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最近の経済学は心理学の分野でもあるらしい(鈴木敏文の実践!行動経済学/チューリップ)

 ども、冷徹なる経済人のおぢさん、たいちろ~です。
 これでも一応経済学部の出身なんですが(*1)、大学時代はでんでん勉強せんかったんであんまし詳しくはないです。その反省もあってか時々経済学の本も読みます。で、最近気にいっているのが”行動経済学”という学問。2000年度に入ってから注目をあびたという比較的新しい分野ですが面白いんですね、これが。
 ということで、今回ご紹介するのは”鈴木敏文の実践!行動経済学”であります。


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 写真はたいちろ~さんの撮影。近所の公園のチューリップです。


【本】鈴木敏文の実践!行動経済学 (鈴木敏文、勝見明 朝日新聞出版)
 セブン&アイホールディングス(*2)の代表取締役会長”鈴木敏文”が自らの経営理念を語った本。インタビューと形式をとっていて、その会話の中に行動経済学的なアプローチを説明しています。
 ”朝日おとなの学びなおし”シリーズの1冊。
【花】チューリップ
 春を代表するユリ科チューリップ属の植物。花壇にいろんな色や形のが咲き誇るように数百品種のチューリップが存在するそうです。
 植え付けは球根を使います。種が出来ないわけではないですが、開花まで5年以上かかるんだそうです。


 行動経済学ってのは”人間の認知の仕方や心理的バイアスがどの様に経済行動における意思決定や市場価格に影響を与えるかを研究する分野”(wikipediaより抜粋)。要は経済学を心理学的なアプローチで考える学問です。
 従来の経済学ってのは”経済人(homo economicus)”という経済活動では自己利益(効用)を最大にするように”完全に”、”合理的に”行動するっていうありえね~という人格を仮定してるんですが、行動経済学は人間はアホなので誤解や思い込みで行動するし、損をするとビビって問題先送りするしとかある意味人間的な行動を前提にしています。

 いくとか本書からひろってみます。

〔プロスペクト理論〕
 損して失うものは、えてして得るものより大きいと感じること。
 縦軸に得られたと感じる価値、横軸に利得(損失)にグラフ化すると、従来の経済学では期待値に相関するので直線になるはずですが、行動経済学では左右非対称なS字カーブを描きます。利得側はゆるやかに上昇するのに対し、損失側は急激に落ち込みます。だいたい100の利益より100の損失は2~2.5倍大きく感じてしまうらしいです。
 本書の例では、5コ仕入れたものが5コ売れると完売でOKってのが普通の考え方ですが、実はもっと売れたかもしれない機会を失ってる(機会ロス)かもしれない。でも仕入れ過ぎると廃棄ロス(損実)が発生するかもしれないので、そっちのほうにビビってあんまし仕入れをしない、という見方。
 一般的に良く言われる例としては”株価が上昇するとすぐ売ってしまうが、下がると損切りしてでも売ることができず、どんどん状況を悪くしてしまう”ってのがあります。これは別に素人だけじゃなくて、プロでも同じ。AIJ投資顧問の引き起こした”年金資産消失問題”で浅川和彦社長が”損失を取り戻せる自信があった”という趣旨の答弁をしていますが、まさにこれ。

〔参照点とアンカリング効果〕
 買い手が感じる満足度は絶対的な水準があるわけではなく、最初の体験が基準となって次の満足度が決まる。これが参照点。
 一方、売り手はお客様が一度満足するとそのレベルが固定されて心理的にアンカー(碇)になって、買い手の変化に対応できない。これがアンカリング効果。
 本書では”おいしいもの=飽きるもの”という言い方をしてますが、これは一度おいしいと思ってもらっても、次はそれが当たり前になってやがて飽きられるといくこと。だから価値というものを不変だと考えず不断に向上させないといけないということです。
 まあ、分かりやすく言うと最初は”こんな素敵な人はいない!”と思って結婚した女性が、結婚して時間がたつとだんだん古女房化してきて、そんな時に若い女性が目の前に現れると(以下 自主規制)

 ってな感じです。

 本書では、行動経済学以外の話題で”話し方”、”マネジメント力”、”リーダーシップ”なんかが出てますが、面白かったが”脱 勉強主義”。
 鈴木敏文の持論に”新しい仮説は勉強からは生まれない”ってのがあるんだそうですが、これは勉強というのが過去の経験の積み重ねをなぞるにすぎないことが多いので、勉強すればするほど過去の制約条件を学んでしまうことになるからとか。
 セブンイレブンが銀行を立ち上げてATMを展開した時に金融コンサルタントなど専門家はこぞって反対した例をあげてますが、それが成り立つかどうかが専門家の持つ既存の知識で答えを出せなかったからと言ってます。
 私もコンビニのATMが始まったころに銀行の人とこの話をしたことがありますが、このビジネスモデルが成功すると答えた人は皆無でした(*4)。
 まあ、まったく勉強が不必要だと言ってるわけではないですが、必要なのは知能指数の高さより仕事に対する取り組み方で、仮説を立てるのには借りものの勉強で得た知識でなく”顧客の立場で判断した情報”にこそ価値があると言ってます。
 ある意味その通りですが、ちょっと気になるのは、人間ってあまりに勉強しなさ過ぎてるんじゃないかなと。まあ、”学習効果”がないってのか。
 チューリップ・バブル(*4)なんて歴史的な失敗をやってるのに、平成でバブル景気に踊ったり、ITバブルを繰り返したり・・・

 ”実践!行動経済学”の著者、鈴木敏文は経営者なので本書は経営ノウハウを中心に書かれています。学問的にはちょっと喰い足りない感はありますが、ノウハウ書か入門書として読むには良いかもしれません。

《脚注》
(*1)これでも一応経済学部の出身なんですが
 専攻は”物価論”、先生は後に大阪市長になる磯村隆文教授です。
 できの悪い生徒ですいません。
(*2)セブン&アイホールディングス
 いまでこそ24時間営業当たり前のコンビニですが、セブンイレブンが日本に登場したのは1974年、ローソンが1975年と比較的新しい業種です(ともに1号店開店時期)。
 セブンイレブンの名前の由来はアメリカのセブンイレブンが朝7時から夜11時まで開店してたからだそうです。今ではほとんどの店が24時間営業。まあ、世の中が眠らなくなってるからなぁ。
 昔、富士通のパソコンに”FM-7”、”FM-11”ってのがありましたが、なんか関係あるんでしょうか?
(*3)このビジネスモデルが成功する~
 当時とはハードウェアの費用が違うので一概に比較できませんが、だいたいATM1台当たりの損益分岐点が取扱件数で80~100件/日と言われてましたので”そんなにお客様が来るはずがない”というのがその理由。
 セブンイレブンは徹底的なコスト削減、銀行への利用解放(手数料ビジネス)などで成功させました。金額でいうと2010年度ではセブン銀行経常収益839億円のうちATM受入手数料が805億円と実に96%をたたき出しています(2011年3月期度決算説明資料より)。
(*4)チューリップ・バブル
 オランダで1637年に起こった世界最初のバブル経済事件。珍しいチューリップの球根に人気が集中し異常な高値がついた後、一気に暴落しました。
 チューリップは新種を作るのに交配させて種子から育てると3~7年かかり、また球根(子球)も2~3ケしかできないので生産が需要に追い付かないということが遠因だそうです。

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