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2010年2月7日 - 2010年2月13日

爆発炎上は男のロマンだぞー(キケン/究極超人あ~る/さいたまスーパーアリーナ)

 ども、理系女子の父のたいちろ~です。
 この春から、長女が某理工学部に通うことになりました。
 メカトロニクス系の学問とのことなので、参考にと思って成南電気工科大学機械制御研究部の出てくる小説を読んでみました。
 で、今回ご、紹介するのは有川 浩の”キケン”であります。


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写真はたいちろ~さんの撮影。特撮の聖地”さいたまスーパーアリーナ”です


【本】キケン(有川 浩 新潮社)
 成南電気工科大学機械制御研究部。略称”機研(きけん)”。
 クラブ説明会ではやぐらを吹き飛ばし、ロボコン(*1)ではロボットを吹き飛ばし・・
 その危ない行動から”キケン= 危険”と呼び恐れられていた伝説のクラブの物語。
【本】究極超人あ~る(ゆうきまさみ 小学館)
 春風高校に転校してきたアンドロイド”あ~る”を中心に、鳥坂(とさか)先輩、さんご、しいちゃんたちを中心とした青春SFコメディ。第19回星雲賞(1988年)と、けっこうSFマインド満載の作品です。
【旅行】さいたまスーパーアリーナ
 JRさいたま新都心駅にある日本でも最大級の多目的ホール。コンサートやスポーツイベントで使われていますが、もっともメジャーなのが仮面ライダーシリーズ、スーパー戦隊シリーズの戦いの場所です。


 さて、機械制御研究部のメンバーは
  上野先輩:2回生。機研部長。大学きっての危ない人
  大神先輩:2回生。機研副部長。通称”大魔神”。迫力の人
  元山くん:1回生。家が喫茶店なので通称が”お店の子”。機研の常識人。
  池谷くん:1回生。多少のことでは動じないおおらかな人。時々裏目に。

 で、この中で最もキャラが立っているのが”成南のユナボマー(*2)”の異名を持つ上野先輩です。で、この先輩、どっかで見たよ~なキャラクターだな~と思ったら、究極超人あ~るに出てくる鳥坂先輩そっくり! こちらは、もう20年以上前の作品ですが、こういったワクにはならない人って、いつの時代でも魅力的なんですね

〔上野先輩〕
・機械制御研究部の部長にして暴君
・後輩のいやがる方向に無理やり話をもっていくノリの人
・特撮の爆発シーンを自分でやってみたくて火薬好きになった人
・ロケット花火装填の改造エアガンで戦うバイオレンスの人
・オフローダーのバイクをウイリーで顔の横すれすれに止めるライダー

〔鳥坂先輩〕
・春風高校光画部(*3)の部長にして暴君
・後輩のあ~る君をしょっちゅういじめるし、ノリだけで物事を決める人
・特撮好きで、ここ一番ではヒーローのポーズを決める人
・サブミッションを得意とするバイオレンスの人
・東京と京都を毎日オフロードバイクで往復しちゃうライダー

 上野先輩といい、鳥坂先輩といい、”特撮・爆発・バイク”は男のロマンですよね~
 ただ、火薬にいっちゃうと危険人物だけど。

  上野先輩:爆発炎上は男のロマンだぞー
       戦隊ものから始まって男子向けロボットアニメ
       ハリウッド映画に至るまで
       爆発に燃えない男など、男と呼べるか!
       お前は一瞬たりとも爆発炎上銃撃砲撃ビームサーベルに
       燃えたことがないと言えるのか!? どうだ!

 いや、まさにその通りです。
 最近のスーパー戦隊や仮面ライダーは、さいたまスーパーアリーナとか近未来っぽい建物+コンピュータグラフィックスの爆発シーンの組み合わせ(*4)。それなりに迫力はあるんですが、何かが欠けています。かつて、造成地でのリアルな爆発シーンを知る世代としては”特撮はバクハツだ!(*5)”といいたいところです。リアルでケガをするリスクを犯してまで映像に命を吹き込んでいた気合みたいなものでしょうかね?!
 爆破シーン満載の仮面ライダーディケイドの初回オープニングなんか、リアルのバクハツとCGの組み合わせ。でも、よく見ているとやっぱりリアルなバクハツはリアリティが違うぞっと!

 私も上野先輩ほどではないですが、水道管と爆竹を使って銃を作ったことがあります(時効ですよね?(*6)) 玉は鉛筆を輪切りにして詰めただけなので、殺傷力とか以前のレベルですが、オモチャの銀球鉄砲とは音といい硝煙の香といい迫力が違います。ゲームの世界でバーチャルな爆発しか知らない男の子に未来はないぞ!

 話があらぬ方向に行きましたが、理系男子には読んで欲しい一冊。でも、理系女子の父には役に役にたたんかったのでは?

《脚注》
(*1)ロボコン
 ロボットコンテストの略。ルールは様々ですが、ロボットの性能/操作技術を競う実在の競技会です。本書では”ロボット相撲大会”ですが、こっちは多分架空の大会。
(*2)ユナボマー
 1978年から95年に全米の大学と航空業界関係者に爆発事件を起こした実在の爆破犯人。本名はセオドア・カジンスキーですが、”ユナボマー”のほうが爆弾魔の代名詞になるほど有名。
(*3)光画部
 いわゆる写真部です。私の高校の写真部もヘンな人がいっぱいいて、変人の巣窟。フィルムカメラの時代ですが、あの漆黒の暗室が人間性を歪めるのか??
(*4)コンピュータグラフィックスの爆発シーンの組み合わせ
 そりゃ、スーポーアリーナで爆薬セットするわけにゃいかんでしょうが
 でも、1回ぐらいはリアルでバクハツさせて欲しいな~ マジで
(*5)特撮はバクハツだ!
 オリジナルは”太陽の塔”の製作者、芸術家”岡本太郎”による日立マクセルのCMから(1981年)
 ”芸術はバクハツだ!”
(*6)時効ですよね?
 一応、”良い子はマネをしてはいけません”と言っときます。
 でも、子どもの内に多少危険なことをしとかないと、リスクに対する判断ができなくなるのも確かで、闇雲に禁止するのもどうかと思う気持ちもありますし・・・

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守銭奴けっこう! 金は正義だ!(シアター!/スタンドフラワー)

 ども、演劇にはとんと縁の無い、たいちろ~です。
 奥様は昔、某市の文化ホールにお勤めでしたので(*1)、こっちには素養があるみたいですが、私は全然。会社の同僚にも小劇団のファンがいて”面白いですよ!”と言ってるんですが・・
 ということで、小劇団を扱った小説”シアター!”のご紹介であります。

Photo
写真は”k’sflower novo Webshop”のhpより
スタンドフラワーの例です。

【本】 シアター! (有川 浩 メディアワークス文庫)
  債務者 :小劇団「シアターフラッグ」、主宰 春日巧。別名”泣き虫主宰”
  負債総額:300万円。
  債務者 :春日司。別名”鉄血宰相”。春日巧の兄。
  返済条件:2年間で劇団の収益から300万を返せ。できない場合は劇団を潰せ。
 はたして「シアターフラッグ」は借金を返済できるか?
【花】スタンドフラワー
 開店祝いや、コンサートなどで送られてロビーなど飾られる花のこと。”笑っていいとも”のテレフォンショッキングでゲストの後ろに飾られるあれです。
 お値段はおおむね2万円ぐらいから、3万円、5万円、10万円以上と応相談。

 「シアターフラッグ」は、主宰で脚本家の春日巧、プロ声優で新人女優の羽田千歳、俳優の早瀬牧子、黒川勝人ら個性的な10名の小劇団。演劇に夢をかける人たちですが、金勘定はまったくだめで、300万円の借金を背負う羽目に。で、金を貸すかわりに上の条件を突きつけたのが、巧のお兄ちゃん”鉄血宰相”こと春日司であります。


  春日司 :無利子で二年も猶予をやるのに返済できないなら
       お前らに才能なんかない!
       二年間 死にものぐるいでやれ!
       自分の無力を思い知って死ね!
       借金できりきり舞いして 夢も希望も枯れ果ててしまえ!
  黒川勝人:畜生、この守銭奴
  春日司 :守銭奴けっこう! 金は正義だ

 夢を見るのは良い事なんでしょうが、夢だけを食べては生きていけないのが世の常。ところが、往々にして金勘定ができない人って多いんですよね。
 私もコンピュータの会社で企画モノに携わったことがありますが、分業体制になっているせいか、”損益の責任者って誰?(*2)”っていうケースがままあります。
 で、「シアターフラッグ」では、この金勘定はお金に細かい春日司のお仕事になります。本人は中小企業にお勤めとのことですが、演劇にはシロウトながら、とんでもないスーパーバイザー(*3)。会社でも、なかなかこんな仕切りのできる人はいません。

  収益=収入-支出
  収入=入場料×入場者数 + 販売物単価×購入者数 + その他収入
  支出=舞台構築費用 + 人件費 + 委託費 + 販売物作成費 + 雑支出

 簡単に書くとこんな感じですが、春日司がすごいのは、いじっていいパラメータとそうでないものをちゃんと分けて指示をしているところ。人気声優の羽田千歳にブログを書かせて(*4)入場者数を増やす宣伝をしたり、舞台構築費用を押さえる脚本を春日巧に指示したり。反面、スピード優先でコストUPでも販売物作成を指示したり。
 会社なんかでよくやる失敗は、原価=開発費の膨らんだ分を、販売価格をあげるとか、購入者数を増やしたりとかで、収益の見かけを確保する説明を始めることです。だいたい市場価格とか競争があるので、販売価格なんてそんなに高く設定できるはずもなく、根拠もなく購入者数が増えないなんて、ちょっと考えればわかりそうなものですが。最優先にやるべきは原価を削減することなんですけどねぇ。

 スタンドフラワーやアレンジメントが送られてくるのを春日司が見て”花なんて食えるわけでもないしかさばるだけだろう”と思ってしまうのはご愛嬌。それでもイベントが華やかになるし、メジャー感が演出できるという理由で受付に飾っています。

  商談のときでもハッタリは大事だ。雑な身なりをしていると舐められる。

 どこまでもクールな春日司であります。

 ”シアター!”はラブコメっぽい展開で、こんなナナメの読み方をする人はいないんでしょうが、まあ、こちらもご愛嬌ということで。まだ、1回目の公演が終わっただけで、借金が返せるかどうか分かりませんし、ぜひ続編をお願いします。

 ところで、春日司さんのような人、どっかにいませんか?
 ぜひ私のプロジェクトでお雇いしたいんですが・・・

《脚注》
(*1)奥様は昔、某市の文化ホールにお勤めでしたので
 楽屋で”チャゲ&飛鳥”におしぼりを渡したのが、今でも自慢だそうです。
(*2)損益の責任者って誰?
 この質問に事業部長とか、本部長とか答える人がいますが、これは形を言っているだけで”会社の事業の全責任は社長にある”ってのと同じこと。無責任体質の表れです。
 なので、このような答えが返ってきた場合は質問の内容を変えます。
  ”このプロジェクトが失敗した時に飛ぶのは誰の首か?”
 この答えが実質的な責任者です。答えてくれる人はほとんどいなせんが・・・
(*3)スーパーバイザー
 監督・管理の責任者のこと。肩書きが偉いかどうか以前に、この人が優秀でないと現場が回らないという要のポジジョン。
(*4)人気声優の羽田千歳にブログを書かせて
  初めまして、羽田千歳です。
  文章を書くのが苦手なのですが、
  悪い大人に騙されてブログを始めることになってしまいました。
   (羽田千歳のブログより)

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松島にいいオイスター・バーがあるのになあ、タダだし(サードガール/松島のかき祭り)

 ども、松島のかき祭りにいってきました、たいちろ~です。
 単純にかきを食べたかっただけなんですが、奥様から”ブログのネタになって好かったね”と言われたもんですから、急遽ブログのネタになりました。
 いちおう”本”のブログなので、急に言われても困るんだよな~~
 まっ、いいか! と思いつつ牡蠣のエピソードの出てくる”サードガール”のお話であります。

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 写真はたいちろ~さんの撮影。松島のかき祭りの風景です。

【本】サードガール (西村しのぶ 小池書院)
 建築会社にお勤めの涼さん、ブティックにお勤めの美也さん、高校生の夜梨子ちゃんたちの織り成す神戸を舞台にしたラブストーリー。
 今回ご紹介するエピソードは”ア・リトル・オブ・ユー”の中で、ダンナ様の涼さんとケンカした美也さんが、再会した元愛人の広瀬さんとのデートシーンの中にあります。
【旅行】松島のかき(牡蠣)祭り
 日本三景のひとつ、宮城県松島で行われる冬のイベント。毎年2月最初の土日に開催されます。今年は2010年2月7日に行きました。
 焼き牡蠣の無料試食とか、牡蠣鍋牡蠣めし牡蠣雑炊と牡蠣のオンパレード。炉を設置してあるので、会場で買って(15ケ1000円とお買い得!)自分で焼いて食べることもできます。ただし運転する人はアルコール厳禁。

 宮城県はこのようなフード系のイベントがけっこういっぱいあって、春の”南三陸しおさい祭り”とか、秋の”女川さんま祭り”なんてのは我が家の恒例になっています。単なる食い意地がはっているだけですが・・・
 で、冬の定番が”松島のかき祭り”。今年の仙台は4年ぶりの大寒波で、会場の松島海岸グリーン広場は雪景色一色。かなり寒かったですが、牡蠣のためならなんのその!
 と、書くと牡蠣が大好きのようですが、実は牡蠣が食べられるようになったのは最近のことです。大概、好き嫌いはしないほうなんですが、子供のころから牡蠣だけはだめで、ず~と食べてませんでした。どうも、小学校の給食に出たカキフライがどうしようもなく不味くて、それがトラウマになっているようです。
 なのに、10年近く前に仙台に引っ越してきて、ふと出かけた松島のかき祭りで食べたのがあまりに美味しくて、それから大好物になりました。
 やはり、食べ物は地元に限ります。

 で、今回ご登場の美也さんも、実は牡蠣が嫌い

  美也さん:生牡蠣はキライ。知ってるくせに。生グサイよ
  広瀬さん:元町に いいオイスター・バーがあるのになあ
(*1)
       キミは食べず嫌いなんだ。一度 口にいれてごらん
        (といいつつ、美也さんの口に運ぶ)
  美也さん:??? 変なの

 この、元愛人の広瀬さんはリッチな歯医者さん。さりげなくオースター・バーだし、アルマーニのスーツだし、ベンツだし、プレゼントはアウディだし・・(*2) 
 で、美也さんへのくどき文句がこれ

  広瀬さん:昨日は驚いた
       すげーキレイな女だ ---と思ったら美也だった
       あわてたよ、嬉しくて
       「これはもう口説くしかない」と思って
       なんとか食事に連れ出そうと・・・

 いや、こんなセリフで美女を口説いてみたいモンです。縁もお金もないけど。
 かたやダンナ様の涼さんは、神戸の街を友人と一緒に美也さんを探して回るハメになります。
 それはそれで、かわいいんですが、こうなると女性のほうが大胆ですねぇ

  美也さん:ねえねえ広瀬さん きいて
       あのね 例えば北陸か山陰
       人影もまばらなひなびた温泉で 小さなつぶれかけた旅館に宿をとるの
       もちろん宿帳には偽名を記入してね
       わたしは先にひとりで来ていて 愛人を待っている・・・という
       やっぱり”逢い引き”は、こうありたいと!!

 以前、伊香保温泉に行った時に(*3)このフレーズを思い出しましたが、やっぱり逢い引きはこうありたいものです。 愛人、いないけど・・・

 松島は風光明媚で、特に冬は空気も澄んでいて、美味しい牡蠣もあわせてお勧めです。秋保温泉、作並温泉などもあるので、愛人との不倫旅行、もとい、彼女と遊びに行くにはGoodなスポット。
 ぜひ、お出かけのほどを!

《脚注》
(*1)元町に いいオイスター・バーがあるのになあ
 ”サードガール”の舞台は神戸。なので、ここで言ってる元町は神戸のことです。旧居留地や、北野異人館街へ通じる坂道、メリケンパークなどエキゾチックな好い街です。
(*2)リッチな歯医者さん~
 友人のわたなべ君いわく”アメックスのCMみたいな男”。
 歯医者ってそんなに儲かるのか??
(*3)伊香保温泉に行った時に
 群馬県にある温泉。石畳の階段や、近くに竹久夢二伊香保記念館があったりと、明治大正のロマン漂う名湯です。
 でも、社員旅行で行ったのでロマンもへったくれもありゃしませんでしたが。

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煙草の煙と吐き出したのは、我が内なる愚か者への悪態(愚か者死すべし/カクレミノ)

 ども、最近ハードボイルドにはまっている、たいちろ~です。
 ここんとこ、原リョウの沢崎シリーズというのを立て続けに読んでいます。ハーフボイルド(*1)ではなく、和製の正統派ハードボイルドで、主人公が40代のおぢさんってのも良い!
 ということで、今回は新沢崎シリーズ第一作”愚か者死すべし”であります。

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 写真はたいちろ~さんの撮影
 近所の公園のカクレミノです。

【本】 愚か者死すべし (原 リョウ 早川文庫)
 大晦日、新宿署地下駐車場に2発の銃声が轟いた。1発は暴力団組長襲撃事件の容疑者”伊吹哲哉”、もう1発は容疑者を護送する刑事”東海林秋彦”を打ち抜いた。これをきっかけに私立探偵沢崎は思いもよらぬ展開に巻き込まれていく・・・
”私が殺した少女”で第102回直木賞を受賞した原リョウの沢崎シリーズの新作。といっても、2004年発刊です。ほんとに、寡作な作家です。
【花】カクレミノ(隠蓑)
 ウコギ科の常緑亜高木。別名 テングノウチワなど。写真をご欄になるとわかりますが、葉が昔の雨具の蓑の形をしています(*1)。
 隠れ蓑は天狗などが身にまとう空想上の蓑で、自在に姿を隠すことができるもの。今風に言うとステルス機能の宝具。ここから、実体を隠すための手段、表向きの理由を指すようになりました。

 ストーリーとしては、組長襲撃事件、自首した組長襲撃犯人、政治家の秘密を握る謎の老人の拉致事件、その誘拐犯からの身代金強奪事件等、話が二重三重に錯綜していて、けっこうな伏線が入り組んでいます。
 ”政界の裏で暗躍する謎の老人”なんていうと、社会派ミステリーの松本清張っぽいですが、代議士の学歴詐称事件のエピソードなんかが出てくると(*3)、ハードボイルドながら社会派の香りがしてますし

 ”愚か者死すべし”の中で、”愚か者”という言葉が2回出てきます。
 一つ目は、沢崎が伊吹哲哉への銃撃を阻止するために行ったことで死亡した、東海林秋彦の葬儀の場所を田島警部補に尋ねるシーン。

 沢崎:東海林警部補の弔問には、どこに行けばいい
 田島警部補:えっ? 本気で言っているのか、あんた
       そんなことをしてもだれも喜ばんぞ(中略)
       詳しい事情を知る立場にいる人間は、
       あそこであんたが登場しなければ
       彼は死なずにすんだのではないかと思っている。
       当然のことだが、遺族もそのへんの事情を知る権利がある
 沢崎:だから、弔問するのだ

 基本的な性格として、実は沢崎はとってもおせっかいな人間で、かつ頑固。上記の事件にしても誰からか依頼を受けたわけでもないのに、いつの間にか事件に巻きこまれているし、自分が原因で死んだかも知らない人間の葬儀に行けばもめる事は分かっているのに(実際にもめましたが)、自分の矜持と真相への希求のために訪問しているし

 で、表題のモノローグが出るわけです

  午後のよどんだ空気の中に、私がタバコの煙といっしょに吐き出したのは、
  わが内なる愚か者への悪態だった。

 この、ダンディズムこそが、ハードボイルドの真髄です。

 二つ目は、この事件の犯人のセリフ。ネタバレになるので、あまり細かくかけませんが、こんなシーン。
 自分の職業倫理に反する犯罪行為を行い、部下の犯罪行為を恐喝に変えて成果をあげている犯人。沢崎と対峙する中、周りを警察にとりかこまれ、全容を解明されていることを知って。

  拳銃は私の目の前で反転するような動きをした。
  ○○(犯人)が何をしようとしているか気づいたときは、すでに遅かった
  「愚か者め」と、○○は吐きすてるように言った。
  拳銃の銃口が○○の顎の下にぴたりと当てられた瞬間、
  三発目の銃弾が発射された。

 いろいろな事件を隠れ蓑にしながら、その中の事実が明らかになる瞬間です。

 ふと思ったんですが、政治資金規正法違反の容疑で起訴されかかった某O沢幹事長なんか、もし起訴されていたら「愚か者どもめ」とか言いそうだよな~~~
 元秘書とか、土地購入代金とか隠れ蓑にして・・・

 沢崎シリーズは、細かいエピソードのオーバーラップはあるものの、どこから読んでも面白いハードボイルド小説。ぜひ、ご一読のほどを。


《脚注》
(*1)ハーフボイルド
 仮面ライダーWの主人公、中途半端なハードボイルド探偵、左 翔太郎のあだ名。元々、ハードボイルド(堅ゆで卵)は、感情に流されない、強靭な肉体、妥協を許さない等の記号なので、ハーフボイルト(半熟卵)は、中途半端っさって言う意味では意外と合っている用法かも。
(*2)蓑の形をしています
 といっても、若い方でお分かりにならない方はこちらをどうぞ。
(*3)代議士の学歴詐称事件のエピソードなんかが出てくると
 衆議院議員の古賀潤一郎による「ペパーダイン大学卒業」という学歴詐称事件が2003年ごろ、本書の発行が2004年ですので、タイムリーに話題を取り入れています。
 ちなみに代議士の経歴詐称は公職選挙法の定める虚偽事項の公表にあたるため、れっきとした法律違反です。

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