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2012年9月

おまえは自分の行動の究極の結果を考えたことがあるのか? 命を与えておいて、その後は死ねと、放り出した(フランケンシュタイン/東京電力本社)

 ども、ホラー物はちょっと苦手なおぢさん、たいちろ~です。
 先日、福島原発の事故を扱ったノンフィクション”プロメテウスの罠(*1)”てのを読んだんですが、きっかけってのがタイトル名。原子力を”第二のプロメテウスの火(*2)”というんだそうですが、連想したのは実は別のほうのプロメテウス。
 ということで、今回ご紹介するのは”フランケンシュタイン”であります。


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写真はたいちろ~さんの撮影。東京電力本社ビルです。


【本】フランケンシュタイン(メアリー・シェリー 角川文庫)
【DVD】フランケンシュタイン(1994年版)
 若き科学者ヴィクター・フランケンシュタインは生命の謎を解き明かし死体を蘇らせる研究に没頭する。そして生まれた創造物”フランケンシュタインの怪物”は卓越した体力と知性的な頭脳、そしてあまりにも醜い怪物だった。
 不条理な迫害と孤独により創造物はフランケンシュタインの愛する者を次々と殺していく・・・
 従来のモンスター物ではなくメアリー・シェリーの原作に近い形で1994年にフランシス・コッポラが映画化。主演のロバート・デ・ニーロの壮絶な名演が光る名画です。
 映画のキャッチコピーは”なぜ造った
【旅行】東京電力本社
 東京電力の本社は、東海道線で新橋駅のすぐ近くの皇居側にあります。3段重ねの上に赤白の塔があるのですぐわかります。
 正直なとこ売上高5兆3千億円を超える(連結ベース)企業の本社にしては小ぶり(*3)。まあ、事業の中核設備が発電所だからそんでもいいのかも。


 なんでフランケンシュタインが絡むかと言うと、この小説のフルタイトルって”フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス”なんですね。フランケンシュタインの怪物って、ホラー映画の影響で”う~”とか”フンガー”とかしかしゃべらない頭の悪そうな印象がありますが、原作ではとてもインテリジェンスのある怪物。原作では、創造主であるフランケンシュタインとなかなか知的な会話をしているし、”失楽園”、”プルターク英雄伝”、”若きヴェルテルの悩み”(*4)なんかを読みこなしてます。映画版でも氷の洞窟で哲学的な会話をかわしてます(DVD版吹替では津嘉山正種がいい味だしてますし)

 フランケンシュタインの主題のひとつに”創造物による創造主への反乱”があるわけですが、これがいわゆる”フランケンシュタイン・コンプレックス(*5)”と言われるもの。神に代わって創造物(=生命)を作り出すことへのあこがれと、その創造物が制御できなくなって創造主が滅ぼされるのではないかという恐怖の感情のことです。
 これって、今の原子力発電をめぐる心理によく似てるんじゃないかと。ヒロシマ、ナガサキの悲劇を乗り越えて、やっとこさ平和利用をしてたのに(*6)、事故の恐怖からか”とにかく危ないんだからやめてしまえ”みたいな極端な議論になってるんじゃないかな~って気がします。

  おまえは自分の行動の究極の結果を考えたことがあるのか?
  命を与えておいて、その後は死ねと、放り出した

 これは、映画版に出てくるフランケンシュタインの怪物がフランケンシュタインに向かって語りかけるセリフ(ああ、ややこしい)

 フランケンシュタインの怪物ってよく考えてみると”醜い”という意外は実はとても優秀な存在で(*7)、これも原子力と良く似てるような感じがしてます。制御ができている分には有効なエネルギー源ですが、いったん事故を起こすと怪物扱い。今の政治家や官僚組織、東京電力の動きなんか観てると、もし原子力発電所がしゃべるとこができたら、上記のフランケンシュタインの怪物と同じこと言いそう・・・

 電気によって生まれたフランケンシュタインの怪物と、電気を生み出すために作りだされた原子力発電所とか(*9)、なんとなく相似形のところが多いようなお話ですが、”プロメテウスの罠”の第一巻の中では言及されていないんで、まあこっちの深読みかもしれませんけどね。

 ”フランケンシュタイン”はB級ホラー映画のイメージが強いですが、原作小説はなかなか深いものがあります。原発うんぬんは別にしても、創造物への不安を知るのに読んでみるにはいいかもしれません。


《脚注》
(*1)プロメテウスの罠(朝日新聞特別報道部 学研パブリッシング)
 サブタイトルは”明かされなかった福島原発事故の真実”とあるように、福島原発をめぐる伝えられなかった情報や、原子炉爆発の危機に混乱する官邸、当事者意識のない東京電力、原子力安全・保安院などの対応を描いたノンフィクション。
 詳しくはこちらから。
(*2)第二のプロメテウスの火
 プロメテウス(プロメーテウス)は、主神ゼウスに逆らって人類に火を与えたギリシア神話に登場する神様。
(*3)本社にしては小ぶり
 東京電力は売上高ランキングの12位。だいたい豊田通商(10位 5.9兆円)、三菱商事(11位 5,5兆円)、三井物産(13位 5.2兆円)、セブン&アイ・ホールディングス(14位 4.7兆円)と同じくらい。
(*4)”失楽園”、”プルターク英雄伝”、”若きヴェルテルの悩み”
 失楽園:イギリスの17世紀の詩人、ジョン・ミルトンの叙事詩
 プルターク英雄伝(角川文庫では”プルタークの伝記”)
   :帝政ローマ時代のプルタークによるアレキサンダーら英雄の生涯を描いた本。
 若きヴェルテルの悩み(角川文庫では”ヴェルテルの悲しみ”)
   :婚約者のいる女性への愛に苦悩するウェルテルを描いたゲーテの小説。
 正直、読んだことあるのは若きヴェルテルの悩みだけです。
(*5)フランケンシュタイン・コンプレックス
 名付け親はSF作家アイザック・アシモフなんだそうです。
 で、このアンチテーゼが”ロボット工学三原則”なんだとか。
 (ロボット工学三原則はこっちをどうぞ)”
(*6)やっとこさ平和利用をしてたのに
 エネルギー白書2011によると、東日本大震災前の2010年度の発電電力量に占める原子力の割合は30.8%。公聴会や世論調査では0%、15%、20~25%と3つの選択肢が提示されてますが、一番高いものでも今より下がってるんですね。
(*7)”醜い”という意外は実はとても優秀な存在で
 知的な面もそうですが、体力面でもかなりなもんです。もしこの怪物がジャニーズ系のイケメンにできてたらきっとトップアスリート並みのスターになってただろうなぁ。
 昔なんかの漫画で(いしかわしゅんだったかなあ)、むちゃくちゃブサイクなロボットだかアンドロイドを作った博士が”私、工作な苦手なんですぅ~~”ってセリフを言ってましたが、もしフランケンシュタインにブラックシャックのような手術力があれば、ぜんぜん違う話になってたんだろうなぁ、名作になったかどうかは分からないけど。
(*9)電気によって生まれたフランケンシュタインの怪物と~
 ”雷光とともに誕生するモンスター”ってのはこの手の映画の見せ場の一つですが、どうもこのイメージが定着したのは1931年のユニバーサル映画の創作みたいで、原作小説にはでてきません。てか、”そのつくられたもののにぶい黄色の目が開くのが見えた。それは強く呼吸した、手足がひきつるように動いた。”でおしまい。あっさりしたモンです。

うまくすれば”バトルシップ”の戦艦を見れるかもしれません(バトルシップ/ミサイル駆逐艦)

 ども、何回も言いますが軍事ヲタではありませのおぢさん、たいちろ~です。
 たまたまTSUTAYAで”バトルシップ”を借りました。狙ってたわけではないですがお目当てのが貸し出し中だったので。で、ストーリーもな~んも知らんで観たんですが、これがなんとまあ。アメリカ人に宇宙侵略SFモノを作らせるとなんでこう能天気になるのかな~~~。ノリはほとんど”インディペンデンス・デイ(*1)”だし。
 で、この映画に登場する戦艦ってどっかで見たな~~と思ったら横須賀の基地祭りで見てたんですね。ということで、うまくすれば来年の夏も観ることができるかもしれない”バトルシップ”の戦艦であります。


【DVD】バトルシップ(主演:テイラー・キッチュ、浅野忠信 監督 ピーター・バーグ)
 太陽系外の惑星と交信を試みるビーコンプロジェクトがハワイでスタートした。この数年後、リムパック(*2)が開催されているハワイ海域に4隻のエイリアン戦闘艦が飛来する。”ミサイル駆逐艦 ジョン・ポール・ジョーンズ”、”ミサイル駆逐艦 サンプソン、”護衛艦 みょうこう”が派遣されるが、バリアにより外の海域との連携が途絶、3隻による孤立した戦いが始まる・・・
 2012年に公開されたアメリカのSF超大作映画。


 さて登場する”ジョン・ポール・ジョーンズ”、”サンプソン”ですが、これは両方とも”アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦”という種類で両方とも実在する戦闘艦。”ジョン・ポール・ジョーンズ”が3番艦、”サンプソン”は52番艦になります。で、私が観たのは同型艦の”フィッツジェラルド(12番艦)”。2010年の海上自衛隊の横須賀基地のサマーフェスタ、2012年のアメリカ海軍横須賀基地のフレンド・シップデーにて(ともに基地開放のイベント)。
 ”護衛艦みょうこう”は”こんごう型護衛艦(*3)”の3番艦で、私が観たのは”きりしま(2番艦)”。ただし、映画に出ている艦のモデルは”あたご型護衛艦”なのだそうで、形とかちょっと違ってますが。


 で、撮ってきた”フィッツジェラルド”の写真から。

【並んで停泊する”フィッツジェラルド”と”きりしま”】海上自衛隊基地 2010年

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 手前が”護衛艦きりしま”、後ろが”駆逐艦フィッツジェラルド”です。
 リムパックよろしく仲良く停泊。写真ではよく分かりませんが、”フィッツジェラルド”は全長153.9mと”きりしま”のほうがやや大きめ。


【ブリッジとそこからの風景】米海軍基地 2012年

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 ぎざぎざ付きのヨーヨーまいたいなので破壊されるブリッジです。
 ”宇宙戦艦ヤマト”を見てると、ブリッジってのは大きいもんだと思いがちですが(*4)、意外と狭いし天井は低いです

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 これはブリッジからの風景。やたら人が多かったのはこの映画のせいでしょうか?


【艦首上甲板からブリッジと速射砲】米海軍基地 2012年

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 エイリアン宇宙船への初手の威嚇射撃などを行った兵器。
 主人公のアレックス・ホッパー大尉がエイリアン兵士に対しゼロ距離射撃を行ったのもこれ。5インチ (127mm)、32kgの砲弾を毎分10発発射できるというシロモノで、こんなんで撃たれればエイリアン兵士がばらばらになるのも当たり前です。


【後部甲板のミサイル垂直発射システム(VLS)】米海軍基地 2012年

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 ナガタ一等海佐が”ジョン・ポール・ジョーンズ”でエイリアン相手にレーダー作戦ゲーム(*4)をやった時に巡航ミサイルを発射したのがこれ。(右側は上記の速射砲)
 ”ジョン・ポール・ジョーンズ”にはこの発射口(セル)が前後の甲板分合わせて90ケあるんだとか。
 ちなみに、ナガタ一等海佐が位置を指示するの”エコー、フォックストロット、タンゴ、ウイスキー”とか言ってるのは、フォネティックコード(*5)と言われるもの。日常会話で使うとちょっとかっこいいかも(ヲタク扱いされるだけかもしれませんが・・・)


【近接防衛火器システム(CIWS)】米海軍基地 2012年

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 エイリアン宇宙船から飛んでくるミサイル(というか大型手榴弾)を撃ち落としたのがこれ。通称”ファランクス”。(写真は後部甲板側に設置されたもの)
 R2-Dみたいな形をしてますが20mm砲弾を1分間に3,000発、全自動で発射するというなかなかに危険なシロモノ。


【3連装短魚雷発射管】米海軍基地 2012年

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 文字どおり魚雷を発射する装置なので、エイリアン宇宙船がぴょんぴょん飛ばなくなって(*6)初めて有効な武器。3隻目の攻撃の時巡航ミサイルとの時間差攻撃で利用されました。


【その他の装備】
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①ホッパーやレイクスがエイリアン宇宙船を偵察にいったときのランチング・ボート

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②索敵に利用していた双眼鏡。イージスシステム搭載したミサイル駆逐艦ですが、こういったアナログなものもちゃんと装備されています。

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③艦内で銃撃戦をやった時の銃器類(たぶん)。銃の影で見えませんが”ノータッチ”という張り紙がしてあります。きっと触らせて欲しいって言うヤツがいるんだろうなぁ。


 とまあ、こんな感じです。
 個人的には”戦艦ミズーリ”のほうが砲弾撃ってる感があって好きなんですが(*7)、これ観るためにハワイのパールハーバーまで行きたいっていっても奥様がOKしないだろうなぁ。

 横須賀基地のフレンド・シップデーは毎年8月上旬に開催。”フィッツジェラルド”の母港は横須賀基地なので、うまくすれば来年も見れるかもしれません


《脚注》
(*1)インディペンデンス・デイ(主演:ウィル・スミス、監督 ローランド・エメリッヒ)
 世界の主要都市の上空にエイリアンの超巨大UFOが出現した。圧倒的な戦闘力を誇るエイリアンの攻撃により主要な大都市は壊滅。アメリカ首脳部は、秘密施設”エリア51”に避難する。そのころエイリアンに立ち向か3人の男達がいた・・・
 アメリカの能天気さを壮大なスケールで描くバトル系SF映画。1996年に公開。
(*2)リムパック(Rimpac)
 アメリカ海軍主催によるハワイの周辺海域で実施される海軍の軍事演習のこと。環太平洋合同演習。隔年で開催されているそうで直近は2012年。
 2004年、06年に”ジョン・ポール・ジョーンズ”、10年に”サンプソン”、12年に”みょうこう”が参加と、映画のように3隻がそろってるのはないもよう。
(*3)こんごう型護衛艦
 イージスシステムを搭載する海上自衛隊のミサイル護衛艦。
 イージスシステム搭載艦としては世界最大級の排水量だそうで、全長165m(みょうこうは161m)。ステルス性を考慮した設計だそうで、映画の中で”相手から見えない”と言っているのはまんざらウソでもなさそうです。
(*3)”宇宙戦艦ヤマト”を見てると
 ずいぶん昔ですが、”宇宙戦艦ヤマト”の図面(ブループリント)を正確に作成するという企画があったんですが、あの第一艦橋はどう納めてもでかすぎるんだとか
(*4)レーダー作戦ゲーム
 ノートパソコンみたいな形をしたパネルを使って相手の戦艦を攻撃するというゲーム。タカラから発売されてましたが、持ってたんだよな~~~、これ。
 映画名の”バトルシップ”のモトネタはこれ(正確には海戦ゲーム)だそうで、確かにパッケージを見ると”BATTLESHIP”って書いたります。
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 ※写真は”昭和レトロ倶楽部”より
(*5)フォネティックコード
 通話などで聞き間違いがないように使われる頭文字の規則のこと。
 エコー=E(Echo)、フォックストロット=F(Foxtrot)
 タンゴ=T(Tango)、ウイスキー=W(Whiskey)
 興味のある方はこちらでどうぞ
(*6)エイリアン宇宙船がぴょんぴょん飛ばなくなって
 突っ込みどころ満載のエイリアン宇宙船ですが、最大のナゾはこのぴょんぴょん飛ぶという推進方法。画面で見る限り数十m以上は飛びあがっているようですが、着水の衝撃だけでもそうとうありそう。よっぽど衝撃緩衝システムが効いてなければ、中のエイリアンだってただじゃすまないような気が・・・
(*7)砲弾撃ってる感があって好きなんですが
 方向修正のできない弾丸を撃ちだす艦載砲は、発射プロセスが”撃つぞ~~”って緊張感があっていいですね。発射したあとに方向修正ができるミサイルって、なんとなく”とりあえず撃ってから考えよう”みたいな・・・(いや、照準合わせたりはみっちりやってるんでしょうが・・・)

なんで、こんな所にいるんだ! 頼む、逃げてくれ(プロメテウスの罠/ひまわり)

 ども、生活に逃げ場のないおぢさん、たいちろ~です。
 先日、会社でスーパーコンピュータの担当の人と話をしてたんですが”SPEEDI(*1)にもスーパーコンピューターが使われてたよ”という話が出ました。スーパーコンピュータ”京”(*2)の研究テーマに防災・減殺に資する地球変動予測ってのがあるのは知ってましたが、前からやってたんですね。ちょうど今読んでる本に”SPEEDI”が出てたんで、今回はこの本のお話”プロメテウスの罠”であります。


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 写真はたいちろ~さんの撮影。
 宮城県大崎市三本木”ひまわりの丘”のひまわりです(東日本大震災前の写真)


【本】プロメテウスの罠(朝日新聞特別報道部 学研パブリッシング)
 サブタイトルは”明かされなかった福島原発事故の真実”とあるように、福島原発をめぐる伝えられなかった情報や、原子炉爆発の危機に混乱する官邸、当事者意識のない東京電力、原子力安全・保安院などの対応を描いたノンフィクション。
【花】ひまわり
 夏を代表するキク科の一年草。
 名前の由来は太陽の動きにあわせて花が回るからだそうで、花言葉も”あなただけを見つめます”。
 ひまわりはセシウムを吸収する性質を持つことから、東日本大震災後に放射能汚染された土地に植えたら除去できる(除染効果)があるとされましたが、実際はほとんど効果はないそうです(農林水産省HPより)


 この本を読んでいろいろ言いたいことはありますが、一番目がテンになったのは原子力安全・保安院が立ち上げた緊急時対応センター(ERC)の対応。上記の”SPEEDI”による予測が継続していて、避難区域の案を作成していたにもかかわらず、管直人首相、原子力災害対策本部長 当時)が独断で避難指示を出すと案の作成をやめてしまったそうです。

  ERCはSPEEDIの予測を続けながら汚染地区を見極めようとしていた。
  ところが・・・
  その矢先の午後9時23分。
  原子力災害対策本部長の管直人は同心円状の避難指示を発する。

   (中略)
  官邸中枢が避難区域を決めてしまった以上、自分達の役割はない。
  そう即断し、この段階でERCは避難区域案つくりをやめてしまう。

   (本書より抜粋)

 同心円状に被害地区が広がらないのは原子力防災の常識なっているにも関わらず、ERCはこの状況を追認したとのこと。なんだか無責任の極みだなぁという感じです。

 別に管直人首相の肩を持つわけではないですが、トップというのは正確な情報がない状態でもなんらかの決断を下す必要がある場合ってのは往々にあって、この場合は”とにかく逃げろ”という指示を出すのは間違いではないんじゃないかと。
 防災心理学なんかの本を読むと、人間は”逃げろ!”と言われても意外と逃げ出さないんだそうで、パニック映画でやってるように我先に逃げだすとは限らないんだとか(*3)。これは”正常性バイアス”あるいは”正常化の偏見”といわれるもので、危険が予想される状況であっても、都合の悪い情報を無視したり、自分は大丈夫みたいな危険の過小評価してしまう心理のため。実際本書の中でも

  本当に危険なら町や警察から連絡があるはずだ。様子を見よう
  おれらのつくった原発がそんなに危ないわけねえべ

 といって避難を取りやめた例が出ています。


 さすがに政府が”適当に逃げろ”というわけにもいかないんで”原発から○○kmは避難”みたいな具体的な数字を示す必要があったんでしょうが、これが当たっていたかどうかなんて後からわかる話。緊急時んはしかたがなかったんじゃないかと。
 たとえば、津波の場合。”何mの津波が来るか分からないので、何階以上(あるいは何m以上の高台)に逃げればいいか指示できない”なんて言ってるより、”まず、高い所の避難しろ!”と言った方が指示としてはよっぽどマシ。”津波てんでんこ(*4)”の考え方です。

 ただし、これは初動で情報もない状態での次善の策であって、情報を提供しないことを正当化するもんでないのは当たり前。正確な(あるいはそう推定される)情報を提供することができていれば、もっと被害を少なくできたかもしれないのに。

 本書の中で、除染に役立つといわれて植えられているひまわりの話が出てきます。
 結局除染には効果はないそうですが、放射能影響だけを見つめるために大枚はたいて作ったシステムが一番必要な時に役に立てられなかったというのは、ひまわり以上に哀しいものがあるなぁ。


《脚注》
(*1)SPEEDI
 正式名称は”緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(System for Prediction of Environmental Emergency Dose Information)”
 wikipediaによると”緊急事態において気象条件や地形情報などから放射性物質の環境への拡散を地理的、数値的に予測するシステム”とのこと。”防災対策を講じるための重要な情報として活用されることが期待されていた”と過去形で説明されているのが哀しい
(*2)スーパーコンピュータ”京”
 理化学研究所に設置された富士通製スーパーコンピュータ。
 2011年に世界最速のコンピュータに認定(現在は2位)
 同じスーパーコンピュータという分類ですが、”京”は10.51ペタFLOPS(毎秒1.051京回の浮動小数点演算を実行)と、SPEEDIに採用されていた計算サーバ(VPP5000U×2台 富士通製)の約55万倍の性能。
 ”京”の挑戦分野はこちらをどうぞ。
 ※現在は新システムに切り替えられているようです。
(*3)パニック映画でやってるように~
 パニック映画の代表作”タワーリング・インフェルノ”(主演 スティーブ・マックイーン、ポール・ニューマン)でも、最上階のパーティルームに取り残された人々ってのは、一部の人を除いてものすごく理性的な行動をとっています。人間として危機的状況ではこうありたいものです。
(*4)津波てんでんこ
 岩手県の三陸海岸地域にある津波防災伝承。津波が来たら、各自てんでんばらばらに高台へと逃げろということ。
 東日本大震災では、平均時速115kmと高速道路でもスピード違反の自動車なみ速度で津波がきたそうで、逡巡している暇があったらとっとと逃げ出すのが正解です。

題名やキャッチコピーにだまされちゃいけません、ビターの効いたスイーツです(小市民シリーズ/和栗のタルト)

 ども、根っから小市民でスイーツ(笑)な生活を送るおぢさん、たいちろ~です。
 先日から米澤穂信にハマっています。”古典部シリーズ”を一気読みして(*1)、今は”小市民シリーズ”に手を出してます。
 気にいった作家の作品を一気読みするのが悪い癖というか貧困の根源というか、でも、面白いんだもン。同じくやる気ない系の高校生を主人公にした推理小説ですが、まあ、似たようなテイストでこんだけ違うラストをもってるくか~~~
 ということで、今回ご紹介するのは米澤穂信の続き”小市民シリーズ”であります。


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 写真はたいちろ~さんの撮影。近所のイベントで売ってた”和栗のタルト”。秋限定かどうかはわかりませんが。


【本】小市民シリーズ(米澤穂信 創元推理文庫)
 中学校時代の苦い思い出を反省し、小市民の星をめざす高校生”小鳩 常悟朗(こばと じょうごろう)”と”小佐内 ゆき(おさない ゆき)”。
 ある日、スイーツを食べようとしていた小佐内 ゆきの自転車が目の前で盗まれた。後日自転車は発見されたがどうも犯罪に関係したらしい。外見は子供っぽく見えるゆきだが、この事件をきっかけに心の奥に隠そうとした”狼”が目を覚ます・・・(春限定いちごタルト事件
 ゆきの好きなスイーツをつまみ食いしたことで、”小山内スイーツセレクション・夏”に付き合わされることになった常悟朗。ある日、ゆきが不良少女たちに誘拐された。ゆきを救出に向かう常悟朗と友人の堂島 健吾だが、この事件にはゆきの仕組んだもう一つの裏があった・・・(夏限定トロピカルパフェ事件
【スイーツ】和栗のタルト
 栗のスイーツといえばモンブランが有名ですが、こちらはタルト。
 秋だったので”いちごタルト”がありませんでした。そんだけです。


 いきなり話は飛びますが、会社員をやっていると大激論になることがままあります。まあ、どこに出しても恥ずかしい社会人ですので取っ組み合いの大喧嘩をやるこたありませんが、内容的にはほとんど喧嘩状態。で、はたから見てると(たまに当事者ってこともありますが、たまに)、”喧嘩上等!”って人と”喧嘩上手”って人がいます
 ほとんど同じじゃないか?! と思われるかもしれませんが、けっこう大きな違いがあって”喧嘩上等!”って人は後先考えずに喧嘩を売りますが、”喧嘩上手”な人は意外と冷静で二手三手先を読んでたり、ちゃんと落とし所を考えてたりするモンです(*2)。
 もう一つの違いは”喧嘩上等!”の人って、”殴ったら殴り返される”という覚悟があんましないんですね。逆に”喧嘩上手”の人ってのは”殴り返される”心の準備があるので、この手の人と対等に話をしようとすると、足をとめて2~3発殴り返す必要があります、たぶん。

 で、もっともやっちゃいけないのが”喧嘩上等!”な人が”喧嘩上手”な人に喧嘩を売ること。なんでこんな話をしてるかというと、ヒロイン?の小佐内 ゆきって子は典型的な”喧嘩上手”なんですね、これが。ゆきに危害を加えた連中はフルボッコ以上な目にあっています(かなりひどいことをやってるので無罪ってワケではないんですが)。
 このあたりが、同じような高校生の日常を描いた”古典部シリーズ”との大きな違い。ほとんど事件らしい事件ともいえない”古典部シリーズ”ですが、”小市民シリーズ”では警察が介入するような本モノの事件が発生してます。読後感で言えば、事件の大きさよりも、古典部シリーズのホータローと同じような立ち位置の常悟朗とゆきの引き起こす結末とその動機の違いが大きいのかも。自分の性癖ががいやで小市民を目指す常悟朗とゆきですが、自分の中の獣性を隠しきれないところが人間の業とでも言いましょうか。

 本書からの教訓

  人は見かけにだまされてはいけない
  喧嘩を売っちゃいけない人はいます

 まあ、”強敵と書いて友と呼ぶ(*3)”みたいな少年ジャンプ的なことを考えてる人は、そもそも人に喧嘩なんか売っちゃいけないんでしょうが。

 題名やキャッチコピーにだまされちゃいけません。タルトのように甘い作品じゃなくって、ビターの効いたスーイツ。ほのぼのしたオチにはなってませんから。
 でも、とっても面白い本です。


《脚注》
(*1)”古典部シリーズ”を一気読みして
 省エネ主義を信条とする高校1年生の”折木奉太郎”、好奇心の猛獣”千反田える”、人間データベース”福部 里志”、七色の毒舌”伊原 摩耶花”を主人公とする米澤穂信の青春ミステリーというか、日常系推理小説。詳しくはこちらをどうぞ。
(*2)二手三手先を読んでたり~
  戦いとはいつも二手三手先を考えておこなうものだ。
  戦いは非常さ。そのくらいのことは考えてある。
 ともに、シャア・アズナブルの名言。この人も喧嘩上手の人です
(*3)強敵と書いて友と呼ぶ
 ”北斗の拳”の主人公。ケンシロウから。この人も喧嘩がとっても強いです。
 ”北斗の拳”は1980年代の”週刊少年ジャンプ”を代表する作品であり、キーワードの”友情、努力、勝利”を体現する作品でもあります。

このブログも主観性を失って、歴史的遠近法の彼方で古典になっていくのでしょうか(古典部シリーズ/薔薇色)

 ども、省エネな休日を過ごすおぢさん、たいちろ~です。
 先日、TSUTAYAでDVDを見てますと、米澤穂信(*1)の”氷菓(古典部シリーズ)”が出てました。
 以前から米澤穂信って読んでみたいなぁと思ってて手が出てなかったので、さっそく借りてきて観たんですが、面白かったんですねぇ、これが。さっそく文庫本5冊、コミック版2冊を大人買い、一気に読みました(こういうことをやっているからお金が貯まらんのだが・・・
 ということで、今回ご紹介するのは”古典部シリーズ”であります。
 いや、決して主人公の女の子がロングヘアーのストライクだったとか、アニメ化が京アニ(*2)だった訳ではないですから・・・


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 写真はたいちろ~さんの撮影。
 生田緑地ばら苑に咲いていた”グロリア・デ・ローマ”というショッキングピンクの薔薇です。


【本】古典部シリーズ(米澤穂信 角川文庫)
【本】氷菓(原作 米澤穂信、作画 タスクオーナ、カドカワコミックス・エース)
【DVD】氷菓(原作 米澤穂信、制作 京都アニメーション、角川書店)
 ”省エネ主義”を信条とする高校1年生の折木奉太郎(ホータロー)は、姉の命令で神山高校の古典部に入部することになる。そこにはいたのは一身上の都合で入部した黒髪の美少女”千反田える”。彼女は清楚な容姿とは裏腹に好奇心の猛獣だった。
 彼女から伯父にまつわる秘密を解いてくれと頼まれることになり・・・(第1巻 氷菓)
【花】薔薇色
 一般的に薔薇色というと赤を指しますが、薔薇そのものは赤、白、黄色、オレンジ、青とかなりカラーバリエーションがあります。
 赤一つとっても、憎しみを花言葉に持つ濃赤色から血の色を連想させるクリムゾン、可憐なイメージの淡いピンクまでさまざま。このあたりが薔薇愛好家にはたまらんのでしょうなぁ


 ”古典部シリーズ”は文字通り古典部の4名を主人公とした小説、登場人物は

〔折木奉太郎(おれき ほうたろう)〕
 モットーは

  やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に。

 という省エネ主義者。いいですねぇ、この生き方。
 成績は中の中という平均的な人ながら、ムダにスルドイ推理力を発揮。
 基本属性は”灰色”やる気のない”キョン”(*3)。

〔千反田える(ちたんだ える)〕
 頭脳明晰、成績優秀にして、”豪農 千反田家”の一人娘。嗅覚、視覚など五感に優れていて記憶力もバツグン。ただ

  わたし、気になります

 が出たとたん、かなり強引に物ごとを進める好奇心の亡者
 基本属性は本書には出て来ませんが”チタンダエル”って天使っぽいので”白”かな
 お嬢様な”涼宮ハルヒ”(*3)

〔福部 里志(ふくべ さとし)〕
  ホータローの親友。手芸部を兼部し総務委員会にも所属するアクティブな似非粋人。
 「データベース」と自認するだけあってムダな知識は豊富。でも成績は悪い。
 モットーは

  データベースは結論を出せない

 基本属性ははホータロー曰く”薔薇色”だが本人的には”ショッキングピンク”
 よくしゃべる”長門有希”(*3)

〔伊原 摩耶花(いばら まやか)〕
  外見は小学校以来ほとんど変わっていないというホータローの幼馴染。なぜか里志に惚れてる。基本属性は”七色”の毒舌

 この本はジャンル的には推理小説になるので、探偵役がいるわけです。wikipediaによるとシャーロック・ホームズがホータロー、依頼人がえる、ワトスンが里志だそうですが、読んだ感じちょっとちがうかなぁ。というか、ホータロー、える、里志の3人そろって探偵じゃないかなと。
 一言に推理力といっても、状況を見る”観察力”、それを再現する”記憶力”、分析するための”知識”、そして「混沌(カオス)の欠片」を再構成(*4)する狭義の”推理力”が必要です(*5)。シャーロック・ホームズなんかまさにそうで、現場観察から手掛かりを得て、過去の犯罪事例や物的証拠に関する知識をもとに何が起きたかを推理するっていうやり方。
 本書ではホータローが探偵役に見えますが、観察をベースにヒントを与えているのがえる、知識で補完するのが里志で、推理を組み立てて言語化しているのがホータローと役割分担してるように思います。そもそもホータロー一人だけだったらなんもせんのだろうな、きっと。
 まあ、けっこうな推理力があるんだから”灰色の脳細胞(*6)”だろうけど、あんだけ美少女のえるに慕われてるんだから、10年もたって振り返れば意外に”ローズピンク”ぐらいの高校生活だったと思うかもしれんなぁ。

 ”古典部シリーズ”は”青春ミステリー”ってことですが、今風に言うと”日常系推理小説”ってとこでしょうか。殺人事件が起こるわけでもなく、えるの思い出の謎を解くとか(氷菓)、収拾のつかなくなった自主映画の台本を作るとか(愚者のエンドロール)、ど~でもいい物の盗難とか(クドリャフカの順番)、ちょっとした後輩の誤解を解くとか(遠まわりする雛)、ほとんど事件とも言えないようなことの謎解きのお話。
 でも、それだけに安心して読んでられるんだよな~~~

 ただし、”古典部”と言いながら古典の話はまったく出て来ません。そういった意味では”文学少女シリーズ(*7)”のノリとはまったく別モノです。でも、とっても面白いんだけどね。おススメの小説です。


《脚注》
(*1)米澤穂信(よねざわ ほのぶ)
 日本の推理小説作家。代表作は”古典部シリーズ”や”春期限定いちごタルト事件”、映画化もされた”インシテミル”など。
(*2)京アニ
 アニメ制作会社”京都アニメーション”のこと。
 代表作は”涼宮ハルヒの憂鬱”、”らき☆すた”、”けいおん!”など、今やもっともノッてる会社です。
(*3)やる気のない”キョン”~
 キョン、涼宮ハルヒ、長門有希とも”涼宮ハルヒの憂鬱”(谷川流、イラスト いとうのいぢ、角川スニーカー文庫)の主人公。
 こっちも”京都アニメーション”によりアニメ化。面白いのでおススメです。
(*4)「混沌(カオス)の欠片」を再構成
 桜庭一樹のミステリー小説”GOSICK(角川文庫)”から。主人公で探偵役の”ヴィクトリカ・ド・ブロワ”の名セリフ。この人も毒舌。
(*5)狭義の”推理力”が必要です
 これが、ハードボイルドになると”戦闘能力”なんかも必要。
 知的なイメージの強いホームズですが、フェンシング、ボクシング、ステッキ術に優れているらしく、戦闘力も高そうです。
(*6)灰色の脳細胞
 アガサ・クリスティの推理小説に登場する名探偵”エルキュール・ポアロ”の名セリフ。”ABC殺人事件”は3巻”クドリャフカの順番”のモトネタ。久しぶりに読んでみようかな。
(*7)文学少女シリーズ(野村美月、ファミ通文庫)
 自称”文学少女”の天野遠子が古典文学をモチーフに後輩の井上心葉とともに謎を解き明かすという推理小説系ライトノベル
 こっちは”人間失格”に”銀河鉄道の夜”に”オペラ座の怪人”にと古典文学ネタがてんこ盛りです。こっちもおススメのシリーズです。

スーパー戦隊化する仮面ライダーとでも申しましょうか・・・(仮面ライダーウィザード/金環日食)

 ども、日曜日は早起きおぢさん、たいちろ~です。
 仮面ライダーの新しいシリーズが始まるということで、ついつい観てしまいました。
 なんでも仮面ライダーシリーズ初の魔法使いモノということで名前がまんまの”仮面ライダーウィザード(*1)”。仮面ライダーと言えば”改造人間=サイボーグ”という刷り込みがあるおぢさん世代にとって、ライダーはテクノロジー系の人だと思ってて”魔法使い”と言われてもねぇ。
 初回観ましたが、まあスーパー戦隊化する仮面ライダーとでも申しましょうか・・・
 ほとんどスーパー戦隊ファンタジー系(*2)のノリでした。

Photo

 写真はたいちろ~さんの撮影。会社で撮影した金冠日食。
 早起きして早朝出勤して見てました。


【TV】仮面ライダーウィザード(テレビ朝日 2012年 9月2日放映開始)
 平成仮面ライダー14作目。主人公は初の魔法使いらしいです。
 マントはひらひらさせるわ、初手からハンドガンぶっぱなすわと(*3)なかなか異色の仮面ライダーです。
【天文】金環日食
 太陽が月によって覆われる現象のうち、真ん中が月に隠れて外側に光輪ができるのが金環日食
 2012年5月21日に932年ぶりに日本の本州の半分以南で見えることでブームになりました。ただし、このあたりで観測できたのが珍しいってことで、世界レベルでみると1~2年に1回は見ることができます。今後だと2013年、14年、16年、17年に世界のどっかしらで観測可能。(wikipediaより)


 どうやらこの仮面ライダーは日食の日の儀式によって魔法使いの力を与えられた青年”操真晴人”と人の心の絶望から生まれた”ファントム”という魔物の戦いだそうですが、そうですか、人がのんびり日食見てる時にそんなことになってましたか・・・

 さて、初回を見た感想です。主人公の操真晴人は、留置場の中での~てんきにドーナツ喰ってるにーちゃんでよくわかりません。戦闘能力としては魔方陣からいろんな武器を出してくる(アポート(*4)の一種でしょうか?)という忘れ物防止には役立ちそうなモノ(*5)。まあ、魔法だからなんでもありかも。
 むしろ、初回で気になったのは”大門凛子”という女性の刑事さん。頭が柔らかいんだか固いんだかわからない女性です。初めて見た仮面ライダーが”魔法使い”だという現実をあっさり認める柔軟な理解力と、変身を解いたライダーにとっとと手錠をかける職務感覚(いちおう、命の恩人のはずですが・・・)
 ファントムの事件から手を引くという署長に対して”人を守るのが警察の仕事”と喰ってかかりますが、リボルバーの弾をしこたま撃ち込んでも平気な相手にどうしようってんでしょうか? ”警察の手に負えない”という上層部の判断のほうがむしろ現実的って気がします。

 話は飛びますが、有川浩の小説”海の底(*6)”に機動隊に敗走を命令する警察庁警備部参事官ってのが出てきます。このエピソードは、巨大化した甲殻類”レガリス”に対し機動隊には手に負えないという判断から、メンツにこだわる上層部に現実をわからせて自衛隊を引っ張り出すために一芝居うつってもの。
 やっぱし人間相手を前提とした警察の装備では、怪獣の相手は荷が重いでしょうかね。むしろ自衛隊の人にとっては怪獣相手は本望そうだし(*7)。

 ど~でもいい話ですが、なんで警察官の名前が”大門凛子(*8)”なんでしょう? 署長役で小宮孝泰(*9)出したってお子様たちにはわからんと思うぞ?! 最近の仮面ライダーって、けっこうマニアックな親世代向けのネタがはやりなんでしょうか?

 まあ、仮面ライダーというよりスーパー戦隊モノのノリだな~と思って観ってたんですが、wikipedia読んだらメインスタッフの多くがスーパー戦隊シリーズの人だとか。やっぱりねぇ・・・

《脚注》
(*1)ウィザード
 ”wizard”は男の魔法使いのこと。女の魔法使いは”witch”です。
 どうも、パソコンの”接続ウィザード”のほうから入ったんで、あんましピンとこないんですが。
(*2)スーパー戦隊ファンタジー系
 スーパー戦隊シリーズ(テレビ朝日)ってのは、統治機構の部署として組織形態がはっきりしているものと、家族や仲間が集まった私的なグループに大別できるんだとか。前者はシリーズ第一回のゴレンジャー(国連国際秘密防衛機構)や、今やってるゴーバスターズ(エネルギー管理局特命部所属)、後者がマジレンジャー(家族)ゲキレンジャー(実態は拳法道場)など。でもって、おおむね前者は科学的っぽい設定が多く、後者は魔法、精霊/天使の力、気みたいなわけのかわらんファンタジーな力で変身します(全部がそうってわけではないですが)。
(*3)初手からハンドガンぶっぱなすわと
 まずはケトばせよ、仮面ライダーなんだから・・・
(*4)アポート(apport)
 別の場所にある物体を取り寄せるという超能力の一種。
 質量保存の法則を無視して、スイッチひとつでいろんなものが飛び出してくる前回の仮面ライダーよりはまだ合理的?!
(*5)忘れ物防止には役立ちそうなモノ
 先日、タクシーの中に定期入れ忘れてたいへんな目にあいました。幸い3日後に警察から発見の連絡があって事なきを得ましたが、あんまししたくない体験です。
(*6)海の底(海の底 メディアワークス)
 桜祭りで開放されたアメリカ軍横須賀基地に、突如巨大な赤い甲殻類(レガリス)の大群が上陸した。遊びに来ていた子供たちを救助した為に、実習幹部の夏木、冬原は潜水艦”きりしお”に閉じ込められる。
 一方、状況を打開すべく奔走する警視庁の烏丸参事官、神奈川県警の明石警部、レガリス研究者の芹沢のとった行動とは・・・
 詳しくは、こちらをどうぞ。名作です。
(*7)自衛隊の人にとっては怪獣相手は本望そうだし
 ”自衛隊員の夢はゴジラと戦うことだ”っていう冗談とも本気ともとれない話を聞いたことがあります。
 ちなみにwikipediaによると、旧防衛庁が”自衛隊が怪獣相手に戦えるか”という研究をやったそうで、”災害派遣”や”有害鳥獣駆除”の名目で出動、武器の使用は可能なんだとか。
(*8)大門凛子
 警察官で”大門”といえば非実在刑事”西部警察”の大門部長刑事。凛子に名前が近いのが”太陽にほえろ”に登場の内田伸子(しんこ)婦警。でも、”西部警察”の放映は1979~84年とお母さんが子供のころに見てたかどうか。”太陽にほえろ”で伸子が出てたのが72~3年だから、お母さん世代でも生まれてないかも。
(*9)小宮孝泰
 お笑いグループ”コント赤信号”のメンバーの一人。同じくメンバーの”ラサール石井”が”こちら葛飾区亀有公園前派出所”のアニメで主人公の両津勘吉巡査長の声をやってました。アニメは 1996~2004年なのでお子様世代がぎりぎり見てたかどうか。
 ちなみに署長は主に警察の序列で上から5番目の”警視”をもって任じるそうで、8~9番目の巡査長よりかなり上。小宮孝泰のほうが出世してることになります。

究極の再生可能エネルギーではあるんでしょうが、一点賭けってのはいかがなものかと(バビロニア・ウェーブ/太陽光湯沸かし器)

 ども、毎晩暑くてクーラーかけっぱなしにして寝ているおぢさん、たいちろ~です。
 節電せにゃらなんのはわかっちゃいるんですが、タイマーかけてもクーラーが切れると目が覚める状態なんでねぇ・・・
 まあ、電気については原子力発電への依存度がど~したこ~したって話題がニュースで流れてますが、安全性の問題があるものの、コストや地球温暖化など多角的に考えるとゼロにするってのが現実的かどうかは議論の分かれるところです(*1)。
 ところで、ちょと前のSFで無尽蔵にエネルギーを入手できるって話がありました。ということで、今回ご紹介するのはハードSFの名作”バビロニア・ウェーブ”であります。

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 写真はたいちろ~さんの撮影。近所で展示されてた太陽光湯沸かし器です。


【本】バビロニア・ウェーブ(堀晃 創元SF文庫)
 地球より3光日離れた空間で発見された”バビロニア・ウェーブ”。直径1200万キロ、長さ5380光年の定常波は人類に無尽蔵とも言えるエネルギーをもたらした。その発電基地のひとつ”ダムキナ基地”が突然送電を停止した。基地へ向かうパイロットのマキタはその事故調査にまきこまれる・・・
 1989年に星雲賞日本長編部門を受賞したハードSFの名作。
【道具】太陽光湯沸かし器
 凹面鏡で太陽光を集めて熱変換するシステム。
 原理的には紀元前214~212年のシラクサ包囲戦でアルキメデス(*2)がこれを使って敵船に火災を起こした(アルキメデスの熱光線)というと~っても古い技術。でもガンダムに登場する”ソーラーシステム(*3)”もこの応用ですんで、意外と使い出のある技術かも。集熱効果は40~50%とエネルギー変換効率や費用対効果は現在では最も良いんだそうです。 


 この”バビロニア・ウェーブ”ですが、1cm2あたり毎秒5.3×1011エルグのエネルギー照射があって地球軌道での太陽エネルギーの70万倍、しかも太陽系の位置に対して相対的に静止状態というシロモノ。ただし動作原理は不明で両端に重力レンズによる反射板があるらしいぐらいしか分かっていません。
 ストーリーはこのエネルギーを使って太陽系外に観測機器を送ろうとする科学者が次々と事故にあうのを調査することがメインなんですが、ここではちょっと離れてエネルギー利用としての”バビロニア・ウェーブ”のことを。

 ”バビロニア・ウェーブ”の発電利用ってのは、元々これを発見したランドール教授が調査研究計画を推進する方便として”これを使ってエネルギー開発ができる”としたこと。ところがこっちが本命になっちゃったんですね。
 で、どれぐらいのエネルギーが取り出せるかというと実験用の3m2の正方形のパネルで3000メガワットのエネルギーが取り出されるというもの。これは、現在の原子力発電所に換算すると原子炉約3万機に相当します(*4)。
 2km2のパネルで全人類のエネルギー消費が賄えるというランニングコストがとっても低い再生可能エネルギーってことで(初期投資は相当かかるでしょうが(*5))、宇宙空間に太陽発電システムを作るだ、それ用のスペースコロニーを建造するだの計画が白紙撤回されることになります。まあ、砂漠の小さなオアシスの横にイグアスの大瀑布が発見されたようなもので、しょうがないっちゃしょうがないですが。

 で、”バビロニア・ウェーブ”に依存したエネルギー開発がどうかというと実はあぶなっかしい面もあるんじゃないかと。まず、動作原理がほとんど分かっていないこと。なのでどうゆらぐか分からないこと(小説内では観測された”たった”20年ではほとんど変わらないとのことですが)
 一般的に再生可能エネルギーと呼ばれる太陽、風力、水力、波力・潮力、地熱、バイオマスってのは時間軸の長短はあれ”ゆらぎ”があると考えられます。太陽は日々の天気で地表へのエネルギー量は変わりますし、昼夜/季節で変動しますし、水力発電は渇水になれば絞らざるを得ません。風力はそれこそ”風まかせ”だし。
 まあ、”良くて予測はできても、制御ができない”ってとこでしょうか?
 ましてや予測も制御もできない”バビロニア・ウェーブ”に”エネルギーの一点賭け”って実はあんましお勧めできないんじゃないかと。”エネルギーの一点賭け”で失敗している例に”地球の静止する日(*6)”なんかがありますが、ユートピアが一転カタストロフってのはいただけません。

 原子力発電の依存度を何%にするかという議論を活発にやってるようですが、30%が妥当かどうかは別にしても0%ってのはちょっと極端かも。原子力発電だけを取り上げるより、他の発電方法も合わせて適当にポートフォリオを組む議論をやったほうが現実的なような気がするんですがねぇ・・・
 それに、一般論ですが”失われた技術”を取り戻すのはけっこう大変です(*7)。
 何年か何十年かたって”やっぱり原子力は必要”となっても、”日本に原子力技術者がいません”では、問題ありそうだなぁ。

 堀晃はは80年代後半を代表するハードSFの旗手の一人。エネルギー問題うんぬんに興味なくてもぜひご一読いただきたい作家です。

《脚注》
(*1)議論の分かれるところです
 新聞やTVなんかでも温度差があってけっこう興味深いです。
 ちなみに産業界寄りの日経新聞なんかは存続派。
(*2)アルキメデス
 古代ギリシアの数学者、物理学者、技術者などなど(紀元前287~212年)。
 ”アルキメデスの原理(浮力)”や、”てこの原理”を始め物理学、数学への業績を数多く残していますが、上記の”アルキメデスの熱光線”や”アルキメデスの鉤爪”、カタパルトの工夫など兵器開発なんかもやっていて、このあたりが”アルキメデスは手を汚さない(小峰元 講談社文庫)”の題名の元ネタになっています。
(*3)ソーラーシステム
 ”機動戦士ガンダム”でソロモン攻略戦などで利用された架空兵器。宇宙空間に小型のミラーパネルを凹面型に展開し敵を攻撃するという動作原理はアルキメデスのと同じです。
 敵との相対位置が限定されるとか、展開と制御が難しいなどの欠点はありますが、曇りのない宇宙空間ではいったん展開すれば無尽蔵のエネルギーで敵を攻撃できるなど意外と効果的。
(*4)原子炉約3万機に相当します
 福島第一原子力発電所や福島第二原子力発電所、柏崎刈羽原子力発電所などで主に使われている沸騰水型軽水炉の出力が110万kWです。ニュースとかでもほぼ100万kWで計算しているのでアバウトこれで計算しました。
 ちなみに水力発電所で日本最大の発電量の”奥只見発電所”は56万kWとこれらのほぼ半分です。
(*5)初期投資は相当かかるでしょうが
 初期コストの多くを占めるであろう運送コストですが、レーザーを反射板に照射する反作用によって前に進む”レーザー推進”という方法があって”バビロニア・ウェーブ”を使えば劇的にコスト減になる(はず)です。
(*6)地球の静止する日
 ”ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日”に出てくるエピソード。完全無公害・完全リサイクル可能な”シズマドライブ”というエネルギーに全面依存していた人類が、これを中和する”アンチ・シズマドライブ”により動力が一切停止、インフラが壊滅するってのが描かれています。
(*7)”失われた技術”を取り戻すのはけっこう大変です
 ”ファウンデーション・シリーズ(アイザック・アシモフ ハヤカワ文庫他)”は、銀河帝国が衰退し科学技術が失われる中、ファウンデーションが優れた科学技術と指導者により第二帝国の復活を目指すという物語。
 なぜ、科学技術が衰退していったかが不思議でしたが、案外、今の原子力発電をめぐる状況みたいだったのかもしれません。

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