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虚偽は疑惑よりも快適であり、愛よりも有用であるらしい(族長の秋/パンヤ)

 ども、家庭内ですら独裁に程遠いおぢさん、たいちろ~です。
 世の中には”独裁者”というお仕事があります(*1)。お隣の国でもお父さんが亡くなられて三男への権力継承がうんぬんという記事が新聞のトップに出ておりました。外交的には相変わらずすったもんだしているようですが、外から見る限りではおおむね平穏に継承が進んでいるように見受けられます。
 ところで”独裁者というのは割のいいお仕事か?”というと結局のところどうなんでしょうねぇ。ということで、今回ご紹介するのは独裁者(正確には独裁的な権力を持つ大統領)の登場する”族長の秋”であります。


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 写真はたいちろ~さんの撮影。北海道大学植物園のパンヤ科のトックリキワタ(徳利木綿)です。


【本】族長の秋 (ガルシア=マルケス 集英社文庫)
 小国に君臨する大統領は独裁者の地位についた。奇行、悪行ざんまいとやりたい放題だが、気力、体力、記憶力の減退と人生の秋を迎える・・・
【花】パンヤ科
 世界の熱帯に分布する木本ですが、日本には自生しません(植物園などでは見ることはできます)
 カポック(パンヤノキ)、パキラ、バルサ、ドリアン、バオバブ、それに写真のトックリキワタなどが含まれます。パンヤ科の植物には幹に刺があるものが多いんだそうです。


 ”族長の秋”に登場する”彼”ことこの独裁者を見ている限り、まあ悪いお仕事とは言えなさそうです。
 美女を我が物にしてその家の周りを街ごと改造したり、山ほど子供を作ったり、死んだ母親を神格化したり。でも、その美女がわがまま放題やってたり、国家財政の破綻で外国から責められたり、部下を信用できなかったりといいことづくめでもないご様子
 じゃあなんで独裁者なんかになりたかったかというと、いくつかのパターンがあるようで

 ①上昇志向をもって実力(往々にして武力)で
   軍部のクーデターなんかがこれ(*2)。
   ミャンマー、タイやラテン・アメリカ諸国など事例多数。
   ところで、橋本徹の大阪市長選の前に寄ってたかって独裁者扱いしてましたが
   選挙後のあの手のひらの返し方はいったいなんなんでしょう?
 ②世襲制で
   親からの権力継承。お隣の国がこれ。
 ②権力に抵抗するために仕方なく
   独裁政治の問題点は独裁者の権力行使に抑制が効かないこと。
   つまり”独裁者から何をされるかわからない”訳で身を守るために
   自分が独裁者になる必要があった人。後継者候補が複数いる場合なんかではありそう
   小説ですが”銀河英雄伝説”のカイザー・ラインハルト(*3)もこのケースです

 ”族長の秋”の場合は①のケースですが、わかんないのは”じゃあ何がしたくて独裁者になったのか?”。本書の場合に限った話ではないですが、意外と多いんですね、何のために独裁者になったのかわかんないのって(*4)。贅沢をしたいとか美女を侍らせたいという理由にしては独裁者は大げさすぎ。むしろ敵を殲滅した結果として独裁者になったんだったら憎悪の無限ループに陥るだけで確かに気が安まるヒマがないでしょうし。”彼”の場合も暗殺を恐れてか寝る時に3つの錠前をかけてます(*5)。

 独裁者といえども一人で統治ができるわけではないので、幕僚や内閣といったスタッフが必要。でもこいつらも信用できるかどうか分からないし、目を離すと好き勝手やらかすし、おべんちゃらで虚偽をするし。本書でもそんな例がいっぱいでています。
 でも、結局のところ独裁者ってのでそんなのに安住しちゃうんでしょうか。

  彼がそもそもの初めから心得ていたのは
  周囲の者たち歓心を買うためにあざむいていることだった。
  媚を売ることによって彼から金を得ていることだった。

    (中略)
  長い年月の流れるあいいだに、虚偽は疑惑よりも快適であり、愛よりも有用であり、
  真実よりも永遠のものであることを知ったのだった。
  権力を持たないのに命令し、栄光を与えられないのに称賛され、
  権威をそなえていないの服従されるという、恥ずべき欺瞞に思い至っても
  別に驚きはしなかった。

 本書の中に”彼”がパンヤの木のハンモックで休むというシーンが出てきますが、パンヤ科の木というのは写真のような凶悪そうなトゲトゲがあるものが多いんだそうです。
 独裁者も同じで、場合によっては有用でも近づくと危険だったりしそう。別にお隣の国がそうだと言ってるわけではありませんが。

 ”族長の秋”は改行のない文章が延々と続くとか、何の説明もなく語り手が変わるとか決して読みやすい本ではないですが(*6)、読んでいくとなかなか味のある本。ご興味のある方はどうぞ。

《脚注》
(*1)世の中には”独裁者”というお仕事があります
 実態はどうあれ、独裁者は”国民の圧倒的支持によって誕生した者”という形式を取っています。この点が国民の支持を形式上は必要としない専制君主との違い。
 先日亡くなられた方も国政選挙である最高人民会議選挙によって投票率99.9%、100%の賛成と圧倒的な支持で選出されています。
(*2)軍部のクーデターなんかがこれ
 意外なようですが、独裁者の代表のような”アドルフ・ヒトラー”は軍事力ではなく合法的な選挙により勢力を拡大してます。国家社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)は憲法改正的法令に必要な3分の2の賛成を獲得して全権委任法を可決させ、議会と大統領の権力を形骸化しています。
(*3)カイザー・ラインハルト
 、田中芳樹のSF小説”銀河英雄伝説”に登場する銀河帝国ローエングラム王朝を建てた初代皇帝。この人は幼い時に愛する姉のアンネローゼを銀河帝国ゴールデンバウム王朝の皇帝フリードリヒ4世の寵姫として奪われたことから、王朝打倒を目指すことになります。
 創元SF文庫版で本編10冊、外伝5冊と超大作ですがぜご一読いただきたい名作。
(*4)何のために独裁者になったのかわかんないのって
 昭和仮面ライダーシリーズに登場する”世界征服を企む悪の秘密結社”ショッカーの首領にしてもなんであんなに手間暇かけて世界征服をしようとしてるのか分かりません。別に安全保障ってわけでもないでしょうし。
 むしろ高屋良樹による漫画”強殖装甲ガイバー”に登場するクロノスの長”アルカンフェル”のように創造主たる”降臨者”の元に詰め寄らるという目的が明確なほうが例外的なのかも。
(*5)寝る時に3つの錠前をかけてます
 まあ、独裁者を倒せば独裁者になれるという構造は必然的に”暗殺”を生むわけで、たえず暗殺者に備える必要があるわけです。食べ物で毒殺されないために”お毒見役”なんてのもありますが、検査が終わった食べ物は”目黒のさんま”状態です。
(*6)決して読みやすい本ではないですが
 ノーベル文学賞授賞者だから許されるのであって、小中学校の作文でこの文体をマネたらバッテンくらいます、たぶん。

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コメント

強力なリーダーシップと独裁者の違いはなんなんでしょうね?
橋下徹なんかはまさしくみんなが待ち望んでいた人に近いんじゃないの?なのになにか発言するたびに、強引だ!独裁的だとか言って非難するのはどうなんでしょうか。
民主党はもはや頼りにならないし自民党はすでに死んでいるし、公明党はただの腰巾着だし、既存の政治家や公務員達の矛盾点や無駄を徹底的に無くしてほしいね、橋下さん。
日本の財政改革、無駄を無くすのに、いっそのこと橋下徹とカルロス・ゴーンに全権委任して徹底的にやってもらうというのはどう?

銀河英雄伝説はアメリカでは嫌われています。
驚くことに10年連続で子どもに読ませたくない本第一位にランクインしています。

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