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堕ちてゆくのもしあわせだよと、体あわせる相手もいない(下流志向/落ちないリンゴ)

 ども、人生の勝ち組のおぢさん、たいちろ~です。(ウソです)
 さて、大学生の就職活動は相変わらず厳しいようです。年末年始にかけてのニュースで会社説明会などの開始時期を、大学3年生の10月から12月に延ばそうというのがやってました。内定の解禁が(有名無実化してたとはいえ)4年生の10月だったおぢさん世代には隔世の感がありますが、昨年子供をやっとこさ大学に入学させたとこなのに、もう就活かよ~~
 ところで、世の中には学ばない、働かない人達もいるようで、今回ご紹介するのはそんな人たちを扱った”下流志向”であります。


Photo
写真は“藤崎学プロジェクト”のHPより。受験の縁起物”落ちないリンゴ”です。


【本】下流志向(内田 樹、講談社文庫)
 サブタイトルに”学ばない子どもたち 働かない若者たち”とあるように、なぜ若者たちが学習や労働から逃避するようになったかという分析の本。
【花】落ちないリンゴ
 1991年の台風19号により、青森では収穫直前のリンゴが樹から落ちてほぼ壊滅状態となりました。その中でわずかに落ちなかったリンゴを”落ちないリンゴ”として受験生の合格祈願の縁起物にと云うアイデアが全国的に評判になりました。
 (”有限会社 落ちないリンゴ”のHPはこちらから)


  ”先生、これは何の役にたつんですか?”

 最近では勉強をするのにこんな問いが小学生からあがってくるんだそうです。
 まあ、会社でも”この仕事に何の意味があるんだ??”ってなモノもあります。仕事の場合、何らかのシナリオなり文脈の中であればその必要性を説明できますが(*1)、小学生に言われてもねぇ。
 本書の中で、”そんな問いが子供の側からでてくるはずがない、ということが教育制度の前提になっている”と言ってますが、これは長い歴史の中で教育を受けることの権利闘争みたいな知識を知っていてこその話。今だったら、”東京大学の入学は人生のプラチナチケット(*2)”みたいな説明のほうが納得できるかも。実も蓋もないけど。
 筆者の内田氏は経済合理性的な説明には否定的な見解みたいですが、しょうがないんじゃないかなぁ。なぜなら、本書の論調が”教室は不快と教育サービスの等価交換”だから。もう少し詳しく書くと、

  ・子供たちが消費主体(教育の買い手)というポジションを無意識のうちに先取りしている
  ・50分間の授業を黙って聞くのは不快(支払うべき貨幣)
  ・用途や有用性が理解できない商品は存在しない(買う価値がない)
  ・よって、この商品(学習すること)が不快な思いをして受けることを納得するのに
   何の役にたつのかを聞くのは、消費者(学生)の権利であり義務

 ということです。

 さらに問題を複雑にしているのが、教育によって得られるメリットが保証されなくなってきていること。いわゆる”パイプラインの水漏れ(*3)”というやつです。本書で”勉強するといい学校に入れて、いい会社に入れて、高い給料が貰えて、いい結婚ができる”みたいなのが書いてありますが、そんな高度成長時代の価値観を一番信じていないのは、実は親の世代だったりします。

 で、労働になるともっとやっかい。自己の苦役と対価が釣り合わなければ(等価交換が成立しなければ)働かないといった選択肢が発生してしまう。いわゆるニート問題です。
 言っちゃナンですが、四半世紀以上サラリーマンやってますが、そんな割のいい仕事は数えるほどもありませんぜ! 
 ”ちょっと働くだけだけで、莫大な利益を出せる仕事があるけど、やる?”とか言われたら、はめられるんじゃないかと疑ってしまいます(単に素直じゃないだけかもしれませんが・・・)

 さらに、ニートは結婚するのも難しいでしょうし(*4)、そもそも引きこもってしまえば、出会いもない。

  時の過ぎゆくままに この身をまかせ、男と女が 漂いながら
  堕ちてゆくのも しあわせだよと、二人つめたい 体あわせる

 1975年のヒット曲、沢田研二の”時の過ぎゆくままに(*5)”の一節ですが、このころの若者は結婚しないまでも”同棲(*6)”するという選択肢もありました。この唄では、少なくとも体をあわせる相手がいますが、引きこもってしまえば出会いの機会すらない。親が亡くなった後、収入もなく、体を壊しても介護してくれる伴侶もいない状態になっちゃったらどうするんだろう? 
 本書では”時間的なスキャン能力”という言い方をしていますが、ぶっちゃけ想像力の問題。小学生でも”将来なりたいもの”と聞かれたら、野球選手なりサッカー選手なりお医者さんなり大工さんなり答えるんだから。
 10年後の自分を考えても自己責任でニートという人生を選ぶなら、それなりの覚悟で責任を持つべきだと思います(*7)。

 まあ、批判的な意見を書いているようですが、本書はけっこう納得する部分も多い本です。若い人は一度は読んどいても損はない本です。
 ただし、読むのは堕ちる前にですが
 リンゴだって、落ちなかったからこそ価値があったんだし・・・

《脚注》
(*1)何らかのシナリオなり文脈の中であれば~
 いや、ホントに何のためにやるのかわからんものもありますが・・・
(*2)東京大学の入学は人生のプラチナチケット
 ”ドラゴン桜”(三田 紀房 モーニングKC)で、桜木建二先生がこんな趣旨の話をしています。チケットを買うのは大変だか、手に入れれば人より素晴らしい人生が送れる(可能性が高くなる)といった意味です。
(*3)パイプラインの水漏れ
 ”希望格差社会”(山田昌弘、筑摩書房)より。
 かつては、高校、大学などの受験を経いろなレベルに振り分けられることで、人生の先行きが保証されていたのに対し、最近ではこの振り分けがうまく機能せずパイプラインから水が漏れるようにがんばっても途中で落っこちてしまうこと。
(*4)ニートは結婚するのも難しいでしょうし
 経済的な問題もありますが、”最小の努力で最大の効果”を是とする女性にとって、親が莫大な遺産を残しているのでもなければ、社会的なステータスも将来的な展望もない男をダンナにしたいと思わないんじゃないかなぁ。
(*5)時の過ぎゆくままに
 昭和のキムタク、沢田研二主演で、3億円強奪事件をモチーフにしたテレビドラマ”悪魔のようなあいつ”の主題歌。作詞 阿久悠、作曲 大野克夫。
 ちなみに、1975年は経済は世界同時不況泥沼のベトナム戦争(同年に終結)、環境汚染問題をテーマにした有吉佐和子の”複合汚染”がベストセラーになるなど、2010年を彷彿とさせる年でした。
(*6)同棲
 結婚していない男女が、一緒に暮らすこと。最近聞かないけど死語なのかなぁ。
 上村一夫原作のコミック”同棲時代”が由美かおる主演で映画化されたり、同棲する2人の生活を歌った”神田川”(南こうせつとかぐや姫)がヒットしたのは1973年のことです。
(*7)それなりの覚悟で責任を持つべき~
 本書の中で、”自己責任でニートになった人も社会が飢えさせない”ことを常識化することで社会的コストを最小化するという話が出ていますが、なんだかなぁ。
 言ってることはわからんでもないですが、それでもいいかと言われると・・・

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コメント

大学の就職活動は年々早くなっているみたいですね><
日本の大学生は入ってしまえばだらけることが多いので
ある意味気を引き締めて大学に通えるようになるのでそういう意味ではいいことなのかも?

とても魅力的な記事でした!!
また遊びにきます。
ありがとうございます!!

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