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2010年11月

失敗するのはよつばの仕事だ(よつばと!/定義山西方寺の仁王さま)

 ども、仕事でよく失敗するおぢさん、たいちろ~です。
 私自身は愛書狂なので、本やマンガとジャンルを問わずいろんな本を読みますが(*1)、時々”なんで面白いかわからないけど、すごく気に入っちゃう”という作品や作家ってのがいます。その代表が今回ご紹介するあずまきよひこの”よつばと!”。
 派手なドラマがあるわけじゃなく、強烈な個性のキャラクターがいるわけでもなく、癒し系とか萌え~とはちょっと違うんだけど、なんだか面白い
 なんとなくだけど、毎回買っちゃう、そんな作品です。


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 写真はたいちろ~さんの撮影。定義山西方寺の仁王さま。
 金網ごしでちょっと見にくいですが、左が吽形像(うんけいぞう)、右が阿形像(あけいぞう)です。

【本】よつばと!(牧野武文、角川書店)
 ”よつば”は元気いっぱいの5歳の女の子。とーちゃんと二人暮らし。今日もお隣の綾瀬さんちのお姉ちゃんたちや、とーちゃんの友人のジャンボや、やんだと遊びに行ったり、家でお話ししたりしています。
 特に話題になるでもないのに、新刊が出ると必ずベストセラーになる漫画。でもそれが話題にならないのがまた不思議?!
【旅行】定義山西方寺の仁王さま
 定義山西方寺は仙台市郊外にある阿弥陀如来をご本尊とする古刹。
 ”仁王さま(金剛力士)”は”天部”という仏や仏法、仏法を信仰する人々を外的から守護する神々のグループに属してて、他にも四天王、八部衆、十二神将なんかがいらっしゃいます(*2)。いわば、”戦士属性”なので、怒りの顔はあたりまえでしょうか。


 さて、11月に発売された”よつばと!”10巻ですが、内容はとーちゃんと公園でブランコしたりとか、ホットケーキをいたり焼いたりとか、電気屋さんにデジカメを買いに行ったりするお話しです。
 でも、よつばがホットケーキを焼いているのを見てると、うちでも久しぶりに作ってみようかって気になるし、電気屋さんってワンダーランドなんだ~~~って思っちゃいます。
 今回、印象深かかったのは、めずらしくよつばがとっても怒られるお話。
 家の中で遊んでいて、うっかりお茶碗とかコップとかを割っちゃったよつば。で、うそをついてごまかそうとします。

  よつば  :うそつきむしがよつばのなかにはいって・・・
  とーちゃん:うそつき虫が中に入るとどうなるんだ?
  よつば  :・・・かってにうそをつく・・・

 それでとーちゃんは、よつばを連れて山門の仁王さまのところへ、うそつき虫を退治してもらいに行きます。不安になるよつば。とーちゃんに”よつばがうそをつていたら、よつばが食べられちゃうかも”って脅かされて真っ青になるよつば。
 よつばは憤怒の顔の仁王さまの前に連れて行かれて、仁王さまの柵の中に閉じ込められて、とうとう泣き出して、ごめんなさいしちゃいます。

 とーちゃんにあやまって、家に帰っていく二人を見つめる仁王さまの顔はちょっとやさしそう・・・

 とーちゃんのすごいところって、この間に一回もがみがみ怒っていないんですね。でも、ちゃんとよつばに”ウソをついてはいけない”ってことを理解させています。
 帰り道で、よつばに諭すとーちゃんの言葉。

  とーちゃん:お茶碗を割ったのは別にいい
        窓ガラスを割ったのも、コーヒーをこぼしたのも別にいい
  よつば  :・・・またおさらをわっちゃっても?
  とーちゃん:別にいい
        失敗するのはよつばの仕事だ
  よつば  :ぱそこんこわしても?
  とーちゃん:パソコンは勘弁してくれ。
        でも、嘘はつくな、な?
  よつば  :うん、もう、うそつかない

 自分が父親なので、このエピソードがとても気に入りましたが、他の話も面白いです。ふと、思ったんですが、”よつばと!”って、漫画界のサザエさんみたいなもんかも。必ず高視聴率を上げる番組だけど、だれも話題にしない。だけど毎週見てしまうみたいな。
 ぜひ、いろんな人に読んで欲しい珠玉の作品です。

《脚注》
(*1)私自身は愛書狂なので~
 決して”ヲタク”ではありません、はい。
(*2)”仁王さま(金剛力士)”は”天部”という~
 仏像の知識を解説しているコミックエッセイ(かな)の”仏像はじめませんか。”(曜名 PHP研究所)を参考にしました。仏像を解説した本もいろいろありますが、解りやすさという意味では良い本と思います。初心者向けにはけっこうお勧めです。

世界にはばたくポケモン、ジェットだぜ!(菊とポケモン/ポケモン新幹線)

 ども、子供にポケモン買わされたおぢさん、たいちろ~です。
 先日、ゲームボーイを開発した横井軍平の本(*1)を読んでたら、たまたま”菊とポケモン”という本を見つけたのであわせて読んでみました。日本のコンシューマー製品でワールドワイドにヒットしたコンテンツ”ポケモン”って文化的にどう見られているのか?!ということもあって、アエラ的なお題を出しつつ(*2)、”菊とポケモン”の紹介であります。

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写真はたいちろ~さんの撮影。
ポケモンジェトと言いながら、ポケモン東北新幹線の写真しかありませんでした。申し訳ない。


【本】菊とポケモン(アン アリスン 新潮社)

 文化人類学者アン アリスンによる日本のポップカルチャー”パワーレンジャー(日本のスーパー戦隊モノのリメイク)”、”セーラームーン”、”たまごっち”、”ポケットモンスター”を研究した本。単なるオタク本のたぐいではなく、かなりハイレベルな論文です。
 原題は”Japanese Toys And The Global Imagination”ですが、”菊とポケモン”はネーミングの勝利です(*3)。
【旅行】ポケモン新幹線
 外装にピカチューをはじめとしたポケモンのキャラクターをあしらった乗り物。
 ポケモンジェットの最初の就航は1998年とのことです。新幹線(JR東日本)は2008年に運行。
機内サービスとかはポケモンジェットのほうが上かなぁ。


 アリスンが結論として述べているのは、下記の3点

(1)グローバル文化の覇権を握っていたアメリカのソフトパワーの縮滅
(2)グローバルに想像力を喚起する新しいモデルは、作品自体に人々を引きつける
  魅力があるが、作成した国やその文化に対する好感を喚起するものではない
(3)クール・ジャパンが世界で人気を勝ち得た理由は、新世紀の資本主義的
  マーケティングと合致したファンタジー構成
があるからと考えるのが妥当

 数年前にサン・フランシスコに言ったときにトイショップにポケモンやドラゴンボールのゲームとかグッズが置いてあって、子供から”買って欲しい!”とせがまれたんですが、”日本でも売ってるやろ!”とダメ出ししたんですが、実はこれは間違いみたい。
 海外に輸出されている文化ってのは、ちゃんとその国ごとにカスタマイズされている場合があるってことです。これが(2)で言ってる内容。
 古くは”ゴズィラ(*4)”のように、日本のものを換骨奪胎してるってのは程度の差こそあれ、今でもあるそうです。
 ”グローバル化”っていうのは世界のどこでも通用するって言う印象がありますが、どうも”無国籍化”っていう側面もあるみたい。ポケモンの場合、ポケモンワールドは日本をモチーフにしたものではなく、どこにもない世界が舞台で、それがどこででも受け入れられる理由の一つだとか。逆にセーラームーンがアメリカで失敗作の烙印を押された(*5)のは日本的なテイストをそのまま持っていったのがまずかったとの評価をしています。
 こういった点をちゃんと押さえておかないと、手放しに”クール・ジャパン”礼賛に陥って危険なのかもしれません。

 あと、ポケモンの魅力を経済っていう観点で論じているのもユニーク。
 文化人類学の本なんかを読むと需要と供給などの狭義の経済のほかに”交換”と”贈与”っているのが出てきます。
 ポケモンっていうのはこのへんがゲームに組み込まれていて、単純にポケモン同士の戦い(バトル)のほかに友達にポケモンをあげたり、交換(トレーディング)ができるのが直線的なストーリーを追いかけるディズニーアニメではなかった点だと指摘しています。じゃあ昭和の時代の昆虫採集とかメンコみたいな牧歌的な世界だけかというと、交換自体がリアルな経済というか、レアモノは高いみたいな市場価格が形成されているとか、シビアな経済原則の側面にも言及していて、こういった二重構造的なところは面白いです。

 たくさんあるオタク評論とは一線を科したユニークな本。”ポケモンはよく解らない”というおぢさん世代(私もですが)ですが、単にゲーム批判をするだけでなく、こういった見方もあるという点では面白い本です。ただし内容はけっこうハイブロウな、噛み応えのある内容です。

《脚注》
(*1)ゲームボーイを開発した横井軍平の本
 ゲームの父・横井軍平伝(牧野武文 角川書店)のこと。
 詳しくはこちらをどうぞ
(*2)アエラ的なお題を出しつつ
 朝日新聞出版が発行する週刊誌。まじめな雑誌ながら、ど~しようもなくくだらない駄洒落を使った「一行コピー」が魅力。編集会議で何にするかをまじめに議論している姿を想像すると笑えます。
(*3)”菊とポケモン”はネーミングの勝利です
 日本研究の古典、ルース・ベネディクトの”菊と刀”のもじりです。日本語版あとがきでアリスンが”文化人類学者という共通項はあるが立ち位置は異なる”とコメントしています。こっちも現在読書中なので、また別の機会に。
(*4)ゴズィラ
 日本の”ゴジラ”をアメリカに輸出するにあたって、特撮は日本で俳優をアメリカ人にした”怪獣王ゴジラ”ってのがあります。見たことはないけど。本書ではこのバージョンを”ゴズィラ”と表記。
(*5)セーラームーンがアメリカで失敗作の烙印を押された
 他の国では成功しているし、アメリカでもカルト的な人気を得ているので、一概に失敗だとは言えないですが。
 ただ、アメリカというディズニーを擁するアメリカでも人気を得たことの裏返しが(1)で言ってるアメリカンパワーの低下にあたります。

ここでないどこかへ 2010(ファイアーキング・カフェ/東京物語/ダリア)

 ども、とうとう51歳になってしまったやまとんちゅーのおぢさん、たいちろ~です。
 私の好きな作家のひとりに”いしかわじゅん”というのがいる。
 漫画評論家としては”BSマンガ夜話”のパネリストを務め(*1)、小説やエッセイも書くし、片山まさゆき、はだみちとし、内田春菊といった漫画家を世に送り出すというマルチな才能の持ち主しだが、本業は漫画家である(*2)。
 で、この人が久しぶりに小説を出したので読んでみた。今回ご紹介する”ファイアーキング・カフェ”だ。


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 写真はたいちろ~さんの撮影。近所のダリア。


【本】ファイアーキング・カフェ(いしかわじゅん 光文社)
 那覇にはいろんな人がいる。沖縄出身のとうちなんちゅー、そして本土から流れてきたやまとんちゅー。それぞれにつらい過去、やるせない現在を生きている。だが、出会いと別れの中で未来に向かって踏み出していこうとする者もいる。
 那覇で生きている人々を描いた連作長編小説。
【本】東京物語(いしかわじゅん e-Book)
 コマちゃんこと独楽彦君は独身のフリーライター。女子高校生のガールフレンド小夏がいながら、なぜがもててしまう日々。そんな二人を軸に、バブルな時代の若者たちの日常を描いた青春漫画
 1989~1993年に週刊プレイボーイに連載(*3)。
【花】ダリ
 キク科ダリア属の多年生草本。原産地がメキシコの高原。和名はテンジクボタン(天竺牡丹)とあるように、牡丹に似た華やかな花が咲く。
 花言葉は見たとおりの”華麗、優雅”の他に”移り気、不安定”というのも。


 ”ファイアーキング・カフェ”を読んで思い出したのが、同じくいしかわじゅんの”東京物語”だ。この2作品には共通のテーマがある。それが”ここでないどこかへ”。だが、語られるシチュエーションはかなり異なる。

 ”東京物語”は手元にないので記憶で恐縮だが、確かオーディションか何かで役者志望の若者に、役者になりたい理由を聞いた時の答えが”ここではないどこかへ行きたいんです”だったと思う
 ちょうどバブル終焉直前の最後のきらめきを見せていた時期で、アルバイトなんかをしながらでもなんとなく生活できていて、夢を喰べながらでも未来を信じていられていた時代(*4)。言ってみれば”ここでないどこか”とは”未来”と同義語だった。
 それが”バブルという時代”の空気だったのかもしれない。

 そして2010年。
 ”ファイアーキング・カフェ”で、”ここでないどこか”を求めて那覇に来た人たちの言葉はこうだ。

 ミュージシャン志望のフリータの男と同棲していた愛は、コンビニとキャバクラと風俗で稼いで貢いだあげく、その男は他の女と逃げられた。

  愛  :カレシがいなくなった部屋にいたら、もうなんだか、
      私には何も残っていないような気がして、
      だから、いっそ一度知り合いが誰もいないところにいっちゃおうと思って
      そしたら、沖縄なんていいかなって・・・ 暖かいし

       (中略)
      なんとなく、どこかへいきたいんですよね。
      今までいたところで、もう何もすることがなくなっちゃって、
      だから次のとこにいきたいんだけど、どこいったらいいのかわからないし

 話を聞くのは、人間関係に疲れて本土から望んで転勤してきたOLの真由美。彼女のモノローグがこう重なる。

  真由美:ここじゃないどこか。
      誰もが、ここじゃないどこかに自分の居場所はあると思うのだ。
      自分のためだけに用意された場所が、どこかにあると思うのだ。
      私も、そうやってここに来た。

 将来の展望もなく、1泊1500円のドミトリーに住む21歳の愛。
 支社長からも信頼されているキャリアウーマンながら、独身でレズの38歳の真由美

 程度の差こそあれ、二人にとって”ここでないどこか”は逃亡の地でしかないのかもしれない。そこは”東京物語”にあるような”熱のある場所”ではないのかもしれない。

 ”ファイアーキング・カフェ”の中でもっともアクティブなのが、那覇の出版社社長の中年男性と付き合っていた女子高校生のダリア。出版社を倒産させて夜逃げ同然に東京に向かった男を追いかけて彼女も東京に旅立つ。”百万円たまったら東京に行く”という意思と実行力。そこには”ここでないどこか”といったあやふやなものではなく、その先はどうなるかわからなくても”愛する男のいる東京”という明確な場所がある。

 この2作品の違いが、バブルという時代と、暗い世相の現在から来るのか、浮遊する空間である東京と、土着の生命力を持つ那覇との差から出たものかはわからない。
 ただ、”ここでないどこか”には、やはり未来につながるどこかであって欲しいと望んでしまうのだ。

 ”ファイアーキング・カフェ”は新刊だが、 ”東京物語”は現在は絶版。ただし電子書籍としてネットで入手できるので、ぜひ合わせて読んでいただきたい。

《脚注》
(*1)”BSマンガ夜話”のパネリストを務め
 ”BSマンガ夜話”はNHK・BS2で不定期に放送されているテレビ番組。1つの漫画を1時間かけて語り合う(番組終了後も続けて語り合っているらしい)というコアな内容。この番組を見たいがためにBS2を契約したいと思ったぐらい。
 漫画評論家は数多くいるが、文章が書けて、絵(漫画)も描ける人というのはいしかわじゅんと夏目房之介ぐらいしか私は知らない
(*2)本業は漫画家である
 ”憂国”、”約束の地”、”至福の街”といったSFっぽいものから、”パンクドラゴンシリーズ”、”ちゃんどら”、”うえぽん”といったギャグマンガ、今回の”東京物語”のようなスリーリーマンガまで幅広いジャンルで名作を出している。
(*3)1989~1993年に週刊プレイボーイに連載
 中のエピソードにトッップアイドルがヌード写真集を出すという宮沢りえの”Santa Fe”(1991年発刊)をモデルにしたものがある。そういう時代だったのだ。
(*4)夢を喰べながらでも未来を信じていられていた時代
 リクルート社のアルバイト情報誌「フロムエー」がフリーアルバイターをフリーターと略したのが1987年、広辞苑に掲載されたのが1991年(Wikipediaより)。
 現在の”就職を希望しながらフリーターにならざるを得なかった”といったネガティブは言葉ではなく、”自分の夢を実現するためにあえて就職を拒否する”といった前向きなものだった。

己の腕と腰のドスに誇りをかけた男たちの物語(機動戦士ガンダム MS-IGLOO/木枯らし紋次郎/お台場ガンダム)

 ども、ファーストガンダム世代のおぢさん、たいちろ~です。
 先日、知人から”機動戦士ガンダム MS-IGLOO”を借りました。あるのは知ってましたがリアルCG系(*1)ってあんまり好みではないので今まで観てませんでしたが、けっこうハマりましたね~。一気に9本観ました。
 最初は銀河英伝説っぽいのかな~(*2)と思ってましたが、観ていて意外なのを連想しました。それは1970年代の名作時代劇”木枯らし紋次郎”。ということで今回ご紹介するのはおぢさん的”MS-IGLOO”鑑賞法であります。


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 写真はたいちろ~さんの撮影。お台場ガンダムのバストアップです。


【DVD】機動戦士ガンダム MS-IGLOO(監督:今西隆志、制作:サンライズ) ジオン軍の兵器開発の最終評価試験を行う第603技術試験隊の活動を描いたフル3DCGアニメ。ガンダムシリーズの外伝的な作品です。
 オリヴァー・マイ技術中尉、キャディラック特務大尉といった若者の他にプロホノウ艦長、兵器のテストパイロットのヘンメ大尉、ソンネン少佐といったナイスな中年のオヤジが登場。
【DVD】木枯らし紋次郎(原作:笹沢左保、主演:中村敦夫、監修:市川崑)
 他人との関わりを極力避け、己の腕一本で生きようとする渡世人”木枯らし紋次郎”を描いた1970年代を代表する時代劇。フジテレビで放映。
 ニヒルでクールな、そのくせ結局しがらみをもってしまうキャラクターは新しいヒーロー像として大人気を博しました。
【旅行】お台場ガンダム
 お台場1/1ガンダムを見た時思ったんですが、モビルスーツの関節部分って意外と隙間が空いています。セルアニメ版で見てるとあまり解りませんが、確かに外殻構造でぎちぎちに詰めると稼働できないんでしょうね。1/1ザクってのはないので、ガンダムで代わりに。


  孤独を癒してさすらう旅か 愛を求めて彷徨う旅か
  頼れるものはただひとつ 己の腕と 腰のドス
  後姿が泣いている あいつが木枯らし紋次郎

 おそらく40代後半以上の方でしたら、芥川隆行の名調子を覚えておられる方もいらっしゃるかと(まぁ、MS-IGLOOを見る世代とはずれてるでしょうが・・・)
 同じ時代劇でも、いわゆる松平健なんかの”斬る”っていうような様式美ではなく、”叩き切る”といえそうな荒々しい殺陣、自分の技量と武器にのみ信頼を置く強さがありながら、どこか虚無的で滅びを予感させるような人生観、これが木枯らし紋次郎が見る人を引き付ける魅力かと。
 これって、MS-IGLOOの新兵器のテストパイロットたちとなんとなくダブってみえたんでしょうかねえ。大砲屋としての技量と誇りを持ちながら、モビルスーツの時代を予見しつつ、それに殉じたヘンメ大尉。若者がモビルスーツへ転換していく中、戦車乗りとしての己の矜持と信念を持ち続けたソンネン少佐。
 渡世人として名刀を持っているわけではない紋次郎と、素人目にも失敗作っぽい新兵器(*3)。それを使いこなせるという、おのれの技術への絶対的な信頼は”頼れるものはただひとつ 己の腕と 腰のドス”っていう言葉に共通している魂かも。

 後から気が付いたんですが、各エピソードのサブタイトルってなんとなく木枯らし紋次郎に似てる気がします。

  【MS-IGLOO】            【木枯らし紋次郎】
 ・大蛇はルウムに消えた       地蔵峠の雨に消える
 ・遠吠えは落日に染まった      夜泣き石は霧に濡れた
 ・軌道上に幻影は疾(はし)る     大江戸の夜を走れ
 ・ジャブロー上空に海原を見た    無縁仏に明日を見た
 ・光芒の峠を越えろ          三途の川は独りで渡れ
 ・雷鳴に魂は還る           流れ舟は帰らず

 おぢさん世代の言語感覚と言ってしまえばそれまででしょうが、なんとなく気になります。でも、この作品のメインスタッフって私(1959年生まれ)とほとんど同世代なんだよな~。監督の今西隆志(1957年生まれ)、脚本の大熊朝秀(1957年生まれ)、大野木寛(1959年生まれ)、スーパーバイザーの出渕裕(1958年生まれ)、デザインワークスのカトキハジメ(1963年生まれ)と、み~んな1960年前後の生まれ。きっと子供のころ木枯らし紋次郎を見てたんじゃないかな。

 MS-IGLOOは作品としては、3Dコンピュータグラフィックスを採用したのは正解でしょうね。モビルスーツの駆動部分の隙間とか、アクチュエーターの動きなんか。メカ描写におけるリアリティの面ではセルアニメと比較にはなりませんねぇ。かといってセルアニメとCGの組み合わせだとそれはそれで不整合が目につくし(過去、それをやったアニメもありましたが)。人物をCG化する不利を承知でやってるならたいしたもんです。

PS.このDVDを借りたお礼にガンダムセンチュリー(*4)をお貸ししてます。

《脚注》
(*1)リアルCG系
 今の若い人ってファイナルファンタジーとかやってるので違和感がないのかもしれませんが、おぢさん的には不気味の谷(ロボットの外観や動作がより人間に近づくと、ある時点で嫌悪感に変わるという現象)にはまっちゃってだめです。
(*2)銀河英伝説っぽいのかな~
 MS-IGLOOのロゴタイプは銀河英雄伝説とよく似ているし、ヨルムンガンドやヨーツンヘイムっていう北欧神話からのネーミングは、銀河英雄伝説でもブリュンヒルト、ワルキューレなんかで使われています。
(*3)素人目にも失敗作っぽい新兵器
 たとえば試作艦隊決戦砲”ヨルムンガンド”の場合。
 超長距離からでも艦隊勢力の数10%を殲滅できるソーラ・システムやソーラ・レイ(コロニーレーザ)ならいざ知らず、用兵的には局地戦兵器の”ヨルムンガンド”を現場での組み立て方式で、砲術手を宇宙空間でノーマルスーツ着せて操作させるってのはいかがなものかと。
 本来なら、軽巡洋艦ムサイからコムサイ発着用ユニットをとっぱらって、代わりにヨルムンガンドくくりつけて(全長はムサイ234m、ヨルムンガンド231mとほぼ同じ)、ブリッジで”ターゲットスコープ、オープン”とか”エネルギー充填120%”とか”耐ショック、耐閃光防御”とか気分出すべきじゃないかなあ・・・
(*4)ガンダムセンチュリー
 ミフスキー物理学などの設定を作った(載せたのではない)伝説の本。オリジナルは月刊OUTの増刊号として1981年9月に発刊。オリジナル版はまだ自宅にあるはずですが、一時期10万円を超える値段がついたとか。貸したのは復刻版のほうですが”4000円もする本を2冊も持ってるんですか!?”と驚かれました。まあ、たまにはそんなこともあります。

早く正気に戻って、とっとと逃げ出すのが最善の方法らしい(生き残る判断、生き残れない行動/神戸港震災メモリアルパーク)

 ども、防災訓練参加者選定係のおぢさん、たいちろ~です。
 先日、会社で防災訓練ってのがありました。まあ、地震が発生したという想定で決まった時間に地上の集合場所まで非難するって訓練なんですが、なにせ事務所が29階なもんですから、自ら参加しようなんて奇特な人が少ない。おぢさんを参加させると筋肉痛の恐れがあるのでどうしても若いモンに無理やり参加させることになります(私も参加したことないですが・・・)
 で、これでいいのか?!という反省もこめて、今回ご紹介するのは”生き残る判断、生き残れない行動”であります。


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 写真はたいちろ~さんの撮影。神戸港震災メモリアルパークです。


【本】生き残る判断、生き残れない行動(アマンダ・リプリー 光文社)
 アメリカ同時多発テロ事件でワールドトレードセンタービル(*1)から生き延びた人々、ハリケーン・カトリーナ(*2)で亡くなった人々、ビバリーヒルズ・サパークラブ火災(*3)で多くの人々を救った青年・・・
 彼らの生死を分けたもの、他人を救おうとした動機はいったい何だったのかをインタビューを含めて核心にせまったレポート。
【旅行】神戸港震災メモリアルパーク
 1995年の阪神・淡路大震災で大きな被害を受けたメリケンパークを当時の状態で保存している公園。倒れた街灯があの日の揺れの激しさを物語っていて痛々しいです
 最近では突閣ビデオ流出事件に登場する巡視艇”うらなみ”の停泊地の近くといったほうがわかりがいいかも。こっちも激震ですが、管内閣は生き残る判断ができるのか?


 本書によると、災害に見舞われた時って、意外に映画にでてくるようなパニックにはならなくて(*4)、むしろぼけ~っとしてしまうそうです。段階的に要約するとこんな感じ。

第一段階:否認
 発生していることを認めない(認めようとしない)状態
 緊急事態の場合だと立ち遅れ(逃げ遅れなど)につながって致命的になるし、避難勧告に従わない(根拠のない自信過剰)もこれ

第二段階:思考
 異常事態が起こってるのはわかったが、どうしたらいいのかわからない、どう決断すればいいのかわからないといった状態。
 重要なのは平常時とは異なった考え方や受け取り方をするそうです

第三段階:決定的瞬間(行動)
 危険な状況を受け入れ、選択肢を考えた後に行動を起こすこと。

 どうも、人間っていうのは緊急事態に遭遇すると自分で思っている以上になにも考えられなくなってかえって状況を悪くするみたいです。そのかわり、パニクるより従順になって従う傾向があるので、適切なリーダーがいて誘導すると回避できる確率が高くなりそうです。そのために訓練が必要。リーダ的立場の人が筋肉痛を恐れず防災訓練に率先して参加することが重要なんでしょうね。

 本書の結論で引用してる8つのPは示唆に富んだ言葉です

  適切な事前の計画と準備は、最悪の事態を防ぐ
   Prorer Prior Planning and Preparation
    Prevents Piss-Poor Performance

 この本を読む前はこんなことを考えていました

  もし、会社で大地震が発生した場合、
   1)会社にいれば、水、食糧などの備蓄があるので最低減生活はできる
   2)自宅まで帰るためには長距離を歩いて帰るのがたいへん(避難難民化)
     (単身赴任なので、家に帰ってもだれもいないし・・・)
   3)地震で1階まで避難すると再度あがってくるのはしんどい
  だから、(ビル火災の心配がない状態であれば)、そのまま様子をみたほうがよい
 と考えてましたが、これは間違ってるとわかりました。

 

早く正気に戻って、まずはとっとと逃げ出すのが正解みたいです。
 いったん安全な所に逃げ出してから、おちついてこの先どうすればいいかを考えても遅くないし、無駄骨だとか大げさだとか笑われてもなんでも、生きててなんぼの話です。
 それに1階まで避難しても安全が確認されれば時間がたてばエレベーターも復旧するでしょうから、仕事ばさぼれたと思えば気が楽ってもんです(幹部社員の言い草じゃないですが・・・)

 阪神・淡路大震災から15年、同時多発テロから10年近くと災害の記憶も風化しがちの昨今ですが、生き残るためにはいつまでも教訓としたいものです。
 防災担当者はもちろん、いざというときにリーダーとして部下を指揮する立場にある人には全員読んで欲しい本です。

《脚注》
(*1)ワールドトレードセンタービル
 2001年9月11日、国際テロ組織アルカイダがハイジャックしたボーイング767でワールドトレードセンターに自爆突撃、2749人の死亡者を出す大惨事となった。
(*2)ハリケーン・カトリーナ
 2005年8月末にアメリカ合衆国南東部を襲った大型のハリケーン。本書に記載されているニューオーリンズでは堤防の決壊により、市内の陸上面積の8割が水没したとのこと。
(*3)ビバリーヒルズ・サパークラブ火災
 1977年 5月28日、高級住宅街ビバリーヒルズにあるサパークラブで発生した火災により167名が死亡
(*4)パニックにはならなくて
 本書で紹介されているクウォランテリの研究によると、パニックは
  ・人が閉じ込められているかもしれないと感じる
   (確実に閉じ込められているとわかっている時は別)
  ・まったくどうすることもできないと感じること(無力感)
   周囲の人も同様の無力感を感じているとわかるとエスカレートする
  ・深い孤独感
の3つの条件が重なった時に起こるとのこと。

枯れた技術の水平思考(ゲームの父・横井軍平伝/エノコログサ)

 ども、以外とショットガンをぶっっぱなすのがうまいおぢさん、たいちろ~です。
 50代前後のおぢさん方は”レーザークレイ”ってのを覚えてるでしょうか?
 1970年代の前半にボーリングブームの去ったあと、ボーリング場を改装して作ったものです。大型スクリーンにクレー(的)を投影してそれをショットガンにみたてた光線銃で撃ち落とすといったゲームで、現在のガンシューティングゲームの超大型のものと思っていただければいいかと。でも、これがなかなかの優れモノで、銃床に圧搾空気(たぶん)を送り込んで衝撃を再現するとか、でかい発射音が出るとか。死んだ親父がここの支配人をやってまして、よく連れてってもらいました。
 で、このゲームを作った人が横井軍平。ということで、今回ご紹介するのは”ゲームの父・横井軍平伝”であります。


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 写真はたいちろ~さんの撮影。庭のエノコログサ。


【本】ゲームの父・横井軍平伝(牧野武文 角川書店)
 横井軍平はサブタイトルの”任天堂のDNAを創造した男”とあるように、任天堂のゲームを数多く開発した部長さん。この人がいなければ現在の任天堂の隆盛はなかったというゲーム界では知られざる伝説の人。この本は言ってみれば任天堂版”プロジェクトX”みたいなもんです。
【花】エノコログサ
 漢字で書くと狗尾草。犬の尾に似ていることから、犬っころ草(いぬっころくさ)だそうですが、”猫じゃらし”というほうが一般的。花言葉は”遊び”

 横井軍平が開発した代表的なモノを上げると

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【ラブテスター】
 男性と女性が手を握ってセンサーを握ると愛情をアナログの針の振れで愛情の度合いが計測できるというおもちゃ。1969年の発売。堂々と女性の手を握れるというシロモノで、若き日にこれで女の子を手を握ったという甘塩っぱい思い出を持つおぢさん、おばさんも多いのではないかと。
 技術的には、人間の体を流れる電流を測る検流計にすぎないんですが、若い男女にとってそんなこた、ど~でもいい話です

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【光線銃SP】
 ビール瓶型の的に向かって銃を撃つと、瓶が飛んだりするおもちゃ。1970年の発売。マカロニ・ウェスタン(*1)なんかがはやっていたのころです。
 光線銃ってのは文字通り光線の出る銃だと思っていましたが方式は、2通りあって”光線銃SP”は銃にある豆電球の光を的の光センサーで感知しますが、上記のレーザークレイは的の光を銃の中にあるセンサーで感知するしかけで光は出ないとのこと。知らなんだ・・・
 ちなみに、光線銃SPの光センサーは太陽電池で、シャープでこれを開発していたのがのちにファミコンを世に出す上村雅之
  ※ラブテスター、光線銃SPの写真は”ルチオのオーラ”のHPより

【ゲームボーイ】
 1989年に発売、1億1800万台が販売されニンテンドーDSがその記録を抜くまで20年間”世界一でもっとも普及したゲーム機”。オリジナルポケモンシリーズもこれで動いてました。

 先日、”衝撃! 三世代比較TV ジェネレーション天国(*2)”を見てて思ったんですが、世代間でピピピと反応するのって、思った以上に違うモンです。おぢさんとしてはやっぱり前の二つですねぇ。
 その他にも、この人が作ったのはウルトラマシン、テンビリオン、ゲーム&ウォッチなど多数(*3)。

 ところで、これらって当時としては”ハイテクおもちゃ”ではありましたが、そんなに先端技術をバリバリに使ってるわけではないんだそうです。むしろ普通の技術をどう使うかってところに知恵を絞っていて、その発想が”枯れた技術の水平思考”
 メーカーに勤める人間から言わせてもらうと、性能と価格ってのは一般的にはトレードオフの関係にあるので、高性能のものを作ろうとすると高くなります。また、新しいデバイスで性能が上がると新しい使い方とか、要求レベルが上がってきて、結局価格性能比ってのは悪くなります。まあ、CPUやメモリみたいにムーアの法則(*4)で急速に安くなりましたが、1980年代半ばに16Kとかのメモリで平気で動いていたパソコンが、Windows Vistaでは512MB(約3.3万倍)積んでも”遅い”と言われてますから、イタチごっこみたいなもんです。

 安くあげようとすると大量に生産して固定比率を下げるとか、安い部品を工夫してうまく使うとか。それにおもちゃみたいに故障しない、フリーズしないことも要件になるので、結局は大量生産でコストが下がって技術的に枯れたもの(*5)をつかうのもありになります。で、これをうまくやった会社の代表が任天堂であり、この会社のDNAを作ったのが横井軍平です。

 初代のゲームボーイがモノクロだったのは、カラー液晶(すでに存在していた)だとコストは高いし、電池は保たないし、見えにくいしという問題もあったけど、根本には横井軍平のこんな言葉があったから

  私はいつも「試しにモノクロで雪だるまを書いてごらん」と言うんです。
  黒で書いても、雪だるまは白く見えるんですね。
  リンゴはちゃんとモノクロでも赤く見える。

 さきほどのジェネレーション天国でも、おぢさん世代は”そこは想像力でカバーしてたんだ!”みたいなことを言ってます。まあ、風呂敷ひとつで月光仮面になりきれた時代の人たちではあります。今のコスプレイヤーにはわかんないかもしんないけど。

  技術者というのは自分の技術をひけらかしたいものですがら、
  すごい先端技術を使うことに夢を描いてしまいます。
  それは商品作りにおいて大きな間違いとなる。
  売れない商品、高い商品ができてしまう。

 売れないだけなら会社に損害をかけるだけですみますが、担当者はデスマーチ(*6)を行進するハメになっちゃったり・・・

 本書は題名だけだとゲームマニア向けの本と思われるかもしれませんが、すべての技術者に読んで欲しい本であります。

《脚注》
(*1)マカロニ・ウェスタン
 1960~70年代前半に作られたイタリア製の西部劇。ジュリアーノ・ジェンマの”荒野の1ドル銀貨”、クリント・イーストウッド”荒野の用心棒”など。どうも記憶がごっちゃになっているようで、アラン・ラッドの”シェーン”は1953年、ユル・ブリンナーの”荒野の七人”は1960年のアメリカ映画でした。
(*2)衝撃! 三世代比較TVジェネレーション天国
 フジテレビで放映されてるスペシャルバラエティ番組。
 50~60歳のおぢさん世代に対する10~20代アイドルのクールなリアクションが秀逸。でも、共感するのはおぢさん世代のほうなんだな~、やっぱり。
(*3)ウルトラマシン、テンビリオン、ゲーム&ウォッチ
 ウルトラマシン:部屋の中で遊べるピッチングマシン
 テンビリオン :樽型のルービックキューブのようなパズル
 ゲーム&ウォッチ:専用小型携帯ゲーム機。ニンテンドーDSやPSPのご先祖様
(*4)ムーアの法則
 インテルの創業者、ゴードン・ムーアの言った”集積回路上のトランジスタは18ヶ月ごとに倍になる”というもの。
(*5)技術的に枯れたもの
 1976年にソ連のベレンコ中尉が亡命した事件で、乗っていたMiG-25ジェット戦闘機に真空管が多用されていて話題になりました。これは先進性より信頼性を重視したもの。一概にハイテク機器でもすべてハイテクってわけではない事例です。
(*6)デスマーチ
 ソフトウェア産業において、デスマーチとは、長時間の残業や徹夜・休日出勤の常態化といったプロジェクトメンバーに極端な負荷を強い、しかも通常の勤務状態では成功の可能性がとても低いプロジェクト、そしてこれに参加させられている状況を主に指す。(Wikipediaより)
 詳しくは、”デスマーチ(エドワード・ヨードン 日経BP社)”をどうぞ

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