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理想的なノマドってのも命がけのようです(用心棒/桑)

 ども、さすらいの用心棒のおじさん、たいちろ~です。(ウソです)
 前回、”ノマド(*1)”の話をしたんで、そのおまけです。
 理想的なノマドな人のイメージっていうと

  ①特定の組織に属さず仕事をするフリーランスな人(一匹狼またはチーム)
  ②専門的な仕事に従事する人が多い
    (コンピュータやWebの運用管理者、ライター、コンサルタントなど)
  ③ハイスペックな能力
    (職業的な技能、知力、集中力、コラボレーション力、人間的な魅力など)
  ④場所にこだわらず、どこでも仕事をこなす

てな感じです。具体的にどんなんかな~と思ってたら、いましたね理想的な人が。
 ということで、今回ご紹介するのは理想的なノマドの人、黒澤明監督の名作”用心棒”であります。


0111
 写真はたいちろ~さんの撮影。近所で見かけた山桑です。


【DVD】用心棒(主演 三船敏郎、監督 黒澤明、東宝)
 2組のヤクザが縄張り争いに明け暮れ、荒廃した小さな宿場町。そこに一人の凄腕の浪人がやってくる。彼の名は”桑畑三十郎(三船敏郎)”。居酒屋の権爺(東野英治郎(*2))から事情を聞いた三十郎は、用心棒として雇われる振りをして、双方のヤクザを同士打ちさせようと画策する・・・
 黒澤明監督による娯楽時代劇の名作。主演の三船敏郎も”七人の侍(*3)”とは違ったいい味出しています。
【花】桑(くわ)
 クワ科クワ属の総称。葉はカイコの餌として利用されます。
 三十郎が名前を聞かれた時、とっさに名乗ったのは廊下ら”桑畑”が見えていたから(*4)。この宿場ではカイコと絹の生産を行っていて、三十郎が拉致された子平一家を逃がす時に襲撃を偽装するため天井からざさぁっとカイコの繭が落ちてくるシーンなんかも印象的に使われてます。


 ”用心棒”の主人公”桑畑三十郎”がいかにノマド的かっていうとこんな感じです。

〔特定の組織に属さず仕事をするフリーランスな人〕
 さすらいの浪人ですので、組織には属していません。
 抗争に付け込んでやくざの組に売り込んでいますが、一時的な雇用で正社員(構成員?)になる気もなさそうですし、雇用主(ヤクザの親分)もそうする気はなさそうです。

〔専門的な仕事に従事する人が多い〕

 この時代の侍が専門的な仕事かどうかは微妙ですが、”用心棒”を傭兵かボディーガードと考えると専門的な仕事と言えそうです。

〔ハイスペックな能力〕
 数人のヤクザを一瞬にたたっ切る技量は相当なもの。ヤクザ同士を相打ちさせるという構想力や実行力、自分の技量をオークション?にかけてせり上げる交渉力なんかも大したものです。権爺が命がけで助けようとする義侠心と精神力、子平一家に金を渡して逃がしてやるような人間的な魅力にもあふれています。
 これらを総合すると、三十郎は相当ハイスペックな人物のようです。もし三十郎がどこかの殿様に士官してたとすればかなり出世してたかも。

〔場所にこだわらず、どこでも仕事をこなす〕
 一時的にヤクザの家にいても、基本的には権爺の居酒屋を根城にしています。
 まあ、今のノマドがスターバックスなんかで仕事をしているのと似たようなモンかと

 ことほど左様に”桑畑三十郎”って理想的なノマドなんだな~と思っちゃいます。

 もっともこれは”桑畑三十郎”が用心棒として傑出した能力を持っているからであって、普通の”用心棒”ってけっこうかわいそうな存在。組同士が手打ちになって用心棒が不必要になると、即日解雇(*5)。手切れ金=退職金が出ているだけましかもしれませんが。 もっとも、親分が再度”用心棒”を集めようとしても集まらなくって、三十郎から

  三十郎:無理もねえや
       この前 集めた奴ら
(解雇された用心棒たち)
       おめえたちの仕打ちを褒めてあるくはずはねえからな

 まあ、相応の実力がなければぞんざいな扱いをされるようです。

 もっとも、三十郎の腕をもってしても安心かと言うとそうでもなさそうです。三十郎へ用心棒代を払うかどうかと会話するの組の親分と女房、息子の会話(雇用する経営者層の会話ってとこでしょうか)

  女房:でも、お前さん そうなりゃまた二十五両だろう
     こっちが勝ったところであいつを殺しゃあ
     まるまる五十両助かるんだがねえ
  息子:汚なすぎるぜ、そんな
  女房:お黙り! それぐらいのことができなきゃ お父っあんの跡目は継げないよ!
     博打打ちにきれいも汚いもあるもんかい
  親分:そうだ、おっ母の言う通りだ
     人殺し 盗っ人と言われるようにならなきゃ蔵はたたねえ

 こうなってくると、ノマドも命がけです。

 ”用心棒”はモノクロ映画ながら今見ても面白い映画。ノマド云々を別にしても楽しめるお勧めの映画です。


《脚注》
(*1)ノマド
 読んだのは”仕事をするのにオフィスはいらない ノマドワーキングのすすめ(佐々木俊尚 光文社新書)”です。
 本書ではノマドを”遊牧民がラクダという砂漠で最強の乗り物を駆り、オアシスからオアシスへと移動しながら生活しているように、狭苦しいオフィスを出て、さまざまな場所を移動しながら働いている人たちです”と言ってます。詳しくはこちらをどうぞ。
(*2)東野英治郎
 若い人にはわからんかもしれませんが、TV時代劇で初代”水戸黄門”を演じた人です(1969年の第1部から1983年の第13部まで)。
 最近は”光圀伝(冲方 丁、角川書店)”でマッチョな黄門様が出てくるようですが、おぢさん世代の黄門様といえばやっぱりこの人です。
(*3)七人の侍(主演 志村喬、三船敏郎、監督 黒澤明、東宝)
 野武士が野盗化していた戦国時代。貧しい百姓たちがは侍を雇って対抗しようとする。雇われた島田勘兵衛(志村喬)、菊千代(三船敏郎)ら七人の侍たちは百姓たちとともに野武士に立ち向かう。
 黒澤明の最高傑作。三船敏郎演じる菊千代は三十郎とはとはまた違った荒々しい魅力を見せてくれます。お勧めの映画です。
(*4)廊下ら”桑畑”が見えていたから
 三十郎はこのネタがお気に入りのようで、続編の”椿三十郎”でも同じの使っています。”もうそろそろ四十郎だがな”と言ってるので、三十郎は30代後半の模様。しかし、この歳で士官もせずにふらふら放浪してるってのもまあ、ノマドらしいとも言えますが・・・
(*5)用心棒が不必要になると、即日解雇
 まあ、現代でいう雇い止めとか派遣切りだって似たようなんじゃないかと。
 ”用心棒”のエピソードでもそうですが、あんまし無体なことをやってると後でしっぺ返しがありますよ、きっと。

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