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枯れた技術の水平思考(ゲームの父・横井軍平伝/エノコログサ)

 ども、以外とショットガンをぶっっぱなすのがうまいおぢさん、たいちろ~です。
 50代前後のおぢさん方は”レーザークレイ”ってのを覚えてるでしょうか?
 1970年代の前半にボーリングブームの去ったあと、ボーリング場を改装して作ったものです。大型スクリーンにクレー(的)を投影してそれをショットガンにみたてた光線銃で撃ち落とすといったゲームで、現在のガンシューティングゲームの超大型のものと思っていただければいいかと。でも、これがなかなかの優れモノで、銃床に圧搾空気(たぶん)を送り込んで衝撃を再現するとか、でかい発射音が出るとか。死んだ親父がここの支配人をやってまして、よく連れてってもらいました。
 で、このゲームを作った人が横井軍平。ということで、今回ご紹介するのは”ゲームの父・横井軍平伝”であります。


200803
 写真はたいちろ~さんの撮影。庭のエノコログサ。


【本】ゲームの父・横井軍平伝(牧野武文 角川書店)
 横井軍平はサブタイトルの”任天堂のDNAを創造した男”とあるように、任天堂のゲームを数多く開発した部長さん。この人がいなければ現在の任天堂の隆盛はなかったというゲーム界では知られざる伝説の人。この本は言ってみれば任天堂版”プロジェクトX”みたいなもんです。
【花】エノコログサ
 漢字で書くと狗尾草。犬の尾に似ていることから、犬っころ草(いぬっころくさ)だそうですが、”猫じゃらし”というほうが一般的。花言葉は”遊び”

 横井軍平が開発した代表的なモノを上げると

Lovetesters_2
【ラブテスター】
 男性と女性が手を握ってセンサーを握ると愛情をアナログの針の振れで愛情の度合いが計測できるというおもちゃ。1969年の発売。堂々と女性の手を握れるというシロモノで、若き日にこれで女の子を手を握ったという甘塩っぱい思い出を持つおぢさん、おばさんも多いのではないかと。
 技術的には、人間の体を流れる電流を測る検流計にすぎないんですが、若い男女にとってそんなこた、ど~でもいい話です

Sp
【光線銃SP】
 ビール瓶型の的に向かって銃を撃つと、瓶が飛んだりするおもちゃ。1970年の発売。マカロニ・ウェスタン(*1)なんかがはやっていたのころです。
 光線銃ってのは文字通り光線の出る銃だと思っていましたが方式は、2通りあって”光線銃SP”は銃にある豆電球の光を的の光センサーで感知しますが、上記のレーザークレイは的の光を銃の中にあるセンサーで感知するしかけで光は出ないとのこと。知らなんだ・・・
 ちなみに、光線銃SPの光センサーは太陽電池で、シャープでこれを開発していたのがのちにファミコンを世に出す上村雅之
  ※ラブテスター、光線銃SPの写真は”ルチオのオーラ”のHPより

【ゲームボーイ】
 1989年に発売、1億1800万台が販売されニンテンドーDSがその記録を抜くまで20年間”世界一でもっとも普及したゲーム機”。オリジナルポケモンシリーズもこれで動いてました。

 先日、”衝撃! 三世代比較TV ジェネレーション天国(*2)”を見てて思ったんですが、世代間でピピピと反応するのって、思った以上に違うモンです。おぢさんとしてはやっぱり前の二つですねぇ。
 その他にも、この人が作ったのはウルトラマシン、テンビリオン、ゲーム&ウォッチなど多数(*3)。

 ところで、これらって当時としては”ハイテクおもちゃ”ではありましたが、そんなに先端技術をバリバリに使ってるわけではないんだそうです。むしろ普通の技術をどう使うかってところに知恵を絞っていて、その発想が”枯れた技術の水平思考”
 メーカーに勤める人間から言わせてもらうと、性能と価格ってのは一般的にはトレードオフの関係にあるので、高性能のものを作ろうとすると高くなります。また、新しいデバイスで性能が上がると新しい使い方とか、要求レベルが上がってきて、結局価格性能比ってのは悪くなります。まあ、CPUやメモリみたいにムーアの法則(*4)で急速に安くなりましたが、1980年代半ばに16Kとかのメモリで平気で動いていたパソコンが、Windows Vistaでは512MB(約3.3万倍)積んでも”遅い”と言われてますから、イタチごっこみたいなもんです。

 安くあげようとすると大量に生産して固定比率を下げるとか、安い部品を工夫してうまく使うとか。それにおもちゃみたいに故障しない、フリーズしないことも要件になるので、結局は大量生産でコストが下がって技術的に枯れたもの(*5)をつかうのもありになります。で、これをうまくやった会社の代表が任天堂であり、この会社のDNAを作ったのが横井軍平です。

 初代のゲームボーイがモノクロだったのは、カラー液晶(すでに存在していた)だとコストは高いし、電池は保たないし、見えにくいしという問題もあったけど、根本には横井軍平のこんな言葉があったから

  私はいつも「試しにモノクロで雪だるまを書いてごらん」と言うんです。
  黒で書いても、雪だるまは白く見えるんですね。
  リンゴはちゃんとモノクロでも赤く見える。

 さきほどのジェネレーション天国でも、おぢさん世代は”そこは想像力でカバーしてたんだ!”みたいなことを言ってます。まあ、風呂敷ひとつで月光仮面になりきれた時代の人たちではあります。今のコスプレイヤーにはわかんないかもしんないけど。

  技術者というのは自分の技術をひけらかしたいものですがら、
  すごい先端技術を使うことに夢を描いてしまいます。
  それは商品作りにおいて大きな間違いとなる。
  売れない商品、高い商品ができてしまう。

 売れないだけなら会社に損害をかけるだけですみますが、担当者はデスマーチ(*6)を行進するハメになっちゃったり・・・

 本書は題名だけだとゲームマニア向けの本と思われるかもしれませんが、すべての技術者に読んで欲しい本であります。

《脚注》
(*1)マカロニ・ウェスタン
 1960~70年代前半に作られたイタリア製の西部劇。ジュリアーノ・ジェンマの”荒野の1ドル銀貨”、クリント・イーストウッド”荒野の用心棒”など。どうも記憶がごっちゃになっているようで、アラン・ラッドの”シェーン”は1953年、ユル・ブリンナーの”荒野の七人”は1960年のアメリカ映画でした。
(*2)衝撃! 三世代比較TVジェネレーション天国
 フジテレビで放映されてるスペシャルバラエティ番組。
 50~60歳のおぢさん世代に対する10~20代アイドルのクールなリアクションが秀逸。でも、共感するのはおぢさん世代のほうなんだな~、やっぱり。
(*3)ウルトラマシン、テンビリオン、ゲーム&ウォッチ
 ウルトラマシン:部屋の中で遊べるピッチングマシン
 テンビリオン :樽型のルービックキューブのようなパズル
 ゲーム&ウォッチ:専用小型携帯ゲーム機。ニンテンドーDSやPSPのご先祖様
(*4)ムーアの法則
 インテルの創業者、ゴードン・ムーアの言った”集積回路上のトランジスタは18ヶ月ごとに倍になる”というもの。
(*5)技術的に枯れたもの
 1976年にソ連のベレンコ中尉が亡命した事件で、乗っていたMiG-25ジェット戦闘機に真空管が多用されていて話題になりました。これは先進性より信頼性を重視したもの。一概にハイテク機器でもすべてハイテクってわけではない事例です。
(*6)デスマーチ
 ソフトウェア産業において、デスマーチとは、長時間の残業や徹夜・休日出勤の常態化といったプロジェクトメンバーに極端な負荷を強い、しかも通常の勤務状態では成功の可能性がとても低いプロジェクト、そしてこれに参加させられている状況を主に指す。(Wikipediaより)
 詳しくは、”デスマーチ(エドワード・ヨードン 日経BP社)”をどうぞ

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