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すんごい面白い本だけど、これを言ったら嫌われんだろ~な~、上司から(良い戦略、悪い戦略/マンサク)

 ども、本部戦略策定担当のおぢさん、たいちろ~です。(冗談と思われるかもしれませんが、これは本当)
 ご多分に漏れず、私んとこも年に1回戦略つ~ものを作成します。中長期的な視点で作成される戦略というものはよく言えば継続性や、悪く言えば慣性や惰性が働くモンですので、組織そのものが変わるか、ちゃぶ台返し(*1)のトップが外部からでも来ない限りまったく違ったものができることは、まあありません。
 でも、この仕事って私がやってる中でももっとも厄介はシロモノであります。なんとなれば、戦略の評価って難しいんですよね。戦略がうまくいったから売上が上がったのか、ただ単に景気が良くなったから業績が持ち直したのかなんて後世の歴史家が考えるレベルの話。でも、前年度の振り返りとかやりもって多少は変化をつけないといけないとか。
 ということで、今回ご紹介するのは”良い戦略、悪い戦略”であります。


 写真は~たいちろさんの撮影。近所のマンサクです。
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【本】良い戦略、悪い戦略(リチャード・P・ルメルト、 日本経済新聞出版社)
 歴史や企業の行動の例を引きながら”良い戦略”と”悪い戦略”の違いを明確にして、どうすれば”良い戦略”を立案できるかを示した本。本書に言わせると悪い(間違った)戦略が多すぎるとのこと。まあ、良い戦略ばかりだと不景気になったり倒産したりするるはずないですもんね。
【花】マンサク
 マンサク科の落葉小高木。写真には写っていませんが2~3月に黄色の細い花が咲きます。花言葉は”呪文、霊感、魔力、感じやすさ、ひらめき”など。

 まず分かりやすい”悪い戦略”から。悪い戦略の特徴を本書では

〔空疎である〕
 戦略構想を語っているように見える内容がない。華美な言葉や不必要に難解な表現を使い、高度な戦略思考の産物であるかのような幻想を与える。
〔重大な問題に取り組まない〕
 見ないふりをするか、軽度あるいは一時的といった誤った定義をする。問題そのものの認識が誤っていたら、当然ながら適切な戦略を立てることはできないし、評価することもできない。
〔目標と戦略をとりちがえている〕
 悪い戦略の多くは、困難な問題を乗り越える道筋を示さずに、単に願望や希望的観測を語っている。
〔間違った戦略目標を掲げている〕
 戦略目標とは、戦略を実現する手段として設定されるべきものである。これが重大な問題とは無関係だったり、単純に実行不能だったりすれば、まちがった目標と言わざるをえない。

 うわぁ~、耳が痛いわ~~
 なぜ、このような悪い戦略がはびこるかと言うと”分析や論理や選択を一切行わずに、戦略を作ろう”とするから。つまり嫌なことを見ずに、めんどくさいことはやりたくないから。
 それにポジティブシンキングというか言霊信仰(*2)というか”成功すると思えば成功する”的な気合だ~~の世界が加わると悪い戦略がいっちょ上がり。

 逆に良い戦略の基本構造とは

〔診断〕
 状況を診断し、取り組むべき課題を見極める
〔基本方針〕
 診断で見つかった課題にどう取り組むか、大きな方向性と総合的な方針を示す
〔行動〕
 基本方針を実行するために設計された一貫性のある行動をコーディネートして方針を実行する。

まあ、わかっちゃいるんだけど、難しいんだよね~、これって。

〔診断〕
 状況って良い場合とは限りません。というか、悪いことのほうが多い。つ~ことは見たくもないことを見ないといけない、しかも突っ込みどころ満載の・・・
 でも、これやらないと正しい課題が出てこないんですよね。昔、”男大空(*3)”に拳法の修行をするのに催眠術かなんかで負けたシーンを延々繰り返すってのがありましたが、まさにこれ。嫌なことを何回も見直すって、強くなるために必要な工程なんでしょうが、まあ、喜んでやる人は少ないでしょうねぇ、マゾじゃなければ

〔基本方針〕
 この工程の難しいのはど~とでも書けること。昨年のをちょこっと直してお茶を濁す(*3)こともできるし、きっちり議論することもできます(泥沼に落ちる場合もありますが)。
 で、出てくる結論があんまし変わんなかったりして・・・
 まあ、どっちでやっても落とし所ってのはだいたい同じようなモンなのでそうなっちゃうんでしょうが、むしろ議論をすることにより問題を深堀りする工程が重要。でも、なかなかその時間がとれないんですねぇ、トップの人って忙しいんで。

〔行動〕

 ”一貫性のある行動をコーディネートして方針を実行する”と言ってますが、行動は一貫しません。なぜなら戦術レベル(すなわち現場)の目標が営業の場合だと”とにかく注文をとってくる”が最優先にされるから。

縦横無尽、融通無碍、臨機応変、自由自在

 コンプライアンス違反はNGですが、どんな手段をとっても注文とってこいとなれば一貫性なんかにこだわらずに戦術的勝利を獲得した人の勝ち。まあ、受注や売上が足らなくて、ケツに火が付けば上の人だって同じようなモンです。
 まあ、商談獲得率と粗利率、未経験プロジェクトとリスク、中長期と短期の目標が無矛盾で存在するってのはまあ、難しいんでしょうねぇ・・・

 ぶっちゃけ、”それを言っちゃあお仕舞いよ(*5)”なコメントですが、実際に戦略がなければ組織として何やらいいんだって話になるので、組織目標を達成するたには”戦略”そのものは重要です(ひらめきレベルの呪文であってもです)。この本は”戦略を立てる”という意味ではすんごい面白い本だし役にも立ちます。
 でも、この本をまんまトップに言ったら嫌われんだろうな~
 見たくない現実をみんなに向き合あわせ、冷徹に方向を示し、不退転の決意で行動することを部下に強いるなんてできる人は少ないでしょうねぇ、サドじゃなければ・・・


《脚注》
(*1)ちゃぶ台返し
 ”巨人の星”で星一徹がちゃぶ台をひっくり返すのが有名ですが、テレビ版182話の中で実際にこれをやったのは2回だけなんだそうです(Wikipediaより)。まあ、後片付けが大変だろうしなぁ。
 こういった思い込みも戦略策定の阻害要因になります。
(*2)言霊信仰
 ”言霊信仰においては、声に出した言葉は現実の事象に影響を与える”という考え方。つまり”悪いことを言えば悪いことが起こる”→”都合の悪いことは言わない”→”リスクは考えない”という悪い方向に走っちゃいます。
 こういった方向性は戦略策定の阻害要因になります。
(*3)男大空(雁屋 哲、池上 遼一 メディアファクトリー)
 コングロマリットのトップ同士が自らの手でテロに走るとか、バースが狂ったような巨人がでてくるとか、なかなかお茶目なマンガです。
(*4)お茶を濁す
 ”茶の湯の作法を知らない者が、抹茶を適当にかき回し、それらしくお茶を濁らせてその場をごまかす”ことから出た言葉らしいですが、逆に言うと素人が適当にやってもそれっぽくは出来るってことでしょうか・・・
(*5)それを言っちゃあお仕舞いよ
 フーテンの寅次郎の名セリフですが、現実にもありますねぇ。たとえば橋元市長の従軍慰安婦発言とか。歴史認識としてはわからんでもないですが、為政者が言っちゃあ炎上するのは当たり前です。

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