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本格ミステリのもっとも現代的なテーマは”嵐の山荘”である、というわけですか(十角館の殺人/孤島)

 ども、ミステリ好きのおぢさんおぢさん、たいちろ~です。
 最近のアニメの中では綾辻行人の”Another(*1)”が気に入っています。ミステリアスな画像とか、それっぽいオープニングテーマとか。本放送では見てなかったんでDVD借りてきてますが、最近のアニメの中では異色の作品。
 で、”Another”をアニメ化するって話を聞いた時に思ったのが、

  

なんでこんな映像化しにくいトリックの作品をわざわざアニメ化するんだろう?!

 そういや綾辻行人の作品には”言葉では成り立つが、映像では成り立ちにくいトリック”を使った作品があったような。はてなんだっけということで、今回ご紹介するのは綾辻行人の館シリーズの1作目”十角館の殺人”であります。


Photo

 写真は”47News”のHPより。尖閣諸島の魚釣島。

 おそらく日本政府が今、もっとも殺人事件が起こって欲しくない場所(*2)


【本】十角館の殺人(綾辻行人 講談社)
 ミステリ作家のニックネームを持つK大学推理小説研究会の一行は、合宿のために角島という無人の孤島を訪れた。そして、この島に残る”十角館”で彼らを待ち受けていたのは連続殺人事件だった・・・
 一方、本土では元推理小説研究会の”江南孝明”の所には死んだはずの”十角館”の持ち主中村青司から”お前たちの殺した千織は、私の娘だった”という手紙が届く・・
【旅行】孤島
 廻りから隔絶した”島”。殺人事件が起こる場合は、電話線などが切断され、まわりと連絡がとれず、警察が来れず、脱出も外からの侵入も不可能という一種の密室になります。
 ”嵐の山荘”というのもほぼ同じですが、携帯電話がこれだけ普及した現在、”圏外”になる場所ってのはそうそうないので、”孤島テーマ”のほうがより現代的と言えるかも知れません。

 綾辻行人は好きででデビュー作の”十角館の殺人”からほとんど読んでいます。
 ”十角館の殺人”が出版されたのは1987年。”新本格派ミステリー(*3)”として紹介されることになる綾辻行人ですが、どっちかというと先祖返り的なストーリーてのがみょ~に気にいって読んでました。

 で、綾辻行人がこの小説でほぼ探偵役のエラリイに語らせているのがこのセリフ

  地道な努力を惜しまない勤勉な刑事たち、強固な組織力
  最新の科学捜査技術
(*4)・・・ 警察は今や、けっして無能じゃない
   (中略)
  無粋極まりない警察機構---
  黄金時代の名探偵たちが駆使したような、華麗な”推理”や”論理”とは似て非なる、
  でいてそれを超えてしまった操作技術の勝利に拍手を送る気には、僕はなれないね

   (中略)
  そこでこのディレンマの、もっともてっとりばやい-- 
  といっちゃ語弊があるが、有効な解決策として、
  さっきから云ってる”嵐の山荘”パターンがクローズアップされてくるわけさ

 この言葉を受けて、研究会のメンバ”ルルウ”が表題の”本格ミステリのもっとも現代的なテーマは~”をつぶやくわけです。

 現在に至るまで、”館シリーズ”を発表しつづけている綾辻行人の堂々の宣言とも読める内容です。

 さて、トリックのほうですが以前にはあまりない”言葉では成り立つが、映像では成り立ちにくいトリック”。ネタバレになるのであまり書きませんが”一人一役の二重存在”ってのは意表を突いてましたね。登場人物の名前が推理小説家の名前で、主人公の名前が”江南”(”コナン”ではなく”カワミナミ”と読みます)も一般読者というよりミステリマニア向けのひっかけになってるとこなんか、喜ばせてくれます。

 ”十角館の殺人”をはじめ館シリーズはかれこれ四半世紀にわたって書き続けられているシリーズ。ぜひご一読のほどを。
 アニメの”Another”のほうもDVDであと2本。どんな形で映像化するかも楽しみです。


《脚注》
(*1)Another(原作 綾辻行人、イラスト いとうのいぢ 監督 水島努)
 夜見山北中学校に転入してきた”榊原恒一”は、不思議な少女”見崎鳴”に出会う。しかしクラスメイトはまるで彼女がいないもののようにふるまっていた。
 それはある種のおまじないらしいということが分かったが、そのおまじないの効果が無くなった時、陰惨な死亡事故が連続して始まった・・・
 2010年版の”このミステリーがすごい!”国内編第3位とミステリ扱いされていますが、ホラー小説と言った方が正しいと思います
(*2)もっとも殺人事件が起こって欲しくない場所
 殺人事件ともなれば警察は威信をかけて捜査しないわけにはいかないでしょうが、どこの国の警察(日本、中華民国、中華人民共和国)がやるかでもめるんだろうなぁ。国際的合同捜査本部ができるような雰囲気じゃなさそうだし・・・
 でも、全世界注視のもと、これ以上の密室てのはないかもね。
(*3)新本格派ミステリー
 事件の手がかりが作品中で提示されていて登場人物(探偵)と同じ目線で真相を暴いていくという手法の推理小説。
 以前は江戸川乱歩や横溝正史が代表で、このあたりもよく読んでましたがいつのまにか衰退。綾辻行人による以前とは違く切り口でのトリックで”新本格”として復活したとも言えます。
(*4)最新の科学捜査技術
 ”科捜研の女”(主演 沢口靖子、テレビ朝日)に出てくる京都府警 科学捜査研究所なんかだと、コンピューターに高性能分析機器にとちょ~ハイテクを駆使しての操作。一昔前なら警察ミステリーではなくSF扱いされるんじゃないかと

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