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工場が残るなら、白い猫でも黒い猫でも構わん。上司はそう言ってます(鄧小平/豪徳寺の招き猫)

 ども、猫は嫌いではないですが、ネコ耳はちょっとごめんなさいのおぢさん、たいちろ~です。
 先日、こんな新聞記事を読みました(*1)。
 シャープの堺工場が稼働率の低下で存続が危ぶまれたが、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の出資で存続が決まった。これを受けての、堺市企業立地担当の金本貴幸氏(50歳)の言葉。

工場が残るなら、白い猫でも黒い猫でも構わん。上司はそう言ってます

 この言葉を読んで”上手い事を言う! 座布団1枚!!”と思ったのはおぢさん世代(あるいはおじいさん世代)。ということで、今回ご紹介するのは「黒猫白猫論」の人”鄧小平”であります。


3110363

 写真はたいちろ~さんの撮影。豪徳寺の”招き猫”です。


【本】鄧小平(矢吹晋 講談社学術文庫)
 毛沢東に評され、三度の失脚と復活を繰り返し現代中国の経済発展の礎を築いた稀代の政治家”鄧小平”を分析した評論。
 原本は1993年発刊の講談社現代新書で、2003年に補足を加え復刊。
【旅行】豪徳寺の招き猫
 豪徳寺(ごうとくじ)は、東京都世田谷区豪徳寺にある曹洞宗のお寺。
 彦根藩主・井伊直孝が鷹狩りの帰りに豪徳寺の前を通りかかった時、寺の和尚の飼い猫が手招きしてたので寺に立ち寄ったところ、雨に降られずにすんだとのこと。で、この姿をかたどったのが招き猫です(諸説あり)
 まあ、この猫も”招き猫”はともかくまさか400年後にひこにゃん(*2)のモデルになろとは思ってなかっただろうなぁ。


 現代中国史あんまし得意ではないので、今回読んだ”鄧小平”でいろんなことを知りました。
 まずこの言葉のオリジナルは1962年7月の共青団三期七中全会での鄧小平の言葉

  劉伯承(*3)同志はいつも
  「黄猫であれ、黒猫であれ(*4)、ネズミさえ捉えさえすれば、良い猫だ」
  という四川のことわざを使う。これは戦闘の話をしたものだ。
  我々が蒋介石を破ることができたのは、古いしきたりや、昔のやり方で
  戦ったからではない。すべては状況次第、勝てばよいという考え方だった

   (農業生産をどのように回復させるか 文選)

 実はこの言葉は鄧小平の依頼で議事録から削除されたそうなんですが、「農業生産の上がる方法が良い方法だ」と喝破した鄧小平の名言として口コミで広がったんだとか。
 この言葉の続編が”姓資姓社問題”。改革開放路線の本質が資本主義の範疇なのか社会主義の範疇なのかを点検せよと迫った問題(1992年)。
 これに対しての鄧小平反論が

  すなわち生産力の発展に有利かどうか、総合国力の増強に有利か否か、
  人民の生活水準の向上に有利か否か、をもって
  政策の当否を判断する基準とせよと強調した

  (本書より抜粋)

 この本を読んでわかるのは”鄧小平”という政治家が徹底してリアリズムの人だっていうこと。政策の人気投票の趣のある日本と違って、政策の相違がイデオロギーに直結する中国では、勝ち組(国家主席を中心とした集権)と負け組(失脚、粛清)がはっきりしています。その中で権力中枢にい続けた”鄧小平”が行った政治的なバランスをとりながら経済的な成長戦略を実現したってのはたいしたもんだと。

 鄧小平の時代っていわば高度経済成長の時代。この本の記載によると1991年の中国のGNPは約4,200億ドル(世界銀行の統計)。”エコノミスト”誌は鄧小平時代の14年間の実質成長率9%を維持すれば20年後の2012年にはアメリカ、日本と並ぶ経済大国になると予想したそうです。
 で、実際はというと、中国のGDP(国内総生産)は改革開放後30年で平均10%の成長を達成(国際通貨基金)。2010年のGDPで初めて中国が日本を上回り米国に続く世界2位になったのはご存知の通り。はっきり言って20年前に日本が中国に追い越されるなんて大半の日本人は思ってなかっただろうな~~

 ちなみに、最近の国際通貨基金の予測ではこのままいくと2016年には、GDPベースで中国が米国を追いぬく経済大国になるんだとか。最近は成長率が鈍ってきてるとはいえ、それでも中国は2011年度実質GDP成長率で9.24%、2012年推計で8.23%。同時期で日本はー0.75%、2.04%と低成長時代。最近のエコノミストの発言なんかで”低成長時代=給料が増えないのを前提としていかに幸せな人生を考えるか”なんてのが言われてますが、高度経済成長時代を生きてきたおぢいさん世代はどう聞いてるんでしょう。

 話を戻すと、このような中国の高度経済成長を促した立役者の一人に鄧小平がいたのは間違いなさそうで、改革開放政策への転換や、中央集権的計画経済体制から商品経済、市場経済へ舵を切った結果であるようです。これが社会主義かと言われると???かも知れませんが

 生産力の発展をはかることが社会主義の最大の課題
  =経済発展のためなら、やり方は問わない
   =白い猫だろうが黒い猫だろうが、ネズミをとってくるのは良い猫

 を実践したからのことなんでしょうねぇ。

 てなことを、ネズミを捕ってくるわけでもなく、幸福を招き入れるわけでもなく、ケンカばっかししている黒い猫と白い猫のどたばた政変劇を見せられてる国のおぢさんは思ってしまうのであります。

《脚注》
(*1)こんな新聞記事を読みました
 日本経済新聞 (2012年6月13日 朝刊)
 ”迫真 テレビはなぜ負けた 2 いきなり休止ですが”
(*2)ひこにゃん
 滋賀県彦根市のイメージキャラクター。誕生は2007年の彦根城築城400年記念イベント。日本で最も有名はゆるキャラの一人。詳しくは公式hpをどうぞ
(*3)劉伯承(りゅう はくしょう)
 中華人民共和国の軍人、政治家。中華人民共和国元帥。1955年、十大元帥の一人に選ばれるが1958年林彪と対立して失脚。すいません、中国史詳しくないのでwikipediaのコピーです。
(*4)黄猫であれ、黒猫であれ
 四川のことわざは「黄猫、黒猫」だそうですが、今では「白猫、黒猫」のが有名。

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