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銭の花の色は清らかに白い。だが蕾は血がにじんだように赤く、その香りは汗の匂いがする(ブラックストーン/成金草)

 ども、会社の経営権を握るおぢさん、たいちろ~です(ウソです)

 先日、今年度入社の新人さん向けの説明会がありまして、部長のKさん(*1)に講演をお願いしました。で、Kさんは新人さんにこんな質問を。

  ”今日の会社の株価はいくらでしょうか?

 さすがに最近の新人は優秀でちゃんと答えてました。
 ”そうすると、この会社は○○億円で買えます(*2)”というのがオチですが、正直なとこ”たったそんだけ!?”ってのが感想。ちょうど、facebookが上場した直後で、そっちは時価総額が終値で約1,046億ドル(約8兆2700億円)。
 K部長も”その気になればこの会社も買収できます”ってなことを言ってましたが、facebookだったら買えちゃうんだろうな~~~ 会議が英語になるんだったら勘弁して欲しいけど・・・
 ということで、今回ご紹介するのは会社を売ったり買ったりする人のお話”ブラックストーン”であります。


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写真はたいちろ~さんの撮影。近所の成金草です。


【本】ブラックストーン(デビッド・キャリー、ジョン・E・モリス 東洋経済新報社)
 日本ではあまりなじみがないですが、”ブラックストーン”という世界最大のプライベート・エクイティ会社とその経営者”スティーブ・シュワルツマン”のことを書いたノンフィクション。原題は、”King of Capital
【花】成金草
 ベンケイソウ科クラッスラ属の多肉植物。別名”フチベニベンケイ(縁紅弁慶)”ですが、園芸店では”金のなる木”で売ってます。葉が丸っこく分厚いのでお金に見えるかららしいですが意外と可愛い花が咲きます。


 プライベート・エクイティっていうのは、日本語では”未公開株”。創業者や親会社、ベンチャーキャピタルなんかが保有している公開(上場)されてない株式。プライベート・エクイティ会社ってのは、これらの未公開の会社を上場させることで莫大な利益(いまくいけばですが)を株の保有者や自分とこの会社にもたらします
 まあ、立派なお仕事なんですが、おぢさん世代だと”リクルート事件(*3)”なんかがあってあんまし良いイメージをもってない人もいそうです。ただ、facebookやAmazon.comみたいに経済活性化や新しい産業構造の起爆剤になってたりして、それ自体が悪いってもんじゃありません。

 それ以外にも、経営不振とか親会社、創業者の無理解で発展しきれていない企業を買収して再生し売却するなんてこともやっています。一般論ですが、経営不振からの脱却とか新しい産業を作るには初期段階でそれなりの資本投下が必要。ブラックストーンのようなリスクをとって投資をする資本を集めてくる人が必要であり(*4)、この会社自体が悪いことをやっているわけではありません。
 ただ、こいつも日本で印象悪いのは、リップルウッド・ホールディングスの日本長期信用銀行救済(*5)みたいに、瑕疵担保条項(*6)を使って荒稼ぎしたような言われ方をしてたせいかもしれません。でも、日本で誰も買わなかった日本長期信用銀行をリスク含みで買うんだから、リスクヘッジをするのは当たり前って感じもこの本を読んでるとします。

 プライベート・エクイティの資金調達ってのは”レバレッジド・バイアウト(Leveraged Buyout)”という方法。これは買収される企業の資産やキャッシュフローを担保にお金を集めるってやり方で、日本人的には ええぇ?! って感じですが、ソフトバンクがボーダフォンの買収でこれをやっていて(*7)、現在のソフトバンクの成功を見ているとあながち悪いってことでもありません。ただ、こいつも堀江貴文がフジテレビ買収でこれをやろうとしたって話があっていまいち評判が良くないです。

 どうも、”ハゲタカ”だの”濡れ手で粟”、だの”成金趣味”だの悪のイメージが強いですが、本書を冷静に読んでいくと、かなり誤解があるようです(ブラックストーンのスティーブ・シュワルツマンは成金趣味ですが)。

  銭の花の色は清らかに白い
  だが蕾は血がにじんだように赤く、その香りは汗の匂いがする
(*8)

 を地でやっているような。
 ”血=リスク”をとって何億ドルを集めあるいは投資し、企業を再生させるために知恵を出し、汗をかいています。買収した企業の資産をすぐに売り飛ばしているような印象がありますが、むしろ株式を長期保有しています。リストラにより人員削減もやってますが、中長期的には人員削減の影響は少ないとのこと。本書で引用されている欧州会議の調査によると23年間のアメリカでのプライベート・エクイティが支援する株価パフォーマンスは類似企業のそれを上回っているんだそうです。

 この本を読んで思ったのは、投資ファンドってのは金儲け第一主義だけではなくて、資本社会の活性化に役立っているってこと。儲けが100億ドル、1000億ドル単位なのでそっちばかりが話題になってますが、儲けがでかいのはレバレッジをかけているからで、裏目にでると損失もでかいってことです(*9)。
 どうも”あいつらばっかり儲けやがって”みたいなひがみが誤解を生んでいるんじゃないかと。まあ、悪いことをやっていないわけではないですが・・・

 本書は日本になじみのない会社がいっぱい出てきますが、少し冷静になってファンドやそれをとりまく経済のダイナミズミを知るには良い本かも。

《脚注》
(*1)部長のKさん
 元証券会社がお客さんの担当をされてましたので、この手の話題は強いです人。
 私んちの会社の中では珍しくこのブログを読んでくれている人です。
 すいません、ネタにしました。
(*2)この会社は○○億円で買えます
 会社のお値段 = 時価総額 = 株価×発行済株式数
 であらわせます。株価は日々変わりますので、このブログを書いている時点(2012年6月8日)では約7,250億円。実際には買収合戦で株価は上がったり、株を売らない安定株主もいるので理屈どおりには行きませんが、経営権を握る=株式の50%以上を獲得するだけなら半額で済みます
(*3)リクルート事件
 リクルートの関連会社で未上場の不動産会社”リクルートコスモス”の未公開株が賄賂として使われ、江副浩正リクルート会長や政治家や官僚らが次々に逮捕された事件。1988年に発覚し、竹下内閣総辞職の原因となりました。
(*4)リスクをとって投資をする資本を集めてくる人が必要であり
 本来は銀行のお仕事なんでしょうが、そうそうできるもんじゃあないんでしょうか。
 アメリカだと投資銀行とかベンチャーキャピタルなんかがありますが、日本だとそこまでアグレッシブなのは聞きませんねぇ。
(*5)リップルウッド・ホールディングスの日本長期信用銀行救済
 バブル崩壊により経営不振に陥った日本長期信用銀行は1998年に破綻。リップルウッドなどからなる”ニューLTCBパートナーズ”に10億円で売却され新生銀行に。2004年に新生銀行が再上場させることで、1,000億円以上の純益を稼ぎました。
 ちなみにこの破たん処理で投入された公的資金は約7兆9,000億円最終的な国民負担は4~5兆円ぐらい、買収益への税収はゼロと踏んだりけったりです。
(*6)瑕疵担保条項
 長銀の売却契約の中に、”新生銀行が引き継いだ債権が3年以内に2割以上下落したら、国に買取請求を行う”というのがあって、これを積極的に活用(=破綻させる)しました。まあ、今にして思えば、デューディリジェンス(資産査定)もそこそこで買い取らせる方にも問題があると思いますが。
 ”破綻させたほうが企業収益が上がる”と考える経済合理性を追求するアメリカ人と、”いざとなったら何とかしてもらえる”という浪花節的な日本人の発想の違いとも言えるかと。
(*7)ソフトバンクがボーダフォンの買収~
 ボーダフォン(イギリス本社)が行き詰っていたボーダフォン日本法人をソフトバンクに1兆7,500億円で譲渡を決定。ソフトバンクは1兆円をLBOで調達しました。2006年のことです。
(*8)銭の花の色は清らかに白い
 花登筺原作のTVドラマ”細うで繁盛記”のオープニングから。1970年の放送なのでほとんど覚えてませんけど、印象的な名言です。
(*9)裏目にでると損失もでかいってことです
 レバレッジのかけ方にもよりますが、10倍のレバレッジで資産価値が10%減少すると計算上は元手が全額ふっとぶことになります。このへんはFX取引で大損した人と同じです。

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