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2011年9月25日 - 2011年10月1日

オカエリナサイ、はやぶさ!(はやぶさ君の冒険日誌/はやぶさ展)

 ども、無限に広がる大宇宙にあこがれるおぢさん、たいちろ~です。
 先日、”青い星まで飛んでいけ(*1)”というSF短編集を読んでいたところ、解説の坂村健(*2)が、小惑星探査機「はやぶさたん」萌え~みたいな話を書いていました。
 まあ、擬人化なんでもありの昨今ですが(*3)、今回の場合は本家本元が出している本がありまして、ということで、今回ご紹介するのは、JAXAのスタッフが出している絵本”はやぶさ君の冒険日誌”の紹介であります。

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 写真はたいちろ~さんの撮影。東京国際フォーラムの”はやぶさ展”から。
 上がはやぶさの模型、下が回収カプセル(レプリカ)です。

【本】はやぶさ君の冒険日誌(著 小野瀬 直美、監修 寺薗 淳也、毎日新聞社)
 ”はやぶさ”を運営していたJAXAの現場スタッフが、ミッションをより身近に感じてもらおうと、”はやぶさ”にかわいい顔を描いたチラシを作ったのが発端とか。
 その後、手作りパンフレット『はやぶさ君の冒険日誌』の主人公になり、Web”今週のはやぶさ君”に載ったりと人気を博して、一冊にまとめまったのがこの本。
【旅行】はやぶさ展
 はやぶさの帰還に合わせて全国で”はやぶさ展”が開催されましたが、私の行ったのは東京国際フォーラムの”はやぶさ展”(2011年6月13日~10月10日)。
 上記の回収カプセルを触らせてもらいましたが、けっこう重たいものでした。

 さて”はやぶさ君の冒険日誌”ですが、主人公は”はやぶさたん”ではなく、”はやぶさ君”。四角いボディーに顔をくっつけたトーマス系(*4)のキャラクターです(女の子を期待されたかたは残念でした)。
 でも、カラーマジックで描いたような、いかにも素人っぽい絵がけっこうかわいいんですね。それに、元気な男の子っぽいキャラクターになってます。

  はやぶさ君の絵に、泣き顔ってないんですよ。
  基本的に、あきらめない、明るい、前向きなやつなので。

   ※「はやぶさ」広報チーム特別座談会 小野瀬 直美のコメント

 この本とあわせて”「はやぶさ」からの贈り物”(*5)も読んだんですが、プロジェクト自体は、満身創痍というか、危機の連続というかかなり悲壮感ただよう場面も多々あったとのこと。だからこそ、こういう明るいキャラクターはずいぶん励みになったんじゃないかなぁ。

 この本は”絵本”という扱いになっていて、漢字にはふりがなもついているので、小学校高学年ぐらいなら、充分読めそうです。ただ、著者の小野瀬 直美さん、イラスト担当の奥平 恭子さんはともに理系の研究者ということで、内容についての科学的な説明はおとなが読んでも充分に参考になります
 たとえば、はやぶさと地球まで電波が往復するのに何分かかるとか、通信速度が一番遅い時に8bps(*6)しかないとかいった記述がよく出てきます。上記の”「はやぶさ」からの贈り物”で、トラブル発生の時に”ビーコン診断”という、電波のOn,OffでYes,Noを判断するというのが出てきますが、これって、”通信できる情報量が少ない”ってのがわからないとなぜこんなことをするのかわかんないんですね。両方の本を読んで初めてわかりました。

 2冊の”はやぶさ”の本を読んでみて思ったのは、”はやぶさ”のミッションって、世間がブームになっているようなはなばなしい成功っていうより、ぼろぼろになりながらもぎりぎり成功させたっていう感じなんだなぁということ。
 ある意味”アポロ11号の月面着陸”っていうより”アポロ13号の帰還(*7)”に近いのかも。どちらにしても、JAXAの方には”おめでとう!”と言いたいです

 2011年10月1日から映画”はやぶさ/HAYABUSA”も公開。こっちも見に行こうかな。

PS.
 余談ですが、調べている時に”「はやぶさ」~はじめてのおつかい~”というのをYouTubeで見つけました。
 その画像のエンディングで燃え尽きるはやぶさ(画像では初音ミク)が地球に吸い込まれるように落下するシーンが”トップをねらえ!(*8)”のエンディングの”オカエリナサイ”と重なったので、こんな題名にしてみました。

《脚注》
(*1)青い星まで飛んでいけ(小川 一水 ハヤカワ文庫JA)
 マスドライバーで彗星都市からの脱出を企てる少年少女、“祈りの力で育つ”という謎の植物、AI宇宙船エクスの旅などを納めたSF短編集。
 オールデーズなSFの香りがただよう作品です。
(*2)坂村健
 ご年配の方には、”TRONプロジェクト”の提唱者といえばお分かりかと。
 ビジネスユースで”TRON”自体の名前はほとんど聞くことがなくなりましたが、サブプロジェクトである”ITRON”は日本の組み込みOSのデファクトスタンダードで、はやぶさの制御装置のOSは”μITRON”を採用していたとのこと。
 ちょっとびっくりです。
(*3)擬人化なんでもありの昨今ですが
 かわいく作った衛星としては、”ワンダバスタイル”(滝 晃一 (著)、ワンダーファーム (原著))ってのに、ヒューマノイド型の”美少女型技術試験衛星ロボット キク8号”ってのが出てきますが、基本的に箱型か円筒形の衛星に萌え要素を感じるんでしょうか?
 と思ってたら、”現代萌衛星図鑑”(しきしま ふげん 三才ブックス)ってのが出てました。人間の妄想力に限界はないんでしょうかね。
(*4)トーマス系
 機関車のフロント部分に顔がついている”きかんしゃトーマス”のことです。
 もし、”はやぶさ君”をアニメ化することがあったら、声はぜひ戸田恵子さん、ナレーションは森本レオでお願いしたいものです。
(*5)”「はやぶさ」からの贈り物”(朝日新聞取材班 朝日新聞出版)
 はやぶさのミッションを時系列に描いた本。写真も多く使われていて、眺めているだけでも面白い本です。
 ”6.意義と成果”では、はやぶさ君では書いていないはやぶさプロジェクトの側面がわかります。
(*6)8bps
 1秒間に8ビットの情報を送れる速度。だいたい半角文字(ローマ字+数字+カナ)を1秒間に1文字送るスピードと思ってください。
 インターネットでは数十メガbpsのスピードで動画を見ている今の若い人にはピンとこないかもしれませんが、たった30年前、1980年代半ばごろでは黒電話を使った音響カプラで300bps、一般の人がパソコン通信をするのが1200bps~2400bspのスピードでした。
(*7)アポロ13号の帰還
 1970年に月着陸をミッションとするアポロ13号の酸素タンクが爆発。深刻な電力や水の不足する中、3人の宇宙飛行士を無事帰還させた事件。
 詳しくはこちらをどうぞ。
(*8)トップをねらえ!(原作 岡田 斗司夫、監督 庵野 秀明、制作 GAINAX)
 ”エースをねらえ”と”トップガン”をミックスした宇宙SFアニメ。こう書くとナニ?と思われるでしょうが、中身は意外とハードSF。名作です。
 ちなみに、このシーンでは最後の”イ”が左右反転、時の流れを演出しています。

福井 晴敏あたりで第二部ってやらないかなぁ(さよならジュピター/馬酔木)

 ども、中年SFファンのおぢさん、たいちろ~です。
 先日、SFの巨匠小松左京氏が亡くなられました(2011年7月26日)。
 このブログでも書いたんですが(”さよなら、小松左京”内容はこちらから)、それもあって、久々に”さよならジュピター”を再読しました。

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写真はたいちろ~さんの撮影。近所の馬酔木(あせび)です

【本】さよならジュピター(小松 左京 ハルキ文庫)
 減少する彗星を調査する宇宙船の事故をきっかけに、太陽系近傍でマイクロブラックホールが発見され、2年後に太陽を直撃するおそれがあることが分かった。
 人類滅亡の危機に太陽系開発機構は”木星太陽化計画”を変更しブラックホールに衝突させることでコースを変えるプロジェクトが実行に移された・・・
【花】馬酔木(あせび、あしび)
 ツツジ科の低木。日本に自生自生する常緑樹。馬が葉を食べれば酔ったように足が萎えてしまうことから”馬酔木”という名前がついたとか。難読漢字でしょうか?
 実際にアセボトキシン(グラヤノトキシンⅠ)を含む有毒植物です。
 早春になると枝先に昔のランプのような花をつけます。見ようによってはロケットの燃料タンクか噴射ノズルに見えないこともないかも
 花言葉は”献身・犠牲

 久々に読んでみましたが(*1)、古さをほとんど感じさせないのはさすが。でも、最近のSFと比べると昔のSFって骨太というか、設定が細かいんですね。
 まず、小松左京っぽさというか政治小説的な側面。代表作である”日本沈没(*2)”もそうですが、政治的なかけひきみたいなのが小説の縦軸になってます。
 太陽系の開発のため、木星を太陽化するJS計画の推進者、太陽系開発機構のウェッブ総帥(*3)と世界連邦大統領のミン博士。対立するのが、シャドリク上院議員。物語的にはJS計画の現場責任者の本田主任と、自然保護の立場から木星を犠牲にすることに反対でテロ行為に及ぶマリアが主人公なんですが、ストーリー全体としてみればそれってつけたし。むしろ、次期大統領選に間に合わせるためにプロジェクトを前倒しにするとか、ブラックホールの軌道変更プランの発表を大統領の特別非常大権の選挙をにらんで決めるとか、政治的な駆け引きをしないと前に進まない状況のほうにリアリティとストーリーテリングの面白さを感じます。

 また、状況とかの説明を細かく描写するってのも、小松左京とかこの時代のSFの特徴かなあ。木星の大赤斑の書き込みとか宇宙基地の設定の説明とか、SFマインドを盛り上げるとこが満載。思うにこういったもののリテラシーが今ほど一般的ではない時代だからこそ(*4)、ここまで書くってのが必要だったんでしょうか。
 ”ニュートリノ(*5)を使って木星を動かし、ブラックホールに衝突させて・・・”なんて、現在なら説明なしである程度伝わるんでしょうが、当時なら分かる人とわかんない人が真っ二つ(おそらく1:9ぐらい)だったりして。

ふと思ったんですが、”さよならジュピター 第二部”なんてのができないかな。”日本沈没”も第二部が出版されたぐらいだし。
 ストーリーとしては

 木星喪失により地球軌道が変わり、また太陽へのブラックホールの影響から黒点活動が不安定になった23世紀。
 異常気象にみまわれた人類は、冥王星軌道上に封印されていたEX計画(*6)の恒星間宇宙船を再編成し、地球からの第二の脱出計画をスタートさせた・・・

 みたいな。まあ、カシオペアまで行かなくてもいいけど(*7)。

 ”さよならジュピター”が書かれた時には小松左京をリーダーに豊田有恒、田中光二、山田正紀、野田昌宏、鏡明、伊藤典夫、井口健二、横田順彌、高千穂遙、石原藤夫など、そうそうたるメンバーがブレーンストーミングに参加したそうですが(サンケイ出版版 上巻あとがきより)、今の中堅若手のSF作家集めて作るなんてやったら面白そうだけど。メインライターが福井晴敏で、ディスカッションに冲方丁、野尻抱介、有川浩、谷川流、小川一水あたりを連れてきて、とか。(*8)
 まあ、これぐらい集めてこないと小松左京にタメはれないんじゃないかと。

 キャラクターを動かしてストーリを追っかけている組み立てているライトノベル全盛期の昨今、こういった群像的な骨太のSF作品ってなかなかないような気がします。
 たまには昔を思い出してこんなのも読んでみるのもいかも。

《脚注》
(*1)久々に読んでみましたが
 ノベライズが週刊サンケイ(現在のSPA!)に連載されたのが1980年、本で出版されたのが1982年ですので、ほぼ30年近く前の小説です。ちなみに三浦友和主演で映画化は1984年のことでした。
(*2)日本沈没(小松左京 小学館文庫)
 日本を科学的に沈没させた、日本を代表するSF小説。1973年に出版、同年映画化。日本が沈没するメカニズムもさることながら(映画版で総理に説明したのは、地球物理学者の竹内均博士というこりよう)、1億人の日本人をどうやって海外に脱出させるかという政治的な課題への取り組みも見どころです。
 小説の続編”日本沈没 第二部”が2006年に谷甲州との共著で形で出版されました。
(*3)ウェッブ総帥
 今なら”ワールド・ワイド・ウェブから取った”と思われそうですが、欧州原子核研究機構のティム・バーナーズ・リーが”WorldWideWeb”を発表したのは1990年とほぼ10年後のことです。
(*4)思うにこういったもののリテラシーが
 このころって、ディープなマニアが中心だったんじゃないかと。宇宙戦艦ヤマト(TV放映が1974年)、スターウォーズ(エピソード4の上映が1978年)、機動戦士ガンダム(TV放映が1979年)と、やっとSFが一般に認知されだした時代ではないかと。
(*5)ニュートリノ
 電荷を持たず、質量は非常に小さい素粒子の一種。透過性が非常に高く地球ぐらいなら平気ですり抜けます。
 2011年9月に、特殊相対性理論に反し光速より60ナノ秒速いという実験結果が発表され、大ニュースに。てか、このこと自体が一般新聞で大きく扱われること自体が昔のSFファンから見るとけっこう驚きです。
(*6)EX計画
 木星によるブラックホールの軌道修正計画が失敗した場合に備えて、5.9光年離れたバーナード星へ船団を組んで人類を脱出させるってのがEX(エクソダス)計画。
 1組で総宇宙船数1000隻、乗員数130万人という大規模なもの。
(*7)カシオペアまで行かなくてもいいけど
  アンドロメダ、あぜみ(あせび)の花がもう咲くぞ、
  おまへのラムプのアルコホル、しゆうしゆと噴かせ。
   ”水仙月の四日”(宮沢賢治)より
(*8)メインライターが福井晴敏で~
福井晴敏:大河小説系歴史物、ミリタリー物、ガンダム物などなどのSFを書く人。
      代表作は”終戦のローレライ”、”亡国のイージス”、”ガンダムUC”
冲方丁 :暗い系救いのない的ディープなSFを書く人。
      代表作は”マルドゥック・シリーズ”
野尻抱介:きゃぴきゃぴ系明るい宇宙SFを書く人。
      代表作は”ロケットガール・シリーズ”、”ふわふわの泉”
有川浩 :戦闘系激甘ラブコメなSFを書く人
      代表作は”図書館戦争・シリーズ”、”海の中”他自衛隊3部作
谷川流 :トンデモ系でも意外と緻密なSFを書く人
      代表作は”涼宮ハルヒ・シリーズ”
小川一水:建築系プロジェクトマネジメントなSFを書く人
      代表作は”第六大陸”、”復活の地”、”天冥の標・シリーズ”

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