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2012年6月24日 - 2012年6月30日

「男の娘」が生きにくい時代もあったんですよ、ちょっと前まで(桐に赤い花が咲く/吾輩は「男の娘」である!/桐)

 ども、どう見ても女装は似合わないおぢさん、たいちろ~です。
 先日、近所の公園に釣鐘状の薄青色の花が咲きました。奥様に尋ねたところ(*1)”桐ではないか”とのこと。

えぇ!、桐の花って赤くないの?

 そう、この年になるまで桐の花は赤いと思ってたんですね。なぜ、このような誤解をしていたかというと、昔読んだん本の題名のせいです。
 ということで、今回ご紹介するのはそんな誤解を与えた本、渡辺淳一の”桐に赤い花が咲く”であります。


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写真はたいちろ~さんの撮影。近所の桐の木(たぶん)です。


【本】桐に赤い花が咲く(渡辺淳一 集英社文庫他)
 新宿のマンションで若い女性が局所が無惨に切り刻まれた死体で発見された。担当の桑島刑事は犯人を恋人の”関屋利夫”と断定しその行方を追うが、ようとして知れなかった。その1年数ケ月後、今度は局所を傷つけられた男の絞殺死体が発見された。犯人と目される若い女性のモンタージュを見た桑島刑事はあることに気づく。”関屋利夫に似ている”。はたして犯人は同一なのか、男なのか女なのか・・・
 恋愛小説の大家、渡辺淳一による異色のミステリー
【本】吾輩は「男の娘」である!(いがらし 奈波 コンペイトウ書房)
 「男の娘(おとこのこ)」とは、女の子のように可愛い2次元の女装少年のこと。
 女装男子”いがらし 奈波”によるコミックエッセイ。扉にご本人の写真が載ってますが、マジきれい。30歳近い男性には見えません。
【花】桐(きり)
 キリ属の落葉広葉樹。
 湿気を通さず、割れや狂いが少ないため、高級箪笥の材料として使われます。成長が早いので女の子が生まれると、桐の木を植えて結婚する時にその桐で嫁入り道具の箪笥を作ったそうです。


 表題の”桐に赤い花が咲く”ってのは、犯人が自分の体の特徴に対する質問に診断したお医者さんが、

  どうしてもといわれても、生まれつきとしかいえません。
  まあ、桐に赤い花が咲いたようなものです。

 と答えたことから。この本を読んだ当時は桐の花がどんなのか知らなかったので”そんなもんか”と思って読み飛ばしてたんですが違ってたんですねぇ。

 ネタバレになるのであんまり詳しく書けませんが、犯人は自分の体のコンプレックスから犯行に至るわけですが、このお医者さんは犯人に対してこんなことを言ってます。

  このごろのように考え方が自由になってくると、
  男とか女とか、必ずしもどちらかでなけれはならないといった考え方は、
  次第に消えてきている。
  今日は男、明日は女というように、どちらでもいい。
  自分は好きなほうになってかまわない。しかもそれを誰も気にしない。
  いまにそんな時代がくるかもしれない。

 桑原刑事はそれが満更、遠い先のことでないような気がすると思ってます。
 この本が出たのは1981年のことですので、ほぼ30年前。そんなに遠い昔とは言えない時代です。

 で、今はどんなんかというと、もう一冊の本”吾輩は「男の娘」である!”です。美人で巨乳のOLの彼女がいて、ちゃんとエッチもしている立派な男性ですが趣味が女装。女の子のファッションを楽しむのが「男の娘」なんだそうですが、いがらし 奈波は元ジャニーズJr.に所属というイケメンなので、女装してもかなりの美形。
 さらに、本来は反対に回るはずの彼女が応援してて、さらに深みに誘っているとこ。まあ、彼女からしてコスプレイヤー(*2)なのでわからんでもないですが・・

 その上すごいのが、いがらし 奈波のオカン。何の前触れもなく女装のコスプレの写メを送られても

  ぶぅわっはっはっ! いいぞー! もっとやれ!

 と応援する始末。
 名前を聞いてひょっとしたらと思ったらおばさん世代。そう、奈波のオカンってのは”キャンディ・キャンディ(*3)”の作者、”いがらしゆみこ”です。さすがに漫画家ってのはまともな神経ではないらしい・・・

 まあ、この本を読んでると、お医者さんや桑原刑事の予想は当たったんだろうって気になりますねぇ。

 でも、”桐に赤い花が咲く”の犯人がこの本を読んだらどう思うんでしょう。
 もし犯人が今の時代に生きてたら自分は犯罪者じゃなくて、ヒーロー(ヒロイン?)になれたかもとか思ったりして・・・

 ”桐に赤い花が咲く”は、トリックとか、犯人探しとかの要素は希薄なのでミステリーとは言い難いかもしれません。むしろ最終章に凝縮された犯人のキャラクター造形を楽しむ本かと。お暇な時にでもどうぞ。

《脚注》
(*1)奥様に尋ねたところ
 奥様は”フラワークラフト作家”というものをやっておりまして、この分野は本職です。その影響で私が花のブログ(いちおう)を書いてるってわけではありませんが。
 ご興味のある方は奥様ブログ「フラワークラフト作家”Ann”のひとりごと」をご覧ください。
(*2)コスプレイヤー
 アニメなどのキャラクターの衣装を着るのがコスプレ。これを行う人がコスプレイヤー (cosplayer) です。
 会社の後輩にコスプレイヤーの人がいて、機動戦士ガンダムに登場する”セイラさん”のコスプレ写真を見せてもらいましたが、ジャストミートでした。
(*3)キャンディ・キャンディ
 1970年代後半に大ヒットした漫画&アニメ。大学時代に友人(♂)から”妹の本だから”とわざわざ言い訳付きで借りたのを読みました。泣かせるストーリーです。
 ちなみに、アニメ版でキャンディの想い人であるアンソニーの声を演じたのがいがらし 奈波の父”井上和彦”です。

萩尾望都の漫画版を合わせ、ぜひ読んでいただきたい名作です(ウは宇宙船のウ/宇宙服)

 ども、オールドなSFファンのおぢさん、たいちろ~です。
 2012年6月5日、レイ・ブラッドベリ(*1)がお亡くなりになりました。

   おぉ、ブラッドベリ! 抒情派SFの巨匠!!

 おそらくおぢさん世代にとって、ブラッドベリってSF体験の原点の一つであり、SFの無限の可能性を感じさせてくれた作家ではないかと。
 ということで、今回ご紹介するのはブラッドベリの代表作の一つ”ウは宇宙船のウ”であります。


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写真はたいちろ~さんの撮影。
宇宙戦艦ヤマト艦長”沖田十三”の宇宙服(制服)です。
2010年に赤坂で開催された”宇宙戦艦ヤマト(実写版)”のイベントにて。


【本】ウは宇宙船のウ(レイ・ブラッドベリ 創元SF文庫)
 「早く大人になりたいな、あんな宇宙船に乗り組めるように」
 クリス少年は空色のヘリコプターが来るのを待っていた。宇宙業務の選抜を告げるヘリコプターを。そしてある日ヘリコプターはやってきた。少年を宇宙に誘うために・・
(「ウ」は宇宙船の略号さ)
 ”霧笛”、”宇宙船乗務員”、”太陽の金色のりんご”などを収録した短編小説集。
【本】ウは宇宙船のウ(原作:レイ・ブラッドベリ 漫画:萩尾望都 小学館)
 上記の”ウは宇宙船のウ”を始め、”霧笛”、”宇宙船乗務員”(原作は”ウは宇宙船のウ”に収録)、”ぼくの地下室へおいで”(”スは宇宙(スペース)のス”に収録)、”集会”(”10月はたそがれの国”に収録)などを萩尾望都が漫画化。1977~8年に”週刊マーガレット”に掲載されました。
 ブラッドベリの抒情的な雰囲気と萩尾望都のテイストがべストマッチした作品集。
【道具】宇宙服
 宇宙服というとヘルメット付きのごついのを思われたかもしれませんが、あれは船外服で四六時中着てるもんじゃありません。当然、宇宙船内で着る服もあるわけです。
 国際宇宙ステーション(ISS)なんかは実験設備なのでラガーシャツみたいなのを着ていますが、SFモノだと軍艦なので艦長クラスは軍服っぽいのを着用。最近は女子高校生の制服っぽいのもありますが・・・(*2)


 手元にあるのは創元推理文庫版(*3)(1979年 25版)。たぶん高校か大学のころ買ったんだと思います。読もう読もうと思いつつ、読むのがもったいなくて30年以上も持ったままでした。今回、ブラッドベリの死去に伴い本棚から引っ張り出して読んだんですが、もっと早く読んどいたほうが良かったな~~

 特に表題作の”「ウ」は宇宙船の略号さ(*4)”
 宇宙航路局の要員に抜擢されて8年間の教育を受けるために出発するクリス少年のシーン。旅立ちにあたって振り捨てていくものへの思いと未来への希望を胸に宇宙港の門をくぐるクリス。

  ぼくは自分のあこがれのことを思った。
  月へ行く宇宙船。
  これはぼくの一部でも、ぼくの夢の一部でもない。
  ぼくがそれの一員になるのだ。

   (中略)
  そして、歩いたまま、ぼくはその堀の向うへはいって行った

 べつにおぢさんが読んじゃいけないってわけじゃないんですが、今だとどうしても若き日のノスタルジーが入っちゃって。若い時に読んでたらまた違った感想があったんじゃないかと思います。
 この話は萩尾望都が漫画化してますが、こっちもお勧めです。

 本書に掲載されている中でお気に入りは”宇宙船乗務員”(原題 The Rocket Man)。宇宙船乗務で時々しか帰ってこないお父さんに、宇宙に憧れる少年ダグ。そして夫を愛していながら、まるでいないような振る舞いをしているはかなげなお母さんリリーの3人の物語。
 ダグはお父さんの制服に火星の鉄の、金星の蔦の、水星の硫黄と炎の匂いを感じます。また、制服を遠心分離器にかけて集まった粉を顕微鏡で見たりとか
 原作では”黒い制服”としか書いてませんが、萩尾望都の漫画版では帽子をかぶった軍服風に書かれています。(まあ、軍服っぽいということで、宇宙戦艦ヤマトの沖田艦長の制服を載せてみました。雰囲気だけでもお楽しみください)

 ”宇宙船乗務員”は”ウは宇宙船のウ”と違って夫への不安を隠しきれない妻の想いが強く出た作品です。なぜ母親が父親のことをいないような様子にいるかをダクが質問した時の母親の答え。

  十年前にお父さんが宇宙空間の中へ行ってしまったとき、
  わたしはひそかにこう思ったのよ『あのひとはもう亡くなってしまったのだ』と

   (中略)
  十年前にわたしはこう思ったの。
  仮りにお父さんが金星でお亡くなりになったらどうだろう?
  そうしたら、もう二度と金星など見るに耐えなかろう

   (中略)
  そういう星が空高く出ている晩には、
  もう星なんかにかかわるのはまっぴらとうい気持ちになるだろうなって

 まるで西洋の女神様を思わせるようでいて不安におびえるような感じのお母さんが秀逸。

 ネタバレになりますが、お父さんは”これが最後だ”といって旅立ちますが、太陽での事故にあって死亡します。

  そして、長いあいだ、ぼくたちが外へ散歩に出かけるのは、
  ただ雨降りの、太陽の出ていない日だけであった

 漫画版での最後の2ページに漂う寂寥感はさすがに萩尾望都です。

 ”ウは宇宙船のウ”はSFの古典的名作。萩尾望都の漫画版も合わせお勧めです。

《脚注》
(*1)レイ・ブラッドベリ
 アメリカのSF作家。
 代表作は”華氏451度”、”火星年代記”、”10月はたそがれの国”、”スは宇宙(スペース)のス”、”刺青の男”など多数。
 代表作の多くは1960年代の半ばから70年代の半ばにかけて創元SF文庫や早川SF文庫から出版され、新版も含めれば今でも入手可能です。
(*2)最近は女子高校生の制服っぽい~
 ”モーレツ宇宙海賊”(原作は笹本祐一の小説”ミニスカ宇宙海賊”。MBSでアニメ化)とか。観たこたないですが、53歳になる私の上司が主題歌を歌う”ももいろクローバーZ”はまっています。大丈夫か、うちの会社?!
(*3)創元推理文庫版
 意外に思われるかもしれませんが、当時のSFは”推理文庫”の一ジャンルとして扱われてました。”創元SF文庫”として独立するのは1991年11月のことです。
(*4)「ウ」は宇宙船の略号さ
 本の名前は”ウは宇宙船のウ”ですが収録の短編の表題は”「ウ」は宇宙船の略号さ”になっています。原題はともに”R Is for Rocket”。

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