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2012年9月30日 - 2012年10月6日

おまえは自分の行動の究極の結果を考えたことがあるのか? 命を与えておいて、その後は死ねと、放り出した(フランケンシュタイン/東京電力本社)

 ども、ホラー物はちょっと苦手なおぢさん、たいちろ~です。
 先日、福島原発の事故を扱ったノンフィクション”プロメテウスの罠(*1)”てのを読んだんですが、きっかけってのがタイトル名。原子力を”第二のプロメテウスの火(*2)”というんだそうですが、連想したのは実は別のほうのプロメテウス。
 ということで、今回ご紹介するのは”フランケンシュタイン”であります。


Photo
写真はたいちろ~さんの撮影。東京電力本社ビルです。


【本】フランケンシュタイン(メアリー・シェリー 角川文庫)
【DVD】フランケンシュタイン(1994年版)
 若き科学者ヴィクター・フランケンシュタインは生命の謎を解き明かし死体を蘇らせる研究に没頭する。そして生まれた創造物”フランケンシュタインの怪物”は卓越した体力と知性的な頭脳、そしてあまりにも醜い怪物だった。
 不条理な迫害と孤独により創造物はフランケンシュタインの愛する者を次々と殺していく・・・
 従来のモンスター物ではなくメアリー・シェリーの原作に近い形で1994年にフランシス・コッポラが映画化。主演のロバート・デ・ニーロの壮絶な名演が光る名画です。
 映画のキャッチコピーは”なぜ造った
【旅行】東京電力本社
 東京電力の本社は、東海道線で新橋駅のすぐ近くの皇居側にあります。3段重ねの上に赤白の塔があるのですぐわかります。
 正直なとこ売上高5兆3千億円を超える(連結ベース)企業の本社にしては小ぶり(*3)。まあ、事業の中核設備が発電所だからそんでもいいのかも。


 なんでフランケンシュタインが絡むかと言うと、この小説のフルタイトルって”フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス”なんですね。フランケンシュタインの怪物って、ホラー映画の影響で”う~”とか”フンガー”とかしかしゃべらない頭の悪そうな印象がありますが、原作ではとてもインテリジェンスのある怪物。原作では、創造主であるフランケンシュタインとなかなか知的な会話をしているし、”失楽園”、”プルターク英雄伝”、”若きヴェルテルの悩み”(*4)なんかを読みこなしてます。映画版でも氷の洞窟で哲学的な会話をかわしてます(DVD版吹替では津嘉山正種がいい味だしてますし)

 フランケンシュタインの主題のひとつに”創造物による創造主への反乱”があるわけですが、これがいわゆる”フランケンシュタイン・コンプレックス(*5)”と言われるもの。神に代わって創造物(=生命)を作り出すことへのあこがれと、その創造物が制御できなくなって創造主が滅ぼされるのではないかという恐怖の感情のことです。
 これって、今の原子力発電をめぐる心理によく似てるんじゃないかと。ヒロシマ、ナガサキの悲劇を乗り越えて、やっとこさ平和利用をしてたのに(*6)、事故の恐怖からか”とにかく危ないんだからやめてしまえ”みたいな極端な議論になってるんじゃないかな~って気がします。

  おまえは自分の行動の究極の結果を考えたことがあるのか?
  命を与えておいて、その後は死ねと、放り出した

 これは、映画版に出てくるフランケンシュタインの怪物がフランケンシュタインに向かって語りかけるセリフ(ああ、ややこしい)

 フランケンシュタインの怪物ってよく考えてみると”醜い”という意外は実はとても優秀な存在で(*7)、これも原子力と良く似てるような感じがしてます。制御ができている分には有効なエネルギー源ですが、いったん事故を起こすと怪物扱い。今の政治家や官僚組織、東京電力の動きなんか観てると、もし原子力発電所がしゃべるとこができたら、上記のフランケンシュタインの怪物と同じこと言いそう・・・

 電気によって生まれたフランケンシュタインの怪物と、電気を生み出すために作りだされた原子力発電所とか(*9)、なんとなく相似形のところが多いようなお話ですが、”プロメテウスの罠”の第一巻の中では言及されていないんで、まあこっちの深読みかもしれませんけどね。

 ”フランケンシュタイン”はB級ホラー映画のイメージが強いですが、原作小説はなかなか深いものがあります。原発うんぬんは別にしても、創造物への不安を知るのに読んでみるにはいいかもしれません。


《脚注》
(*1)プロメテウスの罠(朝日新聞特別報道部 学研パブリッシング)
 サブタイトルは”明かされなかった福島原発事故の真実”とあるように、福島原発をめぐる伝えられなかった情報や、原子炉爆発の危機に混乱する官邸、当事者意識のない東京電力、原子力安全・保安院などの対応を描いたノンフィクション。
 詳しくはこちらから。
(*2)第二のプロメテウスの火
 プロメテウス(プロメーテウス)は、主神ゼウスに逆らって人類に火を与えたギリシア神話に登場する神様。
(*3)本社にしては小ぶり
 東京電力は売上高ランキングの12位。だいたい豊田通商(10位 5.9兆円)、三菱商事(11位 5,5兆円)、三井物産(13位 5.2兆円)、セブン&アイ・ホールディングス(14位 4.7兆円)と同じくらい。
(*4)”失楽園”、”プルターク英雄伝”、”若きヴェルテルの悩み”
 失楽園:イギリスの17世紀の詩人、ジョン・ミルトンの叙事詩
 プルターク英雄伝(角川文庫では”プルタークの伝記”)
   :帝政ローマ時代のプルタークによるアレキサンダーら英雄の生涯を描いた本。
 若きヴェルテルの悩み(角川文庫では”ヴェルテルの悲しみ”)
   :婚約者のいる女性への愛に苦悩するウェルテルを描いたゲーテの小説。
 正直、読んだことあるのは若きヴェルテルの悩みだけです。
(*5)フランケンシュタイン・コンプレックス
 名付け親はSF作家アイザック・アシモフなんだそうです。
 で、このアンチテーゼが”ロボット工学三原則”なんだとか。
 (ロボット工学三原則はこっちをどうぞ)”
(*6)やっとこさ平和利用をしてたのに
 エネルギー白書2011によると、東日本大震災前の2010年度の発電電力量に占める原子力の割合は30.8%。公聴会や世論調査では0%、15%、20~25%と3つの選択肢が提示されてますが、一番高いものでも今より下がってるんですね。
(*7)”醜い”という意外は実はとても優秀な存在で
 知的な面もそうですが、体力面でもかなりなもんです。もしこの怪物がジャニーズ系のイケメンにできてたらきっとトップアスリート並みのスターになってただろうなぁ。
 昔なんかの漫画で(いしかわしゅんだったかなあ)、むちゃくちゃブサイクなロボットだかアンドロイドを作った博士が”私、工作な苦手なんですぅ~~”ってセリフを言ってましたが、もしフランケンシュタインにブラックシャックのような手術力があれば、ぜんぜん違う話になってたんだろうなぁ、名作になったかどうかは分からないけど。
(*9)電気によって生まれたフランケンシュタインの怪物と~
 ”雷光とともに誕生するモンスター”ってのはこの手の映画の見せ場の一つですが、どうもこのイメージが定着したのは1931年のユニバーサル映画の創作みたいで、原作小説にはでてきません。てか、”そのつくられたもののにぶい黄色の目が開くのが見えた。それは強く呼吸した、手足がひきつるように動いた。”でおしまい。あっさりしたモンです。

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