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もともと短歌って洗練されたツイッターみたいなもんだったりして?!(配達あかずきん/茜)

 ども、休みの日は本探しに明け暮れるおぢさん、たいちろ~です。
 本好きの人がお世話になる場所といえば、本屋さん、図書館、古書店があります。最近は図書館も本屋さんに業務委託をしている所もあるので、本屋さんのやってる範囲も増えてるんじゃないかと。でも、本屋さんの業務自身ってあんまし知らないんですね。この分野だと元本屋の店員さんが作家になって書いてる本ってのが参考になります。たとえばコミックエッセイの久世番子(*1)とか。先日B○○k○ffで久世番子の本が何冊か出てたのでまとめ買いしました。今回ご紹介するのは、元本屋さんでミステリー作家の大崎梢と久世番子のコミック化した本”配達あかずきん”であります。

0356

 写真はたいちろ~さんの撮影。国分寺万葉植物園の茜です。
 開花時期ではなかったのでまだつぼみですが、8~10月ごろには白い花が咲きます。


【本】配達あかずきん(大崎梢、創元推理文庫)
【本】配達あかずきん(原作 大崎梢、絵 久世番子、新書館)
 本屋のお得意様”松沢さま”が突然失踪した。娘の理沙が提示した手掛かりは1枚のレシートのみ。買った本は”あさきゆめみし”だった。そして、20年前に交通事故で亡くなった松沢さまの息子貴史のスクラップに残された”茜さす 紫野ゆき 標野ゆき”の意味するものは?
 本屋の店員杏子さんとアルバイトの多絵さんは、この謎に挑む
標野にて 君が袖振る
【花】茜(あかね)
 アカネ科のつる性多年生植物。根は乾燥すると赤くなるためこの名前がついたとのこと。根から抽出される色素を使って草木染めにした暗い赤色が、夕暮れを表現するのに使われる”茜色”です。

 ネタバレになりますが、あらすじはこんな感じです。

 本屋のお得意様の”松沢さま”が突然行方不明になった。残されたレシートを元に本屋さんに尋ねると、”あさきゆめみし”を買ったらしい。失踪直前に娘の理沙にかかってきた電話では20年前に交通事故で亡くなった息子の貴史にかかわることらしい。また、貴史のスクラップには本人でない筆跡で書かれた

茜さす 紫野ゆき 標野ゆき 野守は見ずや 君が袖振る

が張り付けられていた。この和歌と”松沢さま”の失踪の関連は何なのか?

 ちょっと解説をしますと、”あさきゆめみし”というのは、紫式部の”源氏物語”を原作とした大和和紀のマンガ(講談社漫画文庫に収録)。今では古典の教材として先生もお勧めの本だとか。”標野にて 君が袖振る”の中では光源氏と年上の愛人”六条御息所(*2)”のエピソードが効果的に使われています。
 また、”あさきゆめみし”を読んでいる弟の貴史に”光源氏にそっくり”と言った姉の理沙にムキになって”おれは光源氏とは違う”ってのも伏線。普通はモテモテの光源氏にたとえられて嫌がる男はいないんですが。一度も言われたことないけど・・

 ”茜さす~”は万葉集に納められた額田王(ぬかたのおおきみ)の和歌。額田王は元々大海人皇子(おおあまのおうじ)の恋人だったが実兄の中大兄皇子(なかのおおえのおうじ 天智天皇)に寵愛されて別れてしまいます。大海人皇子は額田王を忘れられません。この短歌の現代語訳は

  茜色の光に満ちている紫の野、天智天皇御領地の野で、
  あなた(大海人皇子)がそんなに袖を振ってらしてるのを
  野の番人が見てるかもしれませんよ、

といったところです。古典の時間にやったと思いますが、覚えてますか?

 つまり、愛し合っていても人に知られてはならない関係がこの二人にあったことを暗示しています。

 最後のエピソードに出てくる百人一首の

会いみての のちの心にくらぶれば むかしはものを 思はざりけり

 ってのも、けっこう殺し文句として効いています。

 ”茜さす~”もそうですが、短歌というのは短い言葉の中に背景を含めた膨大な情報量を秘めているんですね。こういったバックボーンが分かってるとけっこう楽しめます。
 最近はツイッターみたいに短い文章でコミュニケーションとるのが流行りですが、日本人にはこういった短文の文化みたいなのが合ってるんでしょうか。条件反射的な文章ではなくて、こういった背景にある物語を踏まえた言葉とか本歌取り、返歌みたいな掛け合いの文章だったらツイッターでも楽しめるんでしょうし(*3)。

 ”標野にて 君が袖振る”が収録されている”配達あかずきん”は、”成風堂書店事件メモ”シリーズの1冊目。短編集でさらっと読める本です。

 そういえば、”あさきゆめみし”って入社したての女の子から借りたんだよなぁ(*4)。かれこれ20年近く借りっぱなしになってるんで、いつか返しに行きたいんですけどねぇ。

《脚注》
(*1)久世番子(くぜばんこ)
 本屋のアルバイト経験のある漫画家。この経験をコミック化した”暴れん坊本屋さん”や、”私の血はインクでできているのよ”など。デフォルメされたキャラでギャグマンガの人と思ってましたが、今回ご紹介の”配達あかずきん”ではちゃんとストーリーマンガの絵になってます。”暴れん坊本屋さん”の中で同僚が

 あら、番子さんってふつうのマンガも描くのねぇ・・
とつぶやくシーンがありますが、私も同感です。
(*2)六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)
 年下の光源氏と恋愛関係に陥るが、嫉妬のあまり生霊となって源氏の愛する葵の上をとり殺してしまう人。(源氏物語 第九帖 ”葵”
 女性って恐ろしい・・・
(*3)ツイッターでも楽しめるんでしょうし
 以前、”ツイッターは種田山頭火の夢を見るか”で、自由律俳句な楽しみもあるって書きましたが、まあ、面白ければいいわけで・・
(*4)入社したての女の子から借りたんだよなぁ
 別に源氏物語のような艶っぽいエピソードはありませんのでご安心ください、奥様。

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