« 2012年7月8日 - 2012年7月14日 | トップページ | 2012年7月22日 - 2012年7月28日 »

2012年7月15日 - 2012年7月21日

意外と上から目線のぢぢいの話です(隅の老人/紐)

 ども、会社では隅っこのほうにいるおぢさん、たいちろ~です。
 先日、毒舌執事の出てくる安楽椅子探偵モノ”謎解きはディナーのあとで(*1)”を読みました。安楽椅子探偵というと、事件にかかわる当事者(警察官とか新聞記者とか)とその話を聞くだけで解決する人(探偵役)の組み合わせ。探偵役はどうも頼れる年配の人ってイメージがあって、この本の探偵役の影山ってのは頼りになるけどお嬢様刑事の麗子さんを罵倒するんですこし感じが違うのかな~と思ってました。
 そういえば、このジャンルの古典である”隅の老人”を読んでなかったので、今回読んでみましたが、ま~影山以上にタチが悪いんですな、このぢぢい。ということで、今回ご紹介するのは安楽椅子探偵の開祖であるオルツィーの”隅の老人”であります。


Photo
 写真はたいちろ~さんの撮影。近くのスポーツ店にあったロープです。
 左側が4mm、右が3mmとやや細めです


【本】隅の老人(バロネス・オルツィ ハヤカワ・ミステリ文庫 他)
 小さな喫茶店の隅に座っれいたさえない印象の老人。しかし、新聞記者のポリーとの話が犯罪のこととなるとその真相を名探偵ばりに鮮やかに解決するのだった・・・
 知らなかったんですが、作者のバロネス・オルツィは歴史ロマン”紅はこべ(*2)”を書いた人。こっちを先に読んでたのでけっこう意外でした。
【道具】
 人を縛ったり首を絞めたりする道具(良い子はマネをしてはいけません)。
 比較的細いのが紐、太いのが縄です。英語ではrope>cord>string。
 山で使うザイル(Seil)はドイツ語です。山では荷物を括る用の短めの紐を”細引き”と言ったんですが、スポーツ店の若い店員さんには通じませんでした。最近は使わないのかなぁ


 どうも、安楽椅子探偵というと”ゴルゴ13”に出てくる新聞記者とヒントを与える喫茶店のマスターってのが原体験みたいで(*3)、頼れる先輩みたいなイメージがありましたが、このオルツィー描く”隅の老人”ってまったく逆。
 このぢぢいの特徴ってのが血の気がなくやせこけて、隠しようのないハゲ頭の頭のてっぺんに淡い色の髪をなでつけ、神経質に紐を組んだり結んだりする癖。趣味は”犯罪研究”。素晴らしい推理をしながら警察には届けたりしない偏屈さ。

  警察にとって謎はない、と言った覚えははいよ。
  調査の結果入るべき情報さえ入っていれば、謎なんてありえない、と言っただけさ

   (中略)
  そう、なかんずくあの事件は謎なんてものじゃない、と言いたいね

 という上から目線。
 新聞記者のポリーの相談にのるというより、ポリーのネタふりに一方的にしゃべりまくる押しの強さ。”安楽椅子(*4)”探偵といいながら、審問会に行くわ独自に調査をするわとけっこうアクティブ。素晴らしい犯行には賛辞を惜しまないという倫理性の欠如。

 

好きですねぇ、こういう偏固なぢぢい老後の趣味が”犯罪研究”なんて親戚一同から絶対嫌われそうだし。だいたい交通事故を除けば警察にお世話になるような”事件”なんて一生に一度あるかどうか。その時以外はほとんど役に立たないし、それでも難事件を快刀乱麻のごとく解決すればそれなりに尊敬も得られるでしょうが、的外れな推理なんかした日にゃ捜査を混乱させるだけだし、むしろ、犯人の第一候補に挙げられそうな・・・

 推理小説としての”隅の老人”はどうかというと、けっこう微妙。この人の推理ってのは”提示された状況に対して合理的な説明をする”というタイプ。しかも、警察にとどけないモンだから、それが正しいかどうかってのは小説内では言及されてません(ひとつ間違えると冤罪事件ですよ、えっ!)。
 まあ、それでも迷宮入りの事件を解決(らしきもの)してるのは面白いんですね。けっこう強引だけど。”パーシー街の怪死”ではポリーが犯行現場に残された紐の結び目から犯人をこの”隅の老人”に結び付けるような記述がありますが複雑な結び目が作れるだけで犯人扱いだったら船員から、登山家からボーイスカウトかみ~んな容疑者です。

 ま、犯人との息詰まる対決とか心理戦みたいなのを期待するとちょっと違いますが古典として読めばまあ楽しめるかと。

《脚注》
(*1)謎解きはディナーのあとで(東川篤哉 小学館)
 国立署の新米警部にして大金持ちのお嬢様である”宝生麗子”と彼女に使える毒舌執事の”影山”によるユーモアミステリー。
 2011年度の”本屋大賞”1位にして、2011年に櫻井翔、北川景子の主演でテレビドラマ化。詳しくはこちらをどうぞ
(*2)紅はこべ(バロネス・オルツィ 創元推理文庫他)
  原題は”The Scarlet Pimpernel(スカーレット・ピンパーネル)”。
 フランス革命期のパリからギロチンで処刑されようとする貴族を救う謎のイギリス人グループのリーダー”紅はこべ”。イギリスの古典的冒険小説。詳しくはこちらをどうぞ
(*3)”ゴルゴ13”に出てくる新聞記者と~
 確か”ゴルゴ13(さいとうたかお リイド社)”の145話”蒼狼漂う果て”だったと思うんですが(手元にないので確認できませんでした)
 ゴルゴ13の出生の謎を探る若い外報部員と、引退して喫茶店を営む先輩ジャーナリストの話だったと思います。
(*4)安楽椅子
 安楽椅子(アームチェア arm chair)は別名肘掛け椅子。
 確かに”隅の老人”では喫茶店の椅子に座っているシーンしか出てきてませんが、”安楽椅子探偵”が必ずしも椅子に座ってるとは限りません。上記の影山はお嬢様の給仕をしながら推理してるし。

工場が残るなら、白い猫でも黒い猫でも構わん。上司はそう言ってます(鄧小平/豪徳寺の招き猫)

 ども、猫は嫌いではないですが、ネコ耳はちょっとごめんなさいのおぢさん、たいちろ~です。
 先日、こんな新聞記事を読みました(*1)。
 シャープの堺工場が稼働率の低下で存続が危ぶまれたが、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の出資で存続が決まった。これを受けての、堺市企業立地担当の金本貴幸氏(50歳)の言葉。

工場が残るなら、白い猫でも黒い猫でも構わん。上司はそう言ってます

 この言葉を読んで”上手い事を言う! 座布団1枚!!”と思ったのはおぢさん世代(あるいはおじいさん世代)。ということで、今回ご紹介するのは「黒猫白猫論」の人”鄧小平”であります。


3110363

 写真はたいちろ~さんの撮影。豪徳寺の”招き猫”です。


【本】鄧小平(矢吹晋 講談社学術文庫)
 毛沢東に評され、三度の失脚と復活を繰り返し現代中国の経済発展の礎を築いた稀代の政治家”鄧小平”を分析した評論。
 原本は1993年発刊の講談社現代新書で、2003年に補足を加え復刊。
【旅行】豪徳寺の招き猫
 豪徳寺(ごうとくじ)は、東京都世田谷区豪徳寺にある曹洞宗のお寺。
 彦根藩主・井伊直孝が鷹狩りの帰りに豪徳寺の前を通りかかった時、寺の和尚の飼い猫が手招きしてたので寺に立ち寄ったところ、雨に降られずにすんだとのこと。で、この姿をかたどったのが招き猫です(諸説あり)
 まあ、この猫も”招き猫”はともかくまさか400年後にひこにゃん(*2)のモデルになろとは思ってなかっただろうなぁ。


 現代中国史あんまし得意ではないので、今回読んだ”鄧小平”でいろんなことを知りました。
 まずこの言葉のオリジナルは1962年7月の共青団三期七中全会での鄧小平の言葉

  劉伯承(*3)同志はいつも
  「黄猫であれ、黒猫であれ(*4)、ネズミさえ捉えさえすれば、良い猫だ」
  という四川のことわざを使う。これは戦闘の話をしたものだ。
  我々が蒋介石を破ることができたのは、古いしきたりや、昔のやり方で
  戦ったからではない。すべては状況次第、勝てばよいという考え方だった

   (農業生産をどのように回復させるか 文選)

 実はこの言葉は鄧小平の依頼で議事録から削除されたそうなんですが、「農業生産の上がる方法が良い方法だ」と喝破した鄧小平の名言として口コミで広がったんだとか。
 この言葉の続編が”姓資姓社問題”。改革開放路線の本質が資本主義の範疇なのか社会主義の範疇なのかを点検せよと迫った問題(1992年)。
 これに対しての鄧小平反論が

  すなわち生産力の発展に有利かどうか、総合国力の増強に有利か否か、
  人民の生活水準の向上に有利か否か、をもって
  政策の当否を判断する基準とせよと強調した

  (本書より抜粋)

 この本を読んでわかるのは”鄧小平”という政治家が徹底してリアリズムの人だっていうこと。政策の人気投票の趣のある日本と違って、政策の相違がイデオロギーに直結する中国では、勝ち組(国家主席を中心とした集権)と負け組(失脚、粛清)がはっきりしています。その中で権力中枢にい続けた”鄧小平”が行った政治的なバランスをとりながら経済的な成長戦略を実現したってのはたいしたもんだと。

 鄧小平の時代っていわば高度経済成長の時代。この本の記載によると1991年の中国のGNPは約4,200億ドル(世界銀行の統計)。”エコノミスト”誌は鄧小平時代の14年間の実質成長率9%を維持すれば20年後の2012年にはアメリカ、日本と並ぶ経済大国になると予想したそうです。
 で、実際はというと、中国のGDP(国内総生産)は改革開放後30年で平均10%の成長を達成(国際通貨基金)。2010年のGDPで初めて中国が日本を上回り米国に続く世界2位になったのはご存知の通り。はっきり言って20年前に日本が中国に追い越されるなんて大半の日本人は思ってなかっただろうな~~

 ちなみに、最近の国際通貨基金の予測ではこのままいくと2016年には、GDPベースで中国が米国を追いぬく経済大国になるんだとか。最近は成長率が鈍ってきてるとはいえ、それでも中国は2011年度実質GDP成長率で9.24%、2012年推計で8.23%。同時期で日本はー0.75%、2.04%と低成長時代。最近のエコノミストの発言なんかで”低成長時代=給料が増えないのを前提としていかに幸せな人生を考えるか”なんてのが言われてますが、高度経済成長時代を生きてきたおぢいさん世代はどう聞いてるんでしょう。

 話を戻すと、このような中国の高度経済成長を促した立役者の一人に鄧小平がいたのは間違いなさそうで、改革開放政策への転換や、中央集権的計画経済体制から商品経済、市場経済へ舵を切った結果であるようです。これが社会主義かと言われると???かも知れませんが

 生産力の発展をはかることが社会主義の最大の課題
  =経済発展のためなら、やり方は問わない
   =白い猫だろうが黒い猫だろうが、ネズミをとってくるのは良い猫

 を実践したからのことなんでしょうねぇ。

 てなことを、ネズミを捕ってくるわけでもなく、幸福を招き入れるわけでもなく、ケンカばっかししている黒い猫と白い猫のどたばた政変劇を見せられてる国のおぢさんは思ってしまうのであります。

《脚注》
(*1)こんな新聞記事を読みました
 日本経済新聞 (2012年6月13日 朝刊)
 ”迫真 テレビはなぜ負けた 2 いきなり休止ですが”
(*2)ひこにゃん
 滋賀県彦根市のイメージキャラクター。誕生は2007年の彦根城築城400年記念イベント。日本で最も有名はゆるキャラの一人。詳しくは公式hpをどうぞ
(*3)劉伯承(りゅう はくしょう)
 中華人民共和国の軍人、政治家。中華人民共和国元帥。1955年、十大元帥の一人に選ばれるが1958年林彪と対立して失脚。すいません、中国史詳しくないのでwikipediaのコピーです。
(*4)黄猫であれ、黒猫であれ
 四川のことわざは「黄猫、黒猫」だそうですが、今では「白猫、黒猫」のが有名。

« 2012年7月8日 - 2012年7月14日 | トップページ | 2012年7月22日 - 2012年7月28日 »

最近のコメント

最近のトラックバック

無料ブログはココログ