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データ集めに膨大な金を使いすぎるくせに、データの整理には充分に使わない(レッド・オクトーバーを追え/潜水艦おやしお)

 ども、CIAのエージェントのおぢさん、たいちろ~です。(ウソです、マジで)
 先日、会社の企画担当の人と”データーって集めるだけじゃなくて、分析をする人も重要だよね”という話になりました。まあ、当たり前っちゃ当たり前の話でデータがなければ状況が分からないですが、かといって同じデータを見ても分析する人の善し悪しで導きだされる結論の質はそうとう変わってきます
 いちおうコンピュータ屋ですので、昨今のビッグデータキュレーターだ(*1)という話はでてきますが、どんだけ大量のデータを集めてスーパーコンピューター並みのシステムを提供しても結局はデータを分析する人の能力や感性によるんじゃないかと思ってしまいます。
 そういえば、こんなことやってる人がいたよなぁということで、今回ご紹介するのはそんな人が主人公の本”レッド・オクトーバーを追え”であります。


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 写真はたいちろ~さんの撮影。横須賀海上自衛隊基地の潜水艦”おやしお”です(手前)。横須賀基地の一般公開(サマーフェスタ2011)にて。


【本】レッド・オクトーバーを追え (トム・クランシー 文春文庫)
 ソ連の最新鋭ミサイル原子力潜水艦”レッド・オクトーバー”が処女航海で突然行方をくらました。艦長ラミウスの意図は? その謎を追うCIAのアナリスト、ジャック・ライアンは?
 1985年(原書は1984年)に発売されベストセラーとなった海洋冒険小説。
【乗り物】潜水艦”おやしお”
 海上自衛隊所属のディーゼル・エレクトリック方式の潜水艦。おやしお型潜水艦の1番艦。
 全長82.0m、全幅8.9mと、海上自衛隊の中では最大サイズの”そうりゅう型潜水艦”(全長84.0m、全幅9.1m)に次ぐ大きさです。


 さて、本書に登場する”レッド・オクトーバー”ですが、全長650フィート(約198m)、全幅85フィート(約26m)ととにかくでかい。潜水艦なんてめったに見れるもんではないですが(まあ、他の戦艦もそうですが)、実際の潜水艦てのはけっこう大きな乗り物です。写真ではそんなに大きく見えないかもしれませんが、これは大半が水の下に潜っているから。海上自衛隊呉史料館(*2)で”おやしお”より一回り小さいゆうしお型潜水艦”あきしお”を見ることができますが、圧倒されます。
 ”レッド・オクトーバー”は上記の”おやしお”と比べても全長で2.4倍、全幅で2.9倍。形は違いますが、大型フェリーの”さんふらわー”(大洗~苫小牧航路)がだいたい190~192mぐらいですので、それよりややでかいぐらいと言えばイメージできるかと(*3)。
 しかも無音の推進ができる”キャタピラー・ドライブ”を搭載し、全世界の海のどこでも秘密裏にいけるというスグレもんです。

 潜水艦というのは、その隠密性から(小説内の設定では)いったん潜航するとどこにいて、何をやるかがわかんないというリスクをはらんでいます。しかも”レッド・オクトーバー”はシーホークミサイル26基を搭載し200の都市を破壊できるという剣呑なシロモノ。
 まあ、沈黙の艦隊やりたい気持ちになるのも分からんではないですが(*4)、亡命も同じでしょう。ラミウス艦長は上級士官とともにアメリカへの亡命を企てるわけですが、事前になんの相談もなくいきなり来られるアメリカだって大変です。艦長の意図を見抜いたのが本書の主人公、ジャック・ライアンです。

 で、ジャック・ライアンはCIA職員(*5)で映画では銃撃戦をやっていますが(*6)、本来はアナリストで歴史家。本人いわく”専門はデスクワーク”。スパイというイメージではないです。ヘリコプター墜落事故が原因で海軍を退役、メリル・リンチ(*7)の証券トレーダーとして資産を作って歴史学の大学博士課程に進むというかなり異色の経歴の持ち主です。

 ジャック・ライアンの何が凄いかというと、まったく会話をしていないラミウス艦長の意図をその周辺情報だけで正確に見抜いている点です。
 ライアンの上司であるグリーアCIA情報担当副長官の言葉

  ライアンには、山のようなデータを選りわけて
  重要な意味をもつ二、三の事実を突き止める能力が備わっていた。
  これは、CIAではめったにないことだった。
  うちの局はデータ集めに膨大な金を使いすぎるくせに、
  データの整理には充分に使わない、とグリーアは思っていた。
  アナリストは、外国で活躍する秘密諜報員のように華々しい存在ではない。
  しかしライアンは、そうした諜報員がよこす報告や専門分野の情報源から来る
  データを分析する術を知っていた。

 まあ、データとアナリストがそろってこそ有益な情報になるわけで、結局のところビッグデータのビジネスが成功するかどうかは、アナリスト(キュレーター)が養成できるかどうかにかかってるんだろうなぁ。

 ”レッド・オクトーバーを追え”は絶版になっているようですが、図書館あたりにはあるはず。掛け値なしに面白い小説です。

《脚注》
(*1)ビックデータだキュレーターだ
 ビックデータとは今までのデータベースでは扱えないような巨大なデータのこと。
 キュレーターとはそれを分析する人。キュレーターは一般的には博物館や美術館にいる学芸員のことですが、分子生物学では”独立した実験結果や報告を付き合わせ、妥当と思われる事柄を注釈として選択する作業をする人(ウィキペディアより抜粋)”のことだそうで、イメージ的にはこっちのほうが近そうです。
(*2)海上自衛隊呉史料館
 愛称”てつのくじら館”。広島県呉市にあります。
 ”あきしお”は全長76.0m、全幅9.9mとやや小さいですが相当なモンです。
(*3)それよりややでかいぐらいと言えば~
 ありえないほどでかいかというとそんなこともなく、東西を代表する最大の潜水艦は下記のとおりです
 アメリカ  :オハイオ級原子力潜水艦  全長170.67m、全幅12.8m
 ソビエト連邦:タイフーン型原子力潜水艦 全長175.0m、全幅23.0m
(*4)沈黙の艦隊やりたい気持ちになるのも~
 ”沈黙の艦隊”はかわぐちかいじによる漫画。
 極秘に建造された原子力潜水艦”シーバット”を乗っ取って戦闘国家「やまと」の独立を宣言、国連軍となるべくアメリカを目指すというお話。
(*5)CIA職員
 アメリカ中央情報局(Central Intelligence Agency)。
 スパイ小説では諜報活動から情報操作、買収、暗殺なんでもありですが、言われてみれば分析をする人がいないと情報なんて役に立ちません。
(*6)映画では銃撃戦をやっていますが
 主演 ショーン・コネリー 、アレック・ボールドウィン、監督 ジョン・マクティアナンで映画化。1990年公開。
 原作に比べてはしょったストーリーですがけっこう面白い映画です。
(*7)メリル・リンチ
元米国三大投資銀行の一つ。2007年のサブプライムショックで巨額の損失を計上し、2009年にバンク・オブ・アメリカに吸収されました。
 ソ連といい、メリル・リンチといい、ちょっと前の話なんですが時の流れを感じさせます。

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