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2011年10月

きっと老けないほうの自分にアイデンティティを求めるんだろうなぁ・・(どうすれば「人」を創れるか/おろち/瓜)

 ども、ロボット学者になりそこねたおぢさん、たいちろ~です。
 小学生時代には真面目に”ロボットを創りたい”とか考えてましたが(*1)、そのせいかいまだにロボット関連の本をよく読みます。
 まあ、ロボット工学者の書いた本は二足歩行やマニュピュレーターをどうやって創るかって話が多いワケですが、たまには高橋智隆(*2)のようにデザインに凝る人もいます。
 で、今回ご紹介するのはこのデザインが”自分”っていう本、”どうすれば「人」を創れるか”であります。

Photo
 写真は奥様の撮影。
 ハロウィンのカボチャ”ジャック・オ・ランターン”です。

【本】どうすれば「人」を創れるか(石黒 浩 新潮社)
 空気アクチュエーター(人工筋肉みたいなもの)とシリコン(人工の皮膚)を使って という自分そっくりのロボット「ジェミノイド」を開発したロボット学者の本。
 なのでサブタイトルは”アンドロイドになった私”。
【本】おろち(楳図かずお 小学館)
 不思議な能力を持つ謎の美少女”おろち”を狂言回しにしたオムニバス形式の恐怖漫画。
 第一作の”姉妹”という作品は、18歳の誕生日を迎えると醜くなっていくという血筋の家に生まれた美人姉妹の話ですが、かなり怖いです。
【花】瓜(ウリ)
 キュウリ、スイカ、メロンなどのジューシーな野菜や果実。カボチャもこのたぐいです。
 瓜二つ(うりふたつ)とは、”縦に二つに割った瓜が同じように見える”ことからだそうですが、なぜウリなんだ? ちなみに英語では”As alike as two pears in a pod”で、エンドウ・大豆などのさや(pod)になります。

 この手の話題だと、本書でも出てくる”サロゲート(*3)”とか身代わりロボットというなら、”おれたちのピュグマリオン(*4)”なんかがありますが、実際のロボット学者がホントに創っちゃたというのがユニーク。
 失礼ながら”ナルシー”ってわけでもなさそうですし(*5)、不気味の谷間を超えても不気味そうですが(*6)(ホントに失礼!)、創った動機が”私が存在するように思っているのはナニ”つまり自分のアイデンティティを確かめる手段としてロボットが欲しいというもの。そういう意味では工学的なアプローチじゃないのかもしれません。本書のプロローグでもRoboticsを”ロボット工学ではなく、ロボット学”と訳す方が正しいと言ってるし。

 そういうこともあってか、読後感としては論文というより論文とエッセイの間ってとこでしょう。なにせサンプル数がご本人とあと一人しかいないので一般化した結論を出すには至っていないのでしょうが、数百人レベルでやってみたら面白いのに。もっとも廉価版のジェミノイドFでも1台1000万円以下ってお金がかかるそうですけど。

 ”じゃあ、お前は創って欲しいか?”と聞かれるとちょっと微妙。
 知的好奇心としては、ぜひやってみたいもんです。せいぜい写真かビデオでしか自分を見ることができないので、リアルに3次元の自分ってのが動くのは面白いでしょうね。
 二人並んで漫才やるとか、パントマイムの鏡ネタやってみるとか・・(宴会芸か!)

 じゃあ、なにが微妙かというと”人間は老けるけどロボットは老けない”ってとこ。もちろんロボットもハードウェアである以上”劣化”はするけど”老化”はしない。それにデータさえあれば、いつでも元に戻せる。もっとも、石黒先生の場合は”ロボットを修理するより、人間が痩せたほうが安上がり”ということでダイエットに励むことになりますが。
 ”ブレーメンⅡ(*7)”っていう漫画の中にも、コピー(身代わりロボット)がオリジナル(人間)に勝手に髪型を変えたのでしかたなくオリジナルも散髪するってネタがありますが、こうなると完全に主客転倒です。

 で、自分と同じものが老化せず、自分だけが老けていくという状況に人間が耐えられるかというと、これけっこうつらいかも。上記の”おろち”に出てくる姉妹(双子ではないですが)では、醜くなるほうの娘が醜くならない娘を罠にかけて同じ立場に引き込むというストーリーですが、なまじ二人とも美しいだけにその怨念じみた怖さってのはハンパじゃないです。

 まあ、”ロボットの頭なんてセンサーとスピーカーさえ付いていればカボチャだってかまわない”というご意見もありましょうが、そんなのが街中をうろうろしてるのはハロウィンだけにして欲しいなあ・・・

《脚注》
(*1)小学生時代には真面目に”ロボットを創りたい”
 なんせ、このころやってたTVが鉄腕アトムに鉄人28号にエイトマンの時代ですから(当然、全部モノクロです)
(*2)高橋智隆
 ロボ・ガレージ代表取締役社長にして、東京大学先端科学技術研究センター特任准教授のロボットクリエーター。
 パナソニックの乾電池のCMに登場する”エボルタ(EVOLTA)”の作者といえばわかるかと。クロイノ (chroino)エフティ(FT)など、この人の創るロボットは独特の美しさがあります。
 実際の作品はロボ・ガレージのHPをご参照ください。
(*3)サロゲート(主演 ブルース・ウィリス、監督 ジョナサン・モストウ)
 ロボット工学が急激な進化を遂げた近未来。人間のあらゆる社会活動を代行する“サロゲート”と呼ばれる身代わりロボットが開発され、人類は自宅からサロゲートを遠隔操作するだけで、リアルな現実世界に生身の肉体をさらす必要はなくなった。(Amazon.com)より
 まだ見てませんが、忘れなければ今度借りてこよう。ちゃんと覚えてろ、ブル~ス!
(*4)おれたちのピュグマリオン(小川一水 光文社)
 人型ロボットを開発する人たちが、それを”自分の身代わりにする”ことで拡販をしていくという物語。プロジェクトマネジメントSFを書かせると、小川一水は絶品です。
 ”煙突の上にハイヒール”に収録。
(*5)”ナルシー”ってわけでもなさそうですし
 お写真がでていますが、ちょっとプロレスラーの”大仁田厚”似。本人いわく”子供に怖がられる”。それに20年間同じデザインの服しか着ていないという、今どき”アニメの主人公でもそんなことせんぞ!”というファッションセンスの持ち主です。
(*6)不気味の谷間を超えても不気味そうですが
 ”不気味の谷間”ってのは、ロボットの見かけをどんどん人間近付けると、ある瞬間不気味に見えるというもの。なぜそうなるのかはわかっていないそうです。
(*7)ブレーメンⅡ(川原 泉 白泉社文庫)
 動物に高い知性と人間並みの体格を与えられた”ブレーメン”を乗員にキラ艦長が大型輸送船”ブレーメンⅡ”で宇宙を飛び回るというSF漫画。
 もっとも”モロー博士の島(H・G・ウェルズ)”や”猿の惑星  創世記(監督 ルパート・ワイアット)”にならないのが川原 泉です。

オカエリナサイ、はやぶさ!(はやぶさ君の冒険日誌/はやぶさ展)

 ども、無限に広がる大宇宙にあこがれるおぢさん、たいちろ~です。
 先日、”青い星まで飛んでいけ(*1)”というSF短編集を読んでいたところ、解説の坂村健(*2)が、小惑星探査機「はやぶさたん」萌え~みたいな話を書いていました。
 まあ、擬人化なんでもありの昨今ですが(*3)、今回の場合は本家本元が出している本がありまして、ということで、今回ご紹介するのは、JAXAのスタッフが出している絵本”はやぶさ君の冒険日誌”の紹介であります。

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 写真はたいちろ~さんの撮影。東京国際フォーラムの”はやぶさ展”から。
 上がはやぶさの模型、下が回収カプセル(レプリカ)です。

【本】はやぶさ君の冒険日誌(著 小野瀬 直美、監修 寺薗 淳也、毎日新聞社)
 ”はやぶさ”を運営していたJAXAの現場スタッフが、ミッションをより身近に感じてもらおうと、”はやぶさ”にかわいい顔を描いたチラシを作ったのが発端とか。
 その後、手作りパンフレット『はやぶさ君の冒険日誌』の主人公になり、Web”今週のはやぶさ君”に載ったりと人気を博して、一冊にまとめまったのがこの本。
【旅行】はやぶさ展
 はやぶさの帰還に合わせて全国で”はやぶさ展”が開催されましたが、私の行ったのは東京国際フォーラムの”はやぶさ展”(2011年6月13日~10月10日)。
 上記の回収カプセルを触らせてもらいましたが、けっこう重たいものでした。

 さて”はやぶさ君の冒険日誌”ですが、主人公は”はやぶさたん”ではなく、”はやぶさ君”。四角いボディーに顔をくっつけたトーマス系(*4)のキャラクターです(女の子を期待されたかたは残念でした)。
 でも、カラーマジックで描いたような、いかにも素人っぽい絵がけっこうかわいいんですね。それに、元気な男の子っぽいキャラクターになってます。

  はやぶさ君の絵に、泣き顔ってないんですよ。
  基本的に、あきらめない、明るい、前向きなやつなので。

   ※「はやぶさ」広報チーム特別座談会 小野瀬 直美のコメント

 この本とあわせて”「はやぶさ」からの贈り物”(*5)も読んだんですが、プロジェクト自体は、満身創痍というか、危機の連続というかかなり悲壮感ただよう場面も多々あったとのこと。だからこそ、こういう明るいキャラクターはずいぶん励みになったんじゃないかなぁ。

 この本は”絵本”という扱いになっていて、漢字にはふりがなもついているので、小学校高学年ぐらいなら、充分読めそうです。ただ、著者の小野瀬 直美さん、イラスト担当の奥平 恭子さんはともに理系の研究者ということで、内容についての科学的な説明はおとなが読んでも充分に参考になります
 たとえば、はやぶさと地球まで電波が往復するのに何分かかるとか、通信速度が一番遅い時に8bps(*6)しかないとかいった記述がよく出てきます。上記の”「はやぶさ」からの贈り物”で、トラブル発生の時に”ビーコン診断”という、電波のOn,OffでYes,Noを判断するというのが出てきますが、これって、”通信できる情報量が少ない”ってのがわからないとなぜこんなことをするのかわかんないんですね。両方の本を読んで初めてわかりました。

 2冊の”はやぶさ”の本を読んでみて思ったのは、”はやぶさ”のミッションって、世間がブームになっているようなはなばなしい成功っていうより、ぼろぼろになりながらもぎりぎり成功させたっていう感じなんだなぁということ。
 ある意味”アポロ11号の月面着陸”っていうより”アポロ13号の帰還(*7)”に近いのかも。どちらにしても、JAXAの方には”おめでとう!”と言いたいです

 2011年10月1日から映画”はやぶさ/HAYABUSA”も公開。こっちも見に行こうかな。

PS.
 余談ですが、調べている時に”「はやぶさ」~はじめてのおつかい~”というのをYouTubeで見つけました。
 その画像のエンディングで燃え尽きるはやぶさ(画像では初音ミク)が地球に吸い込まれるように落下するシーンが”トップをねらえ!(*8)”のエンディングの”オカエリナサイ”と重なったので、こんな題名にしてみました。

《脚注》
(*1)青い星まで飛んでいけ(小川 一水 ハヤカワ文庫JA)
 マスドライバーで彗星都市からの脱出を企てる少年少女、“祈りの力で育つ”という謎の植物、AI宇宙船エクスの旅などを納めたSF短編集。
 オールデーズなSFの香りがただよう作品です。
(*2)坂村健
 ご年配の方には、”TRONプロジェクト”の提唱者といえばお分かりかと。
 ビジネスユースで”TRON”自体の名前はほとんど聞くことがなくなりましたが、サブプロジェクトである”ITRON”は日本の組み込みOSのデファクトスタンダードで、はやぶさの制御装置のOSは”μITRON”を採用していたとのこと。
 ちょっとびっくりです。
(*3)擬人化なんでもありの昨今ですが
 かわいく作った衛星としては、”ワンダバスタイル”(滝 晃一 (著)、ワンダーファーム (原著))ってのに、ヒューマノイド型の”美少女型技術試験衛星ロボット キク8号”ってのが出てきますが、基本的に箱型か円筒形の衛星に萌え要素を感じるんでしょうか?
 と思ってたら、”現代萌衛星図鑑”(しきしま ふげん 三才ブックス)ってのが出てました。人間の妄想力に限界はないんでしょうかね。
(*4)トーマス系
 機関車のフロント部分に顔がついている”きかんしゃトーマス”のことです。
 もし、”はやぶさ君”をアニメ化することがあったら、声はぜひ戸田恵子さん、ナレーションは森本レオでお願いしたいものです。
(*5)”「はやぶさ」からの贈り物”(朝日新聞取材班 朝日新聞出版)
 はやぶさのミッションを時系列に描いた本。写真も多く使われていて、眺めているだけでも面白い本です。
 ”6.意義と成果”では、はやぶさ君では書いていないはやぶさプロジェクトの側面がわかります。
(*6)8bps
 1秒間に8ビットの情報を送れる速度。だいたい半角文字(ローマ字+数字+カナ)を1秒間に1文字送るスピードと思ってください。
 インターネットでは数十メガbpsのスピードで動画を見ている今の若い人にはピンとこないかもしれませんが、たった30年前、1980年代半ばごろでは黒電話を使った音響カプラで300bps、一般の人がパソコン通信をするのが1200bps~2400bspのスピードでした。
(*7)アポロ13号の帰還
 1970年に月着陸をミッションとするアポロ13号の酸素タンクが爆発。深刻な電力や水の不足する中、3人の宇宙飛行士を無事帰還させた事件。
 詳しくはこちらをどうぞ。
(*8)トップをねらえ!(原作 岡田 斗司夫、監督 庵野 秀明、制作 GAINAX)
 ”エースをねらえ”と”トップガン”をミックスした宇宙SFアニメ。こう書くとナニ?と思われるでしょうが、中身は意外とハードSF。名作です。
 ちなみに、このシーンでは最後の”イ”が左右反転、時の流れを演出しています。

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