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”今ここにある危機”ってトム・クランシーを所信表明演説で使うかね(今そこにある危機/コカノキ)

 ども、CIA情報担当補佐官のおじさん、たいちろ~です。(ウソです)
 先日(2013年1月28日)にニュースで安倍首相の所信表明演説を聞いてましたら、こんな発言がでてきました。

  今ここにある危機を突破し、
  未来を切りひらいていく覚悟を共に分かち合おうではありませんか

 へぇ~、ここでトム・クランシー(*1)持ってくるか! と思いながらも、でもこの発言をした大統領って悪役じゃなかったっけ?!
 ということで、今回ご紹介するのはジャック・ライアン(*2)シリーズの1冊”今そこにある危機”であります。

Kokanokihana
 写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより。コカノキです。

【本】いまそこにある危機(トム・クランシー 文春文庫)
【DVD】今そこにある危機
   (原作 トム・クランシー、主演 ハリソン・フォード、監督 フィリップ・ノイス)
 CIA副長官代行を任命されたライアンは、大統領が指示した南米の麻薬カルテル組織撲滅の調査を開始する。一方、大統領は密かに組織への攻撃を大統領補佐官に命令していた。しかし、組織のNo.2と裏取引をした補佐官は侵攻中の兵士たちを見殺しにする・・・
 原題は”Clear and Present Danger”。1994年にライアン役をハリソン・フォードで映画化。
【花】コカノキ
 コカノキ科コカ属の常緑低木樹。コカの葉からコカイン(麻薬)を抽出できます。
 コカインによる危険性から、コカノキ、コカの葉を含め栽培・持ち込み・流通等が厳しく規制されているというヤバいシロモノ。さすがに写真持っていないので、昭和大学のHPから転載しました。


 

 さて、安倍首相が何気に使っている”今ここにある危機”という言葉ですが、映画のシーンでの使われ方はこんな感じ。
 麻薬撲滅に成果の上がらない状況に苛立った大統領と補佐官の会話。

  大統領:私はこの国へなだれ流れ込んでくる麻薬の流れを食い止めると
      公約したんだぞ
        (中略)
  補佐官:どのような措置を取れとおっしゃるので?
  大統領:私が望んでいる処置というは、口には出せんと分かるっとるだろうが
  補佐官:しかし、それだけでは判断のしようが
  大統領:ああした麻薬カルテルの存在こそ、
      我が合衆国にとって国家の安全を脅かす
      ”今そこにある危機”だよ

      (These drug cartels represent
       a clear and present danger
       to the national security 
       of the United States)(*3)

 意訳すると

  手段は選ぶな。ただし、私は知らないことにしろ

政治的に正しい翻訳
をすると

  それは、補佐官のやったことですから

ってな、感じでしょうか。
実際に、終盤でこの事件の顛末を補佐官から聞かされた後のライアンでの会話では全く同じような抗弁をしてますし。このシーンで興味深い大統領の発言ってのが

  大統領 :我が国にもはや、スキャンダルで揺れている余裕はない
       国を守るためには、政治の空白を作ってはならん
       トップに立つ人間への疑惑は国益に反する
       責任は君達がとれ

        (中略)
       後は全部グリ-アにかぶせればいい。そうとも、彼を道連れにすることだ
       君の責任は少なくなる
       ま、うまく踊ることだよ。政界という舞踏会でな
  ライアン:せっかくですが、私はダンスは嫌いです

 なんだかな~~。政権末期になるとなんとなく言いだしそうな話だし。
 ここで出てくるグリ-アというのはCIA副長官にして、ジャックの上司である提督。かなり人望もある人物です。大統領は”死人に口なし”ぐらいの気持ちでしょうが、この人に罪をなすりつけろという一言がライアンに対するダメ押しになりました。

 末期ガンに侵されて病床にあるグリ-ア提督に、ライアンが状況を報告する会話。ライアンにとっては遺言みたいなものになりました。

  ライアン:掘れば掘るほどいやになります
       これ以上掘っても、誰も喜ばない
  グリ-ア:誓っただろう。覚えてるか。
       初めて公務についた日に、
       君は国家のために力を尽くして働くという誓いを立てたはずだ。
       君のボスに対して。大統領ではないぞ。
       誓いの言葉を、君は、大統領の雇い主でもある国民に対して立てたはずだぞ
       その誓いを全うしろ

 この高潔さって、まさに大統領と対極にあるものです。

 映画では、結局、上院監視委員会に大統領を告発するシーンで終わっています。

 ”今そこにある危機”は原作が1989年、映画の公開が1994年ともう20年近く昔の作品ですので、こんな昔の話を引っ張り出してくるコンジョ曲がりはそうそういないでしょうが、言葉ってのはいろんなこと連想させちゃうんですよねぇ。
 ま、できれば、安倍総理退陣の時に”ああ、やっぱりねぇ”と言わなくて済むようにして欲しいと一国民としては思うのであります。


《脚注》
(*1)トム・クランシー
 アメリカのベストセラー作家。代表作は今回ご紹介するジャック・ライアンシリーズ(”レッド・オクトーバーを追え”、”愛国者のゲーム(パトリオット・ゲーム)”、”恐怖の総和”、”日米開戦”など。
(*2)ジャック・ライアン
 ”ジャック・ライアンシリーズ”の主人公。CIA情報担当副長官、国家安全保障問題担当大統領補佐官などを歴任の上、アメリカ大統領に就任。
 CIAというと007シリーズのジェームス・ボンドのようにドンパチやるイメージがありますか、ライアンは”情報分析”が専門のどっちかというと学者に近い人(実際に博士やドクターの称号で呼ばれてます)
(*3)Clear and Present Danger
 ”Present”は(ほかの所でなく)ここ[そこ]にいる、今起こっているという意味の形容詞。ですので、”ここ”でも”そこ”でも同じ文脈です。
 その上に出てくる”represent”は~を象徴する、~を代表する、~と同等であるという動詞。原文ではちゃんと掛け言葉になってるんですね。

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コメント

アメリカ大統領を主役にした映画があるのに、日本の首相を前面に出した映画・・・・・・無理だな。無理やり作るとしても、吉田茂か田中角栄くらいか。2時間ドラマくらいかな。
アメリカ大統領の映画では、”デーヴ”なんかはいかが?大統領の替え玉のはずが、大統領が脳卒中で倒れて・・・・というやつ。それほどヒットしなかったけど、結構楽しめますよ。
あと、インデペンデンスディの最後の出撃前のホイットモア大統領の演説、ハリウッド史上最高に”くさい”セリフに認定されたやつ、私はけっこう好きですけどね。あれを日本の首相がやったら、嘘くさい無難なきれいごとのスローガンを熱く語るシーンになるんだろうな。安倍首相の所信表明演説みたいに・・・。

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