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2010年4月4日 - 2010年4月10日

モクレンの花の咲く下で文学少女と出会いたいものです(”文学少女”と死にたがりの道化”/モクレン)

 ども、ブンガクするおぢさん、たいちろ~です。
 近所の庭にモクレンが咲きました。春になると大輪の白い花を咲かせる木で、開花時期が短いのがもったいないくらい美しい花です。毎年、咲くのを楽しみにしています。
 で、この花を見るたびに思い出すのが、ロングの三つ編みにスレンダーなひとりの”文学少女”。ということで、今回ご紹介するのは””文学少女”と死にたがりの道化”であります。

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 写真はたいちろ~さんの撮影。左が”ハクモクレン”、右が”シモクレン”。近所の家の庭にて。
 ”ハクモクレン”は同じ時期に咲く”コブシ”とよく似ていていつも迷うんですが、たぶん間違いないと思います。


【本】”文学少女”と死にたがりの道化(ピエロ)”(文 野村美月、イラスト 竹岡美穂、ファミ通文庫)
【本】”文学少女”と死にたがりの道化(ピエロ)”(原作 野村美月、作画 高坂りと、スクウェア・エニックス)
  物語を食べちゃうぐらいに愛する遠子先輩を主人公とする“文学少女”シリーズの第1作目。遠子先輩の頼みで、千愛(チア)ちゃんのラブレターの代筆することになった元覆面美少女作家、井上ミウこと”井上心葉(コノハ)”(♂)。ところが千愛ちゃんの想い人は存在しなかったことで、話は思わぬ方向に・・・。
 学園ミステリーにして、ライトノベルの傑作。高坂りとでコミック化、2010年5月にはプロダクションI.Gの製作で映画化されます。
【花】モクレン(木蓮)
 モクレン科モクレン属の落葉低木。
 ”文学少女”と死にたがりの道化”では白い花として描かれていますが、これは正確には”ハクモクレン”で10~15mぐらい高くなります。一般的に”モクレン”というと”シモクレン”という外側は紫色、内側は白い花のほうを指します。
 でもやっはり白い花のほうが”文学少女”のイメージは合っているかな。


  かくして、謎の天才覆面美少女作家井上ミウは、たった一冊の本を残して消滅し、
  ぼくは普通に受験し、合格し、高校生になり、そこで本物の”文学少女”を--
  天野遠子先輩を知ったのだ。

  何故、ぼくが、再び書きはじめたのか

    それはあの日、シンと輝く真っ白な木蓮の下で、
    遠子先輩に出会ってしまったせいだった。

 このモノローグで始まる”文学少女シリーズ”、かなりロマンチックなようですが、その時、遠子先輩はお食事中なのですが、食べているのは”本”。本のベージをちぎってもぐもぐ食べるシーンです。
 自己紹介が”ごらんのとおりの文学少女よ”という遠子先輩、腰まで届く三つ編み、みごとにぺったんこな胸(本人曰く、”ちょっとはふくらみあるもん!”)、つぶらな瞳となかなかの美少女。どこぞの文芸部員と違って(*1)、文学を語りだすと止まらないという生粋の”文学少女”です。で、心葉くんはといえば、遠子先輩のお食事シーンを目撃したために、文芸部に拉致されて、遠子先輩のおやつ=三題話をかくはめになるわけです。

 心葉くんはといえば、謎の天才覆面美少女作家としてベストセラーを出したがゆえに恋人が自殺未遂をして、ひきこもりになったという屈折した過去をもつ少年。どちらかというと消極的な性格ながら、言うことはなかなか辛らつ。上記の”ぺったんこな胸”は心葉くんの発言だし、遠子先輩は妖怪あつかいだし。でも、味覚=読書感想の遠子先輩に書くお話を自由に味付けできるとこなんか天才なんでしょうね。でも、”お豆腐の味噌汁にあんこを浮かべたような味”のお話ってどんなんだろうなあ

 ”死にたがりの道化”は、遠子先輩が千愛ちゃんの恋のレポートを読みたいがためにラブレターを代筆するというシラノ・ド・ベルジュラック(*2)のようなきっかけです。表紙の繊細なタッチと淡い色使いのイラスト(*3)なので、表紙だけ見てると甘い話かと思われるかもしれませんが、ストーリーはけっこうダイクサイド。なんとなれば、このお話のモチーフは太宰治の”人間失格(*4)”。でも、原作の雰囲気をよく捕まえているんですね。私は”死にたがりの道化”を読んで、改めて”人間失格”を読みました。

 裏表紙の解説には”ミステリアス学園コメディー”とありますが、テーマになっている文学作品を援用した推理ってけっこう秀逸。ハウダニットではなくホワイダニット(*5)に重点をおいた愛憎劇はけっこう本格的です。

 おぢさんが、ブックカバーなしで通勤中に読むにはちょっと恥ずかしいですが、それでもとってもお勧めのシリーズです。ブックカバー付でぜひどうぞ。
 5月には映画も公開されるので、見に行きたいな~~

《脚注》
(*1)どこぞの文芸部員と違って
 ”涼宮ハルヒの憂鬱”に登場する文芸部員、長門有希さんのこと。極端に無口の人ですが、シーンによっては超長ゼリフを一気にしゃべることもあります。でも、この人からブンガクのセリフが出たことないな~~。ほとんどの時間、本を読んでるのに。
(*2)シラノ・ド・ベルジュラック
 エドモン・ロスタンの戯曲”シラノ・ド・ベルジュラック”のこと。
 大きな鼻の持ち主シラノは、美男のクリスチャンの代わりに自分の想い人でもあるロクサーヌに恋文を代筆するお話。まだ読んでいませんが、ブラックジャック(手塚治虫)にこのモチーフのお話がありました。シラノ役はお茶ノ水博士や猿田彦の若いころのような人です。
(*3)繊細なタッチと淡い色使いのイラスト
 原作版にイラストは竹岡美穂さん。けっこうこの人の絵、好きです。
 コミック版の作画の高坂りとさんも、よく雰囲気を合わされていますのでどちらもお勧め。
(*4)人間失格
 太宰治による長編小説。一言でいうと”自分を偽って生きてきた男がモルヒネ中毒の末、精神病院に入れられる”という身も蓋もないお話。あんまり子供向きの話じゃないと思うんだですが・・・
 内容は、以前このブログでも書きました
(*5)ハウダニットではなくホワイダニット
 どのように犯行を行ったかというトリックに重点を置いたのがハウダニット(Howdunit=How(had) done it)、なぜその犯行を犯したのかという動機に重点をおいたのがホワイダニット(Whydunit=Why(had) done it)です。ちなみに、犯人探しに重点をおくのが、フーダニット(Whodunit=Who(had) done it)。

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やっぱり、松本零士か寺沢武一のイラストが欲しかったな(シャンブロウ/茜)

 ども、中年SFファンの、たいちろ~です。
 今でこそ、ライトノベルのような”表紙”が本の売れ行きを左右される時代ですが(*1)、昔のSF本もけっこうマンガ家が表紙を飾っていたことがありました。ハヤカワ文庫だけで見ても、石森章太郎の”デューン 砂の惑星”(*2)とか、永井豪の”超革命的中学生集団”(*3)とか、吾妻ひでおの”・・・絶句”(*4)とか。
 その中でも、もっとも雰囲気のあってたのが、今回ご紹介する松本零士の”シャンブロウ”であります。

Akane Photo_2

 左の写真は青木繁伸さんの”植物園”のホームページより。茜(あかね)です。
 右は茜色(RGB 211,56,28)と緋色(RGB 178,45,53)の比較。


【本】シャンブロウ(C.L.ムーア (著)、仁賀 克雄 (翻訳)、論創社)
 熱線銃を片手に宇宙を股にかける無法者、ノースウエスト・スミスは酒場で”シャンブロウ”と呼ばれる子猫のような美女を助けた。赤褐色の肌、細く切れ上がった猫のような瞳、指には丸い爪、細く平らなピンクの舌。そして頭に巻かれたターバンの下には滝のように流れる緋色の髪が隠されてた・・・
 1933年に”ウィアード・テールズ”誌に掲載されたスペースファンタジーの古典。
【花】(あかね)
 アカネ科のつる性多年生植物。根は乾燥すると赤くなるので”アカネ”なんだそうです。Wikipediaによると、茜の色素を高純度に精製した染料の色が”緋色”、茜を精製せずに使った染料の色が”茜色”
 上の図を見てもらうと判るように茜色は緋色よりくすんだ赤になります。


1_2 2_5 3_2




























 今回ご紹介の”シャンブロウ”は、1971~3年にハヤカワ文庫から出版された”大宇宙の魔女”、”異次元の女王”、”暗黒界の妖精”の3冊で出版されたものを改訳してまとめたもの。(写真は左より同順番。YhaooオークションのHPより)
 イラストは松本零士です。”暗黒界の妖精”の表紙なんて、思いっきりテレサだし(*5)。

 確かこれらの本を読んだのは中学校か高校ぐらいだったかな?
 主人公のノースウエスト・スミスなんて、後から考えるとすごいキャプテンハーロック(*6)のイメージがあるし。まだ松本零士ブームの前だったんで、たぶん他の作品での印象でしょうか? ”宇宙を駆ける無法者”というイメージがとてもマッチしています。

4


 今回再発行するんだったら、なんでイラストも使わなかったんだろう? 今回の表紙って、なんだか女性器をイメージさせるようなので、合ってないと思うのはオールドファンの偏見でしょうか・・・

 さて、改めて読み返してみましたが、もし、新しくイラストを描いてもらうとしたら松本零士以外だったら寺沢武一かなっという感じ。今のキャプテンハーロックのイメージっていうと、銀河鉄道999に出てくるような”強くてクールだけど、ストイックで頼れる”かなあ。かつてのハーロックは大人向けの短編とかガンフロンティアあたりではけっこうエッチなシーンもあったんですけどね。

 ”クールな殺人者ながら、けっこう女に手が早い。魂に根ざした生存本能と、強靭な精神力”というノースウエスト・スミスのキャラクターから見ると、”コブラ”と”ゴクウ”(*7)をミックスしたあたりがベストマッチ。寺沢武一というマンガ家は、”コブラ”のような西部劇っぽい酒場とか辺境のジャングルとかのような舞台をカッコよく書けるし、美女を描かせたら天下一品の人。ストイックなようでいて女にもてる”ゴクウ”は新しいノースウエスト・スミス像にはぴったりです。

 で、”シャンブロウ”はというと、上記の紹介にあるようにまさに”猫”のイメージ。ネコ耳はないけど。緋色の髪から人間の生命力を吸い取るかわりに甘いエクスタシーの悦楽を与えるという生き物です。緋色っていうのを改めて調べてみると、まさに血をイメージさせる色なんですが、確かに血の色って人間の情念を掻き立てるようなところがありますよね。植物の根っこから染める色だとは思えん・・・

  彼女はすくっと立ち上がった。
  その頭から伸びてうごめく緋色のものは全身に滝のごとく垂れ下がる。
  生きたマントとなって床の素足まで達し、恐ろしくぬめぬめのたうつ生命体として
  彼女を覆った。
  彼女は手を上げると泳ぐように滝をかき分け、塊を肩の後ろに投げ、褐色の肉体、
  すばらしい曲線をあらわにした。
  優美な笑みを浮かべ、額から背中にかけて這いまわる髪は、蛇のようにぬるぬる
  した生きている巻き毛となって、よじり合い恐ろしい背景を成していた

 いや~、私、ロングヘヤーの女性に弱いんです・・

 もとい、松本零士はスレンダーな美女、寺沢武一はグラマラスの美女と傾向は違いますが、どちらを選ぶかは好みかと。今からでもいいから、ぜひイラストに入れて欲しいものです。
 文章だけでも充分楽しめる本ですので、ぜひご一読のほどを。

《脚注》
(*1)”表紙”が本の売れ行きを左右される時代ですが
 ベストセラーになってる”もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら(岩崎 夏海 ダイヤモンド社)”なんて、あの表紙でなかったらここまで売れなかったと思うんだけどなあ。現在、読書中です。
(*2)石森章太郎の”デューン 砂の惑星”
 文章はフランク・ハーバート。砂の惑星”アラキス”で、救世主ポウル・アトレイデをめぐる大河SF。
 1984年にデイヴィッド・リンチの監督により映画化。後に”新スタートレック(Star Trek: The Next Generation)”でジャン=リュック・ピカード艦長を演じるパトリック・スチュワートも出演しています。
(*3)永井豪の”超革命的中学生集団”
 文章は平井和正。”ウルフガイシリーズ”、”幻魔大戦”など人間のダークサイドを描いた小説の多い平井和正ですが、これは数少ないはちゃめちゃコメディ小説。
(*4)吾妻ひでおの”・・・絶句”
 文章は新井素子。当時としては女子大生SF作家とロリコンマンガ家の夢のコラボレーションでした。”ひでおと素子の愛の交換日記(角川書店)”は共著になってます。
(*5)思いっきりテレサだし
 1978年に公開された映画”さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち”に登場する地球に救いの手をさしのべる美女。DVDのパッケージなどに描かれているテレサの祈りのポーズは、まんま”暗黒界の妖精”の表紙です。
(*6)キャプテンハーロック
 宇宙船”アルカディア号”の船長。”宇宙海賊キャプテンハーロック”や”銀河鉄道999”が有名ですが、ハーロックというキャラクター自体はそれ以前の短編等にも出ていたキャラクターです。
(*7)”コブラ”と”ゴクウ”(寺沢武一)
 ”コブラ”は少年ジャンプに連載された、宇宙海賊コブラを主人公としたスペースオペラ。
 ”ゴクウ”は”コミックバーガー”に連載された、全てのコンピューターにアクセス可能な端末を埋め込まれた探偵、風林寺ゴクウを主人公としたSFハードボイルド。

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