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ビック・ブラザーからリトル・ピープルへ。あるいは将棋型社会からオセロ型社会へ(リトル・ピープルの時代/ジャスミン)

 ども、非モテのおぢさん、たいちろ~です。
 先日、会社の女性と”モテない男ってどんな人”という話になりました。彼女いわく”人間の器が小さい”とのこと。なかなかにゾウモツをえぐるような厳しいご意見であります。まあ”小人閑居して不善をなす”というぐらいで、小さき人ってのはあんまし良い意味ではないですが、リトル・ピープルと書くとちょっと意味が違ってくるようです。
 ということで、今回ご紹介するのは、宇野常寛による評論”リトル・ピープルの時代”であります。


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 写真はたいちろ~さんの撮影。寮の庭に咲くジャスミンです。


【本】リトル・ピープルの時代 (宇野常寛 幻冬舎)
 リトル・ピープルの時代―それは、革命ではなくハッキングすることで世界を変化させていく“拡張現実の時代”である。“虚構の時代”から“拡張現実の時代”へ。震災後の想像力はこの本からはじまる。(Amazon.comより)
 村上春樹仮面ライダーウルトラマンなどを題材にした異色の評論。
 なぜ、表紙が初代仮面ライダーなのかは、中を読まないとわかりません。
【花】ジャスミン
 モクセイ科ソケイ属の植物の総称。白く小さい花に似合わず官能的な香りがします。
 花言葉は”愛嬌、愛らしさ、温和、無邪気、あなたについていきます”など。
 2010~11にかけてチュニジアで起こった革命を”ジャスミン革命”と呼ぶのはジャスミンがチュニジアを代表する花であることから。


 先に言っときますが、この本、確かに面白いんですが村上春樹や仮面ライダー、ウルトラマンが何かを知らないと話の背景がわかりにくいかも。私自身、村上春樹をあんまり読んだことなくて、ベストセラーの”1Q84”も未読です(*2)。第1章は”1Q84”の話が中心なので、ちょっと話かりずらいとこもありましたが、評論自体は興味深い内容です。

 さて、”リトル・ピープル”は何かというと、これって”ビック・ブラザー”に対比するもんなんですね。”ビック・ブラザー”ってのは、イギリスの作家”ジョージ・オーウェル”の小説”1984”の小説に出てくる独裁者の名前
 テレスクリーン(テレビと監視カメラが一緒になったようなもの)などで、当局の完全な監視下に置かれているディストピアで、ポスターに描かれているスローガンは「偉大な兄弟があなたを見守っている(Big Brother is watching you)
 ”リトル・ピープルの時代”では”ビック・ブラザー”は”国民国家を規定する物語の語り手として設定された疑似人格”、”体制という大きな物語装置”など多義的に使われていますが、本論の趣旨は”ビック・ブラザーが壊死”して”リトル・ピープルの時代”になったということ。
 ”リトル・ピープル”は元々は村上春樹の造語で”1Q84”に登場するカルト教団が崇める超自然的な存在。国家の比喩なならざる疑似人格、小さな父といったこっちも多義的にでてきます。
 500ページを越える評論を簡単に表すのはむずかしいんですが、本書に出てくる比較表のほうがイメージできるかも

        〔ビック・ブラザーの時代〕  〔リトル・ピープルの時代〕
 年代      ~1968年         1995/2001~
 国際秩序   冷戦             グローバリゼーション
 世界構造   国家権力           (貨幣と情報の)ネットワーク
 戦争      国民国家間の総力戦   テロの連鎖
 悪のイメージ 権力への意思       システム化の反作用
          (大きな物語の強制)    (小さな物語間の衝突)

 私見ですが、世界の独裁政権崩壊のとっかかりとなったジャスミン革命なんか、ビック・ブラザー的な長期独裁政権のベン=アリー大統領を、FacebookやTwitterなどのネットメディアを使った”リトル・ピープル的なもの”が打倒したなんて感じでしょうか。

 確かに戦争や冷戦構造の時代にはアメリカとソ連の対立があって、大統領(ルーズベルト、ケネディ、ニクソンなど(*3))、書記長(スターリン、ブレジネフ、ゴルバチョフなど(*4))みたいなある意味その国家を代表する人格としての顔があったように思います。
 日本でも、吉田茂、佐藤栄作、田中角栄なんて(*5)国家政策と結びついた総理大臣もいたのにせいぜい小泉純一郎(*6)以降、そんな感じの人がいないような気がします。

 こうやって見ると、かつては”大いなるもの”=”ビック・ブラザー”同士が対決する将棋的な社会だったのが、だんだん”小さきもの”どうしがざわざわやってるオセロ型の社会になってきている気が。それぞれ役割、機能や書いてある文字や違う将棋の駒ではなくて、全部が同じ駒で差がないオセロ。それも、隣の状況によって黒くなったり白くなったりするような。橋下徹をめぐる大阪市長選前後のバッシングと媚の売り方をみてると、てなことを感じてしまいます(*7)。

 本書は、ビック・ブラザーの代表にウルトラマンを、リトル・ピープルの代表に(平成)仮面ライダーをあげるなど、ヲタク趣味っぽく聞こえますが、中身はけっこうマジ。そういった意味では現代的な評論ではあります。

《脚注》
(*1)小人閑居して不善をなす
 ”つまらない人間が暇でいると、ろくなことをしない”という意味。
 ”小人(しょうじん)”は有徳者・人格者の意味である”大人(たいじん)”対する言葉で、徳のない品性の卑しい人のことだそうです。
(*2)ベストセラーの”1Q84”も未読です
 奥様から”意外とベストセラーを読まない”と言われますが、理由は簡単で本は図書館で借りる派だから。”1Q84”なんかは予約しても半年以上待ちです。まともに新刊書を買っていたらあっという間に家計が破綻しますので・・・
(*3)ルーズベルト、ケネディ、ニクソンなど
 フランクリン・ルーズベルト:第32代大統領。1933~1945年在位
 ジョン・F・ケネディ:第35代大統領。1961~1963年在位
 リチャード・ニクソン:第35代大統領。1969~1974年在位
(*4)スターリン、ブレジネフ、ゴルバチョフなど
 ヨシフ・スターリン:初代書記長。1922~1953年在位
 レオニード・ブレジネフ:第3代書記長。1964~1982年在位
 ミハイル・ゴルバチョフ:第6代書記長。1985~1991年在位
(*5)吉田茂、佐藤栄作、田中角栄なんて
 吉田茂:第45、48~51代総理大臣。1946~47年、48年~54年在位
 佐藤栄作:第61~63代総理大臣。1964~72年在位
 田中角栄:第64~65代総理大臣。1972~74年在位
(*6)小泉純一郎
 第87~89代総理大臣。2001~05年在位
 こうやって並べてみると、長期政権の人が多いですねぇ。小泉純一郎の後を継いだ安部晋三からこっち、ほとんど1年持つか持たないかだもんなぁ
(*7)橋下徹をめぐる大阪市長選前後のバッシングと媚の売り方~
 第52代大阪府知事(2008~11年)、第19代大阪市長(2011年~)
 大阪出身の私が言うのもなんですが、たかだか一介の首長に対する政界、マスコミあげてのバッシングと当選後のあのすり寄り方を見てると、できの悪いファルスを見せられているような気分になります。

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