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まあ、福島県民には読ませられんだろうなぁ・・・(金環蝕/金環日食)

 ども、天文学はいまいち苦手なおぢさん、たいちろ~です。
 2012年5月21日に金環日食がありました。東京では173年ぶりとのこと。次回日本で見ることができるのは2030年とまあ生きちゃいないでしょうから一生でこれが最後の機会ということで早起きして会社で見てました。いや~宇宙の神秘、感動的でしたねぇ。
 ところで、私は金環食(金環日食)のことをずっと”金環蝕”だと思ってました(*1)。ってのも、これ石川達三の名前なんですね。ということで、今回ご紹介するのは宇宙の神秘と程遠い政治の舞台裏のどろどろ劇”金環蝕”であります。


Photo
写真はたいちろ~さんの撮影。会社(東京都内)の窓から撮った”金環日食”です。


【本】金環蝕(石川達三 岩波現代文庫他)
 昭和39年夏、与党・民政党の総裁選挙で勝利するため寺田総理は党費を不正流用した。その費用を穴埋めするためにF-川の電力ダムの建設を巡って民政党、電力建設株式会社、建築会社を巻き込んだ汚職事件の幕が切って落とされる・・・
 1964年に発生した”九頭竜ダム落札事件(*2)”をモデルにした政治小説。
 私の読んだ”石川達三作品集”版ではサブタイトルに

 まわりは金色の栄光に輝いて見えるが、中のほうは真黒に腐っている

 ってありました
【自然】金環日食
 日食とは太陽が月によって隠されることにより、太陽が欠けて見える天文現象。金環日食は太陽と月がきれいに重なって太陽がリング上に見える状態です。
 昔の冒険小説なんかでは真っ暗になるような描写がされますが、6月12日に体験した感じでは”そんなに暗くなんないな”と思いました。


 さて、この小説が”サンデー毎日”に掲載されたのは1966年(昭和41年)。時の内閣総理大臣は池田勇人&佐藤栄作、日本の総人口が一億人を突破しビートルズが来日した年です。まあ、小学校低学年でしたのでおぼろげながらしか覚えてませんが。
 でも、これってロッキード事件(*3)の10年前、リクルート事件(*4)の23年前。歴史は繰り返すというか、学習効果がないというか・・・

 で、この小説を読んでるといい人ってのは一人も出てこないんですね。最初は不正入札に反対していた電力建設株式会社の総裁は途中で日和るわ、後任の総裁と副総裁は確信犯だわ、建築会社の専務は”不正は必要悪だ”と開き直るわ、不正を告発しようとした正義漢を気取った代議士は途中で投げ出すわ。総理大臣、幹事長、官房長官はよってたかって隠ぺい工作に走るわ・・・
 中でも気になったのは、電力建設株式会社の対応。立ち退き交渉で補償の履行を求める堂島建鉱業に対して、

  結局堂島建鉱業が提出した、ほとんど最後通牒ににも似た賠償要求は、
  電力建設株式会社の幹部社員によって一顧の与えられはしなかった。
  ただ、相手を怒らせないように、(検討中・・・)とういうような文書が発送される。
  それだけのことだった。
  それが、官僚または官僚的な人たちのやり方だった。
  堂島建鉱業の苦境はわかっている。
  わかってはいるが、誰ひとり責任をとろうとはしなかった。
  民衆の苦境に同情するよりは、官庁や自分たちの立場を良くするほうが先だった。
  電力建設会社の九十五パーセントまで官僚的だった。

 フィクションだし、45年以上前の話で体質改善は進んでるはずだし(だといいんですが)ですが、まあ、福島県民には読ませられんだろうなぁ・・・

 この小説の中で、唯一面白い人物ってのが前科4犯で黒い金融業者の”石原参吉”。
 膨大な資料を駆使して相手の都合の悪いことをほじくり返して恐喝まがいの金儲けをする人物です。

  参吉はその資料をくり返しくり返し精読して、
  世間の目からは全くかくされている(真実)を探り出そうとするのだった。
  真実ほど怕いものはないのだ。

   (中略)
  他人の真実を握ったものが世間の勝利者となり、
  自分の真実を他人に握られたもの敗北者となる。

 この人は、”官房長官の秘書官が2億円のお金を借りに来た”という事実を発端に、紙のファイル(*5)と部下の調査や愛人の芸妓などの情報からコトの真実を解明するというある意味すごい人。
 最近、ビッグデータ(*6)とかなんとか大量のデータを処理できるシステムが登場してますが、何をどう分析するかを考えるキュレーターがいるかどうかがポイント。もし、石原参吉が現代でキュレーターになって、ネットやビックデータのシステムを駆使できたとすればとんでもないことになるんだろうなぁ。何が出てくるかわかんないけど・・・

 ”金環蝕”は2000年に岩波現代文庫から復刊されましたが、現在は切重版未定状態。でも図書館に行けば全集などで読めますので、ご興味のある方はどうぞ。
 まあ、福島県民にはお勧めしませんが・・・

《脚注》
(*1)ずっと”金環蝕”だと思ってました
 辞書を引くと”日蝕”でも出てくるので間違っているわけではないんですが、一般的には”食”のほうを使うようです。まあ”蝕(むしばむ)”ってのは感じよくないですしね。
(*2)九頭竜ダム落札事件
 時の首相は”所得倍増”をスローガンにした池田勇人内閣総理大臣、建設業者は鹿島建設だったようです。小学校に入る前の事件なのでさすがに覚えてません。
 九頭竜ダムってのは福井県大野市にあって行ったことはないですが、ここって一世を風靡したフォークグループ”あのねのね”の清水国明の出身地なんですね。ベストセラーだった”あのねのね 今だから愛される本(ワニの本)”にはすごい田舎みたいに書いてあったような・・・
(*3)ロッキード事件
 全日空の旅客機導入選定に絡んだ、ロッキード社、丸紅、前内閣総理大臣の田中角栄らによる世界的な大規模汚職事件。田中角栄が逮捕されたのが1976年のことです。
 児玉誉士夫小佐野賢治といったわけのわからん黒い人とか、事件関係者が急死するなど、”金環蝕”もかくやというデキゴトが繰り返されてます。
(*4)リクルート事件 
 就職情報の”リクルート”によるリクルート・コスモスの未公開株を使った贈収賄事件。江副浩正リクルート社元会長藤波孝生元官房長官らを東京地検特捜部が起訴したのが1989年のことです。
 中曽根康弘、竹下登、宮澤喜一、安倍晋太郎、渡辺美智雄など総理大臣、政治家が関与するとか、大物政治家は立件されなかったなど、”金環蝕”もかくやというデキゴトが繰り返されてます。
(*5)紙のファイル
。NECが日本初といわれるパーソナルユースのパソコン”PC-8001”を販売したのが1979年、後に国民機と呼ばれた”PC-98シリーズ”の初代機が登場したのが1982年です。日本でのインターネットの商業利用の開始は1992年と、この小説が書かれたのはインターネットはおろかパソコンすらない時代です。
(*6)ビッグデータ
 通常のデータベース管理ツールなどで扱うには難しいような多種大量なデータを扱うシステム。技術的な面もさることながら、キュレーターと呼ばれるデータを分析する人の能力とセンスが重要になります。

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