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2012年2月

すでに(金)の息子が東大を卒業して、さらに(金)になるのが現代における「(金)の相乗効果の法則」です(金魂巻/タチアオイ)

 ども、本代で万年(ビ)のおぢさん、たいちろ~です。
 このブログでもおわかりのとおり、私はけっこうな量の本を読んだりしてます。節約のためによく図書館を利用しますが、図書館にない本だとかは買うことになります。で、よく利用するのがB○○K○FF。特に助かるのが105円のコーナー(通称 百円棚)です。このコーナーのメリットは安いってこともありますが、たまにちょと古めでおぉっというような本が出てたりします。
 で今回ご紹介するのはそんな中の1冊”金魂巻”であります。


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 写真はたいちろ~さんの撮影。都内で見かけたタチアオイ。

【本】金魂巻 (渡辺 和博とタラコプロダクション 主婦の友社、ちくま文庫)
 サブタイトルの”現代人気職業31の金持ビンボー人の表層と力と構造(*1)”とあるように、いろんな職業をお金持ちのマル金(金)と貧乏人のマルビ(ビ)に分類し、その実態と成立過程を明らかにした本。
 主婦の友社、ちくま文庫から出ていますが、出版社が変わっても表紙がかわらないという珍しい例でもあります。
【花】タチアオイ(立葵)
 草丈は1~3mに直立し、6~8月ごろに大きな花がほぼ縦に並んで咲きます。
 花言葉は”大きな望み、野心、大志”など。


注)本書では下記のように○の中に金やビの字をいれてマル金、マルビと読ませていますが、そんなフォントがないので(金)、(ビ)で代用しています。
 すいませんが、読み換えてください。

 さて、この本に載っている職業を見ていくと、(金)になるか(ビ)に落ちるかは教育への投資力を含めた親の財力やコネに大きく左右されるとこが分かります。代表的なものをちょと分類してみると

〔親の財力/財力に裏付けられた高い教育を受ける機会/人脈がある〕
・オートバイ・レーサー
  (金)は親の金でレース用バイクを購入し、親の金でヨーロッパのレースに参戦。
  (ビ)ば暴走族あがりで、バイトで金をためて中古のバイクを購入
・不良少女
  (金)は高校中退後にカリフォルニアに留学、商売があたって成功
  (ビ)は半同棲のヤクザにみつぎつづけ、いつまでも貧乏
・エディター
  (金)は「なにか知的で華麗なことがしたいから、お父さまにお願い」して
    大手女性誌の出版部に入社した、偏差値64以上の大学出の編集者。
  (ビ)はそれ以外
・カメラマン
  (金)は親父のコネで遊び半分にやっていた名門広告プロダクションにそのまま就職
  (ビ)ばアサヒ芸能のモノクロ活版ページの写真を見せて仕事を貰う
・フリーライター
  (金)は幼稚舎時代の幼馴染が集英社の重役の息子で、コネで就職
  (ビ)ばアザヒ芸能などのアルバイトが忙しく留年
・弁護士
  (金)は親が一流企業の社長か重役なので顧問料がはいる
  (ビ)ば社会正義に燃えれば燃えるほど費用は持ち出しに
・シェフ
  (金)は父親の(金)友人の勧めで自宅近くの西麻布でレストランを開店
  (ビ)は「コック見習い求む」の新聞広告を見てこの道に

〔親の財力にかかわりなく、本人の才能と運が左右する〕
・学者の卵
  キャッチフレーズで一発当てて、マスコミに出れば(金)
  できなければ(ビ)
・商社マン
  殺しても死なない、鉄の胃袋を持つ、元気な男は(金)に
  消化器系に難があり、かぜをひきやすいタイプは(ビ)に

 他に”親の財力にかかわりなく、本人の才能と運が左右する”職業としてはイラストレーター、マンガ家、テレビディレクター、ファッションデザイナー、ミュージシャンなどクリエイティブなお仕事の一群。成功するかどうかは一発当てられるかどうかにかかっているようです。

 本書のキーワードは”親の財力・地位”と”主張と収入の合計は(金)と(ビ)で同じ(*2)。前者をまとめると表題にある

  すでに(金)の息子が東大を卒業して、さらに(金)になるのが
  現代における「(金)の相乗効果の法則」です

 になります。

 ”知性がお金で買えるのか!”とお怒りの向きもありましょうが、少なくとも”学力”は金で買えます。正確には、お金を掛ければ学力が上がるとは限りませんが、それなりに教育投資をしなければ学力は上がらないと考えてもよろしいかと(*3)。親の学力がそれなりなのに子供が金もかけずに東大に入れるほど学力があるなんて期待するのは、5億円の宝くじの当選を夢見るようなモンです。
 あと、親のコネですが、本書が出版された1984年頃って女性の入社に関して言えばなくはなかったですかねぇ(*4)。もっとも就職氷河期の昨今、コネで入社できるほど甘くはないです。たまに仕事関連のご子弟が入社することはありますがこれはたまたま。コネなんかなくても充分入社できるだけの実力の持ち主です。

 ところでこの本、なんとなくバブル期に出た本だと思ってたんですが、出版は1984年とバブル前。(金)、(ビ)が流行語大賞となったのも1984年です。プラザ合意(*5)が1985年ですから、まさにバブルの夜明け前になります。なんとなく”お金持ちと貧乏人”を冗談で笑える余裕ってのがバブル的な印象だったのかもしれませんが、不況続きの昨今はシャレにはなんないのかもしれません。

 まあ、どんな職業にしろ(金)な上の人もいれば(ビ)下の人もいます。
 言ってみれば”職業”という一本の幹に咲くタチアオイの花のようなもの。若者が”上の方に咲きたい”といった大きな望みや野心を持つことは悪いことではないんでしょうが、(ビ)には(ビ)の人生があるんではないかと本代のやりくりに汲々とするおぢさんは思うのであります。

《脚注》
(*1)力と構造
 ”逃走論―スキゾ・キッズの冒険(ちくま文庫)”で一世を風靡した浅田彰のデビュー 作がほぼ同時期(1983年)に出版された”構造と力―記号論を超えて(勁草書房)”。当時はこういう”知をもてあそぶ”ようなのが流行ってましたね。読んでないけど。
(*2)主張と収入の合計は(金)と(ビ)で同じ
 (金)は仕事などどうでもいいかわりにお金がある
 (ビ)は不満が多く、酒場で主張が多い分だけお金が少なくなる

(*3)それなりに教育投資をしなければ学力は上がりにくい~
 やれ学費だ塾代だと、親になってみて初めて教育にお金がとってもかかるもんだと実感しました。
 今になって、簡単に二浪した自分の不明に恥じ入るばかりなのであります。
(*4)女性の入社に関して言えば~
 ”就職の平等”という意味ではとんでもない話なんでしょうが、男女雇用機会均等法もなく(施行は1986年)、女性の平均結婚年齢が25歳前後だった時代、有り余る男どもを相手に社内結婚してくれたって意味では、あながちマイナスだけではなかったのかもしれません、たぶん。
(*5)プラザ合意
 G5(先進5ヶ国蔵相・中央銀行総裁会議)による為替レート安定化に関する合意のこと。
 アメリカの財政・貿易の”双子の赤字”により不安定化したドル相場を安定させるために協調的なドル安相場に誘導。このため235円(!)だった円ドル相場が1年後に150円台に減少。円高不況を回避するために低金利政策をとったことで不動産・株式に資金が流入、のちのバブル景気の原因となります。

推理小説を読みたいなら原作を、アクションを見たいなら映画を(野性の証明/ナス/CH-47 チヌーク)

 ども、秘められた野性のおぢさん、たいちろ~です。
 先日、チャンドラーの”プレイバック(*1)”を読みました。ある世代の人にとっては、ハードボイルドな私立探偵”フィリップ・マーロウ”というより、

 男はタフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない

のフレーズのほうが通りが良いかも。この名言の元ネタが”プレイバック”なんですが、まあ、このフレーズがキャッチコピーとなったほうも読んでみましょうということで、
今回ご紹介する”野性の証明”であります。

Photo
 写真は”フリー素材屋Hoshino”より。丸なすとナスの花です。
 自分の庭に毎年ナスを植えてるのに、なぜか写真がなかった・・・


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 写真はたいちろ~さんの撮影。アメリカ空軍横田基地の”CH-47 チヌーク”です。


【本】野性の証明 (森村 誠一 角川文庫)
【DVD】野性の証明 (原作 森村 誠一、製作 角川春樹)
 岩手県の寒村で皆殺し事件が発生、一人の少女”長井頼子”だけが生き残った。
 2年後、元自衛隊員の”味沢岳史”は頼子を連れて羽代市に現れる。そこは”大場一族”が牛耳る独裁の街であった・・・
 角川映画版では味沢岳史を高倉健が、長井頼子を薬師丸ひろ子が演じました(*2)。
 音楽監督は大野雄二。BGMだけ聴いてるとほとんどルパン三世です。
【花】なす(茄子)
 ナス科ナス属の植物。食用の果実が生ります。
 果実と花の色は必ずしも一致しないんですが、なぜだかナスの場合は花や枝も紫のナスビ色になります。
【乗り物】CH-47 チヌーク
 ボーイング・ヘリコプター社製造のタンデムローター式の大型輸送用ヘリコプター。
 映画版では自衛隊演習のシーンに登場しますが、自衛隊への配備は1986年と映画公開(1978年)の後とのこと。


 さてこの作品、森村誠一の原作を映画化したものですが原作と映画でこうも印象が違うモンかと。ネタバレになりますが、上記の他にも

 ・味沢岳史は自衛隊でスパイやゲリラ戦を担当する特殊工作隊出身。
  今風に言うなら、”亡国のイージス”に登場するDAISの如月行(*3)みたいなもん。
 ・長井頼子は直観像記憶(*4)を持つ異能者
 ・保険外交員となった味沢岳史は伊崎輝夫の妻の死亡を調査する
 ・大場一族の不正を暴こうとする越智朋子(味沢が助けれれなかった越智美佐子の姉)に協力する協力する

 といったプロットは一緒なんですが、なんでこうなるのと思うぐらい別モノ。
 主人公の味沢の扱いにしても、原作では越智朋子暴行殺害事件の手掛かりとして、凌辱に使われたと思われるなす(*5)から犯人をたぐりよせるようなアプローチを見せていますが、味沢はスパイ養成の教育を受けているという設定なので、これはありなんでしょう。でもこのエピソードは映画ではいっさい出てきません。
 一方、映画版では”ゲリラ戦のエキスパート”という部分がかなり拡大解釈されていて、のっけからのレンジャー訓練、過激派によるアメリカ大使人質立てこもり事件(*6)の解決など殺人テクニックをたたきこまれた味沢という人の扱い方をよく表しています。でも、原作ではこういったエピソードはなく、味沢の前身は岩手県警の刑事によってのみ語られるだけ。後半にある自衛隊演習に出てくる戦車(M60パットン)やヘリコプター(ベル206CH-47 チヌーク)なんてのはいっさいありません。
 まあ、原作では味沢を探偵的な人として描いているのに対し、映画版ではほとんど体育会系の人として扱ってるようです。

 エンディングで、戦車や歩兵隊の大群に亡くなった頼子を背負って拳銃ひとつで立ち向かうってシーンはほとんど任侠映画の世界。耐えに耐えた主人公が長ドス一本持って敵であるヤクザの組に殴りこみをかけるシーンを彷彿とさせます。絶望的な状況ながらもカタルシスを感じる場面です。
 まあ、主人公を演じるのが高倉健だから余計にそう感じるのかも。

 一方、原作のほうはほとんど救いのない終末。頼子を救うために戦った味沢は病気による精神障害で発狂したとして精神病院に入院させられ、冒頭の大量殺人事件の真相は闇に葬られ、協力した刑事も同様の病気で言動に異常、頼子にいたっては”その後の長井頼子の行方を知る者はいない”の一言で片づけられ・・・
 昔、この本を読んだ時に”映画と違ってずいぶん救いのない話だなぁ”と思いましたが、あらためて読んでみると、やっぱりそんな話です。

 ”野性の証明”は推理小説を読みたい人は原作を、アクション好きなら映画版でしょう。でも、こんだけ違う話をメディアミックスで一緒に商売してたのは角川春樹(*7)らしいとも言えます。

《脚注》
(*1)プレイバック (レイモンド・チャンドラー 訳:清水 俊二 早川文庫)
 弁護士から謎の美女ベティ・メイフィールドの尾行を依頼された私立探偵フィリップ・マーロウ。どうやら彼女は脅迫されているらしい。尾行を続け、彼女に接触を持ったマーロウは・・・
 正統派ハードボイルド作家、レイモンド・チャンドラーの遺作。
 詳細は”プレイバック、ハードボイルドの時代!”をどうぞ。
(*2)味沢岳史を高倉健が、長井頼子を薬師丸ひろ子が演じました
 そのほかにも今や”釣りバカ日誌”で好々爺のスーさんを演じる三國連太郎が大場一族のドン”大場一成”を、その息子で暴走族の頭、けっこうへたれで殺される(原作では生き残った)”大場成明”を舘ひろしが担当。
 舘ひろしにとっては、黒歴史なんだろうなぁ。
(*3)DAISの如月行
 福井晴敏の”亡国のイージス”などに登場する特殊工作員。
 ”DAIS(ダイス)”は”Defence Agency Information Service(防衛庁情報局)”の略で如月行はその配下の特殊要撃部隊”SOF(Special Operation force)の所属。
 福井晴敏もはずれの作品のない作家です。お勧め。
 余談ですが、神奈川県川崎市に”ダイス”(綴りはDICE)"というショッピングモールがあるんですが、これを見るたびに地下に防衛庁の秘密基地があるんじゃないかなどと思ってしまいます。
(*4)直観像記憶
 眼に映った対象を写真のように記憶する能力のこと。
 1997年に発生した”神戸連続児童殺傷事件(通称 酒鬼薔薇聖斗事件)”の犯人の少年がこの能力の持ち主ということで話題になりました。
 信じられないような能力ですが、中学の時に学年トップの成績の友人になんでそんなに勉強ができるのかと聞いたところ”教科書なんて、1回読んだら覚えるだろう”との返事。うらやましい限りです。
(*5)凌辱に使われたと思われるなす
 いしかわじゅんの名作漫画”約束の地”にも”電動ナス”というエッチなバイブレーターが登場しますが、まあそんな使い方です。
(*6)過激派によるアメリカ大使人質立てこもり事件
 浅間山荘に連合赤軍が武装して立てこもった”浅間山荘事件”が発生したのが1972年ですので、まあ時代の産物とも言えます。
 ちなみに過激派のリーダの役をやっているのは年の差婚で話題になった寺田農だそうです。
(*7)角川春樹
 元角川書店社長。映画監督、映画プロデューサー、俳人、冒険家。
 1970年代後半から80年代にかけて大作映画と本を大規模な宣伝で売るメディアミックス路線(通称 角川商法)を始めた人。
 弟の角川歴彦が春樹との対立から独立してメディアワークスを設立、この人が今のライトノベルとそのアニメ化、コミカライズというメディアミックスを継承した点では、ある意味今の萌え文化の源流にある人ともいえます。

黄昏時の若人をとめられるものなどこの世にないやね(トワイライト/黄昏)

 ども、夜な夜な美女の生血を求めてさまようおぢさん、たいちろ~です(ウソです)
 先日、桜庭一樹のエッセイを読んでますと”トワイライトにハマりました”というのが書いてありました。稀代の本の読み手である桜庭一樹がハマるぐらいだから面白いんだろ~な~と思って手を出したんですが、面白いんですな、これが。
 さすがに13巻もあって(ソニーマガジンズ版)まだ全部は読めてませんが、とりあえず1~3巻(第一期)を一気読みしました。


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 写真はたいちろ~さんの撮影。横須賀の月。撮ったのは8月1日の19時ごろです。 


【本】トワイライト (ステファニー・メイヤー ヴィレッジブックス他)
 雨と霧の町、ワシントン州フォークスへ引っ越してきた少女ベラは、美しい美貌の青年エドワードとであう。惹かれあう二人だか、彼には秘密があった。彼は吸血鬼だったのだ・・・
 アメリカではハリー・ポッターに次ぐ大ベストセラーなのだそうです。
 ”トワイライト〜初恋〜 ”として2008年に実写映画化。
【自然】黄昏
 日没後2時間±1時間後で、だいたい19~21時ごろのこと。英語だと”twilight”。この時間帯は夕暮れ、逢う魔が時とも言われる時間帯です。
 ”神々の黄昏(*1)”から連想するように終末の時の比喩にも使われます。


 さて、この小説は映画版のキャッチコピーの「人間とヴァンパイアの禁断のファースト・ラブ」とあるようにラブ・ストーリーなんですが、今の日本の小説シーンでいうとほとんどライト・ノベルです。イラストこそ”萌え絵”ではないですが(*2)少女漫画っぽいし、ストーリーはヒロインの”ベラ”こと”イザベラ”の一人称で語られているし。

 お話はというと、普通でちょっと運動神経のにぶい女の子が素敵な男の子から恋をされるという、ガール・ミーツ・ボーイ(*4)のストーリー。しかも、彼氏がチョ~イケメンで、スーパーマンで、いつでも”私だけ”を守ってくれる存在で、かつちょっと(かなり)危険な”吸血鬼”となればほとんどの女の子にはストライクゾーンかも。
 しかも、自分を傷つけないために、”血を吸う”という本能に根ざした行為を超人的な克己心でがまんしているからなおさらです。

 ふと思ったんですが、吸血鬼モノの主人公ってはなから吸血鬼ってわけではなく”人間から吸血鬼になった”っても意外とあって、メジャーなことろでは

〔ドラキュラ伯爵〕
 元ルーマニア・トランシルバニア城の城主。吸血鬼のご神祖様でもあります(*5)。
 最愛の妻を失った絶望から神への復讐を誓い吸血鬼に。
 (フランシス・フォード・コッポラ監督の映画版より)
〔エドガー・ポーツネル〕
 萩尾望都の名作コミック”ポーの一族”の萩尾主人公。
 森に捨てられた少年が後にキング・ポーにより吸血鬼に。
 妹のメリーベル、親友のアラン・トワイライトもエドガーにより吸血鬼になりました。

 観てはないですが、”インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア(*6)”のルイスなんかもそのようです。
 ネタバレになりますが、トワイライトに登場するエドワードとその家族もこの系譜で、子供達は養父であるカーライル医師によって命を救われるに吸血鬼になりました。ちなみに、カーライル医師は元英国国教会の司祭の一人息子で悪魔狩りの指揮をとっていたという経歴の持ち主。吸血鬼に襲われて自身が吸血鬼になった人で、そのために”人の生血を吸わずに生きる”という道を選び、子供達もそのように育てています。

 で、自ら望んで吸血鬼になりたいかというとまあ”なっても悪くはないかな”とも思えます。やみくもに血を吸うとか人間から逃げ回るのはご勘弁ですが、生命体としはまあ究極の部類なんでしょうし(*7)。
 ベラの場合は”恋人のエドワードと永遠に一緒にいたいから”。3巻のエピローグでプロム(*8)に誘われたベラがエドワードにおねだりしています。

 エドワード:きみの人生はまだはじまったばかりなのに、
       これでもう黄昏(トワイライト)を迎えてもいいっていうつもりなのか
       なにもかも捨てる覚悟をしてるって
 ベラ   :終わりじゃない、はじまりだもの

        (中略)
 ベラ   :夢を見るのは女の子の特権だもの
 エドワード:それがきみの夢なのか。”ケダモノになる”ことが
 ベラ   :そうじゃない。
       あたしの夢は”あなたと一緒に永遠に一緒にいる”ことよ

 まあ、いいんじゃないですか

黄昏時の若人をとめられるものなどこの世にないやね(*9)

 とも言いますし。

《脚注》
(*1)神々の黄昏
 リヒャルト・ワーグナーの楽劇”ニーベルングの指環”四部作の4作目。
 主神オーディンの宮殿”ヴァルハラ”の炎上という神々の時代の終わりを暗示するエンディング。
 昔、この楽劇が見たくてレーザーディスク(古っ!)を買いました。ちなみに、パトリス・シェロー演出、ピエール・ブーレーズ指揮の通称”ダム・リング”です。
(*2)イラストこそ”萌え絵”ではないですが
 ヴィレッジブックス版のイラストを担当したのはゴツボ×リュウジ。ド級オタクな夢見る少年を主人公とした”アニコイ”を連載中(読んでないけど)。
 もし、日本語化権をヴィレッジブックスではなく、角川ホールディングス(*3)だったらきっと萌え絵になっていたことでしょう。
(*3)角川ホールディングス
 角川グループは少年系ライトノベルだけでも、角川スニーカー文庫、富士見ファンタジア文庫、MF文庫J、電撃文庫、ファミ通文庫の5つのレーベルを持ち、市場の7~8割のシェアを持っているとのこと。
 まあ、昔からメディアミックス得意な会社だったから、現在のライトノベル原作アニメの興隆もわかなんではないです。
(*4)ガール・ミーツ・ボーイ(Girl Meets Boy)
 少女が少年に出会い恋に落ちる話。逆に少年が主人公の場合は「ボーイ・ミーツ・ガール」。トワイライトの場合は初手から相思相愛なのでどっちでもいいですが。
 ライトノベル、アニメ、少女漫画の定番であります。たとえば、遅刻しそうにになって走ってると、道の曲がり角で男の子とぶつかるとか・・・
(*5)吸血鬼のご神祖様でもあります
 菊地秀行の小説”吸血鬼ハンターDシリーズ”より。ほとんど神様扱いです。
 主人公の”D”は黒衣の超絶的な美青年で、吸血鬼と人間との間に生まれた”ダンピール”にして凄腕のバンパイアハンター(吸血鬼を狩る者)。
(*6)インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア
 1994年公開のアメリカ映画。原作はアン・ライスの小説”夜明けのヴァンパイア”。監督     ニール・ジョーダン、主演 トム・クルーズ、ブラッド・ピット
 まだ観ていないんで、こんど借りてこよう。
(*7)生命体としはまあ究極の部類なんでしょうな
 吸血鬼ほど弱点がはっきりしているモンスターは少ないんでしょうが、陽にあたってもチリにならなかったり、十字架を怖がらないのも結構います(トワイライトの吸血鬼はこの部類)。だいたい、首を切り落とす心臓に杭を打つ銀の銃弾で撃つなんてやられれば吸血鬼ならずとも死にます
(*8)プロム(Prom)
 promenade(舞踏会)の略。アメリカなどの高校で開かれるフォーマルなダンスパーティーだそうです。女性との踊りといっってもフォークダンスぐらいしかしたことないおぢさんにはピンときませんが。
(*9)黄昏時の若人をとめられるものなどこの世にないやね
 ”サード・ガール”(西村しのぶ 小池書院)より。
 建築会社にお勤めの涼さんが神戸MOSAIC(神戸港ウォーターフロントのデートスポット)でカップルいっぱいの中で仕事するシーンから。
 この後、ガールフレンドの夜梨子ちゃんが別の男とデートしてるのを見つけてあせりまくるハメになります。

昭和のオタクに花束を(オタクはすでに死んでいる/花束)

 ども、昭和のオタクの生き残りのおぢさん、たいちろ~です。
 先日、”リトル・ピープルの時代(*1)”という宇野常寛による評論を読みました。”ビック・ブラザー=体制という大きな物語装置がが壊死してリトル・ピープルの時代に変遷した”とった内容なんですが、ユニークなのが元ネタとして村上春樹、仮面ライダー、ウルトラマンなどを同一の地平で語っている点
 オタク的知識をベースにこういった評論が出る時代になったんだなぁというのが正直な感想ですが、ふと思い出した本がありました。それが、今回ご紹介する”オタクはすでに死んでいる”であります。

Photo
 写真は奥様の撮影。奥様作成のウェディングブーケです
 (詳しくは奥様ブログ「フラワークラフト作家”Ann”のひとりごと」”をご覧ください)

【本】オタクはすでに死んでいる (岡田斗司夫 新潮新書)
 かつて”オタキング”と呼ばれた男、岡田斗司夫(*2)によるオタク評論。
 テレビの企画で、いまどきのオタクたちに対面した著者が覚えた奇妙な違和感。そこから導き出された結論は「オタクはすでに死んでいる」だった。小さな違和感から始まった思索の旅はやがて社会全体の病にまで辿り着く。(本書紹介文より)
 オタクによるオタクのためのオタクの死亡宣言でもあります。
【花】花束
 花を何本か束ねたもの。英語だと”a bunch of flowers”。
 ダニエル・キイスの名作SF”アルジャーノンに花束を(*3)”の原題は”Flowers for Algernon”なので”Flowers”でもいいみたいです。
 フランス語だとブーケ(bouquet)になりますが、こっちはウェディングなんかで使われるかと。

 この本の主張を簡単にまとめると”「自分の気持ち至上主義」のオタク第三世代の登場により共同幻想としてのオタク文化が成立しなくなった”といった内容でしょうか。

 これは岡田斗司夫という人と、とりまく社会環境をあわせてみないと分かりにくいかもしれません。
 岡田斗司夫は脚注にもあるように、SFファンのお祭りでもある”日本SF大会”を開催した人で、アニメオタクというよりSF畑の人でした。
 当時のSFファンの感覚として、SFが分かるための読書量が

  「一冊読んでもダメ、百冊読んでもダメ、
  千冊読んだらSFってなんだかそろそろ分かるんじゃないかな」と言われてました。

 と本書には書いてます。まあ、千冊は極端にしても(*4)、私の周りにいるSF好きは本好きな連中が多かったのは確かです。また、千冊も読むような輩はSFだけ読んでいるってことはなくて、手当たりしだいになんでも読みますみたいなけっこう広範な知識の持ち主ではありました。
 また、”スタートレック”がまだ”宇宙大作戦”といわれていた時代に(*5)、これを英語の原書で読んでるなんて先輩なんかもいましたし。
 (さすがに浪人しましたが・・・。若くして病気で亡くなられましたが、存命中は高校の先生をされてました)

 ことほどさように、この時代のSFファン(SFオタク)にとって村上春樹と仮面ライダーを同じ”作品”としてとらえることにそんなに違和感はなかったんですね。ただ、世間に対してそんな話をしないだけで
 ただ、こういった”オタクとして必要な教養”を持ったある意味ハイイインテリジェンスな”強いオタク”の世界であったものが、”機動戦士ガンダム”や”スターウォーズ”に代表される”わかりやすいSF”の登場によりSFオタク崩壊の萌芽を抱え込むことになります。

 この後、宮崎勤事件(*6)に代表されるカリカチュアライズされた”悪しきオタク像”みたいなオタク受難の時代を迎え、オタクたちは世間に対し”この作品はすごい”的なアピールをしていくことになります。

 岡田斗司夫はこのような一般人とオタクは違うという前提の第一世代(オタク貴族主義)、アカデミックな価値を含めてアピールをしていく第二世代(オタクエリート主義)という言い方をしています。

 で、”萌え~~”に代表されるのが第三世代。”私が好きかどうか”が重要であってオタク同士で共用できる思想のない、いわば”中心概念の不在”の時代になります。
 「自分の気持ち至上主義」という言い方をしてるんですが、内容を本書から引用だと

  「自分の気持ち至上主義」は、我慢や強調を強いる共同体の縛りつけを説きます
  その代わり、共同体の結びつきによってかろうじて維持されている同族意識や共同幻想、
  すなわち「文化」自体も破壊してしまうのです。

   (本書より引用。原文ママ 強調はたぶん協調)

 よって、同族意識や共同幻想をもつ”オタク”というものが死んでしまったと。

 話は戻って、”リトル・ピープルの時代”を読んで感じたのは、作者の宇野常寛(*7)という人は思考的には第一世代、行動的には第二世代の人じゃないかと。世代的には第三世代の人なんでしょうが、あんまりそんな感じがしませんでした。はっきり言って歳を見るまで昭和のオタクの人だと思ってました

 ”オタクはすでに死んでいる”は”オタク”を切り口とした秀逸な世代論でもあります。若い人というより、”古き良き昭和のオタク”に読んで欲しい本です。

 締めくくりの言葉

  うらにわの昭和のオタクのおはかに花束をそなえてやってください(*8)



《脚注》
(*1)リトル・ピープルの時代 (宇野常寛 幻冬舎)
 リトル・ピープルの時代―それは、革命ではなくハッキングすることで世界を変化させていく“拡張現実の時代”である。“虚構の時代”から“拡張現実の時代”へ。震災後の想像力はこの本からはじまる。(Amazon.comより)
 500ページを越える評論なのでうまく要約できませんが、まあ読んでみてください。けっこう面白いです。
 詳細は”ビック・ブラザーからリトル・ピープルへ。あるいは将棋型社会からオセロ型社会へ”をどうぞ。
(*2)岡田斗司夫
 1958年生まれ(私の1つ年上です)。大阪芸術大学芸術学部客員教授。
 1981年、第20回日本SF大会(DAICON3)を開催。自主製作アニメーション(”電車男 オープニングアニメ”の元ネタ)を上映
 1984年、アニメ制作会社「ガイナックス」を設立、アニメ”王立宇宙軍 オネアミスの翼”、”トップをねらえ!”などを作成。(この会社はのちに”新世紀エヴァンゲリオン”を作成することになります)
 1994年に東京大学教養学部の非常勤講師を務め「マルチメディア概論」(通称 オタク学)の講義を行う。
(*3)アルジャーノンに花束を(ダニエル・キイス 早川書房)
 知的障害で幼児程度の知能しかないチャーリイは脳手術により超人的な知性を獲得する。ところが同じ手術を受けたたハツカネズミのアルジャーノンに異変が発生し・・・
 この1冊をして”アルジャーノンテーマ”を確立した不朽の名作。
 お勧めなんですが、妊娠中の奥様に読ませたら”妊婦にはちょっと・・・”と言われました。まあ、本は相手を見て勧めましょう。
(*4)千冊は極端にしても
 仮に週2冊=年間100冊読んでも10年、週3冊=年間150冊読んでも6年8ケ月かかります。当時の激烈な受験戦争期にマジにこんだけ本を読み続けていたとしたら相当な努力家とも言えます。
(*5)”スタートレック”がまだ”宇宙大作戦”といわれていた時代に
 今でこそ”スタートレック”で通用しますが、当時はTVで放映されていた邦題の”宇宙大作戦”が一般的でした。
 日本で”スタートレック”の名前で世間に出たのは1980年公開の映画”Star Trek: The Motion Picture”から。
 さすがに最近はなくなったようですが、当時のノベライゼーションの表紙には”スタートレック”と”宇宙大作戦”が併記されていました。
(*6)宮崎勤事件
 1989年に発生した”東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件”のこと。
 犯人の宮崎勤の自宅からアニメや特撮番組のビデオ6000本近くを所有しているのが見つかり、オタクバッシングの象徴的な事件となりました。
(*7)宇野常寛
 1978年生まれなので、歳は30代前半です。
 リトル・ピープルの時代には”AKB48”や”らき☆すた”など空気系の話も出てきますが、議論の中心にはなってません。
 このあたりの話は”AKB48にバレンタイン・キッスはあるのかな?”でどうぞ。
(*8)うらにわの昭和のオタクのおはかに
 元ネタは”アルジャーノンに花束を”の最後の一節
  うらにわのアルジャーノンのおはかに花束をそなえてやってください
 です。

プレイバック、ハードボイルドの時代!(プレイバック/ストレリチア)

 ども、孤独でハードボイルドなおぢさん、たいちろ~です。
 先日、村上春樹の”世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド”(*1)の話題が出てくる本を読んでいて、そ~いえば最近ハードボイルドって読んでないな~~と気が付きました。DVDで”三つ数えろ(*2)”を見たこともあって、”ここはやっぱりマーロウものでしょう”と”プレイバック”を借りてきました。


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 写真はたいちろ~さんの撮影。近所の園芸店のストレリチアです。


【本】プレイバック (レイモンド・チャンドラー 訳:清水 俊二 早川文庫)
 弁護士から謎の美女ベティ・メイフィールドの尾行を依頼された私立探偵フィリップ・マーロウ。どうやら彼女は脅迫されているらしい。尾行を続け、彼女に接触を持ったマーロウは・・・
 正統派ハードボイルド作家、レイモンド・チャンドラーの遺作。本書を発表した翌年の1959年、極楽に言ってしまいました。
【花】ストレリチア
 和名を”極楽鳥花”といいますが、その名の通り花が空を飛ぶ鳥のような形をしています。本書の中でホテルに住むクラレンドン老人に”(神は)なぜこんなに複雑につくったのだろう”と言わしめていますが、まさにそう思います。


  男はタフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない

 この言葉を一度は耳にしたことはあるでしょうか?
 ハードボイルドを代表する名言ですが、これは角川映画”野生の証明(*3)”のキャッチフレースですが、この元ネタが今回ご紹介するチャンドラーの”プレイバック”であります。

 マーロウが守ろうとしている美女ベティ・メイフィールドとの会話

  マーロウ:彼を愛しているのかい
  ベティ :あなたを愛しているんだと思っていたわ
  マーロウ:あれは夜だけのことさ
        (中略)
  ベティ :あなたのようにしっかりした男がどうしてそんなにやさしくなれるの?
  マーロウ:しっかりしていなかったら、生きていられない
        やさしくなれなかったら、生きている資格がない
                          (清水俊二 訳)

 原文は

  If I wasn't hard(*4),
  I wouldn't be alive.
  If I couldn't ever be gentle,
  I wouldn't deserve to be alive

 男なら、一生に一度ぐらいは言ってみたい名セリフです。
 それに、マーロウって以外にモテてるんですね。ハードボイルドの私立探偵なんて頑固で、憎まれ口ばかりたたいていて女性を怒らせ、そのくせ損な役回りばかり引き受けているようなイメーイがありますが、でもここ一番で頼りになる
 最近は恋愛に縁がないわけではないのに積極的でもない”草食系”とか、恋愛に積極的で異性にアプローチかけたおす”肉食系”とかが流行ってますが、ハードボイルドのような”自分の矜持を守るためなら、飢えて死ぬことも辞さない”みたいな第三の男(*5)が評価されないかなぁ。

 そういえば最近、”相棒(*6)”を見てましたら、チャンドラー探偵社の”マーロウ矢木ってのが出てました。演じているのは高橋克実。一見、冴えない中年男ですがなかなかどうして杉下右京とタメを張るような喰えないおっさん。ゲストキャラで終わらせるには濃すぎる人なので、ぜひスピンオフで番組を作って欲しいものです、脚本は原 尞あたりで(*7)。

 他にも、チャンドラーを愛する左 翔太郎と、フィリップ・マーロウにちなんで名付けられたられたフィリップ君の登場する”仮面ライダーW(*8)”とか、軟弱な男ばっかし増えてる世の中で、一本筋の通ったハードボイルドな男たちが時代に求められてるんじゃないのかな
 ただし、”いざという時信頼できる”って条件を満たしてないと、単なる”痛い人”で終わりそうだけど。

 ”プレイバック”は”長いお別れ”や”さらば愛しき女よ”(*9)ほどメジャーじゃないけど面白い小説。それに、クラレンドン老人にストレリチアを引き合いに出して神を語らせたり、”長いお別れ”に登場したリンダとの復縁を示唆するような記述があったりとストーリーに関係のないエピソードがあるなど(あとがきより)、作品自体がミステリアスなミステリーです。
 ぜひご一読のほどを。

《脚注》
(*1)村上春樹の”世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド”
 1985年に第21回谷崎潤一郎賞を受賞した村上春樹の4作目の長編小説。
 まだ読んでません。
(*2)三つ数えろ(原題 The Big Sleep)
 レイモンド・チャンドラーの”大いなる眠り”を1946年(終戦の翌年!)にハワード・ホークスが映画化したサスペンス映画。
 マーロウを演じたのは”ボギー”こと往年の名優ハンフリー・ボガート。この人はダシール・ハメットの”マルタの鷹”の映画で、マーロウと並ぶハードボイルド探偵”サム・スペード”を演じていますが、とにかくカッコイイです!
(*3)野生の証明
 森村誠一の同名小説を原作とする日本映画。1978年公開。
 主人公の元自衛隊特殊部隊員”味沢岳史”を演じたのは名優高倉健。またヒロインの長井頼子を演じた薬師丸ひろ子は本映画がデビュー作。最近でこそお母さん役なんかで出てますが、ホントに可愛い子だったんですよ、この当時は。
(*4)hard
 まさにハードボイルド(hardboiled)の”hard”ですが、辞書を引くと”hard”には”鍛えられた、たくましい、頑健な、非情な、冷酷な”などの意味があります。
 これを”タフ”と訳した?のは小説家の生島治郎とのこと。
(*5)第三の男
 ハードボイルドではないですが、これもミステリー映画の題名。
 オーソン・ウェルズが演じたハリー・ライムや、アントン・カラスによるテーマ曲(エビスビールのCM曲と言った方がわかりやすいかも)が有名。
(*6)相棒
 テレビ朝日系で放送されている警察TVドラマ。
 主人公の杉下右京(演じるのは水谷豊)は名探偵ばりの推理力の持ち主ながら、正当に評価されず手柄は横取りされるという状況でも、警察官としての矜持を貫く強い信念を持ち続けるという意味ではこの人もハードボイルド的とも言えます。
(*7)原 尞(はらりょう)あたりで
 日本を代表するハードボイルド作家。代表作は私立探偵沢崎を主人公とした”そして夜は甦る”、”私が殺した少女”(第102回直木賞受賞)など。
 掛け値なしに面白いんですが、極端に寡作。沢崎シリーズの続き、早く読みたいんですけど・・・
(*8)仮面ライダーW
 2009~10年にテレビ朝日系列で放映された平成仮面ライダーシリーズ第11作目。
 決め台詞の”お前の罪を数えろ”は前出の”三つ数えろ”のパロディだと思われますが、見ているお子様たちや奥様方に元ネタが分かるとは思えません。
 ミステリーネタへのオマージュが多くてけっこうハマりました。
(*9)”長いお別れ”や”さらば愛しき女よ”
 両作品とも”ロング・グッドバイ”、”さよなら、愛しい人”の名前で村上春樹訳で発売中。名作です。

ガーデニングか畑仕事か? それが問題だ(プチ家庭菜園のすすめ/オクラ)

 ども、孤高のガーデナーのおぢさん、たいちろ~です。
 先日、クラブのOB会(*1)に行ったところ、プロの漫画家で中村純子さんという方がいらっしゃってました。なんでも”プチ家庭菜園のすすめ”という本を出されたということ。単身赴任寮の庭を勝手に耕してる私と、家の庭でガーデニングをしているというO氏で話が盛り上がりました。

  中村さん:プチトマトを植えたり、キュウリを作ったり、いいですよね~~
  私   :うちはオクラやみょうがも植えてます。バジルも沢山できたので、
       ジェノベーゼソース(*2)にして会社で配ってます!
  O氏  :俺んとこは、薔薇を植えていて1年中咲かせるのに挑戦してます
  中村さん&私:・・・・・

 まあ、何を植えるかなんて個人の自由なんですが、植えるモノによって趣味というか人格が反映されるんでしょうかねぇ。


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 写真はたいちろ~さんの撮影。自宅のオクラの花と実です。


【本】プチ家庭菜園のすすめ (中村純子 ディスカヴァー・トゥエンティワン)
 「野菜の値段が高いので、自分でつくってみる」という単純な動機で家庭菜園を始めたマンガ家アシスタントにして、ひとり暮らしという中村さんのコミックエッセイ。
 ご本人は”だらしない性格”と言ってますが、水やりに草むしり、適度な時期の収穫とホントにずぼらな人では家庭菜園はできません、たぶん。
【花】オクラ
 アオイ科トロロアオイ属の植物、または食用とするその果実。アオイ科とあるように漢字では”秋葵”と書きます。
 スーパーでネットに入って売ってる実しか見たことない人が多いかもしれませんが、野菜とは思えないような、薄黄色に中央が赤色の大きく綺麗な花が咲きます


 基本的には”植物を育てる”という点では同じでも、趣味に”ガーデニング”と見栄をはるか、素直に”畑仕事”と答えるかはビミョ~~。
 イメージ的はこんな違いかも。

        ガーデニング <----> 家庭菜園 <-----> 畑仕事
植える植物  花(特に薔薇)       トマト、きゅうり         大根、サツマイモ
          ハーブ類(特にミント)   (主に果菜)            (主に根菜類)
UVケア    早朝にするので日焼け  麦わら帽子、タオル      畑仕事してれば
         する時間にはしない    努力はするけど・・        日焼けは当たり前
道具      じょうろ、剪定ハサミ    大型スコップ          くわ、鎌
キャラクター ターシャ・テューダー     (加持リョウジ?)      カールのおじさん

                       (*3)                  (*4)                     (*5)

 まあ、あくまで私のイメージですけど。
 中には表はガーデナーで裏では家庭菜園”かしましハウス”のひとみさん(*6)とか、イメージと裏腹に家庭菜園検定(*7)3級・2級合格のウエンツ瑛士とかもいますけど・・・
 ガーデニングと畑仕事のキャラってわりとすっと思いついたんですが、家庭菜園のキャラって以外と微妙。加持リョウジにしても趣味とはいえけっこう広い畑を借りているようで、加持さんがやるから”家庭菜園”で、私がやったら”畑仕事”なんだろうなぁ。
 中村さんがメインキャラになってくれると先輩としても嬉しいんですが。

 畑仕事かどうかはともかく、ガーデニングと家庭菜園の差もナニを植えるかでイメージが違ってきます。ボーダーラインがあるとしたらベリー類(*8)。中村さんちはいちご(ストロベリー)が豊作、私んちはラズベリーが山ほどとれて大量のジャムになりました。
 ベリー類はケーキやムース、ジャムといったスイーツ系に使われるから女子力高そうですが、いちごは腰をかがめないと摘めないし、ラズベリーはトゲトゲの枝を避けながらでないと採れないし、たくさん実がなるとそれなりに収穫は大変です。楽しくはありますけどね。

 なにはともあれ、植物を育てるに限らず何事もやってみなければわからないってことはあります。たとえばこの本にあるオクラなんかもそう。写真のように綺麗な花が咲きますしが、ちょっとほっておくとあっという間に大きくなります(中村さんは”バナナサイズ”と書いてます)。で、大きくなったオクラは硬くてとてもじゃないけど食べられるシロモンじゃない。茹でればなんとかなるかと思ってやってみましたが、やっぱりNG。
 すぐでかくなるというとキュウリなんかもそうで、朝方ちょうど良い大きさと思ってても収穫を忘れると、翌朝にはへちまみたいなサイズになってます。

 まあ、植物を育てること自体は日当たりなどの適当な場所さえあれば、水やりと肥料を気にするぐらいでそんなに難しいモンではないです。それに実が生ったら生ったで、生らなかったら生らなかったで、それなりに楽しいですし。たくさん生るにこしたことはないですが・・・

 ”プチ家庭菜園のすすめ”は家庭菜園をまず始めてみましょうという人にはお勧めの本。ベストセラーになれば先輩としては嬉しいです!

《脚注》
(*1)クラブのOB会
 ワンダーフォーゲルという山登りのクラブです。
 漫画研究会ではありません。念のため。
(*2)ジェノベーゼソース
 オリーブオイル、バジルの葉、ニンニク、松の実で作ったイタリアンなソース。
 だいたい、バジルなんて山ほどできても一人で食べる分はたかがしれているので、毎年作った分を会社のお嬢様方におすそ分けしています。
(*3)ターシャ・テューダー
 アメリカの絵本画家・挿絵画家・園芸家(1915年~2008年)。
 暖炉とロッキングチェアー、薪オーブンのある家に住んで、広大な庭で花々や果実を育ててジャムやジェリーを作ってるというガーデナーの憧れの人
 私んちの奥様もけっこうはまっています。
(*4)加持リョウジ
 ”新世紀エヴァンゲリオン(ガイナックス)”に登場するNERV特殊監査部所属のスパイ。エヴァのパイロット碇シンジ君を缶コーヒー1本を”給料”と称してスイカ畑の草むしりをさせてました。
  何かを作る、何かを育てるっていうのはいいぞ。
  いろんなことが見えるし、分かってくる。楽しいこととかな。

 加持さんのセリフですが、家庭菜園家らしい一言です。
(*5)カールのおじさん
 明治のお菓子”カール”のCMに登場する名物キャラクター。初登場は1974年とすでに35年を超えて放送されています。
 詳しくはカールのHPをどうぞ。
(*6)”かしましハウス”のひとみさん
 秋月りすの4コマ漫画”かしましハウス”に登場する4姉妹の長女。
 職業がジュニア小説家だけあって、時々”赤毛のアン”の世界にトリップします。
(*7)家庭菜園検定
 社団法人 家の光協会が主催者する野菜づくりの上達を促進する検定試験
 2011年の合格率は1級 6.3%、2級 59.8%、3級88.7%。
 はっきり言って、2011年にウエンツ瑛士の合格のニュースがでるまでそんな検定があることすら知りませんでした。
(*8)ベリー類
 多肉質の小果実の総称。イチゴ(ストロベリー)、ブルーベリー、ラズベリー(フランボワーズ)など。
 植物学的な分類を指す名称ではないそうで、ストロベリー、ラズベリーはバラ科、ブルーベリーはツツジ科です。

AKB48にバレンタイン・キッスはあるのかな?(リトル・ピープルの時代/バレンタイン・キッス/かすみ草)

 ども、甘いもの大好きなおぢさん、たいちろ~です。
 先日、近所のスーパーマーケットに行くと”バレンタイン・キッス”の曲が流れておりました。”今年は誰かチョコレートくれるかな?”などと50歳過ぎのおぢさんが甘い夢を見るわけもなく、”季節モノの曲を一発当てると強いなぁ(*1)”と身も蓋もない感想をもちつつ売り場を離れたのでありました。


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 写真はたいちろ~さんの撮影。近所のかすみ草です。


【本】リトル・ピープルの時代 (宇野常寛 幻冬舎)
 リトル・ピープルの時代―それは、革命ではなくハッキングすることで世界を変化させていく“拡張現実の時代”である。“虚構の時代”から“拡張現実の時代”へ。震災後の想像力はこの本からはじまる。(Amazon.comより)
【CD】バレンタイン・キッス(国生さゆり 作詞・作曲 秋元康(*2)、瀬井広明)
 1986年2月1日に国生さゆりwithおニャン子クラブがリリースしたシングル。
 そうか、もう四半世紀前の曲なんだ・・・
 ちなみに、曲名は”バレンタインデー・キッス”ではなく”バレンタイン・キッス”が正解。2011年にAKBのユニット”渡り廊下走り隊7”がカバーしました。
【花】かすみ草
 白又は淡いピンクの小さく可愛い花がたくさん咲くナデシコ科の属の1つ。
 フラワーアレンジメントではメインを張るというよりも、主役の花を包み込むような感じでよく使われています。
 花言葉は”夢見心地、清らかな心、魅力、無邪気”など

 で、今回のお題である”AKB48にバレンタイン・キッスはあるのか?”ですが、なんでこんな話をするかって言うと、おニャン子クラブの正当後継者であるAKBのキャラクター戦略って話が先日読んだ”リトル・ピープルの時代”に出てたんですね。タイトルは

AKB48 キャラクター消費の永久機関

 本書曰く、AKB48における秋元康のプロデュース戦略として
  (1)テレビ媒体との距離感
  (2)キャラクター(を支えるリアリティ)をファンコミュニティから
    自動生成させるシステム
 をあげています。

 (1)はわかるとして、(2)はどういうことかというと、SKE48の松井玲奈(*3)の例をひいてこんな説明をしています。

 ①SKEのかすみ草(プロデュース側の与えたキャッチフレーズ
  →②外見に反し、辛い食べ物に対して強い耐性を示す(素の本人
   →③強い精神力、清純な見た目に反した過激な内面(ファンコミュニティ
    →④暴力それ自体を快楽にする性格破綻者(ドラマの設定

 ここでユニークなのが、同人誌などで行われている二次創作(*4)をフィードバックさせてプロデュース側がやっている点(④の部分)。従来であれば、①か②あたりで、せいぜいファンクラブか仲間内で③をやっていたものが、Web、ブログ、ツイッターなどによりキャラクターの消費者側からの情報発信が容易化、広域化して③が拡大してるってのがネットワーク社会的。さらにプロデュース側がそれを取り込んでさらに発信する”系”の創造ってのが秋元康の先進性なんでしょうか。

 もうひとつ上げているのが、AKB48のキャラクターが”同性間の理想化されたコミュニティのイメージ=(空気系)”の代表例としてあげていること。本書で空気系の作品として挙げている”あずまんが大王”、”らき☆すた”、”けいおん!”(*5)ってけっこう流行った作品ですが、みんな主人公が女の子のだけのグループ。実際にいればけっこうモテそうな美少女たちなのに、誰も彼氏がいないんですね。”あずまんが大王”では、クリスマスで遊ぶぞ~っと浮かれる友人に”みんな彼氏おれへんのー?”という自虐的な天然ボケをかましていますぐらい。

 本書でもこのような”特定の誰かと特に仲がいい、というアピールを行う行為=百合営業(*6)”がインターネットのファンコミュニティの反応から取り入れられているというという指摘をしていますが、確かにそんな感じしますね”ヘビーローテーション”のPV見てると(*7)。

 こういった文脈で見ていくと、AKB48の過剰なまでの”恋愛禁止令”というのが理解できます。男性と一緒に写った写真がインターネット上に流出し、活動辞退となった平嶋夏海と米沢瑠美(*8)なんかは、”キャラクター戦略/空気系からの逸脱”という点ではそうなっちゃうんでしょうか。AKB48に入っていなければ間違いなく学校ではモテモテだったであろう10代、20代の美少女に”恋愛禁止”を強いることの善悪は別にして、ビジネスモデルとしてはそうせざるを得ないのかなぁとビジネスマンとしてのおぢさんは思ってしまうのであります。

 結論としては、AKB48からのバレンタイン・キッスなんて、2次創作物として脳内で想像してるのがいいんかもね。リア充目指して、実際にチョコレート貰ったほうが良い気がしないでもないですが・・・

 まあ、わかったようなこと書いてますが、写真で見ても”松井玲奈”と”ツインテールしてない渡辺麻友”の違いがよくわかりません。申し訳ない。

《脚注》
(*1)季節モノの曲を一発当てると強いなぁ
 春になるとキャンディーズの”春一番”、夏の終わりには井上陽水の”少年時代”、クリスマスには山下達郎”クリスマス・イブ”が流れるようなモンです。
 ちなみに春一番は1976年、少年時代は1990年、クリスマス・イブは1983年のリリース。累計するといくら印税が入ったんだろう?!
(*2)秋元 康
 調べてみるとこの人は1956年生まれの55歳(2012年現在)と私より年上。普通だったら、まず娘がいっしょに遊んでくれるはずのない年代なんだけどねぇ
 奥様は元おニャン子クラブの高井麻巳子(現 秋元 麻巳子)。AKB48の恋愛禁止令に対し”自分だっておニャン子クラブのメンバーと結婚したくせに”という非難があるようですが、結婚したのはおニャン子クラブ卒業後。おニャン子クラブ時代に付き合っていたかどうかなんて知ったこっちゃないですが。
(*3)松井玲奈
 1991年生まれのSKE48メンバー。
 デビューは2008年の”SKE48のオープニングメンバーオーディション”だそうですが、これって応募総数2,670名、最終合格者22名と合格率0.82%の狭き門。偏差値にすると約74で、東京大学に匹敵する難易度です。
 もっとも、検索するまでどの子か知りませんでしたが・・・
(*4)同人誌などで行われている二次創作
 お気に入りのキャラクターに○○させたり、××させたりする作品
 まあ、目くじらたてる大人も多いんでしょうが、今のおぢさんだって”悩ましのアルテイシア”(1980年の雑誌”OUT”に掲載されたガンダムのヒロイン、セイラさん=アルテイシアのヌードピンナップイラスト)みたいなことやってるんだから、人のことは言えません。
 ちなみに、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)ではパロディなどによる著作権侵害の”非親告罪化”によりパロディや同人誌が摘発されないかが懸念されています。
(*5)”あずまんが大王”、”らき☆すた”、”けいおん!”
 あずまんが大王:あずまきよひこの4コマ漫画。1999~2002年
 らき☆すた  :美水かがみの4コマ漫画。2004年~(掲載中)
 けいおん!  :かきふらいの4コマ漫画。2007~10年(続編掲載中)
  ちなみに3作品ともアニメ化されました
(*6)百合営業
 ホモが”薔薇”で、レズが”百合”の隠語。”セーラー服 百合族”のヒットで一般用語化。会社の女性に”セーラー服 百合族が”という話をしたら”知りません”と言われました。まあ、1982年の日活ロマンポルノだしなぁ・・
(*7)”ヘビーローテーション”のPV見てると
 まあ、パジャマパーティのちょ~ヘビーなモンかと。
 もうちょっとなんか着ないと風邪ひくぞ~
(*8)米沢瑠美
 奇しくもこの人は”渡り廊下走り隊7”でバレンンタイン・キッス”をカバーしてました。

ビック・ブラザーからリトル・ピープルへ。あるいは将棋型社会からオセロ型社会へ(リトル・ピープルの時代/ジャスミン)

 ども、非モテのおぢさん、たいちろ~です。
 先日、会社の女性と”モテない男ってどんな人”という話になりました。彼女いわく”人間の器が小さい”とのこと。なかなかにゾウモツをえぐるような厳しいご意見であります。まあ”小人閑居して不善をなす”というぐらいで、小さき人ってのはあんまし良い意味ではないですが、リトル・ピープルと書くとちょっと意味が違ってくるようです。
 ということで、今回ご紹介するのは、宇野常寛による評論”リトル・ピープルの時代”であります。


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 写真はたいちろ~さんの撮影。寮の庭に咲くジャスミンです。


【本】リトル・ピープルの時代 (宇野常寛 幻冬舎)
 リトル・ピープルの時代―それは、革命ではなくハッキングすることで世界を変化させていく“拡張現実の時代”である。“虚構の時代”から“拡張現実の時代”へ。震災後の想像力はこの本からはじまる。(Amazon.comより)
 村上春樹仮面ライダーウルトラマンなどを題材にした異色の評論。
 なぜ、表紙が初代仮面ライダーなのかは、中を読まないとわかりません。
【花】ジャスミン
 モクセイ科ソケイ属の植物の総称。白く小さい花に似合わず官能的な香りがします。
 花言葉は”愛嬌、愛らしさ、温和、無邪気、あなたについていきます”など。
 2010~11にかけてチュニジアで起こった革命を”ジャスミン革命”と呼ぶのはジャスミンがチュニジアを代表する花であることから。


 先に言っときますが、この本、確かに面白いんですが村上春樹や仮面ライダー、ウルトラマンが何かを知らないと話の背景がわかりにくいかも。私自身、村上春樹をあんまり読んだことなくて、ベストセラーの”1Q84”も未読です(*2)。第1章は”1Q84”の話が中心なので、ちょっと話かりずらいとこもありましたが、評論自体は興味深い内容です。

 さて、”リトル・ピープル”は何かというと、これって”ビック・ブラザー”に対比するもんなんですね。”ビック・ブラザー”ってのは、イギリスの作家”ジョージ・オーウェル”の小説”1984”の小説に出てくる独裁者の名前
 テレスクリーン(テレビと監視カメラが一緒になったようなもの)などで、当局の完全な監視下に置かれているディストピアで、ポスターに描かれているスローガンは「偉大な兄弟があなたを見守っている(Big Brother is watching you)
 ”リトル・ピープルの時代”では”ビック・ブラザー”は”国民国家を規定する物語の語り手として設定された疑似人格”、”体制という大きな物語装置”など多義的に使われていますが、本論の趣旨は”ビック・ブラザーが壊死”して”リトル・ピープルの時代”になったということ。
 ”リトル・ピープル”は元々は村上春樹の造語で”1Q84”に登場するカルト教団が崇める超自然的な存在。国家の比喩なならざる疑似人格、小さな父といったこっちも多義的にでてきます。
 500ページを越える評論を簡単に表すのはむずかしいんですが、本書に出てくる比較表のほうがイメージできるかも

        〔ビック・ブラザーの時代〕  〔リトル・ピープルの時代〕
 年代      ~1968年         1995/2001~
 国際秩序   冷戦             グローバリゼーション
 世界構造   国家権力           (貨幣と情報の)ネットワーク
 戦争      国民国家間の総力戦   テロの連鎖
 悪のイメージ 権力への意思       システム化の反作用
          (大きな物語の強制)    (小さな物語間の衝突)

 私見ですが、世界の独裁政権崩壊のとっかかりとなったジャスミン革命なんか、ビック・ブラザー的な長期独裁政権のベン=アリー大統領を、FacebookやTwitterなどのネットメディアを使った”リトル・ピープル的なもの”が打倒したなんて感じでしょうか。

 確かに戦争や冷戦構造の時代にはアメリカとソ連の対立があって、大統領(ルーズベルト、ケネディ、ニクソンなど(*3))、書記長(スターリン、ブレジネフ、ゴルバチョフなど(*4))みたいなある意味その国家を代表する人格としての顔があったように思います。
 日本でも、吉田茂、佐藤栄作、田中角栄なんて(*5)国家政策と結びついた総理大臣もいたのにせいぜい小泉純一郎(*6)以降、そんな感じの人がいないような気がします。

 こうやって見ると、かつては”大いなるもの”=”ビック・ブラザー”同士が対決する将棋的な社会だったのが、だんだん”小さきもの”どうしがざわざわやってるオセロ型の社会になってきている気が。それぞれ役割、機能や書いてある文字や違う将棋の駒ではなくて、全部が同じ駒で差がないオセロ。それも、隣の状況によって黒くなったり白くなったりするような。橋下徹をめぐる大阪市長選前後のバッシングと媚の売り方をみてると、てなことを感じてしまいます(*7)。

 本書は、ビック・ブラザーの代表にウルトラマンを、リトル・ピープルの代表に(平成)仮面ライダーをあげるなど、ヲタク趣味っぽく聞こえますが、中身はけっこうマジ。そういった意味では現代的な評論ではあります。

《脚注》
(*1)小人閑居して不善をなす
 ”つまらない人間が暇でいると、ろくなことをしない”という意味。
 ”小人(しょうじん)”は有徳者・人格者の意味である”大人(たいじん)”対する言葉で、徳のない品性の卑しい人のことだそうです。
(*2)ベストセラーの”1Q84”も未読です
 奥様から”意外とベストセラーを読まない”と言われますが、理由は簡単で本は図書館で借りる派だから。”1Q84”なんかは予約しても半年以上待ちです。まともに新刊書を買っていたらあっという間に家計が破綻しますので・・・
(*3)ルーズベルト、ケネディ、ニクソンなど
 フランクリン・ルーズベルト:第32代大統領。1933~1945年在位
 ジョン・F・ケネディ:第35代大統領。1961~1963年在位
 リチャード・ニクソン:第35代大統領。1969~1974年在位
(*4)スターリン、ブレジネフ、ゴルバチョフなど
 ヨシフ・スターリン:初代書記長。1922~1953年在位
 レオニード・ブレジネフ:第3代書記長。1964~1982年在位
 ミハイル・ゴルバチョフ:第6代書記長。1985~1991年在位
(*5)吉田茂、佐藤栄作、田中角栄なんて
 吉田茂:第45、48~51代総理大臣。1946~47年、48年~54年在位
 佐藤栄作:第61~63代総理大臣。1964~72年在位
 田中角栄:第64~65代総理大臣。1972~74年在位
(*6)小泉純一郎
 第87~89代総理大臣。2001~05年在位
 こうやって並べてみると、長期政権の人が多いですねぇ。小泉純一郎の後を継いだ安部晋三からこっち、ほとんど1年持つか持たないかだもんなぁ
(*7)橋下徹をめぐる大阪市長選前後のバッシングと媚の売り方~
 第52代大阪府知事(2008~11年)、第19代大阪市長(2011年~)
 大阪出身の私が言うのもなんですが、たかだか一介の首長に対する政界、マスコミあげてのバッシングと当選後のあのすり寄り方を見てると、できの悪いファルスを見せられているような気分になります。

安静といっても、元々が中途半端な死体みたいなもんですから(人間臨終図鑑/リンドウ)

 ども、相変わらず風邪ぎみのおぢさん、たいちろ~です。
 風邪を治すには、薬を飲んで栄養を取って、あとは安静に寝てるだけ。まあすることがないわけでたまっている本を読んでいるわけです。
 で、今回ご紹介するのは、風邪ひく前に図書館から借りてきた本”人間臨終図鑑”であります。


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 写真はたいちろ~さんの撮影。近所のリンドウです。


【本】人間臨終図鑑 (山田風太郎 徳間文庫)
 乱世の英雄から、作家、芸術家などなど、923人の臨終の様子を集めた本
 山田風太郎というと、”魔界転生(*1)”を始め妖しげな忍術モノを書く作家だと思ってましたが、こんな博学な本も書いてたんだなぁ。
 ちなみにご本人は2001年7月28日に肺炎のため死去。79歳。
 この日は師である江戸川乱歩(*2)の命日でもあるそうです。
【花】リンドウ(竜胆)
 リンドウ科リンドウ属の多年生植物。釣り鐘型のきれいな紫色の花が上向きに咲きます。
 花言葉は”悲しみにくれているあなたを愛する”、”淋しい愛情”など。


 本の構成は、享年順に並んでいますが、やっぱり気になるのは自分の歳に死んだ人。私は今52歳ですが、この歳で死んだのは

  鎌倉幕府を開いた源頼朝(1147~1199)
  甲斐の虎こと”影武者(*3)”の武田信玄(1521~1573)
  イギリス文学を代表する作家、シェイクスピア(1564~1616)
  フランスの皇帝となった英雄ナポレオン(1769~1821)
  子供向け偉人伝の筆頭、細菌学者の野口英世(1876~1928)
  ”時間ですよ(*4)”などの脚本を手掛けた小説家の向田邦子(1929~1981)

 などなど。

 まあ、人間生きてなにをするか、死んで何を残すかと言いますが、偉人といえ死にざまが必ずしも幸せだったとは言い難いようです。失意の中孤独に死んだ人とか、死刑、切腹、自殺、不治の病に事故死とか。
 上記の5人だと、源頼朝は落馬の傷がもとで、武田信玄は肺結核、シェイクスピアは不明、ナポレオンは獄中で病死、野口英世はアフリカで黄熱病で病死、向田邦子は飛行機事故で墜落死。
 事故死した向田邦子はともかく、幸福な晩年を過ごしたのはシェイクスピアぐらい(*5)(それでも奥様との不仲説はあるようですが)

 まあ、偉大な人であっても幸せの死を迎えるのはことほど左様に難しいことのようですが、本書の中で”幸福な死をとげた稀有な人間のベスト・テンの一人”に上げているのが石田吉蔵(1895~1936。享年 41歳)。愛人のお加世に首を絞められながらエッチしていてそのまま死んでしまった御仁。いわゆる腹上死というやつです。
 山田風太郎曰く

  石田吉蔵は最後まで、絞められるのも例の遊びだと思っていたかも知れない
  しかしまた、本当に殺されてもいいと思っていたかも知れない
  いずれにせよ、おそらく死の恐怖も苦悶もない、極限までの燃焼と
  異次元の忘我と恍惚の中に、彼は息をひきとったのであろう

 まあ凡百の腹上死と違うのは、お加世さんが陰茎と睾丸を”奥さんに触らせたくない、XXがあれば石田と一緒にいるような気がして(原文ママ)”という理由で切り取って持ち去ったこと。お加世さんの本名は阿部定、いわゆる”阿部定事件”です。
 (ちなみに、お加世さんは行方不明で生死不明とのこと)

 そういや、ラサール石井(*6)が一般女性との再婚の理由に”孤独死が怖かった”ってのを上げていますが、悲しみにくれている私を愛してくれる人がいるってのは何にもまして幸せなことなのかもしれません。

 まあ、”人間臨終図鑑”は面白いっちゃ面白いんですが、病気の時に読む本ではないわなぁ。安静なんてごろごろしながら本を読んでるだけの中途半端な死体みたいなモンですし。

  人間は中途半端な死体として生まれてきて
  一生かかって完全な死体になるのだ

   寺山修司(詩人、劇作家。1935~1983。享年48歳)

《脚注》
(*1)魔界転生
 由比正雪は森宗意軒の編み出した忍法「魔界転生」によって、天草四郎時貞ら死者を復活させ、江戸幕府の転覆を謀る・・・
 といっても私が見たのは1981年の角川映画版と、石川賢版のコミックのほうです(両方とも原作とはストーリーが異なります)
 角川映画版でなかなかにインパクトのある天草四郎を演じたのはジュリーこと沢田研二。まだ、ご存命。
 ”ゲッターロボ”や”魔獣戦線”の作者でもある石川賢は2006年11月15日に急性心不全で死去。享年58歳。独特のストーリー展開で好きな漫画家だったんですが、残念です。
(*2)江戸川 乱歩
 江戸川乱歩賞に名を残す日本の推理小説の巨匠。私の若いころの時代は猟奇趣味の乱歩派、ホラー系の横溝正史派、社会派ミステリーの松本清張派に分かれてましたが、個人的には乱歩が好みでした。
 ちなみに乱歩は1965年に脳出血のため70歳で、横溝は1981年結腸ガンのため満79歳で、清張は1992年に脳出血のため82歳で死去しました。
(*3)影武者
 武田信玄の影武者として生きる運命を背負わされた泥棒を描いたが黒澤明監督の映画。カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞。
 黒澤明監督は1998年脳卒中により88歳で死去。
(*4)時間ですよ
 下町の銭湯を舞台にした1970年代を代表するTBSのテレビドラマ。この作品の脚本には後に”渡る世間は鬼ばかり”も手掛ける橋田壽賀子も参加しています。
 屋根の上で天地真理や、浅田美代子とギーターを弾きながらデュエットしていた堺正章、脚本の橋田壽賀子はまだご存命です。
(*5)幸福な晩年を過ごしたのはシェイクスピアぐらい
 山田風太郎は”彼は死の三年前、投資のための邸宅などを買っている。こういう大文豪もあるのである”とわざわざ書いてますが、それぐらい例外なんでしょうね。
(*6)ラサール石井
 ”コント赤信号”のメンバーの一人であるコメディアン。56歳。
 2012年1月に再婚を発表。お相手は前妻との間に生まれた2人の娘よりも若い24歳の一般女性と32歳差の”年の差婚”
 そんなおぢさんを愛してくれる人がいるってのは何にもまして幸せなことなのかもしれません。

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