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2013年7月

酒呑みの舌を持って生まれたがゆえに、今宵も居場所を求めてさすらう女ひとり酒。いるんですよね~~身近に!(ワカコ酒/お野菜いろいろ)

 ども、浮気をするコンジョも金もないので一人呑みしてる単身赴任のおぢさん、たいちろ~です。
 会社で一緒に仕事をしている人でN子さんというお嬢さんがいらっしゃいます。九州出身でワインから焼酎から日本酒からかんでもど~んと来い、ビールは”ジョッキじゃないと呑んだ気がしない”と豪語する”酒呑みキャラ”を恣にする女性です。料理もとってもお上手で家呑みOK、宴会はまかせなさ~~いというオールマイティの人であります。
 で、先日本屋さんでこの人を彷彿とさせるコミックを見つけました。ということで今回ご紹介するのはそんなお姉さんが主人公の本”ワカコ酒”であります。


【本】ワカコ酒(新久千映 徳間書店)
 村崎ワカコ26歳。酒呑みの舌を持って生まれたがゆえに、今宵も居場所を求めてさすらう女ひとり酒。あなたの隣にいるかもしれない、おひとり様仕様の呑兵衛ショート♪(裏表紙より)


  1編4~12ページ程度のコミックでシンプルな絵柄のながら、実にうまそうに酒を呑みつまみを食べてるんですなぁ、このお嬢さん。酒を呑んだあとの”ぷっしゅー”が酒呑みゴコロをくすぐります。

 まあ、料理をそのまま載せてもいいんですが、それならほかの人がやりそうなので一応花のブログですから、食材になってる植物しばりで書いてみます(写真はすべてたいちろ~さんの撮影)

〔朴葉の味噌焼き〕
 朴(ほお)の葉で味噌を包み火であぶるのが飛騨料理の”朴葉の味噌焼き”です。
 ”朴葉の味噌焼き”自体は食べたことある人も多いかと思いますが、木自体を見た人は少ないんじゃないかと。下の写真は朴の木。意外に大きくなる木で、樹高20~30mになります。葉が大きいので菜盛葉として昔から食器代わりとかに使われてました。

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〔リンゴとブリーチーズのクラッカー乗せ、メイプルシロップかけ〕
 文字通りクラッカーの上に薄切りリンゴとブリーチーズをのせてメイプルシロップをかけたもの。どう見てもスイーツなんですがこれでワインを呑んじゃってるのが酒呑みの性でしょうか。こんど作ってみよう!
 リンゴを知らない人はいないでしょうが、下の写真は国光リンゴの花。美空ひばりが”リンゴ追分”で歌っている”リンゴの花びらが 風に散ったよな♪”のあれ。可憐な白い花が咲きます。
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〔ジェノベーゼソース〕
 バジルに松の実とニンニクをすりつぶしてオリーブオイルを混ぜたもの。本作ではワカコさんが見ているテレビで作っているシーンが出てきます。
 バジルは種から育てると山ほどできるので、毎年ジェノベーゼソースにして会社のお嬢様方におすそ分けしています(お世辞かもしれませんがけっこう好評)。難点はバジル自体はほとんど原価タダみたいなもんですが、松の実が高いこと。以前、ケチってピーナッツで代用したことがありますが、松の実ほど美味しくできませんでした。下の写真はバジルの花。垂直の茎に小さな白い花が咲きます。ジェノベーゼソース作りは、葉っぱを枝から外して、干して、フードプロセッサに葉とオリーブオイルなどを入れて撹拌してとほとんど一日がかり。まあ、作り方が難しいわけではないんでぜひどうぞ。
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〔オリーブの塩漬け〕
 オリーブの塩漬けはビン入りで売ってますが、家庭でも栽培できます。実はよく見ますがこんなかわいい花が咲きます。家で植えていて実がつかないな~と思っていたら自家受粉しないんだそうで2本以上植えないとダメなんだとか。下の写真はオリーブの花。こちらも小さな花が咲きます。
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〔ニンニクのホイル焼き〕
 ニンニクに醤油、バター、お酒などをふりかけアルミホイルでつつんで焼いたもの。素揚げなんかもそうですが、ほくほくして美味。ワカコさんも背徳感を感じつつ眼がぐるぐるにいっちゃってます。ただし、これを食べるには勇気いるんだよな~ 匂いがきつくて。翌日人に会う予定がな~~んもない時じゃないと食べれないし。
 下は行者ニンニクの苗。家庭菜園で栽培できます
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〔イカと里芋の煮物〕
 イカと里芋の煮っうころがし。ワカコさん的にはご飯と食べるのはNGで常温のお酒と呑むもんだとか。
 下の写真は里芋の葉っぱ。フキのような葉と茎の形です。”幼稚園の時に行った芋掘りと違う”と思われるむきもあろうかと思いますが、これは里芋がサトイモ科、サツマイモがヒルガオ科 ジャガイモがナス科と分類上はまったく別モンだからです。

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〔大学いも〕
 こちらもイモを使った酒の肴、というよりスイーツです。一般的にはサツマイモを低温の油で揚げて砂糖と水を煮詰めて作った蜜をからめたものですが本書の中では牛乳とバターも使っているようなのでスイートポテトっぽい? ますますスイーツです。本書では芋焼酎が合うんだとか。
 サツマイモと言えば、写真のように横にだら~と広がっているイメージがありますが、これはツルを土に埋めると不定根が発生してこれが肥大したのがいつも食べているイモになるから(収穫量はへりますが垂直植えも可能)。写真にはありませんがヒルガオ科だけあって、アサガオ(ヒルガオ科サツマイモ属)のような花が咲きます。
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〔揚げ出しトマト〕
 本書の中で一番食べて見たかったのがこれ。トマトを揚げ出しにして出汁、大根おろし、海苔、あられを加えたもの。創作和食になってますがどっかで食べさせてくれるとこないかなぁ。お酒は日本酒が合うそうです。
 写真はトマトの花。大きく赤い実をつけるとは思えないような黄色くかわいい花が咲きます。完熟したトマトを食べたければ家庭菜園がベスト。味の濃さが違います。でも揚げ出しってけっこう作るのめんどくさそうな~~ 友人に料理のブログ書いてるのがいるから(*1)、こ奴に作らせてみようか。
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 他にも空豆、インカのめざめ(じゃがいも)なんてのも載ってますが、写真がないので今回はパスしました。

 ところでワカコさん、結婚式のおよばれ以外はみんなひとり呑みなんですね。でも、決して社交的でないわけもないし彼氏もいるようですがそれでもひとり呑み。そんなワカコさんのお言葉

  一人飲みが好きだけど こうして皆の話を聞いて輪に入ってるのもとても好きだ
  そして何より 今日のおめでとオーラで ひとりの時より食も酒も進んでしまう
  こういう場があるから 安心して明日も一人で飲めるのか

 酒呑みの至言です。

 ”ワカコ酒”は何気に手に取った本ですが当たり!の一冊。
 ということで、ぜひN子さんに貸してあげましょう!!

《脚注》
(*1)友人に料理のブログ書いてるのがいるから
 高校の時からの友人で奥様も同級生というご夫婦です。先日娘が結婚したそうですが、そんな歳だもんな~。
 高校時代は彼女(今の奥様)に料理を作らせることはあっても自分で料理を作るような男じゃなかったんですが・・・ いったい何があった?!
 ご興味のある方はクックパッドの”kuni123”をどうぞ

二十年も経てば殺人事件だって時効です。ましてや恋バナなども(阿寒に果つ/カーネーション)

 ども、七つの顔を持つおぢさん、たいちろ~です。
 人は色々な顔を持っています。人によっては七つの顔だったり、二十面相だったり、千の異なる顕現だったりしますが(*1)、まあ、そこまで行かなくても一人の人格を形成するのは”科学者として私”、”母としての私”、”女としての私”だったりします(*2)ので、見る人によってとかお互いの関係で同じ人がぜんぜん違う人のようなこともあったりします。
 ということで、二十年の時を超えてさまざまな顔を持つ一人の少女を再構成をするお話、渡辺淳一の”阿寒に果つ”であります。


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写真は~たいちろさんの撮影。近所のカーネーションです。


【本】阿寒に果つ(渡辺淳一 講談社文庫)
 二十年前に阿寒で自殺を遂げた天才少女画家・時任純子。高校時代に彼女に恋をした作家の田辺俊一は、彼女と関係を持っていたかつての恋人たちを訪れ、”純子”の本当の姿を再構成しようと試みる。水晶のような多くの面を持つ彼女の本当の姿とは、彼女が自殺した理由とは・・・
【花】カーネーション
 ナデシコ科ナデシコ属の多年草。”母の日”のイメージが強いカーネーションですが、花言葉では”母への愛”のほかにも”熱愛”ってのもあります。


 しかし、渡辺淳一って初期のころははまっていていて、医療モノ(”無影燈”、”白い宴”)とか、伝記モノ(”花埋み”、”遠き落日”)とかほとんど読みましたねぇ(*3)。その中で、ちょっと異色だったのがこの”阿寒に果つ”。読んだのが高校生ぐらいだったと思うので、時任純子や若き日の田辺俊一と同じ年頃。年上の男と付き合って寝ちゃうような女の子が周りにいなかったので(知らなかっただけかもしれませんが・・)、けっこうどきどきして読みました。今回再読しましたが、中年作家となった田辺俊一より年上になっちゃうとやっぱり感じが違いますねぇ。

 で、お話しはというと、彼女をめぐる6人の男と実の姉”蘭子”による昔話です。

〔田辺俊一〕
 高校時代に純子と付き合った男。
 なんとなく純子に誘惑され恋人に。純情で振り回されっぱなしですが、最初に読んだ時は私もこの世代でしたので、今読んでも”そんな時代もあったねと♪”と思っちゃいます。
 同世代としての”純粋”な私。

〔浦部雄策〕
 純子の絵の先生にして、絵を描くためといって処女(かもしれない)純子を抱いちゃういけない人。純子を独占したいがために妻を捨て結婚まで考えたのに

  一緒になれるなら離婚する、なれないなら離婚しない、なんていうのは卑怯よ。
  なれてもなれなくても、まず離婚すべきよ

 と言われちゃってます。利用されるだけ利用されたおぢさん。
 師匠として、年上としての”中年愛”な私

〔村木浩司〕
 新聞記者で純子の姉”蘭子”の恋人。純子は彼とも寝ちゃってます。
 村木と蘭子が寝た日に純子が雪の中にカーネーションを置いてくシーンがありますが、実際にやられるとプレッシャーでしょうなぁ。カーネーションには”熱愛”って花言葉もあるので、手もなく落とされそうです。
 姉の恋人という”不倫”な私。

〔千田義明〕
 自殺未遂を図った純子の担当医師。一度キスしただけというこの中では一番淡白な関係の人ですが、それだけに一番冷静に彼女を見ています。表題の言葉はこの人のモノ。

  千田:でも負け惜しみではないが純ちゃんとは愛し合うより、
     親しい間柄でいたほうが無難だといった気持がしたのも事実です
  田辺:それは賢明だったと思います

      (中略)
  田辺:変なことをおききして、申し訳ありません
  千田:いやいや、もう二十年も経っているのですから。
     二十年もたてば殺人事件だって、時効です

 ですんで、昔の彼女の話をしても、あまり目くじらをたてないようにね、奥様。
 冷静な判断のできる”科学者”な私。

〔殿村知之〕
 純子の同窓生の兄。東京の医科大を中退して左翼グループのオルグ(*4)として北海道に。寒村の診療所を手伝いながら宣教活動を行うもが医師法違反で逮捕。まあ、こういう話題にリアリティがあったのも時代ですねぇ。現在の職業はカメラマン。
 文学に造詣が深く、左翼活動家としても弁舌巧みで東京大学出身(*5)ということもあって”素敵な先輩”キャラのポジションの人。
 純子が最後に会った人ですが、その時の描写

  殿村はいま純子が最後に見せた笑いを思い出す
  その顔は笑っていながら、心の底から笑っていない
  笑おうとして笑いきれぬ、燃えつきぬ淋しさがその顔の滲んでいた

 純子の一面を的確に表現してるって感じの言葉です
 同世代よりやや上の先輩としての”青年愛”な私。 

〔時任蘭子〕
 今は中年となってますがかつては双生児と言われるほどよく似てた純子の姉(*6)。二人は百合な関係にありました。
 蘭子は純子の自殺の原因を田辺に聞かれて

  無理に理由をあげれば、ただ疲れていただけ
  あの人、天才少女だといわれ、美しいといわれ、小悪魔だといわれ
  それにいちいち応えて、疲れ果てたのかもしれません

 人生をマスカレード(仮面舞踏会)に例えるなら、純子のようにたくさんの仮面を持った人ってのは、その分たくさん自分を演じないいけないから疲れちゃうのかもしれません。まあ、一つの仮面でさえい~かげんに生きてるおぢさんには測りかねる世界ではありますが。それが自ら求めたことであってもそれが自殺の原因であるなら哀しすぎますねぇ・・
 もっとも身近な存在であった”姉妹愛”な私。

 多面的な少女を再構成するっていう作業を”渡辺淳一”という一人の作家が行っているってのは、作家そのものが多面的な視点でものを見てるって相互の関係があるのかな~~

  純子と一人の男とのつながりの深さを知る度に
  私はメスを揮う外科医のような緊張と、
  切られる患者の痛みを同時に覚えていたのである

と書いてますが、このへんが初期の医療小説を書いてた渡辺淳一の真骨頂であります。

 ”阿寒に果つ#渡辺淳一の初期の名作。絶版になっていたようですが、”渡辺淳一セレクション”として2013年7月に講談社文庫より再刊されました。ぜひご一読のほどを。

PS.
 実はこの本の再読を思い立ったのは”永遠の0(*7)”から。こっちは特攻隊で亡くなった祖父の過去を再構成する話ですが、語る人によって見え方が違うというモチーフが同じなので、なんとなく連想しました。
 電車の吊り広告で上記の”渡辺淳一セレクション”と”永遠の0”が並んで出てましたが、同じよなこと考えた人がいたのかなぁ・・・


《脚注》
(*1)人によっては七つの顔だったり、二十面相だったり、千の異なる顕現だったり~
・七つの顔
 ”七つの顔の男シリーズ”の主人公”多羅尾伴内”のこと。生まれる前の映画なのでさすがに見たことはないですが、石森章太郎の漫画”多羅尾伴内”(1977年)は読みました。
・二十面相
 江戸川乱歩の小説”少年探偵シリーズ”に登場した大怪盗。
・千の異なる顕現
 ラヴクラフトによる”クトゥルフ神話”に登場する一柱”ニャルラトホテプ”のこと。”這いよれ! ニャル子さんシリーズ”(逢空万太 GA文庫)では女子高校生だったりします。
(*2)”科学者として私”、”母としての私”、”女としての私”~
 アニメ”新世紀エヴァンゲリオン”に登場するコンピュータ”MAGI(マギ)”は、科学者としての、母としての、女としての人格が移植された3台のコンピュータが合議制により意思決定をするというもの。人間の持つジレンマを再現するためにこんなシステムにしたようですが、それがゆえに命令者の言うことを否決しちゃったりします(旧劇場版より)
(*3)ほとんど読みましたねぇ
 あんまり読まなくなったのは”失楽園”以降かなぁ。きっと映画で黒木瞳にエッチさせた恨みからではないかと・・・
(*4)オルグ
 オルガナイズ(organize=組織化)の略。組織拡大のために勧誘して構成員にすることですが、死語なんだろうねぇ。私んとこの大学(もう30年近く前ですが)でもオルグと称して中○派の人が授業時間に乗りこんできてアジテーション(これも死語?)してましたが・・・
(*5)東京大学出身
 これは身分詐称で実際は東京のT医科大学中退。わざわざ詐称しなくてもこれだけでも立派な学歴だと思うんですが、地方大学の文科系出身者としては。
(*6)よく似てた純子の姉
 蘭子いわく
  才能のないものはむざむざと生き残り、こんな醜くなって
  俗物的なことで走りまわっています

 まあ、女王様のように華やかな天才美少女画家で、その絶頂期に刻を止めた純子の姉という微妙なポジションで青春時代を過ごしてたらそう言いたくなるもの分かるような気がします。
(*7)永遠の0(百田尚樹 講談社文庫)
 佐伯健太郎は姉の頼みで特攻で死んだ祖父”宮部久蔵”の生涯を調べることになった。ある人は空戦技術の天才といい、ある人は命の恩人だと言い、ある人は臆病者という。特攻という狂気の作戦の中、最後に久蔵が死んだ真相とは・・
 詳しくはこちらをどうぞ

まわりが狂気の中、流されずにいるのは難しい生き方のようです(永遠の0/コックピット)

 ども、C130ハーキュリーズ輸送機のコクピットに座ったことのあるおぢさん、たいちろ~です(*1)。
 私の義理のお父さんは戦時中は本物の飛行機乗りでして、一度戦闘機に乗っている写真を見せてもらったことがあります。特攻の練習をしていた時に終戦になり死なずにすんだとのことですが、そのおかげで私の奥様が生まれ今の子供たちがいるわけです。そう考えると特攻というのは生きて帰れない=人の命のつながりを断ち切る行為であり、自ら望んでか、断れない状況に追い込まれたかにかかわらずやはり狂気の作戦だったんじゃないか思います。
 なんでこんな話をしてるかと言うと、会社で一緒に仕事しているKさんが”永遠の0”を借してくれて読んだから。ということで、今回ご紹介するのは特攻で死んだ飛行機乗りを描いた”永遠の0”であります。

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上の写真は~たいちろさんの撮影。C130ハーキュリーズ輸送機のコクピット。
下の写真は”福岡エアロレプリカクラブ小僧日記”より。鹿屋基地の航空資料館にあるゼロ戦のコクピット(復元)


【本】永遠の0(百田尚樹 講談社文庫)
 佐伯健太郎は姉の頼みで特攻で死んだ祖父”宮部久蔵”の生涯を調べることになった。ある人は空戦技術の天才といい、ある人は命の恩人だと言い、ある人は臆病者という。特攻という狂気の作戦の中、最後に久蔵が死んだ真相とは・・
 名放送作家”百田尚樹”(*2)によるデビュー作。
【乗り物】コックピット
 航空機などの操縦室のこと。
 C130ハーキュリーズは運用開始が1956年と終戦から間なしですが、当時からこんなにたくさんの計器をながら操作してたんでしょうか? ちなみにこの機種は今だに現役で運用されてています。下のゼロ戦はもっとシンプルですが、逆に言うと少ない情報で飛行機を飛ばさなければならないってことです。
 これだけある計器を一瞬で判断して飛行機を飛ばすってのは並大抵のことじゃないようで、実際に第二次世界大戦時でパイロットを育成するには選抜されたメンバーで3年、末期でも1年は育成期間が必要だったとのこと(*3)。


 冷徹に言ってしまえば、戦いに勝つためには優秀なリソースを相手を凌駕するだけ準備し、効果的に投入するかにかかっています。まあ、なかなかこれが実現できないのが問題なんですが、かといって”七生報国”だの”大和魂”だの精神論で劣勢が挽回できると考えるのは、それが有効なシーンもあるんでしょうが、すべてをこれで解決できると考えるのは論外。先日読んだ”良い戦略、悪い戦略(*4)”によると悪い戦略とは”空疎である”、”重大な問題に取り組まない”、”目標と戦略をとりちがえている”、”間違った戦略目標を掲げている”ことをあげていますが、これをみ~んなやってたのが太平洋戦争の時の日本帝国軍。で、この悪い戦略のもっとも割を食ったのが特攻と言えるでしょうか。

 てな話を書けるのも平和な時代の後知恵なんでしょうかねぇ。本書に出てくる証言をした人達に共通しているのは、国や愛する人達のために命を捨てることへのどうしようもない肯定とか、死への恐怖をヒロイズムに変える納得みたいなのがありますが、こういったことに流されなかったのが”宮部久蔵”じゃなかったかと。

 ネタバレになりますが”宮部久蔵”に関する証言をまとめると
①目的の第一が”愛する人のために生きて帰る”
②飛行中の神経質なまでの用心深さと、生き残るための空戦技術の持ち主
③戦局全体を見た冷静な状況判断
あたりになるでしょうか。
 ”御国の為に死ぬ”ことが当たり前と考える人にとっては、宮部久蔵は①のように生き残るとこを最優先にし、②のようなような用心深さってのは臆病以外のなにものでもないんでしょうけど。話は飛びますが、日本で最も有名なスナイパー(暗殺者)のゴルゴ13にこんなエピソードが出ています。知人からあんたのような一流のプロと言われるようになるための条件は何かと聞かれて(*5)

  10%の才能と、20%の努力、そして30%の臆病さ、残る40%は運だろうな

と答えています。宮部久蔵は自主的に筋トレをやるエピソードが出てきますが、元々ある才能に努力や臆病さもあいまって一流=”天才”の評価を得ているんではないかと思います。

 ③はちょっとややこしいですが、この人はまわりの状況に流されずやるべきことが見えてたんではないかと。敵を撃墜して脱出したパイロットに銃撃した宮部久蔵に対し”男の風上にもおけない”といった非難されていてる状況で、部下のから質問に答えて

  米国の工業力はすごい。戦闘機なんかすぐに作る。
  我々が殺さないといけないのは搭乗員だ

   (中略)
  その勝てたのは運が良かったからだ。
  あの男を生かして帰せば、後に何人かの日本人を殺すことになる。
  そしてーー その一人は俺かもしれない

 本書の中にも出てきますが、空戦性能は高いがパイロットへの防衛能力の低いゼロ戦と撃墜されてもパイロットの生命はできるだけ守ろうとする米国の設計思想の違いもあって、”パイロットを確実に殺す”ことが状況に鑑みて適切な判断だと(*6)。苦しい判断であってもですが。

 本書に登場する証人の中で一番印象に残ったのは意外なことに宮部久蔵を憎悪していた元ヤクザの景浦介山。方や愛する人のために生き残ろうとする男と、帰るべき家もなく友も女性を愛することもない男。正反対な人生感にも関わらず自分よりはるかに優秀な宮部久蔵、そんな男に命を救われたという屈辱。でも。よく考えて見るとこの2人って、国のためでなく自分の為の戦いを戦ったという意味ではもっとも近かったのかも。それに、別れぎわに孫の健太郎を後ろから抱きしめるシーンが出てきますが、宮部久蔵の血族との出会いに一番喜んでいたのはこの男かもしれません。

 本書では、軍上層部のエリート主義の破綻だとか、あたら優秀なパイロットを無駄に消費したとか考えさせられる話がたくさんでてきます。本書は13年12月に映画化されるそうですし、スタジオジブリがゼロ戦の開発者”堀越二郎”を主人公にするアニメ(*7)を公開しますんで、今年はゼロ戦の年になりそう。ぜひご一読のほどを。


《脚注》
(*1)C130ハーキュリーズ輸送機のコクピット~
 横田基地の日米友好祭でC130ハーキュリーズ輸送機のコクピットに座らせてくれるというイベントがありました。もちろん、空は飛んでませんけど気分はもうパイロットです。
 ※2013年度のは日米友好祭は残念ながら中止になった模様
(*2)名放送作家”百田尚樹”
 百田尚樹が”笑っていいとも!”に出演したこの人のことを奥様が”テレビのスタッフの人”と言ってましたが、関西人にしてみるとそんな感覚ですね。かく言う私も”百田尚樹”の名前を初めて知ったのは”探偵!ナイトスクープ(朝日放送)”で全国のアホとバカの分布を調査した”全国アホ・バカ分布考―はるかなる言葉の旅路(松本修、新潮文庫)”ですけど。
(*3)第二次世界大戦時でパイロットを育成するには~
 航空自衛隊のHPで”戦闘機パイロットになるまで”が掲載されていますが、現在はもっと大変。一人前のパイロットを育成するには機体よりも金がかかるって話を聞いたことがありますし。
(*4)良い戦略、悪い戦略(リチャード・P・ルメルト、 日本経済新聞出版社)
 歴史や企業の行動の例を引きながら”良い戦略”と”悪い戦略”の違いを明確にして、どうすれば”良い戦略”を立案できるかを示した本。大変面白いんでぜひご一読を。
 詳しくはこちらをどうぞ。
(*5)あんたのような一流のプロと言われるようになるための条件は~
 ”ロックフォードの野望(謀略の死角)”(さいとう・たかを、リイド社)より。
SPコミックス版 66巻に収録。
(*6)”パイロットを確実に殺す”ことが~
 同じようなエピソードが”エリア88”(新谷かおる、スコラ漫画文庫)に出てきます。脱出したパイロットを撃ち殺す仲間の傭兵”グエン”に対して、主人公のシンのコメント
  シン :人間一人殺すのに20ミリ弾ばらまいていたんじゃ、採算にあわん
  グエン:いってくれるじゃない、大尉さんよ・・・
      着任祝いの出血大サービスってことでどうだい・・・
  シン :そりゃ、おまえの勝手さ。ただ、そんなに気前よくやってると
      イザってときに弾がなくなるぜ
      そんときゃ・・ 自分の命でもサービスするんだな

(*7)スタジオジブリがゼロ戦の開発者”堀越二郎”を~
 ”風立ちぬ”(宮崎駿監督、スタジオジブリ)です。7月20日全国ロードショウ予定。主人公の堀越二郎のCVがなぜかヱヴァンゲリヲンの庵野秀明監督。この人もメカフェチっぽいとこあるからなぁ。

しめて4,496億円。ビル・ゲ○ツ並みに金持ってりゃ作っちゃうんだけどな~、サンダーバード秘密基地(サンダーバード/サンダーバード博)

 ども、サンダーバード2号を愛するおぢさん、たいちろ~です。
 ホントかどうかはわかりませんが、

  システムエンジニアはダンダーバード2号を偏愛する

という説があります。理由は”ツール(ジェットモグラタンクとか)を使って問題解決するのがシステムエンジニアゴコロをくすぐるから”らしいですが、分かるような気もします。別にエンジニアに限らずですが、ある世代のおぢさんにとってサンダーバードってのは憧れの存在。ということで、日本科学未来館で開催された”サンダーバード博”に行ってきました。


【DVD】サンダーバード(ジェリー・アンダーソン ジェネオン)
 世界的な大富豪”ジェフ・トレーシー”が設立した国際救助隊(International Rescue)”サンダーバード)の活躍を描くSF人形劇(*1)。
 1965年(日本の放映は1966年)とほぼ半世紀前の作品ながら、その洗練されたメカニックデザインやウイットに富んだストーリは古さを感じさせない作品です。
【旅行】サンダーバード博
 お台場の日本科学未来館で開催中のサンダーバードを紹介する博覧会(7月10日~9月23日)。サンダーバードを紹介する3D映像や、メカニックのモデル展示などです。公式HPはこちらをどうぞ。


 実際の博覧会の様子です。

〔オープニング&展示会紹介の3Dシアター〕
 入場してすぐのところがあの懐かしいオープニングを最新技術で3D化したシアター。”Thunderbirds”のロゴやメカニックが飛び出して見えてくると、会場からは”おおぅ”の声が。最近の映画は初手から3D前提で作成されるものも増えてきましたが、こんな昔の作品も3D化できるってのは、科学技術ってすばらしいです。
 一つだけ残念だったのは、ジェフ・トレーシーの声が初代の小沢重雄氏ではなかったこと。すでに故人になられていますが、この人だったら感涙モノだっただろうなぁ・・

〔モデルアートとメイキング映像〕
 次に出てくるのはサンダーバードのメカニックごとのモデルアートと撮影方法の展示です。

サンダーバード1号が飛行するシーンの撮影。バックにある空の風景を回転させることで、高速で飛んで行ってる様子が紹介されてました
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さまざまなタイプのサンダーバード2号の展示。
 今回展示されているのは撮影に使われたオリジナルではなく(*2)、日本のモデラーの人の作品。でも、ディテールの違いを追っかけたタイプ別なんてよくやるもんです。
 その他にもジェットモグラタンクだとか搭載メカの展示も。
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ドッキングするサンダーバード3号と5号
 この2機はセットで展示。写真だと分かりにくいですが、サンダーバード5号のドッキングベイって意外に短いです。オープニング映像だともっと長いイメージがあったんですが。
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サンダーバード4号の撮影シーン
 水中を進むサンダーバード4号。前面に水槽を置いて気泡を発生させ、後ろ側で4号のモデルを操作しています。
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ピンク色のペネロープ号
 エンジングリグのについた”ウィングレディ”はロールス・ロイス社が正式に許可したモノなんだとか。このあたりはけっこう太っ腹なんですね、イギリスの会社って。
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 その他、ゲストメカなんかも展示してました。

〔小松崎茂のボックスアート〕
 サンダーバードのプラモデルといえばこの人、小松崎茂(*3)のボックスアート(プラモデルの函)の原画&今井科学版のボックス展示。
 サンダーバードのプラモデルと聞いて”アオシマ”と答えず”今井科学”と答える人はかなりおぢさん世代です(*4)。
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〔前田建設ファンタジー営業部による秘密基地の見積もり〕
 前田建設ファンタジー営業部(*5)が”サンダーバード秘密基地を実際に作ったらいくらかかるか”を見積もった資料です。トレーシーアイランドの地形模型とCGによる地下施設も。実はこれHPの協力会社で名前見つけてから楽しみにしてたんだよな~~
 サンダーバード秘密基地、実際に作るとしめて4,496億円。ビル・ゲ○ツ並みに金持ってりゃ作っちゃうんだけどな~ 日本だったら柳○正か孫○義あたりでもいいけど。もっともトレーシー一家みたいにアクティブにボランティアをする人ならいいけど(*6)、普通の人がやったら世界でもっとも高額な引きこもりと言われそうですが・・・
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〔巨大サンダーバード2号のアトラクション〕
 4m近い1/20スケールのサンダーバード2号を使った消火活動のアトラクション。バカでかい2号は驚きですが、もうちょっと使い方なかったんかなぁ・・・
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〔サンダーバードにつながる最先端技術の展示〕
 企業とタイアップした?最先端科学技術の展示。写真は東芝によるスマートシティを組み込んだトレーシーアイランド。
 最新の技術を紹介する日本未来館としては一番見て欲しいのはここ??
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〔ショップコーナー〕
 最後がサンダーバードグッズの販売コーナー。プラモデル(アオシマ版)なんかも売ってます。どう見ても普段プラモデルなんか作りそうにないおぢさんが、かつてのトラウマを晴らすかのように大人買いしてました。だって、子どもの頃は5台そろってとか超高価な秘密基地なんて買ってもらえなかったモンなぁ
 私もサンダーバード博記念公式ハンドブック”サンダーバードぴあ”をお買い上げ
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 ということで、2時間以上遊んじゃいました。
 かつてサンダーバードにはまったおぢさん世代にはお勧めの博覧会。常設の科学展示も充実してますので、お子様連れでもOKです!


《脚注》
(*1)人形劇
 そういえば、最近人形劇って見なくなりましたねぇ。
 かつては”ひょっこりひょうたん島”、人形浄瑠璃の流れをくむ”新八犬伝”、”真田十勇士”、ドリフターズがキャラの”飛べ!孫悟空”とかあったんですけどねぇ。
 ”魔法少女まどか☆マギカ”の中で”結界”に出てくる影絵っぽいの見てると藤城清治の影絵作品を思い出してなつかし~とか思っちゃいました。
(*2)撮影に使われたオリジナルではなく
 説明によると、火薬や水を使った特撮でかなり消耗が激しかったんだとか。
 50年近く前の作品ということもあって、オリジナルが残っていればかなり高値がつくんでしょうねぇ。
(*3)小松崎茂
 空想科学イラスト、プラモデルの箱の絵で有名なイラストレーター。
 1960~70年代のSFシーンを語るには外せない人です。
 ご興味のある方は”SF挿絵画家の時代”なんかをどうぞ。
(*4)”アオシマ”と答えず”今井科学”と答える人は~
 1966年に”サンダーバード”のプラモデルを販売したのが今井科学ですが、1969年に会社更生法の適用を受けて倒産。その後再建するも2002年に廃業。サンダーバードのシリーズを引き継いだのが”アオシマ(青島文化教材社)です。
 ちなみに、69年の倒産後に今井科学から資産と人材を引き継いだのが”バンダイ”でバンダイのプラモデル事業の基礎となったんだとか。まあ、のちの時代のガンプラブームの苗床がサンダーバートだったと言えなくもないかも。
(*5)前田建設ファンタジー営業部
 前田建設(実在の会社です)のファンタジー営業部って部署がマジンガーZの格納庫だガンダムのジャブローだをホントに作ったらいくらかかるかを見積もってます。書籍で3冊出てますが、ファンタジーな建築物が現実の技術を使って見積もるというまじめなのかふまじめなのか良くわからんとこが面白い本。お勧めです。
 ”ジャブローをつくる”編はこちらをどうぞ
(*6)アクティブにボランティアをする人ならいいけど
 トレーシー一家は救助活動でお金を請求しているわけではないので、ボランティア活動の超ビックなものと言えます。こういう儲けたお金をボランティアに使うってのは欧米の文化のようなモンみたいです。

ブログを書くにはけっこう参考になる本です(小田嶋隆のコラム道/円柱)

 ども、かれこれ4年半近くブロガーやってるおぢさん、たいちろ~です。
 私のブログは一応花と本、DVDなんかを扱っているので形式から言うと”書評”ってことになります。まあ、内容が伴っているかどうかは別ですが。
 本来、ブログってのは”Weblog”つまりWeb上の日誌(*1)といった意味ですが、日誌としてブログを書いてる人ってどれぐらいの割合いるんでしょうね。身辺雑感を書いている人もいれば、私みたいにテーマを決めてる人もいるし、私の奥様のように作品紹介なんかを書いている人もいます(*2)。まあ、実際のジャンルとしては随筆、エッセイ、コラムなんかに入るんじゃじゃないでしょうか。
 ということで、今回ご紹介するのは名コラムニスト小田嶋隆による”小田嶋隆のコラム道”であります。


 写真は~たいちろさんの撮影。等々力緑地の円柱です。

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【本】小田嶋隆のコラム道(小田嶋隆 ミシマ社)
 辛口コラムニスト小田嶋隆によるブログの書き方のノウハウ本、ってな訳がなく、コツをコラム化して並べてみたらなんかコツみたいなもんが出てくるんじゃないかな?という実にい~かげんなコンセプトの本。で見つからなかったら

 「見つけようと努力することのうちにコラムが宿っている」とか言って逃げるのだよ
 そういう時には
 言い逃げ。あるいは言い逃げの弁解を発案せねばならない状況そのものが
 コラム的な枠組みとして有効なのだと言い換えても良い

と、第一回目ですでに言いきっています。
このあたりの発想こそが、小田嶋隆の持ち味ではないかと。
【建物】円柱
 文字通り円形の柱のこと。古代ギリシャ・ローマの建築物の石の円柱がコラム(column)です。世界史でドーリア式、イオニア式、コリント式とか習いましたが覚えてますか? 写真の柱はたぶんドーリア式の柱です。


 話はいきなり脱線しますが、随筆、エッセイ、コラムの違いってなんでしょうか?
 実はどうもあんまり違わないみたいで、随筆の英訳がエッセイ(essay)。コラムはニュース以外の記事で枠=円柱に囲まれたもの。なので朝日新聞の天声人語はエッセイではなくコラム扱い。でも実際はエッセイの短いのがコラムと書いてあったり、エッセイはコラムに含まれていたりとけっこういいかげん。むしろイメージみたいなモンでこれらを書く作家と重ね合わせるとわかりやすいかも。 

  随筆家   :清少納言、吉田兼好、夏目漱石、寺田寅彦、司馬?太郎
  エッセイスト:北杜夫、團伊玖磨、椎名誠、阿川佐和子
(*3)
  コラムニスト:夏目房之介、ナンシー関、マツコ・デラックス、泉麻人

てな、感じでしょうか。全員をフォローしてるわけではないですけど、どうも

  随筆家 > エッセイスト >コラムニスト

の順で文学の香りがするような。寺山修司、五木寛之、渡辺淳一だと若い時はエッセイストで年とってからだと随筆家ってとこでしょうか。まあ、”日本の名随筆”ってシリーズはあるけど、”名コラム”ってのはないからなぁ。

 ということで見ると、素人の書いてるブログってやっぱりコラムでしょうかね。と考えると、本書はブログを書くにはけっこう参考になります。初手から役にたたないみたいな書き方してますけど。で、いくつか役にたちそうなのをピックアップ

〔書き出しは大した問題ではない〕
 文章の書き出しに悩む作家みたいな話がよくありますが、これは無駄。

  初動がどんな言葉でスータートしていたかなんてことは
  読者が文章のリズムの中に引き込まれる頃には、忘れられている
  結論を先に述べるなら、書き出しに芸はいらないのである

 と小田嶋隆は切って捨ててますが、まあ、このあたりって国語教育の弊害なんでしょうか。”国境の長いトンネルを抜けると雪国であった”(川端康成 ”雪国”)とか、”吾輩は猫である。名前はまだ無い。(夏目 漱石 ”吾輩は猫である”)とか”月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也”(松尾芭蕉 ”おくのほそ道”)とか、数百ページに及ぶ原作から教科書で取り上げるのがほんの数ページぐらいでしかも頭出しのとこしかやんないからさも重要に思えるけど、実際は作品全体を読んでどう感じるかでしょうね、そんなヒマないかもしんないけど。
 つかみが重要なのはわかりますが、書き出しに悩むぐらいなら、どんどん書いてみることが必要だと言ってます。

〔結末は真剣に取り組む〕
 上記とは逆に結末は背中にいやな汗をかくぐらいに真剣に取り組めといってます。

  フィギュアスケートや新体操のような採点競技では、
  結末が非常に大きな位置を占める
  途中がグダグダでも、細部がいいかげんでも、
  最後の着地がピタリと決まっていれば、良い点がつく

   (中略)
  ミスが目立つ悲惨な内容の演技でも、クルリと回ってピタリと着地してみせると
  素人はコロリとダマされる

 まあ、熟練した採点者はごまかせないようですが、しょせんブログを書いてる人も読んでる人も市井の素人、読後の印象重視ならエンドに力入れた方が効果的みたいです。

〔推敲は過度にやらない。やるならアタマが冷えてから〕
 ワープロのない時代の作家の手書き原稿を見ると、赤鉛筆でぐちゃぐちゃ修正が入ってます。まあ、プロなのでそれなりのクオリティが必要なんでしょうが、過度にやりすぎると前に進めなくなります。プロの場合だと”〆切”という物理的な制約があるので強制的にぶち切ってしまう手もありますが、素人のブロガーブとしては別に〆切があるわけじゃないんではまりだすと無限修正地獄の泥沼。ブログとはいえアクセス数を上げるにはそれなりに継続して書き続ける必要があるようなので、”とにかく週に1回は更新する”とか決めるなど工夫が必要かも。
 かといって誤字脱字だらけ、論理矛盾も甚だしいってのは読んでいただく人に失礼なので見直しは必要。やるなら時間を置いて頭が冷えてから。なぜなら読むための眼は”批判性”であり、書くためのアタマは”独創性”で別物だし、ノリで書いてる頭を冷やすには時間を空けた方がいいから。

  有効な推敲のタイミングは、「アタマが冷えてから」が標準になる。
  昔からの格言にある通り「恋文は翌朝読みなおせ」ということだ。

 考えてみれば、その場のノリでつぶやくツイッターや勢いで書いちゃうブログが炎上しちゃうってのはこのへんに原因があるのかも。ちなみにブログは(下書きはするものの)さらっと読み返すぐらいですが、会社のビジネス文書とかプレゼンテーション資料なんかはこれをやるようにしています。早く会社から帰りたいだけなんですけど。

 ”ブログなんて所詮は素人の駄文。そこまで気にすることはない”と言ってしまえばそれまでですが、人様に時間をさいてもらって読んでいただく以上は最低限のクリティはキープしたいもの。それに誰が読んでるかは分からないし、品性を疑われるようなのを書くのは本末転倒というものでしょう(*4)。

 ところで、私のブログに多大な影響を与えた人の一人がこの小田嶋隆。
 ”我が心はICにあらず(*5)”からハマリました。

  というのも、「文章の書き方」は「ものの考え方」や
  「人生の生き方」を含んだ壮大なテーマで~

とあるように、ブログってのもものの考え方が色濃く反映されます。ですから私のブログがコンジョ曲がりでひねくれているのの責任の一端はこの人にあるということにしといてください・・・


《脚注》
(*1)日誌
 ブログを”日記”と言ってたこともありますが、日記は出来事や感想などの記録で、日は出来事の記録に重点が置かれると微妙にニュアンスが違います。まあ、航海日誌とは言いますが航海日記とはいわないですよね。なんだか夏休みの宿題みたくなっちゃうし。
(*2)私の奥様のように作品紹介なんかを書いている人もいます
 私の奥様はフラワークラフト作家というものをやっております。
 最初はブログをつくるのを嫌がってましたが、今ではほとんど毎日更新するというヘビーなブロガーになっちゃいました。ご興味のある方はこちらをどうぞ。
(*3)北杜夫、團伊玖磨、椎名誠、阿川佐和子
 現役の椎名誠、阿川佐和子はともかく今の若い人に北杜夫、團伊玖磨とか分かるかなぁ 北杜夫の”どくとるマンボウシリーズ”とか、團伊玖磨の”パイプのけむり”とかはメジャーだったんだけど。先日、若い人から寺山修司を知らないと言われた時はガクゼンとしましたが・・・
(*4)品性を疑われるようなのを書くのは~
 ツイッターに繰り返し「暴言」を書き込んでいた復興庁の水野靖久参事官が更迭されるという事件がありましたが、これはその典型例。総務庁から船橋市副市長をへて参事官へと華麗なキャリアの持ち主ですが、この一件で人生棒に振った様なモンです。
(*5)我が心はICにあらず(光文社文庫)
 1980年代後半のパソコンシーンなどを扱ったコラム集。さすがに扱ってるネタはオールデイズですが今読んでも切れ味抜群です。すでに絶版ですが、古書店とかで見つけたら買いの1冊。

きょうだって、あしただったのよ 一度は(ジェニーの肖像/スミレ)

 ども、決してロリコンではないおぢさん、たいちろ~です。
 先日、ロバート・ヤングの”たんぽぽ娘”(*1)をご紹介した時に”ジェニーの肖像”の話を書いたんですが、学生時代に読んだっきりなんで久々に再読してみました。
 最初に読んだのは早川文庫だったんで、SFだっかたかな~と思ってたんですが、今回は偕成社文庫だったんで予断を持たずの再読だったんですが、ぜんぜんSF関係ない話でしたね~~ ということで、今回は”ジェニーの肖像”のご紹介であります。


 写真は~たいちろさんの撮影。近所のすみれです。

 

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【本】ジェニーの肖像(ロバート・ネイサン ハヤカワ文庫他)
 貧しい青年画家”イーベン”は、夕暮れの公園で、一人の少女に出会った。数日後に再会したとき、彼女はなぜか、数年を経たかのように成長していた。そして、イーベンとジェニーの時を超えた恋が始まる・・・
【花】スミレ
 スミレ科スミレ属の植物の総称。スミレ属の中で見た目が豪華で花が大きなもの(5cm以上)のものがパンジー、かわいらしく小ぶりなもの(4cm以下)がヴィオラ、ああ、ややこしい。
 写真は”虹色スミレ with リカ”というリカちゃん人形(*3)とコラボした種類。そういや”スミレちゃん(*2)”て美少女キャラもいましたねぇ。


 さて、”ジェニーの肖像”ですが、前回の”たんぽぽ娘”と同じく再開するたにび成長する少女がヒロインなんですが、昔読んだ印象(うろおぼえですが)とずいぶん違うんですね。
 ジェニーが登場するシーンごとの年齢を並べると

 1回目 石けりをするおしゃま(死語?)な少女。
     足し算を勉強し始めたとこなので、小学校低学年ぐらい?
 2回目 もうちょっと大きくなったホットチョコレート好きな少女。
     フランス語を勉強してるといっているので、小学校高学年ぐらい?
 3回目 寄宿学校ではなく修道院に通うことになると言ってので中学入学前ぐらい。
 4回目 この時のにジェニーを描いた”黒衣の少女”に10代半ばを出ていないと
     言ってるので、中学後半ぐらいかな
 5回目 イーベンが子供っぽさがまるきなくなって、たくましいおとめの域に
     達してるといってるので高校生ぐらいでしょうか
 6回目 セーラー服をきてといってるので、高校生ぐらいかな?
 7回目 イーベンは”もう若いレディーでいっそう成熟して見えた”と言ってます。
     ちゃんとキスもできるし。フランス留学に行くぐらいなので大学生?
     イーベンの大家さんがジェニーお泊りに反対してるのでそれぐらいかな(*4)
 最後  嵐の中でイーベンが抱え上げられないぐらい大きくなってます。
     愛の告白もしてるし。
     時間が追いついてるとしたら20代の半ばぐらい

 この変化がイーベンの時間では1年経ってないんですね。初めて会ったのが冬で、最後に会ったのが翌年の秋。
 で、思うに学生時代に読んだ時にはジェニーに年齢が近くてイーベンが大人(28歳)だったのが、今やこっちが突き抜けておぢさん世代。だから目線がもうお父さんだったりするんですかね、駆け抜けるように成長する娘を見るような・・・

 3回目にジェニーに会った時のイーベンの感想で

   わたしはもはや彼女を子供のようには思わなかった
   わたしには彼女が、いくつというはっきりした年齢を持たない時期
   この少女はもはや若い女だとも、この若い女はまだ少女とはいいきれない
   あの中間の年ごろにあるような気がした

 といってますが、こういった女の子の微妙な時期を恋人のためにそんなに急がなくてもいいのにって思うのはお父さん感覚なんでしょうか・・

 ジェニーとイーベンの会話

  ジェニー:そしたらやがては、わたしだって、あなたぐらいの年ごろになるでしょ
  イーベン:ぼくは二十八だよ、ジェニー
  ジェニー:知ってるわ。わたしだって、やがてそうなるのよ・・・そうしたら

       (中略)
  イーベン:それからだって、まだまだ長い時間がたたなくちゃ
  ジェニー:わたし、いそぐわ。いそがなくちゃならないわね

 まあ、私自身は娘にとっとと嫁に行け派なんですが(*5)、それでもねぇ・・・

 この小説はテーマがテーマだけに時に関する話題がでてきます。
 気に入っている場面をいくつか

 デートの記念にジェニーはスミレの花束を贈るんですが、イーベンはそれを紙ばさみにいれてもってるってエピソードが出てきます。

  わたしはジェニーのあのスミレの花を、
  ポケットの紙ばさみにいれてもっていた
  それはいまではもはやしおれていたが、
  それにしてもいくらかのかおりをまだのこしていた

時間のうつろいを感じさせるエピソードですが、これから花ひらいて行くジェニーに対して、しおれていく一方のイーベンにおじさんのイメージを重ねてるってのはひがみでしょうか。
 これに対し、時間にアクティブなのはジェニー

  イーベン:しかし、あすというのは、いったいいつだい、ジェニー?
  ジェニー:そんなことが気になるの?
       それはいつでもよ。きょうだって、あしただったのよーー 一度

年のネタで突っ込まれた時に使ってみたい名言です。

 こういった多感な美少女みたいな話を書くと、ロリコンだなんだと後ろ指さされそうですが、決してそんなことありませんから。
 ”ジェニーの肖像”は素直な気持ちで読んでいただきたい名作です。


《脚注》
(*1)たんぽぽ娘(ロバート・F・ヤング、角川文庫他)
 休暇中の森の中で44歳の”ランドルフ”は森の中でたんぽぽ色の髪をした21歳の女性”ジュリー”と出会う。彼女は240年先の未来からやってきたという。
 何度かの出会いでジュリーに魅せられていくランドルフ。やがてジュリーはあと1回しかタイムトラベルできないと言う。最後に彼女が時間を超えた先とは・・・
 詳しくはこちらをどうぞ
(*2)リカちゃん人形
 タカラトミーから販売されている日本を代表する着せ替え人形。1967年の発売開始からほぼ半世紀を迎えようという超ロングセラーです。
 ちなみに同じくタカラトミーからバービー人形をジャパナイズして販売されたのが”ジェニーちゃん人形”。
(*3)スミレちゃん
 魔法少女シリーズの元祖”魔法使いサリー”(横山光輝)に登場する美少女。ある年齢層のおぢさんにとってはお嬢様キャラを決定づけた憧れの女の子でした。
(*4)ジェニーお泊りに反対してるのでそれぐらいかな
 この作品が書かれたのは1939年と第二次世界大戦の始まる頃ですんで、性的なモラルに関する規範が現代とでんでん違います。まあ、今だったら見て見ぬフリをするんでしょうけどね。
(*5)とっとと嫁に行け派なんですが
 最近の娘さんに”いつまでも家にいていいんだよ”とかいうと、ホントにいつまでもいちゃいそうなので・・・
 ちょっとぐらいプレッシャーかけといたほうがいいかとは思ってはいるんですが・・

政治家が賄賂をとってもそれを批判できない状態を、政治の腐敗というんだ(銀河英雄伝説/睡蓮)

 ども、偉大なるファラオの末裔のおぢさん、たいちろ~です。(ウソです)
 ニュースを見ているとエジプトがいろいろ大変なことになっているようです。
 やれ軍部主導で憲法が停止され~の、大統領が解任・拘束され~の、反対派の”ムスリム同胞団”が大量に逮捕され~の。で、暫定大統領を立てて野党連合”救国戦線”を含めた組閣をするんだとか。
 浅学ながら、憲法ってあっさり停止できるモンだとは知りませんでした。変更するのは大変なのにねぇ(*1)。
 ということで、今回は民主主義を守るための軍部の介入のお話を”銀河英雄伝説”からです。


 写真は~たいちろさんの撮影。近所の睡蓮です。

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【本】銀河英雄伝説(田中芳樹 徳間書店他)
 宇宙暦797年、帝国歴488年、宇宙は専制政治の銀河帝国と民主主義の自由惑星同盟に分かれ、150年の長きにわたって戦いを続けてきた。そして時代は二人の英雄を生み出す。銀河帝国の”常勝 ラインハルト”と自由惑星同盟の”不敗の魔術師 ヤン・ウェンリー”である。
 田中芳樹によるスペースオペラの最高傑作。ぜひご一読のほどを。
【花】睡蓮(スイレン)
 スイレン科の属、水生多年草。英語では”water lily”。よく似ているのに”蓮(ハス)”がありますが、円形の葉っぱに切り込みがあるのが睡蓮で、無いのが蓮だそうです。英語の”lotus”は蓮のほう。
 古代エジプトでは神聖な花だったそうで、エジプトの国花になってます。チュニジアの民主化運動が”ジャスミン革命”だからこっちは”スイレン革命”でしょうか?


 さて、今回の事件で特徴的なのは、軍部による政治介入が”クーデター”か否かという点。外見的な要素としてはクーデターなんでしょうが、超法規的措置として混乱を収拾させるための介入で早期に大統領選挙と議会選挙をやると言ってます。
 聞いてて思い出したのが”銀河英雄伝説”の今回ご紹介するエピソードです。

 腐敗し自浄能力を失った自由惑星同盟の政治を憂いた同盟軍部は”救国軍事会議”を結成しクーデターを実行。政権を手中にした。救国軍事会議は”国益に反する政治活動及び言論の秩序ある統制”、”全国に無期限の戒厳令。すべてのデモ、ストライキの禁止”、”議会の停止”などの布告を出す。その後、ヤン・ウェンリーの反撃により制宙権を喪失、主都星ハイネセンを守る”アルテミスの首飾り”も破壊され、敗北が決定的となる。
  (”野望編”より)

 といった話です。フィクションがノンフィクションに追いついているんだか、ただ単に歴史は繰り返しているだけなんだか・・・

 で、思い出したのが敗北を受け入れる救国軍事会議議長代行のエンベス大佐と、ヤン・ウェンリーの会話。

  エンベス:いま、政治の腐敗は誰でもが知っている。
       それを正すのに、どんな方法があった?
  ヤン  :政治の腐敗とは、政治家が賄賂をとることじゃない。
       それは個人の腐敗であるにすぎない。
       政治家が賄賂をとってもそれを批判できない状態を、
       政治の腐敗というんだ。
       貴官たちは言論を統制を布告した。
       それだけでも、貴官たちが帝国の専制政治や同盟の現在の政治を
       非難する資格はなかったと思わないか

 まあ、程度の問題はあるにしろ、政治に統治能力がないからといって軍部がデウス・エクス・マキナ(*2)のごとく登場し仕切りをするってのは、感覚に合わないでしょうかねぇ。言論の自由が民主主義の要諦であれば、結果としてうまく仕切れたとしても望ましい状況ではないんでしょうか?

 ちょっと驚いたのは、今回の軍部がエジプト国内で反対ではないという意見があるってこと。まあ、国情の違いかもしれませんが、もし日本でアベノミクスの失敗で国民生活はグダグダ、国会にデモが押しかけ安倍総理の退陣を迫るという状況で、政権を見限った小野寺防衛大臣が自衛隊を指揮して安倍総理を解任、衆参両院を解散させた上、高村副総裁、石破幹事長(*3)、野田政務会長らを逮捕、民主党と連携して選挙をやる、ってシュチュエーションはまあ受け入れられんだろうなぁ・・・

 あと、心配はもう一つ。クーデター当初に”救国軍事会議”のグリーンヒル議長とクーデターに反対するビュコック司令長官との会話 

  ビュコック :では、試みに問うが、武力をもった貴官らが腐敗したとき
         誰がどうやってそれを粛清するのだ?
  グルーンヒル:吾々は腐敗などしません
(*4)

 ま、軍事力というのはある意味頼りになる存在ではあります。
 ただし、自分の頭に銃口を突き付けられなければの話ですが・・・


《脚注》
(*1)変更するのは大変なのにねぇ
 日本の場合、衆参両院での2/3以上の賛成と、国民投票で有効投票の過半数の賛成が必要です。まあ、政権をとったからといっておいそれとできるシロモノではなさそうです。
(*2)デウス・エクス・マキナ
 ラテン語で”機械仕掛けの神”という意味。解決困難な状況を絶対的な力を持つ存在(神)が現れ表れて解決に導き、物語を収束させるという手法のこと。
 まあ、究極の他力本願といいましょうか・・・
(*3)石破幹事長
 そういやこの人、防衛庁長官や防衛大臣を歴任してたなぁ。
 どっちかと言うとこの人のほうが自衛隊に人脈ありそうですが。
(*4)吾々は腐敗などしません
  権力は腐敗する、絶対権力は絶対に腐敗する
   Power tends to corrupt,
   and absolute power corrupts absolutely.
    イギリスの歴史家 ジョン・アクトンの言葉

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