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”日常系”のヒットって、現実社会の不安定さの裏返しだそうですが・・(”日常系アニメ”ヒットの法則/鷲宮神社の”らき☆すた神輿”)

 ども、まったりした日常をおくるおぢさん、たいちろ~です。
 先月末にパソコンがぶっ壊れました。2月頃から調子が悪くて(*1)だましだまし使ってたんですがとうとう動かなくなって修理に出しましたが、けっこう時間がかかるので昔のパソコンを引っ張り出して代替してました。
 スピードを我慢すればインターネットを見たりはできるんですが、困ったのはPCで兼用させてたテレビ見れないこと。しかたがないのでDVDばっか見てました。で、こういう流しっぱなしに向くのは笑いとか”日常系”なのかして、”アメトーク”とか”あずまんが大王””けいおん”が多かったかなぁ。
 ということで、今回ご紹介するのはなぜだかヒットしている日常系アニメを扱った本「”日常系アニメ”ヒットの法則”」であります。


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写真はたいちろ~さんの撮影。鷲宮神社の”らき☆すた神輿”です。


【本】”日常系アニメ”ヒットの法則(キネマ旬報映画総合研究所 キネマ旬報社)
 最近はやっている”日常系”あるいは”空気系”と呼ばれるアニメを解説した本。”日常系”とは何なのか、なぜはやっているのか、といった話を社会情勢やサブカルチャーの観点から分析。”日常系アニメ”を見ていないとその空気ってのはわかりにくいかもしれませんが、いかにも硬派そうなキネマ旬報がこういったジャンルを扱うってのも時代ですかねぇ・・
【旅行】鷲宮神社の”らき☆すた神輿”
 鷲宮神社は埼玉県久喜市にある関東最古の大社といわれている神社にして、アニメ”らき☆すた”の舞台になった場所。”聖地巡礼”の対象だかして初詣の参拝客が急増、2011年12年は約47万人(埼玉県第2位)。映画やアニメによる町おこしでもっとも成功した例の一つです。
 写真の”らき☆すた神輿”は同神社の伝統行事である2008年度の”土師祭(はじさい)”にてファンが担ぐ神輿として使われたもの。掛け声が”ソレソレ”の変わりに”萌え萌え”だったどうですが、ちょっとはじかしい?!


 ”日常系”というのは、本書の序章の中では

 

「”萌え”を感じさせる美少女キャラクターによる日常生活」を描いたアニメ

と定義しています。
 具体的な作品としては”けいおん!”、”らき☆すた”、”ひだまりスケッチ”、”あずまんが大王”など(*2)。
 実は4つとも見てるんだよな~~ 根っから”日常系”好きなんでしょうか。
 別に”萌え~”が好きなわけではないんですが・・・

 ”美少女キャラクター”ってのは置いといて、作品の特徴ってのが後半の”日常生活を描いた”という部分。文化祭や体育祭などのイベントはあるし、登場人物はちゃんと進級していて後輩なんかも登場してますが(*3)、それを盛り上げる物語性(ドラマツルギー)が欠如しているというのが本書の意見。いくつかあげると

①恋愛の話がない
 現実にいたら絶対もてそうな美少女なのに彼氏がいません。さらには女の子が集まってるにもかかわらず恋バナもなし。
②困難との対決や葛藤がない
 ”けいおん”の例を挙げて、”血のにじむような訓練”、”メジャーデビューを目指しての努力や葛藤”、”音楽性の違いからの対立”などの定番のドラマ要素がないと指摘してます。他の3つの作品も、主要キャラクターはほとんど帰宅部です。
③時間的な前後関係が希薄
 アニメ版の”ひだまりスケッチ”では時間が前後したエピソードがあったりしてますが、ほとんど違和感なく見れます。
 本書の中で”ジェットコースタードラマ(*4)”との比較論で”途中参入障壁の低さ”というのを挙げていますが、たしかにどっから見ても楽しめます。

 全体としては大きな物語が消失して(*5)、物語を消費するのではなく

  すべての作品自体が構成要素単位に分解され、
  個々の構成単位そのものが消費対象になる

といってます。これを評論家の東浩紀が”データベース消費”と名づけたとのこと。
さらには構成単位=細切れは動画共有サイトにアップロードしやすいという特長を持つことになるとか。以前”YouTube化するお笑い?”というネタを書いたことがあるんですが、一発芸のお笑い芸人が大量生産/大量消費されたのも同じ文脈なのかなぁ(*6)。 また、動画共有サイトとそこへのコメントの書き込みってのがコミュニティを形成してさらに作品の知名度を上げているとか。こういった人たちが集まってネットでお祭りしたり、リアルで鷲宮神社行ってお祭りするんだろうなぁ・・・

 まあ、ここまでならあんまし問題ないんですが、じゃあなぜ今なのかというと”大きな物語の崩壊”に加え長引く不況での”未来への不安”があるんじゃないかというのが本書の指摘。

  こうした社会不安が円満する殺伐とした時代の中で、自己完結する「物語」より
  ファン同士が結びつきやすい「コミュニケーション」的なものの方が好まれ
  受容されるようになったことは想像に難くない。
  「現実社会の不安定さ」は誰かが用意した物語がいかに頼りないかという感覚を
  ある世代・属性の人々に植え付けた。

 まあ、気楽に見れるのが”日常系”のいいとこだし、勝負だの葛藤だの気合入っちゃうような話題がない分、かけっぱなしには向くんでしょうが、これが社会不安の裏返しだって言われてもねぇ・・・
 などと思いながらも、やっぱりお気楽にこのあたりの作品をみてしまうのであります。
 本書に出てくる”空気系”のようなアトモスフィアな話題(*8)ってのは原典のアニメを見てないとわかりにくいかも。そういう意味では紹介された作品とセットで読むほうがいいかもしれません

《脚注》
(*1)2月頃から調子が悪くて
 今年(2012年)は空気の乾燥のせいか静電気によるハードディスクが多発してました。私のパソコンも診断によるとやはりこれ。3年保障に入ってたので無償で済みましたが、あやうく4~5万円の修理代がかかるとこでした。危ない、危ない。
(*2)”けいおん!”、”らき☆すた”、”ひだまりスケッチ”、”あずまんが大王”など
 いずれも原作は4コマ漫画でのちにアニメ化されました
 けいおん!:かきふらい原作。まんがタイムきらら(芳文社)に連載
 らき☆すた:美水かがみ原作。コンプティーク(角川書店)に連載
 ひだまりスケッチ:蒼樹うめ原作。まんがタイムきららキャラット(芳文社)に連載
 あずまんが大王:あずまきよひこ原作。月刊コミック電撃大王
         (現・アスキー・メディアワークス)に連載
(*3)登場人物はちゃんと進級していて~
 そういう意味では同じ1年を延々と繰り返す”サザエさん時空”とは違ってます。
 本書内で”サザエさんは萌え要素がないので日常系ではない”といってますが、その言い方もどうかと・・
(*4)ジェットコースタードラマ
 怒涛の展開で1話でも見逃すとストーリーがわからなくなるドラマ。スピード感のある衝撃的な展開で最後まで飽きさせない代わりに見逃すとストーリーがわからなくなるリスクも。フジテレビの”もう誰も愛さない”とか海外ドラマの”24 -TWENTY FOUR-”とか。見てませんが、会社勤めの人間にはムリ筋な番組です。
(*5)大きな物語が消失して
 大きな物語の消失とか、大きな物語装置といった話は”リトル・ピープルの時代(宇野常寛 幻冬舎)”あたりが面白いです。以前にネタ書きましたんでご興味のある方はこちらをどうぞ。
(*6)一発芸のお笑い芸人が~
 ブログ書いたのが2009年2月と、”エンタの神様(日本テレビ)”や”ザ・イロモネア(TBS)”といったまさに1~数分という細切れのお笑いの時代でした。
 両番組とも1年後の10年3月に打ち切りになったので、この手のお笑いが終焉に向かい始めたころともいえます。
(*7)アトモスフィア(atmosphere)な話題
 atmosphereには”大気、空気”のほかに”雰囲気、気分”って意味もあります。ちょっとダブルミーイングしてみました。

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コメント

日常系のヒット、AKB48の大ヒットもこの辺に理由があるのかも。言い方は悪いけど、AKBその他は他のオーディションを落ちた娘の集まりで、歌もダンスもそこそこのレベル。一般人に近いレベルだからとも言われているよね。
自分で判断せずみんなが動く方へ行くというその他大勢的な感覚、身の回りの普通の日常にあるものから外れること・みんなと違うことへ走ること・仲間外れになることへの不安感、AKBや今のアニメ業界はそんなところに依存しているような感じがするのは私だけ?
本来は非日常的なものなはずのアニメやアイドル・ミュージシャンに日常的なものを求めるのは、なんだかなぁ、理屈ではわかってもどうにも受け入れられない。発展性が無いよね。
とはいえハイレベルのアニメもアイドルもしっかり存在していて、それなりのビッグマーケットを形成しているし、徐々にではあるけど原点回帰・本来の姿に戻る動きはあるから、ほっといても大丈夫かもね。
出る杭は打たれるの日本社会、何度打たれても何度でも出てくるような根性のある若者の出現に期待してます。

AKBのヒットはそんな単純な要素ではないと思うんだがね
元々日本のアイドル文化(特に女性アイドル)には未熟な芸をファンが幼稚園の学芸会
のお遊戯を見に来た保護者の気分で見守るという要素があったし、オーディションの落
選組を集めてアイドルユニットにするというのはモ娘という先例がある。
それらと何が違うのか?という分析が必要。
初の生放送をした総選挙の中継が高視聴率だった点を考えると、実際投票している
ファンはトータル数万人しかいないだろうが世間の耳目を集めていたことは確かだろう。
むしろ総選挙やそれに向かっての日々の努力、そしてそれに対してドライに結果が出る
という日常系アニメと逆のベクトルが人気の要素だと私は思うが…。

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