似顔絵ってのは写実主義でしょうか、印象派でしょうか?(警視庁似顔絵捜査官001号/山藤章二のブラック・アングル25年 全体重/じゃがいも)
ども、かつては三浦友和に似ていると言われたおぢさん、たいちろ~です。
今となっては昔日の面影すらありません。最近は鈴木福くん(*1)に似ていると言われてます。たったそれだけの理由で先日、カラオケで”マル・マル・モリ・モリ!”歌わされました。しかも踊り付きで・・・(*1)
まあ、世の中には似ている人は3人はいると言われてるみたいですが、じゃあそんな人の似顔絵を描いたらやっぱり似てるんでしょうか??
ということで、今回ご紹介するのはそんな似顔絵の話、”警視庁似顔絵捜査官001号”、”山藤章二のブラック・アングル25年 全体重”であります
写真はブラック・アングル76 (新潮文庫)の表紙。
田中角栄(上)、児玉誉士夫(下左)、小佐野賢治(下右)のロッキード事件3人衆(*2)をじゃがいもをモチーフに描いたもの。
元ネタは武者小路実篤の”仲良き事は美しき哉”。
【本】警視庁似顔絵捜査官001号(戸島国雄、並木書房)
戸島国雄は元警視庁刑事部鑑識課の警察官。モンタージュ写真が犯人捜査で使われていた時代に”似顔絵”を捜査に活用し始めた人です。
目撃者へのインタビューによる似顔絵作成以外にも、生前の面影をとどめない死体や、横顔しか見えない防犯カメラの映像からでも似顔絵を作成できるんだとか。
【本】山藤章二のブラック・アングル25年 全体重(山藤章二、朝日新聞社)
かつて”週刊朝日”に山藤章二による”ブラック・アングル”という1ページ1コマものの連載がありました。この本はそれに掲載されていた自選の100枚を含め25年間分を1冊にまとめた本です。
【花】じゃがいも
スーパーなどで売っているのでおなじみですが、意外にもナス科ナス属の植物です。
ごつごつの形だったり、へこみがあったりと”似てる”と言われてもほめ言葉にはならんだろうなぁ。
”似顔絵ってホントに犯人に似ているのか?”と思われるかもしれませんが、戸島国雄によると意外にも良く似てるんだそうです。まあ、似ているかどうかは犯人が捕まってみないとわからないんですが、少なくとも逮捕された人については良く似てるんだとか。
モンタージュ写真っていうのは目とか口とかのパーツを組み合わせて犯人の顔を作っていくのに対し、似顔絵ってのは全体のイメージからディテールを作っていくんだそうです。また、モンタージュ写真はそれを作る機械のあるところまでいかいといけないし(今ならiPadあたりでもできそうですが)、2~3日かかる場合もあったとか。対して似顔絵はその場で鉛筆1本で描けるし時間も30~40分ぐらいだそうです。
人間の記憶なんてけっこういい加減だし、時間が過ぎればあやふやになっていくモンなんで、記憶に新しいその場でやったほうが似るのは確かなんでしょう。
でも、大きな理由は、人間ってデフォルメされたイメージのほうが記憶に残ってるんじゃないかと。その例としてあげたのが山藤章二のブラック・アングルから。
ロッキード事件といえば、戦後昭和を代表する一大疑獄事件。今の若い人にはピンとこないかもしれませんが、中高年の方にはこの3人の絵を観てると”ああ、あの人たち!”と思われるんじゃないかと。改めてご本人の写真を見るとまったくそっくりというわけではないんですが、特徴を良く出てるんですね、絵のほうが。だから記憶へのインパクトとしては山藤章二描くこの絵のほうが残ってるみたいな。それに”仲良き事は美しき哉”って、共犯関係=”仲良し”という本来と別の意味にしちゃってるエスプリも効いているし。
ほかの絵も同様で、特徴をデフォルメされてるほうがそのままの写真より本物らしいというか、記憶に残る本人ぽいと言うか。最近のモノマネ番組なんかでも、プロですから歌や声は似てますが、全体の雰囲気を似せてるほうが本人らしく見えるのと同じようなものかと(*3)。
どうも、人に分かってもらうためにはモンタージュ写真のような写実的なものより、印象派的なもののほうが人にはわかりやすいのかもしれません。
ただ、”警視庁似顔絵捜査官001号”の中で言ってますが、女性被害者の証言ってのは似ないというか、実物よりイケメンになる傾向あるんだそうです。被害者の方には申し訳ない言いようですが、戸島国雄の分析によると
女性が痴漢や暴行の被害に遭うと、不細工な男に乱暴されたとは言いたくないらしい
たいていは「犯人はいい男だった」と、実際よりも良く証言することが多い
このように被害者の見栄とプライドが捜査を遅らせる原因となることが
少なくないのである
よく、歳をとってから同窓会に行くと、昔憧れだった人が”え~~、こんな男やった??”みたいな話が出ますが、どっかで美化される心理が働くんでしょうかねえ。自分が恋した男の子はもっとカッコイイ人のはずみたいな。もっとも実物だって、腹は出るわ、頭はハゲるはしてますから全面否定はしませんが・・・
鑑識というと最近のテレビでは科学捜査ネタ(*4)がですが、こういったアナログな技術が役に立っているのは意外。けっこう面白い本です。
”山藤章二のブラック・アングル”は中高年向きかな。懐かしい顔がいっぱいでてきます。
《脚注》
(*1)しかも踊り付きで・・・
フジテレビのドラマ”マルモのおきて”のエンディング”マル・マル・モリ・モリ!”は鈴木福くんと芦田愛菜ちゃんがデュエット、大ヒットしました。
7歳児がやればお遊戯ですが、おぢさんがやれば単なるヲタ芸です。
(*2)ロッキード事件3人衆
ロッキード事件とは、全日空の旅客機導入選定に絡んで、前内閣総理大臣の田中角栄、行動派右翼の大物児玉誉士夫、国際興業社主の小佐野賢治をはじめ大物政治家や官僚が受託収賄などで逮捕された一大疑獄事件。
田中角栄逮捕が1976年ですから、もう35年以上前の事件なんですねぇ。
(*3)全体の雰囲気を似せてるほうが
この手の芸を最も進化させたのがタモリかな。
デビュー当時のネタで”四カ国語マージャン”ってのがありました。
これは英語、中国語、韓国語など、言葉としてはでたらめだけどそれっぽく聞こえるというシロモノ。国民性なんかも垣間見えて面白いです。
ご興味のある方はYouTubeでどうぞ。
(*4)科学捜査ネタ
沢口靖子主演でやってるテレビ朝日のドラマ”科捜研の女”とか。
コンピューターをばりばりに使いこなすす~ぱ~おねいさんです。
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