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2010年5月30日 - 2010年6月5日

そんなに基地が欲しいというのなら、東京に作ればいいじゃないか(東京に原発を!/ニガヨモギ)

 ども、ついつい電気をつけっぱなしで寝てしまうおぢさん、たいちろ~です。
 なんだか、すったもんだの上、菅直人が新首相になりました(*1)。
 鳩山前首相の辞任は、普天間基地問題の右往左往が直接のトリガーみたいですが、結局”基地は必要だ”という前提に立ってしまうと”じゃあどこに持ってくんだ?”という問題は必ず出てきます。街のゴミ処理場から基地まで、必要なのは判るけど自分ん家の近くには持ってきて欲しくない施設ってのは確かにあります。
 ”そ~言えば、昔に同じようなテーマの本があったな~”ということで、今回ご紹介するのは広瀬隆の ”東京に原発を!”であります。


Nigayomogi2

写真は”植物園へようこそ!”のHPより。ニガヨモギです。


【本】東京に原発を(広瀬 隆 集英社文庫)
 チェルノブイリ、スリーマイル島の原子力発電所事故を始め、核燃料リサイクルに秘められた危険性などを告発したノンフィクション。
 集英社文庫版は初版のJICC版(1981年)を、チェルノブイリ原発事故を受け大幅に加筆修正。
【花】ニガヨモギ
 キク科ヨモギ属の多年草。アブサンやベルモットなどのお酒の香り付けに使われるハーブの一種。調べてみると”英名(absinthe)はエデンの園から追放された蛇の這った後に生えたという伝説に由来する”とか”北欧のバイキングの間では死の象徴”とか、あんまりいいイメージはないみたい。その割に花言葉は”冗談、からかい、平和”など。

 ”便利な暮らしを支えるには電気が必要だ”という意見に異議を唱える人は、まあそんなにいないでしょう(*2)。良くも悪くも現代社会ってのは電気に支えられています。ブログだって電気がなければありえないシロモノです。で、電気が供給されているってことは、その電気を作ったり送ったりする人が当然のことながら存在します。
 資源エネルギー庁の統計によると2009年度の総発電量、9,254億KWhの内、火力が61%、原子力が30%、水力が8%、地熱、風力、太陽光などがチョロ。なので、原子力発電所を閉鎖するという議論は、安価でクリーンな代替エネルギー源を確保しない限り単純にいうと”電気の消費量を1/3にする生活を許容する”ということになります。また、もしそんなものが出来ても、安定供給という観点から適当に分散をさせておかないと”アンチ・シズマドライブ(*3)”に対応できないリスクもあります。

 では、ここまで依存しちゃっている原子力発電が”安全”かというのが本書の本題。結論から言うと、でんでん安全じゃない。よく話題になる原子炉もそうですが、発電しおわった廃棄物(つまり”死の灰”)や、寿命の来た発電施設そのもののお片づけなど問題は山積み。そういえば、この前テレビでウラン採掘時の残土を、ほかの土とまぜてレンガにして売るってのもありましたね。
 問題は、このような問題が根本的に片付かないままにどんどん原子力発電が進んでいることと、それを”安全だ”と言い切ってしまうエネルギー行政の問題。安全かどうかも”判らない”というのもけっこうあるみたいです。

  そんなに安全で便利だというのなら東京に作ればいいじゃないか。
  新宿西口に建ててみたらどうだ!

 これは、集英社文庫版の解説文より。ケンカの売り文句としてはけっこう良いデキだと思います。実際に原子力発電所の施設自体の面積だけでいうと東京都内だけでも30ケ所はあるとのこと。送電によるロスや廃熱のエコ利用を考えると、地産地消というか東京に作ったほうが合理的ではあります。
 つまり、”どこに建設するか”は政治的な問題であります。この前の基地問題でも”辺野古と書いたら政府方針の署名しない”と言っていた某党首がいましたが、”だったら、どこって書いたら署名する?”ってなんで誰も聞かないんだろう? 
 沖縄の人に

  そんなに基地が欲しいというのなら、東京に作ればいいじゃないか

 と問われたら、みんななんて答えるか聞いてみたい気がします。まあ、空港であればいいんなら、赤字の地方空港なんて山のようにあるんだし(*4)、税金使うなら基地だどうがなんだろうが採算がとれるようにしろって選択肢もありそうな気がするんですが・・・

 どうすればいいかと聞かれても、さして良いアイデアがあるわけじゃないんですが、こういったネガティブな施設の負担を応分に受け持つっていう観点でいうと、それぞれの施設のリスクをポイント化して(*5)、各県に割り振るってのはありでしょうか? 補助金の額に比例させるとか、選挙権の一票の格差の逆数に比例させるとか。

 ところで、上記の”ニガヨモギ”ですが、この名前を由来とする街があります。その名は”チェルノブイリ(*6)”。冗談のようですが、暗示的な話ではあります。

 本書は、1986年の発刊とほぼ四半世紀前に書かれた本。現在どうなっているかとっても気になります。”温故知新”という意味も含め、今読んでみるのも良いかと。他の問題も含めて2010年度版も見てみたいのであります。

《脚注》
(*1)菅直人が新首相になりました
 2010年6月4日に第94代内閣総理大臣に指名されました。
 てか、第8代民主党代表のほうが驚き。現民主党(1998~2010年)の12年間で8人も変わってるんだ(内3回が菅直人)。首相が短命なので気がつきませんでしたが、実はこっちもみんな短期政権。
(*2) ”便利な暮らしを支えるには電気が必要だ”という意見に~
 まあ、”安全保障のために基地は必要だ”という意見には異議を唱える人はいるでしょうが、”平和と正義のための軍事力”みたいな議論をやってる限りなくせはしないんでしょうなぁ・・・
(*3)アンチ・シズマドライブ
  完全リサイクル可能で完全無公害なエネルギー源”シズマドライブ”。シズマドライブのみの働きを止める”アンチ・シズマドライブ”により地球規模のエネルギー静止現象を引き起こされる。この事態の中、唯一可動できるのが原子力で動く”ジャイアント・ロボ”のみであった・・・
 ”ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日”(横山光輝 バンダイビジュアル)より。
(*4)赤字の地方空港なんて山のようにあるんだし
 どこがどうとはいいませんが、”赤字 空港”で検索するといっぱい出てきます。
(*5)それぞれの施設のリスクをポイント化して
 これはこれで難しいんですけどね。オシャレな建物の代表みたいなテレビ局だってテロや軍事目標たりうるので、いざ有事になれば市街戦に巻き込まれる可能性は否定できません。
(*6)チェルノブイリ
 正確にはオウシュウヨモギ(ロシア語で「チェルノブイリニク」)だそうですが、ニガヨモギと言われるのが多いので、こちらから。この話を知ったのは清水玲子の”月の子(MOON CHILD)”(白泉社文庫)でした。

充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない。黒か白かは知らんけど(クォンタム・ファミリーズ/サワロ)

 ども、並行宇宙を行き来するおぢさん、たいちろ~です。(ウソです)
 一応、コンピューターを作っている会社なんぞで働いてはいるんですが、コンピュータ屋にとってひとつの目標が”とにかく早いコンピュータを作ること”ってのがあります。2009年度の事業仕分けで話題になった次世代スーパーコンピューターなんてのがまさにそれ。生命情報工学研究センターの”Magi Cluster(*1)”、もうすぐ完成予定の理化学研究所のプロジェクトなどなど。
 この次のスーパーコンピュータとして考えられているのが”量子コンピューター”。
 ということで、今回ご紹介するのはこれを使ったSF(かな?)小説”クォンタム・ファミリーズ”であります。


Photo
写真は”竹居のデジカメ写真”のHPより。巨大なサボテン”サワロ”です。


【本】クォンタム・ファミリーズ(東 浩紀 新潮社)
 量子コンピュータが実用化された高度情報化社会。それは、コンピューターからの情報が信用できない、並行世界(*2)と行き来することのできる社会でもあった。
 壊れた家族の絆を取り戻すため、並行世界を遡る量子家族の物語。
【花】サワロ
 小説内に登場する”サワロ”とはサワロサボテンのこと。ラテン語で「巨大なローソク」という意味で、最高20メートル、重量12トン、寿命200年にもなるそうです。


 ネタバレになりますが、この物語は葦船友梨花(あしふねゆりか)が並行世界の間で
夫の往人(ゆきと)、子供たちである理樹(りき)、風子(ふうこ)、汐子(しおこ)たちの意識(魂?)を移動させることで、家族の絆というか、幸せ探しをするような物語です。
 平行世界なんで、子供たちは生まれてたり、生まれてなかったり、生き残ったり死んだりととってもややこしい。じゃあ、この技術でみんなが幸せになれたかというとそれはまた別。主人公の往人はテロに巻き込まれて妻子を亡くしたり、自殺したり、自首したりとどの世界でもさんざんな目にあっています。
 平行世界モノの根本には”あの時こうしておけば、もっと良い人生を送れたはずだ”という思いがあるんですが、ベーシックな性格と能力が変わらなければねぇ。よく、”もし、もう一度高校生に戻れたら、もっと勉強するのに”とぬかすヤツがいますが、それが出来るぐらいなら、今も真面目に勉強しているハズです

 このあたりの話を本書では”35歳問題”という言葉で表しています。要約すると

 1.人の人生は過去に成し遂げたこと、現在成し遂げていること、
  未来に成し遂げるであろうことだけでなく、”成し遂げられたかもしれない”
  ことからも出来ている。
 2.生きるとは、成し遂げられるかもしれないこのとの一部を選択し、あとの
  可能性を”成し遂げられたかもしれないこと”に変えていく行為。

 3.35歳で成し遂げられたかもしれない過去が、実際の過去の量を超える
 4.だから人は憂鬱になり、どんなに幸せな人でもこの憂鬱から逃れられない。

 まあ、35歳ってのがビミョ~です(*3)

 現在の人生ってのは”無数の可能性から、自分の意思で選択したことの結果”(いわゆる自己責任原則)。たとえ、偶然の要素が大きかったとしてもです。大学受験なんかでも、どの大学を受験するかを決めるのは結局自分の問題。で、選択を間違えると私のように二浪するハメになります(選択の問題だけか?)。
 まあ、二浪しなければ、今の会社には入っていないだろうとか、もっと素敵な奥様と結婚できたいたはず(*4)とか可能性は捨て切れませんが・・・

 話は戻って、クォンタム・ファミリーズのSF的ポイントは”量子コンピュータによる平行世界間の意識の転移”。量子論てのは現在の科学の中ではもっともわかりにくい理論のひとつで、SF的にケムにまくには格好の素材。でも、この小説ではもっともらしい用語がちりばめられてはいるものの、ほとんど魔法の世界です。
 魔法(魔術)には、白魔術と黒魔術に分かれますが、前者は”好ましい目的のために、人のために使う魔法”、後者が”他人に危害を与えたり、自己の欲求・欲望を満たすために目的のために使われる魔法”のこと。家族のためであれば白魔術だし、自分の人生を再構築するなら黒魔術だし。結局、結果からだけ見れば黒魔術的なんでしょうかね。

 物語の随所に出て来るサワロというサボテンにしても、荒涼とした風景を表現するというより、私としては、葦船友梨花の家族に対する”ハリネズミのジレンマ(*5)”を連想しちゃいました。
 結局のところ、どんなに人生をリセットするような魔法の技術があっても、人間の愛憎といった業の問題を解決することはできないのかもしれません。

 今回のおまとめ

  充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない。
  Any sufficiently advanced technology is indistinguishable from magic
   クラークの第三法則(*6)

  善悪はそれを持ちいる者の心の中にあり。科学者がよく使う詭弁じゃ!
   サクラさんのお言葉(”うる星やつら ビューティフルドリーマー(*7)”より)

《脚注》
(*1)Magi Cluster
 マギ・クラスターは分子機能系を担当するCaspar(カスパー)、生命システム系を担当するBalthazar(バルタザール)、遺伝子情報系を担当する Melchior(メルキオール)などから構成されています。
 命名をしたヤツは絶対エヴァンゲリオンのファンでしょう。決裁した人も偉いけど。
 実物は生命情報工学研究センターのHPでご覧いただけますのでどうぞ。
(*2)並行世界
 いわゆるパラレルワールド。理論的には存在する可能性があるそうです。
 ”よく似ているけど、ちょっと違う”という世界なので、SF的には便利な設定。
(*3)35歳ってのがビミョ~です
 ”OL進化論”(秋月りす 講談社)の”35歳で独身で”を読んでいただければよろしいかと。
(*4)もっと素敵な奥様と結婚できたいたはず
 いや、あの、その、今の奥様が最高です。
(*5)ハリネズミのジレンマ
 鋭い毛を全身に生やしたハリネズミが二匹、巣穴の底で震えている。
 ハリネズミは,寄り添い暖めあおうとするが,互いの針で相手を傷つけあってしまう。 エヴァンゲリオンの屈折した親子関係を表現するのに使われて有名になりました。
(*6)クラークの第三法則
 イギリスのSF作家、アーサー・C・クラークが定義した法則。ちなみに第一と第二は下記のとおり。
 1.高名だが年配の科学者が可能であると言った場合、その主張はほぼ間違いない。
  また不可能であると言った場合には、その主張はまず間違っている。
 2.可能性の限界を測る唯一の方法は、不可能であるとされることまでやってみる
  ことである。
 至言です。
(*7)うる星やつら ビューティフルドリーマー
 高橋留美子原作、押井守監督の劇場版アニメ。名作です。
 このセリフは巫女のサクラさんが、夢を操る妖怪”無邪鬼”と対決する時のもの。

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