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2012年1月22日 - 2012年1月28日

半オクターブずれている交響曲を聴き続けているような小説です(百年の孤独/バナナ)

 ども、単身赴任寮で孤独に耐えるおぢさん、たいちろ~です。
 最近、飲み会をやると焼酎をよく呑みます。この歳になるとビールは腹にたまるし日本酒は翌日に残るし。まあ、大勢で呑むと価格がリーズナブルってこともありますし。
 ただ、どのジャンルでもブランドものというかお高いものもありまして、焼酎で有名なのが”百年の孤独(*1)”。先日読んだ桜庭一樹の”ばらばら死体の夜(*2)”でも、翻訳家の先生が”百年の孤独”といって”焼酎”のことだと思う女性が出てきます。もっとも、こちらは小説の話をしてるんですが。
 ということで、今回ご紹介するのは焼酎でネタふりをしながら小説のほうの”百年の孤独”であります。
 焼酎の話を期待した人にはすいません m(_ _;)m


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 写真はたいちろ~さんの撮影。”那須 花と体験の森(*3)”のバナナの木です。


【本】百年の孤独 (ガルシア・マルケス 新潮社)
 蜃気楼の村マコンドの栄枯盛衰を、ブエンディア一族7世代の出来事を積み重ねて描いたラテンアメリカの長編小説。初版は1967年に出版。
 作者のガルシア・マルケスは1982年にノーベル文学賞を受賞しました。
【花】バナナ
 バショウ科バショウ属のうち、果実を食用とする品種群の総称。
 スーパーでは房を分けて売っていますが、木には上記のように生っています。先端の赤紫のところが花の咲く部分で、ここに小さな花がたくさん咲きます。
 写真で赤紫色のところにちょっとだけ見えてる白い部分が花。バナナの実の先端にある黒い部分が花の名残です。


 最初、ブエンディア一族の物語とかの紹介文だったので、”大地(*4)”みたいなのかと思って読み始めたんですが、ずいぶん違ってました。
 感情描写をほとんど廃して、短いエピソードを積み重ねていくっていう書き方なんですが、このエピソードのほとんどが淡々と事実を述べていて、時々、超自然的なのが混じっています。あえて言うなら半オクターブずれている交響曲を聴き続けているようなイメージ(*5)。ちゃんとした楽曲になっているのに何か違和感があるような。

 こういった非日常、非現実と日常、現実という相反する状態がまじりあって同時に表現されているような技法を”マジックリアリズム”というんだそうですが、確かにこのテイストに合う人には魔術的にはまりそう。
 上記の桜庭一樹もマルケスの”百年の孤独”に影響を受けた一人で、”赤朽葉家の伝説(*6)”なんか、モロにその影がうかがえます。

 物語はブレンディア一族の祖にしてマコンドの創成者”ホセ・アルカディオ・ブエンディア”と後に盲目になっても普通に生活できる妻”ウルスラ”から始まって、内乱を指揮した頑固じじいの”アウレリャノ・ブエンディア大佐”、恋愛に不器用な”アマランタ”、バナナ会社へのデモを煽動する”ホセ・アルカディオ・セグンド”、愛人と妻の間を行き来する事業家?の”アウレリャノ・セグンド”、超美人の小町娘”レメディオス”、法王見習いと嘘で人生を固める”ホセ・アルカディオ”、愛人を射殺されてしまう”レナータ・レメディオス(メメ)”とその息子で引きこもりだが博識の”アウレリャノ・バビロニア”、ラブラブ夫婦なのに不倫に走った”アマランタ・ウルスラ”などなど、ひと癖もふた癖もある人物がてんこ盛り。
 同じような名前がいっぱい出てきますが、みんな別人。この国のネーミング方法なんでしょうか? 実際に読むときは巻頭にある家系図を見ながらでないと頭が混乱してきます。
 私のお気に入りとしては、”メルキアデス”。ジプシーというよりほとんど錬金術師。生きているうちは初代の”ホセ・アルカディオ”たちに文明の利器をもたらし、死んでからも”アウレリャノ”に博学な知識をもたらすというほとんど”オビ・ワン・ケノービ(*7)”みたい人です。

 初版は1967年と、1962年以降おこったラテンアメリカ諸国の独立なんかの影響を受けてか、アウレリャノ・ブエンディア大佐の率いる内乱なんかの話も出てきますが、情熱をもって語るとかほとんどなくて、むしろ夢の世界を冷静に記述してるって感じ。どちらかというと幻想小説っぽいです。
 バナナ工場の待遇改善デモ(*8)に端を発した3000人の虐殺事件という、どっかの国で実際にあったっぽい話もそう。政府や経営者サイドの場当たり的、高圧的な対応と、逃亡生活を続ける”ホセ・アルカディオ・セグンド”も、淡々と書いていてかえって寒々としてしまいます。
 それに、特徴的なのが人があっさり死ぬこと。主人公級の人たちが短いと数行の記述で片づけられるので、油断して読んでると”あれ、この人いつ死んじゃったんだっけ??”てなことになりかねません。

 ”百年の孤独”は、かなりクセがあるので好みは分かれるかもしれませんが、桜庭一樹が好きな人ならテイストは合いそう。お勧めです。

《脚注》
(*1)百年の孤独
 黒木本店(宮崎県高鍋町)から発売されている麦焼酎。ネット通販で買うとだいたい7~8,000円ぐらい。
 生産本数が少ないせいか居酒屋で置いてある店はほとんどないです。以前、神楽坂の居酒屋でたまたま置いて店があったので呑んでみましたが、ニュース扱いだったような・・・
(*2)ばらばら死体の夜(桜庭一樹 集英社)
 40才過ぎの翻訳家”吉野解(さとる)”は学生時代に下宿していた古書店「泪亭」の2階で、白井沙漠と出会い、体の関係を持つ。しかし沙漠が解に借金を申し込んだことから・・・
 詳しくはこちらからどうぞ
(*3)那須 花と体験の森
 栃木県那須町高久甲の”那須ハートランド”にあるアミューズメント施設。押し花キャンドルや苔玉などの体験教室や、温室の喫茶店、ガーデンなどがあります。同一敷地内には日帰り温泉”那須山”も。
 私んちが行った時は、私が温泉に入っている間に奥様が和菓子の体験教室を受けてました。
(*4)大地(パール・バック 岩波文庫、新潮文庫 他)
 中国の貧農、王龍の一族3代を描いたパール・バックの長編小説。
 高校生の時に途中まで読みました。最後まで再読したいんですが、文庫で4冊はちょっと重いなぁ・・
(*5)半オクターブずれている交響曲を聴き続けているようなイメージ
 実際に聴いたことあるわけじゃないですが。
 何かの本で、オーケストラが指揮者にいたずらするのにオクターブずれで演奏したってのが書いてあったので、プロの技術があれば演奏できるみたいです。
(*6)赤朽葉家の伝説(桜庭一樹 創元推理文庫)
 鳥取県の架空の村である紅緑村で製鉄業を営む”赤朽葉家”。
 千里眼奥様こと”赤朽葉万葉(あかくちば まんよう)”レディスのヘッドである赤朽葉毛毬(けまり)、恋愛に悩むニートな赤朽葉瞳子(とうこ)の女3代の歴史を描く長編小説。けっこうハマります。日本推理作家協会賞、吉川英治文学新人賞を受賞。
 スピンオフ作品の”製鉄天使”もお勧め。
(*7)オビ・ワン・ケノービ
 ”スター・ウォーズ”ジェダイの騎士。この人もエピソード1~3ではアナキン・スカイウォーカー、エピソード4からはルーク・スカイウォーカーを指導し途中からは霊体化して、さらにルークを導いていました。
(*8)バナナ工場の待遇改善デモ
 バナナって、南国のフルーツという明るいイメージがありますが、プランテーション作物(熱帯地域などに先進国が大量の資本を投下し、広大な農地を先住民や奴隷などの安価な労働力を使って作る作物)の代表例。経済の安定や発展に問題を抱えている国の作物とも言えます。
 スーパーで安いのだと5本100円以下で買えるバナナですが、輸送や保管コストを考えると、耕作者の利益はいくらなんでしょう?

二十五年間、一緒にいたんだ、馴れ合いだって、歴史だよねえ(銀婚式物語/ミモザ)

 ども、とうとう長女が成人式を迎えてしまったおぢさん、たいちろ~です。
 再婚でもできちゃった結婚(*1)でもないので、単純に考えると20年以上結婚生活をしてしまったことになります。そうなってくると、まあ、銀婚式(*2)なるものがもうすぐやってくるわけです。 
 結婚生活25年(*3)、四半世紀もまあ別れもせずよくもまあつづくもんです。
 ということで、今回はめでたく銀婚式を迎えたご夫婦、新井素子の”銀婚式物語”のご紹介であります。


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 写真はたいちろ~さんの撮影。近所で見つけたミモザアカシアです


【本】銀婚式物語(新井素子、中央公論新社)
 作家の陽子さんとサラリーマンの正彦さん。このたびめでたく銀婚式を迎ることになりました。25年の結婚生活を振り返ってみるといろんなことが・・・
 女子高校生でSF作家としてデビューしたライトノベル作家の元祖”新井素子”の自伝的エッセイ風小説。
【花】ミモザ
 マメ科オジギソウ属の植物の総称又は、マメ科アカシア属花卉の俗称。
 ポンポン状の黄色い花が咲くことから、シャンパンとオレンジ・ジュースのカクテルである”ミモザ”や、ゆで卵をふりかけた”ミモザサラダ”の名前の由来になりました。
 花言葉は”豊かな感受性、感じやすい心”。


 さて、”銀婚式物語”って若い人は知らないかもしれませんが、1985年に野生時代に掲載された”結婚物語”、88年に出た続編の”新婚物語”のさらに続編なんですね~~
 何年か前に出た”Around40~アラフォー~"に収録されていた小比類巻かほるの”Hold On Me”っていうのは、この”結婚物語”を原作にしたTVドラマ”結婚物語”の主題歌。主演が沢口靖子(*4)(陽子さん)と陣内孝則(正彦さん)というなかなかに豪華なラインナップですが、改めて調べるとこんな前だったんだなあ。まあ、こっちもとるはずですが・・・

 で、”銀婚式物語”ですが、面白いんですね、これが。特に世間の感覚とずれまくっている陽子さん。本書で4章を費やしているおうちを建てる話なんかがまさにそうです。
 私もわりと本を読む方ですが、陽子さんちはお父さんの力さん(*5)のも併せて3万冊! 普通だとB○○K○FFに行くんでしょうが、陽子さんの場合、家付き本棚(本棚付き家ではない)を建てちゃうんですね、しかも重量鉄骨の家を。

  これは、本をあんまり持っていない人には、判らない話なんだろうけど、
  本というのは、重いのである。
  これがどんなに”重い”のかと言えば、
  家の根太を軽く歪めてしまう程度には、重い。

 本書にある一節ですが、本をあんまり持っていない人には、判らない話なんだろうけどこれはマジ。私も結婚にあたって実家の2階から本を運び出すと下の部屋にいた母親曰く”障子が開きやすくなった”とのこと。

 まあ、共稼ぎ夫婦なので多少お金はあるようですが(小説家の奥様名義ではローンが組みにくいとのぼやきはありますが)、実際に建てちゃうってとこがすごい。本読みにとってはうらやましいかぎりです。

 まあ、力さんや、おばあちゃんが亡くなったり、バクテリオ・ファージ・T4(*6)が死んじゃったりと悲しいこともありましたが、陽子さんと正彦さん、おおむね平和で幸せな人生だったんでしょうね。
 ENDINGの章で、陽子さん、正彦さんとカクテルのミモザを呑みながら

  馴れ合いの要素はとてもたくさんあるけれど。
  馴れ合いであるからこそ、二十五年も一緒にいられたっっていうのは事実なんだろうけれど。
  でも、二十五年間、一緒にいたんだ、馴れ合いだって、歴史だよねえ。

 ”銀婚式物語”は、初老のご夫婦にはお勧めの1冊。”結婚物語”も中公文庫で復刊するようですし、”新婚物語”も図書館で探せばあると思いますので、セットでぜひどうぞ。

 PS.私んちで奥様に”銀婚式になったら、二人で旅行でも行きましょうか?”と行ったら

   銀婚式まで待たなくてもいいから、どっか連れてけ!

 と言われました。まあ、夫婦なんてそんなもんです。

《脚注》
(*1)できちゃった結婚
 統計を調べると”結婚期間が妊娠期間より短い出生”になります。平成17年の厚生労働省の「出生に関する統計」によると、1980年1980年で10.6%、私の結婚したころの1990年で14.2%、2009年で25.3%。若い世代ほど比率的には高くなります(詳しくは厚生労働省HPへ)
 いまでこそ、ある程度は許容されているみたいですが、当時、結婚前に妊娠なんかした日にゃ大騒ぎになるとこです。
(*2)銀婚式
 結婚25周年の結婚記念日のこと。
 ちなみに7周年が銅婚式、50周年が金婚式。60周年がダイヤモンド婚式、75周年がプラチナ婚式。さすがにこのあたりになると結婚うんぬんより2人そろって生き延びていることのほうが寿ぎかも。
(*3)結婚生活25年
 昔、”ど根性ガエル(吉沢やすみ)”に登場する町田先生(アニメ版のCVは永井一郎)の口癖に”教師生活25年!”ていうのがあって、子供心に25年ってすご~~く長いと思ってましたが、過ぎてしまえばあっつ~~間ですねぇ・・・
(*4)沢口靖子
 大阪府堺市出身。今でこそ、”科捜研の女シリーズ(テレビ朝日)”で大人の女性を演じてますが、友人に彼女の高校の先輩ってのがいてて、彼曰く当時から”伝説の美少女”だったそうです。
(*5)お父さんの力さん
 前述の”結婚物語”TV版で演じたのは小林稔侍。今でこそ渋いバイプレイヤーの役が多いですが、この時は娘を嫁にやる親バカぶりを好演してました。
(*6)バクテリオ・ファージ・T4
 陽子さんが飼っていた”無差別虐殺スプラッター猫”の名前。”バクテリオ・ファージ”は細菌に感染するウイルスの総称ですが、いかなSF作家とはいえ、飼いネコにこんな名前をつけるってのは普通の感覚ではないですなぁ。

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