄状態、記憶喪失などを引き起こすんだそうです。
 写真は名前札があるわけではないですがたぶん”ケチョウセンアサガオ”。こんなヤバいモンがなぜ普通に道端に生えているかは不明です。


 で、この小説を一言で言うと

  江戸川乱歩のとり憑いた押井守、ちょこっと水木しげる

ってとこでしょうか。おどろおどろしい雰囲気って江戸川乱歩(*2)っぽいし、乱歩の活躍した戦中戦後は”姑獲鳥の夏”の時代設定と同じだし。水木しげるは妖怪つながり。映画版では京極夏彦が”水木しげる”役で京極堂に姑獲鳥のことを会話するシーンが出てきます。
 でも、すんごく似てるな~と思ったのが押井守(*3)。とにかく理屈っぽいんだ、京極夏彦も押井守も。小説の前半では70ページ近く”認知論”みたいな哲学的な話が延々続きます。これが宗教的な話があり~の、脳科学な話があり~の、歴史認識の話があり~の、さらには不確定性原理の話まで飛んじゃってます。このくだりでコロっといちゃいましたね。

 幽霊とか不思議な現象に対する京極堂の言葉

  そうして已むおえず嘘を吐いてしまった脳は、
  その後辻褄合わせの帳簿の改竄を始める。
  プライドが許さんのだ。
  脳は自然科学の通用する世界に存在するものだからね。
  斯くしてこの世に怪異といういい訳と宗教という自己弁護が誕生したのだ

 京極堂は古書店主のほかに”武蔵晴明神社の宮司”でもありますが、宮司さんのセリフじゃないな~。京極堂のスタンスって”絶対的認知の喪失”とでも言いましょうか。推理小説って”たった一つの真実見抜く”って側面と、その真実がさまざまな人からどう違って見えるかをひも解くって側面がありますが、真実ってのが正しく認知されるのが前提。その認知が不確かってのが本書の特徴かと。

  君を取り囲む凡ての世界が幽霊のようにまやかしである可能性は
  そうでない可能性とまったく同じにあるんだ

 これは本書のキャッチコピである”この世には不思議なことなどなにもないのだよ、関口君”の直前に出てくる言葉。夢と現実が脳によって等価であるなら、なんでもありの世界です。押井守の名作”うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー”(原作 高橋留美子、キティ・フィルム)の中で、夢を操る妖怪”夢邪鬼”に”夢と現実がどう違うんだ”といった会話が出てきますが、そんなん思い出しちゃいましたね。

 原書と合わせてDVD版も観ました。監督はウルトラマンなど特撮映画の巨匠”実相寺昭雄”。おどろおどろな作品を単なるホラーにしない雰囲気作り、絶妙なライティング、BGMの使い方など、やっぱし上手いなぁ。でも、この雰囲気、どっかで見たことあるような~と思ってたら、これって”ウルトラマンティガ”の第37話”花”(*4)によく似てるんですよね、テイストが。
 映像としては舞い散る桜の花びらの演出が姑獲鳥の羽毛を連想させるとか、カットバックで登場する子供をお腹に抱いた石仏とか、着物の美女の登場とか。特に効果的なのが音響。拍子木の響きに鐘の澄んだ音色が両作品ともいい雰囲気出しています。まあ、”姑獲鳥の夏”で場面転換の時に流れる”ショワヮヮヮ~~”ってのは単なるお遊びでしょうけど。
 ただ、キャストがね~。別に堤真一や原田知世が合ってないとかヘタだとかって意味じゃなくて、キャラクターとしての”久遠寺涼子”じゃなくて”久遠寺涼子”を演じる”原田知世”と脳が認識しちゃって。この手の現実離れした話ってのは実在のスターが演じるってのは難しいのかもしれません。いっそのこと押井守監督でプロダクション・アイジーあたりでアニメ化するのも面白かったかもね(*5)。
 しかし、原田知世もラベンダーの温室から遠くへ来たもんです・・・(*6)

 ということで、第二作目の”魍魎の匣(もうりょうのはこ)”を読み始めました。読み終わったらまた感想書くからね、YO~YO~


《脚注》
(*1)見崎鳴か!
 綾辻行人のホラー・ミステリー”Another(アナザー)”に登場するヒロイン。腫瘍により失なった左眼で”死の色”が見えるという美少女。
 探偵”榎木津礼二郎”は極度の弱視である代わりに他人の記憶が見えると言う能力の持ち主。両名とも欠損した視力を補うための能力を持っている特殊能力者です。
 ちなみに出版されたのは”姑獲鳥の夏”のほうが先。
(*2)江戸川乱歩
 猟奇・残虐趣味なテイストな日本を代表する推理小説家。学生時代はけっこう入れ込んで読みました。最近では”ビブリア古書堂の事件手帖”(三上延、メディアワークス文庫)のモチーフとして登場しましたが、またブームになんないかなぁ
(*3)押井守
 アニメや実写映画を手掛ける映画監督、作家。代表作は”うる星やつら”、”機動警察パトレイバー”、”攻殻機動隊”など。理屈っぽいセリフと独特の暗い雰囲気がけっこうお気に入りです。
(*4)”ウルトラマンティガ”の第37話”花”
 平成ウルトラシリーズの第一作”ウルトラマンティガ”のエピソード。
 宇宙から地球への移住をたくらむマノン星人が邪魔になるGUTSのイルマ隊長を誘拐するというお話。動画はこちらからどうぞ。
(*5)プロダクション・アイジーあたりで~
 アニメーションの企画・制作会社。上記の”機動警察パトレイバー”、”攻殻機動隊”など押井守監督で作成しています。
(*6)ラベンダーの温室から
 原田知世の映画主演作”時をかける少女”(監督 大林宣彦)でラベンダーの花の咲く温室で深町一夫とお話をするシーンが出てきます。おぢさん世代にとって、原田知世ってどうしても”時かけ”なんですよねぇ

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コメント

よく誤解される事なんだjけど、京極夏彦は心霊現象とか妖怪が出てきて怪異を起こすようなものはかいてませんよ。妖怪が主人公になっているのは、豆腐小僧くらいかな。これは他の作品とは違って、コメディタッチでなおかつちょっと感動もの。
基本的には京極夏彦は妖怪大好き!!心霊も肯定も否定もしないスタンスだけど不可思議大好きな人なんですね。江戸時代の戯曲や本、もっと古い記録や文献も本当に膨大な量を参考にしているからかなりコアな描写になったり、論理的になったりするけど、そこがまた彼の魅力なんですね。
けっこうお茶目でいたずら好きだったりする人なんですよ。

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