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安静といっても、元々が中途半端な死体みたいなもんですから(人間臨終図鑑/リンドウ)

 ども、相変わらず風邪ぎみのおぢさん、たいちろ~です。
 風邪を治すには、薬を飲んで栄養を取って、あとは安静に寝てるだけ。まあすることがないわけでたまっている本を読んでいるわけです。
 で、今回ご紹介するのは、風邪ひく前に図書館から借りてきた本”人間臨終図鑑”であります。


0413
 写真はたいちろ~さんの撮影。近所のリンドウです。


【本】人間臨終図鑑 (山田風太郎 徳間文庫)
 乱世の英雄から、作家、芸術家などなど、923人の臨終の様子を集めた本
 山田風太郎というと、”魔界転生(*1)”を始め妖しげな忍術モノを書く作家だと思ってましたが、こんな博学な本も書いてたんだなぁ。
 ちなみにご本人は2001年7月28日に肺炎のため死去。79歳。
 この日は師である江戸川乱歩(*2)の命日でもあるそうです。
【花】リンドウ(竜胆)
 リンドウ科リンドウ属の多年生植物。釣り鐘型のきれいな紫色の花が上向きに咲きます。
 花言葉は”悲しみにくれているあなたを愛する”、”淋しい愛情”など。


 本の構成は、享年順に並んでいますが、やっぱり気になるのは自分の歳に死んだ人。私は今52歳ですが、この歳で死んだのは

  鎌倉幕府を開いた源頼朝(1147~1199)
  甲斐の虎こと”影武者(*3)”の武田信玄(1521~1573)
  イギリス文学を代表する作家、シェイクスピア(1564~1616)
  フランスの皇帝となった英雄ナポレオン(1769~1821)
  子供向け偉人伝の筆頭、細菌学者の野口英世(1876~1928)
  ”時間ですよ(*4)”などの脚本を手掛けた小説家の向田邦子(1929~1981)

 などなど。

 まあ、人間生きてなにをするか、死んで何を残すかと言いますが、偉人といえ死にざまが必ずしも幸せだったとは言い難いようです。失意の中孤独に死んだ人とか、死刑、切腹、自殺、不治の病に事故死とか。
 上記の5人だと、源頼朝は落馬の傷がもとで、武田信玄は肺結核、シェイクスピアは不明、ナポレオンは獄中で病死、野口英世はアフリカで黄熱病で病死、向田邦子は飛行機事故で墜落死。
 事故死した向田邦子はともかく、幸福な晩年を過ごしたのはシェイクスピアぐらい(*5)(それでも奥様との不仲説はあるようですが)

 まあ、偉大な人であっても幸せの死を迎えるのはことほど左様に難しいことのようですが、本書の中で”幸福な死をとげた稀有な人間のベスト・テンの一人”に上げているのが石田吉蔵(1895~1936。享年 41歳)。愛人のお加世に首を絞められながらエッチしていてそのまま死んでしまった御仁。いわゆる腹上死というやつです。
 山田風太郎曰く

  石田吉蔵は最後まで、絞められるのも例の遊びだと思っていたかも知れない
  しかしまた、本当に殺されてもいいと思っていたかも知れない
  いずれにせよ、おそらく死の恐怖も苦悶もない、極限までの燃焼と
  異次元の忘我と恍惚の中に、彼は息をひきとったのであろう

 まあ凡百の腹上死と違うのは、お加世さんが陰茎と睾丸を”奥さんに触らせたくない、XXがあれば石田と一緒にいるような気がして(原文ママ)”という理由で切り取って持ち去ったこと。お加世さんの本名は阿部定、いわゆる”阿部定事件”です。
 (ちなみに、お加世さんは行方不明で生死不明とのこと)

 そういや、ラサール石井(*6)が一般女性との再婚の理由に”孤独死が怖かった”ってのを上げていますが、悲しみにくれている私を愛してくれる人がいるってのは何にもまして幸せなことなのかもしれません。

 まあ、”人間臨終図鑑”は面白いっちゃ面白いんですが、病気の時に読む本ではないわなぁ。安静なんてごろごろしながら本を読んでるだけの中途半端な死体みたいなモンですし。

  人間は中途半端な死体として生まれてきて
  一生かかって完全な死体になるのだ

   寺山修司(詩人、劇作家。1935~1983。享年48歳)

《脚注》
(*1)魔界転生
 由比正雪は森宗意軒の編み出した忍法「魔界転生」によって、天草四郎時貞ら死者を復活させ、江戸幕府の転覆を謀る・・・
 といっても私が見たのは1981年の角川映画版と、石川賢版のコミックのほうです(両方とも原作とはストーリーが異なります)
 角川映画版でなかなかにインパクトのある天草四郎を演じたのはジュリーこと沢田研二。まだ、ご存命。
 ”ゲッターロボ”や”魔獣戦線”の作者でもある石川賢は2006年11月15日に急性心不全で死去。享年58歳。独特のストーリー展開で好きな漫画家だったんですが、残念です。
(*2)江戸川 乱歩
 江戸川乱歩賞に名を残す日本の推理小説の巨匠。私の若いころの時代は猟奇趣味の乱歩派、ホラー系の横溝正史派、社会派ミステリーの松本清張派に分かれてましたが、個人的には乱歩が好みでした。
 ちなみに乱歩は1965年に脳出血のため70歳で、横溝は1981年結腸ガンのため満79歳で、清張は1992年に脳出血のため82歳で死去しました。
(*3)影武者
 武田信玄の影武者として生きる運命を背負わされた泥棒を描いたが黒澤明監督の映画。カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞。
 黒澤明監督は1998年脳卒中により88歳で死去。
(*4)時間ですよ
 下町の銭湯を舞台にした1970年代を代表するTBSのテレビドラマ。この作品の脚本には後に”渡る世間は鬼ばかり”も手掛ける橋田壽賀子も参加しています。
 屋根の上で天地真理や、浅田美代子とギーターを弾きながらデュエットしていた堺正章、脚本の橋田壽賀子はまだご存命です。
(*5)幸福な晩年を過ごしたのはシェイクスピアぐらい
 山田風太郎は”彼は死の三年前、投資のための邸宅などを買っている。こういう大文豪もあるのである”とわざわざ書いてますが、それぐらい例外なんでしょうね。
(*6)ラサール石井
 ”コント赤信号”のメンバーの一人であるコメディアン。56歳。
 2012年1月に再婚を発表。お相手は前妻との間に生まれた2人の娘よりも若い24歳の一般女性と32歳差の”年の差婚”
 そんなおぢさんを愛してくれる人がいるってのは何にもまして幸せなことなのかもしれません。

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