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2012年2月12日 - 2012年2月18日

昭和のオタクに花束を(オタクはすでに死んでいる/花束)

 ども、昭和のオタクの生き残りのおぢさん、たいちろ~です。
 先日、”リトル・ピープルの時代(*1)”という宇野常寛による評論を読みました。”ビック・ブラザー=体制という大きな物語装置がが壊死してリトル・ピープルの時代に変遷した”とった内容なんですが、ユニークなのが元ネタとして村上春樹、仮面ライダー、ウルトラマンなどを同一の地平で語っている点
 オタク的知識をベースにこういった評論が出る時代になったんだなぁというのが正直な感想ですが、ふと思い出した本がありました。それが、今回ご紹介する”オタクはすでに死んでいる”であります。

Photo
 写真は奥様の撮影。奥様作成のウェディングブーケです
 (詳しくは奥様ブログ「フラワークラフト作家”Ann”のひとりごと」”をご覧ください)

【本】オタクはすでに死んでいる (岡田斗司夫 新潮新書)
 かつて”オタキング”と呼ばれた男、岡田斗司夫(*2)によるオタク評論。
 テレビの企画で、いまどきのオタクたちに対面した著者が覚えた奇妙な違和感。そこから導き出された結論は「オタクはすでに死んでいる」だった。小さな違和感から始まった思索の旅はやがて社会全体の病にまで辿り着く。(本書紹介文より)
 オタクによるオタクのためのオタクの死亡宣言でもあります。
【花】花束
 花を何本か束ねたもの。英語だと”a bunch of flowers”。
 ダニエル・キイスの名作SF”アルジャーノンに花束を(*3)”の原題は”Flowers for Algernon”なので”Flowers”でもいいみたいです。
 フランス語だとブーケ(bouquet)になりますが、こっちはウェディングなんかで使われるかと。

 この本の主張を簡単にまとめると”「自分の気持ち至上主義」のオタク第三世代の登場により共同幻想としてのオタク文化が成立しなくなった”といった内容でしょうか。

 これは岡田斗司夫という人と、とりまく社会環境をあわせてみないと分かりにくいかもしれません。
 岡田斗司夫は脚注にもあるように、SFファンのお祭りでもある”日本SF大会”を開催した人で、アニメオタクというよりSF畑の人でした。
 当時のSFファンの感覚として、SFが分かるための読書量が

  「一冊読んでもダメ、百冊読んでもダメ、
  千冊読んだらSFってなんだかそろそろ分かるんじゃないかな」と言われてました。

 と本書には書いてます。まあ、千冊は極端にしても(*4)、私の周りにいるSF好きは本好きな連中が多かったのは確かです。また、千冊も読むような輩はSFだけ読んでいるってことはなくて、手当たりしだいになんでも読みますみたいなけっこう広範な知識の持ち主ではありました。
 また、”スタートレック”がまだ”宇宙大作戦”といわれていた時代に(*5)、これを英語の原書で読んでるなんて先輩なんかもいましたし。
 (さすがに浪人しましたが・・・。若くして病気で亡くなられましたが、存命中は高校の先生をされてました)

 ことほどさように、この時代のSFファン(SFオタク)にとって村上春樹と仮面ライダーを同じ”作品”としてとらえることにそんなに違和感はなかったんですね。ただ、世間に対してそんな話をしないだけで
 ただ、こういった”オタクとして必要な教養”を持ったある意味ハイイインテリジェンスな”強いオタク”の世界であったものが、”機動戦士ガンダム”や”スターウォーズ”に代表される”わかりやすいSF”の登場によりSFオタク崩壊の萌芽を抱え込むことになります。

 この後、宮崎勤事件(*6)に代表されるカリカチュアライズされた”悪しきオタク像”みたいなオタク受難の時代を迎え、オタクたちは世間に対し”この作品はすごい”的なアピールをしていくことになります。

 岡田斗司夫はこのような一般人とオタクは違うという前提の第一世代(オタク貴族主義)、アカデミックな価値を含めてアピールをしていく第二世代(オタクエリート主義)という言い方をしています。

 で、”萌え~~”に代表されるのが第三世代。”私が好きかどうか”が重要であってオタク同士で共用できる思想のない、いわば”中心概念の不在”の時代になります。
 「自分の気持ち至上主義」という言い方をしてるんですが、内容を本書から引用だと

  「自分の気持ち至上主義」は、我慢や強調を強いる共同体の縛りつけを説きます
  その代わり、共同体の結びつきによってかろうじて維持されている同族意識や共同幻想、
  すなわち「文化」自体も破壊してしまうのです。

   (本書より引用。原文ママ 強調はたぶん協調)

 よって、同族意識や共同幻想をもつ”オタク”というものが死んでしまったと。

 話は戻って、”リトル・ピープルの時代”を読んで感じたのは、作者の宇野常寛(*7)という人は思考的には第一世代、行動的には第二世代の人じゃないかと。世代的には第三世代の人なんでしょうが、あんまりそんな感じがしませんでした。はっきり言って歳を見るまで昭和のオタクの人だと思ってました

 ”オタクはすでに死んでいる”は”オタク”を切り口とした秀逸な世代論でもあります。若い人というより、”古き良き昭和のオタク”に読んで欲しい本です。

 締めくくりの言葉

  うらにわの昭和のオタクのおはかに花束をそなえてやってください(*8)



《脚注》
(*1)リトル・ピープルの時代 (宇野常寛 幻冬舎)
 リトル・ピープルの時代―それは、革命ではなくハッキングすることで世界を変化させていく“拡張現実の時代”である。“虚構の時代”から“拡張現実の時代”へ。震災後の想像力はこの本からはじまる。(Amazon.comより)
 500ページを越える評論なのでうまく要約できませんが、まあ読んでみてください。けっこう面白いです。
 詳細は”ビック・ブラザーからリトル・ピープルへ。あるいは将棋型社会からオセロ型社会へ”をどうぞ。
(*2)岡田斗司夫
 1958年生まれ(私の1つ年上です)。大阪芸術大学芸術学部客員教授。
 1981年、第20回日本SF大会(DAICON3)を開催。自主製作アニメーション(”電車男 オープニングアニメ”の元ネタ)を上映
 1984年、アニメ制作会社「ガイナックス」を設立、アニメ”王立宇宙軍 オネアミスの翼”、”トップをねらえ!”などを作成。(この会社はのちに”新世紀エヴァンゲリオン”を作成することになります)
 1994年に東京大学教養学部の非常勤講師を務め「マルチメディア概論」(通称 オタク学)の講義を行う。
(*3)アルジャーノンに花束を(ダニエル・キイス 早川書房)
 知的障害で幼児程度の知能しかないチャーリイは脳手術により超人的な知性を獲得する。ところが同じ手術を受けたたハツカネズミのアルジャーノンに異変が発生し・・・
 この1冊をして”アルジャーノンテーマ”を確立した不朽の名作。
 お勧めなんですが、妊娠中の奥様に読ませたら”妊婦にはちょっと・・・”と言われました。まあ、本は相手を見て勧めましょう。
(*4)千冊は極端にしても
 仮に週2冊=年間100冊読んでも10年、週3冊=年間150冊読んでも6年8ケ月かかります。当時の激烈な受験戦争期にマジにこんだけ本を読み続けていたとしたら相当な努力家とも言えます。
(*5)”スタートレック”がまだ”宇宙大作戦”といわれていた時代に
 今でこそ”スタートレック”で通用しますが、当時はTVで放映されていた邦題の”宇宙大作戦”が一般的でした。
 日本で”スタートレック”の名前で世間に出たのは1980年公開の映画”Star Trek: The Motion Picture”から。
 さすがに最近はなくなったようですが、当時のノベライゼーションの表紙には”スタートレック”と”宇宙大作戦”が併記されていました。
(*6)宮崎勤事件
 1989年に発生した”東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件”のこと。
 犯人の宮崎勤の自宅からアニメや特撮番組のビデオ6000本近くを所有しているのが見つかり、オタクバッシングの象徴的な事件となりました。
(*7)宇野常寛
 1978年生まれなので、歳は30代前半です。
 リトル・ピープルの時代には”AKB48”や”らき☆すた”など空気系の話も出てきますが、議論の中心にはなってません。
 このあたりの話は”AKB48にバレンタイン・キッスはあるのかな?”でどうぞ。
(*8)うらにわの昭和のオタクのおはかに
 元ネタは”アルジャーノンに花束を”の最後の一節
  うらにわのアルジャーノンのおはかに花束をそなえてやってください
 です。

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