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まわりが狂気の中、流されずにいるのは難しい生き方のようです(永遠の0/コックピット)

 ども、C130ハーキュリーズ輸送機のコクピットに座ったことのあるおぢさん、たいちろ~です(*1)。
 私の義理のお父さんは戦時中は本物の飛行機乗りでして、一度戦闘機に乗っている写真を見せてもらったことがあります。特攻の練習をしていた時に終戦になり死なずにすんだとのことですが、そのおかげで私の奥様が生まれ今の子供たちがいるわけです。そう考えると特攻というのは生きて帰れない=人の命のつながりを断ち切る行為であり、自ら望んでか、断れない状況に追い込まれたかにかかわらずやはり狂気の作戦だったんじゃないか思います。
 なんでこんな話をしてるかと言うと、会社で一緒に仕事しているKさんが”永遠の0”を借してくれて読んだから。ということで、今回ご紹介するのは特攻で死んだ飛行機乗りを描いた”永遠の0”であります。

C1300665

Photo
上の写真は~たいちろさんの撮影。C130ハーキュリーズ輸送機のコクピット。
下の写真は”福岡エアロレプリカクラブ小僧日記”より。鹿屋基地の航空資料館にあるゼロ戦のコクピット(復元)


【本】永遠の0(百田尚樹 講談社文庫)
 佐伯健太郎は姉の頼みで特攻で死んだ祖父”宮部久蔵”の生涯を調べることになった。ある人は空戦技術の天才といい、ある人は命の恩人だと言い、ある人は臆病者という。特攻という狂気の作戦の中、最後に久蔵が死んだ真相とは・・
 名放送作家”百田尚樹”(*2)によるデビュー作。
【乗り物】コックピット
 航空機などの操縦室のこと。
 C130ハーキュリーズは運用開始が1956年と終戦から間なしですが、当時からこんなにたくさんの計器をながら操作してたんでしょうか? ちなみにこの機種は今だに現役で運用されてています。下のゼロ戦はもっとシンプルですが、逆に言うと少ない情報で飛行機を飛ばさなければならないってことです。
 これだけある計器を一瞬で判断して飛行機を飛ばすってのは並大抵のことじゃないようで、実際に第二次世界大戦時でパイロットを育成するには選抜されたメンバーで3年、末期でも1年は育成期間が必要だったとのこと(*3)。


 冷徹に言ってしまえば、戦いに勝つためには優秀なリソースを相手を凌駕するだけ準備し、効果的に投入するかにかかっています。まあ、なかなかこれが実現できないのが問題なんですが、かといって”七生報国”だの”大和魂”だの精神論で劣勢が挽回できると考えるのは、それが有効なシーンもあるんでしょうが、すべてをこれで解決できると考えるのは論外。先日読んだ”良い戦略、悪い戦略(*4)”によると悪い戦略とは”空疎である”、”重大な問題に取り組まない”、”目標と戦略をとりちがえている”、”間違った戦略目標を掲げている”ことをあげていますが、これをみ~んなやってたのが太平洋戦争の時の日本帝国軍。で、この悪い戦略のもっとも割を食ったのが特攻と言えるでしょうか。

 てな話を書けるのも平和な時代の後知恵なんでしょうかねぇ。本書に出てくる証言をした人達に共通しているのは、国や愛する人達のために命を捨てることへのどうしようもない肯定とか、死への恐怖をヒロイズムに変える納得みたいなのがありますが、こういったことに流されなかったのが”宮部久蔵”じゃなかったかと。

 ネタバレになりますが”宮部久蔵”に関する証言をまとめると
①目的の第一が”愛する人のために生きて帰る”
②飛行中の神経質なまでの用心深さと、生き残るための空戦技術の持ち主
③戦局全体を見た冷静な状況判断
あたりになるでしょうか。
 ”御国の為に死ぬ”ことが当たり前と考える人にとっては、宮部久蔵は①のように生き残るとこを最優先にし、②のようなような用心深さってのは臆病以外のなにものでもないんでしょうけど。話は飛びますが、日本で最も有名なスナイパー(暗殺者)のゴルゴ13にこんなエピソードが出ています。知人からあんたのような一流のプロと言われるようになるための条件は何かと聞かれて(*5)

  10%の才能と、20%の努力、そして30%の臆病さ、残る40%は運だろうな

と答えています。宮部久蔵は自主的に筋トレをやるエピソードが出てきますが、元々ある才能に努力や臆病さもあいまって一流=”天才”の評価を得ているんではないかと思います。

 ③はちょっとややこしいですが、この人はまわりの状況に流されずやるべきことが見えてたんではないかと。敵を撃墜して脱出したパイロットに銃撃した宮部久蔵に対し”男の風上にもおけない”といった非難されていてる状況で、部下のから質問に答えて

  米国の工業力はすごい。戦闘機なんかすぐに作る。
  我々が殺さないといけないのは搭乗員だ

   (中略)
  その勝てたのは運が良かったからだ。
  あの男を生かして帰せば、後に何人かの日本人を殺すことになる。
  そしてーー その一人は俺かもしれない

 本書の中にも出てきますが、空戦性能は高いがパイロットへの防衛能力の低いゼロ戦と撃墜されてもパイロットの生命はできるだけ守ろうとする米国の設計思想の違いもあって、”パイロットを確実に殺す”ことが状況に鑑みて適切な判断だと(*6)。苦しい判断であってもですが。

 本書に登場する証人の中で一番印象に残ったのは意外なことに宮部久蔵を憎悪していた元ヤクザの景浦介山。方や愛する人のために生き残ろうとする男と、帰るべき家もなく友も女性を愛することもない男。正反対な人生感にも関わらず自分よりはるかに優秀な宮部久蔵、そんな男に命を救われたという屈辱。でも。よく考えて見るとこの2人って、国のためでなく自分の為の戦いを戦ったという意味ではもっとも近かったのかも。それに、別れぎわに孫の健太郎を後ろから抱きしめるシーンが出てきますが、宮部久蔵の血族との出会いに一番喜んでいたのはこの男かもしれません。

 本書では、軍上層部のエリート主義の破綻だとか、あたら優秀なパイロットを無駄に消費したとか考えさせられる話がたくさんでてきます。本書は13年12月に映画化されるそうですし、スタジオジブリがゼロ戦の開発者”堀越二郎”を主人公にするアニメ(*7)を公開しますんで、今年はゼロ戦の年になりそう。ぜひご一読のほどを。


《脚注》
(*1)C130ハーキュリーズ輸送機のコクピット~
 横田基地の日米友好祭でC130ハーキュリーズ輸送機のコクピットに座らせてくれるというイベントがありました。もちろん、空は飛んでませんけど気分はもうパイロットです。
 ※2013年度のは日米友好祭は残念ながら中止になった模様
(*2)名放送作家”百田尚樹”
 百田尚樹が”笑っていいとも!”に出演したこの人のことを奥様が”テレビのスタッフの人”と言ってましたが、関西人にしてみるとそんな感覚ですね。かく言う私も”百田尚樹”の名前を初めて知ったのは”探偵!ナイトスクープ(朝日放送)”で全国のアホとバカの分布を調査した”全国アホ・バカ分布考―はるかなる言葉の旅路(松本修、新潮文庫)”ですけど。
(*3)第二次世界大戦時でパイロットを育成するには~
 航空自衛隊のHPで”戦闘機パイロットになるまで”が掲載されていますが、現在はもっと大変。一人前のパイロットを育成するには機体よりも金がかかるって話を聞いたことがありますし。
(*4)良い戦略、悪い戦略(リチャード・P・ルメルト、 日本経済新聞出版社)
 歴史や企業の行動の例を引きながら”良い戦略”と”悪い戦略”の違いを明確にして、どうすれば”良い戦略”を立案できるかを示した本。大変面白いんでぜひご一読を。
 詳しくはこちらをどうぞ。
(*5)あんたのような一流のプロと言われるようになるための条件は~
 ”ロックフォードの野望(謀略の死角)”(さいとう・たかを、リイド社)より。
SPコミックス版 66巻に収録。
(*6)”パイロットを確実に殺す”ことが~
 同じようなエピソードが”エリア88”(新谷かおる、スコラ漫画文庫)に出てきます。脱出したパイロットを撃ち殺す仲間の傭兵”グエン”に対して、主人公のシンのコメント
  シン :人間一人殺すのに20ミリ弾ばらまいていたんじゃ、採算にあわん
  グエン:いってくれるじゃない、大尉さんよ・・・
      着任祝いの出血大サービスってことでどうだい・・・
  シン :そりゃ、おまえの勝手さ。ただ、そんなに気前よくやってると
      イザってときに弾がなくなるぜ
      そんときゃ・・ 自分の命でもサービスするんだな

(*7)スタジオジブリがゼロ戦の開発者”堀越二郎”を~
 ”風立ちぬ”(宮崎駿監督、スタジオジブリ)です。7月20日全国ロードショウ予定。主人公の堀越二郎のCVがなぜかヱヴァンゲリヲンの庵野秀明監督。この人もメカフェチっぽいとこあるからなぁ。

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