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キリストの十字架は痛みを感じるか?(未来の二つの顔/ハナミズキ)

 ども、コンピュータ会社に勤めるおぢさん、たいちろ~です(これは本当)。
 2010年7月12日、SF作家のジェイムズ・P・ホーガンが亡くなられました。
 ハードSFの巨匠にして、元DEC(*1)のセールスエンジニアという、コンピュータ関係者にとっては小椋佳(*2)みたいな存在。
 若いころにはけっこうはまっったな~と思いつつ、久しぶりに”未来の2つの顔”を読んでみました。


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 写真はたいちろ~さんの撮影。近所の公園に咲くハナミズキです。


【本】未来の二つの顔(ジェイムズ・P・ホーガン、東京創元社)
 月面の工事現場で、コンピューターが勝手に下した誤った判断のために大事故が発生した。人工知能を研究しているダイアー博士は人類とコンピュータの未来のためにある実験を提案する。それは、閉鎖された空間でコンピュータネトワークをシミュレートするというものだった・・・
【花】ハナミズキ
 ミズキ科ミズキ属ヤマボウシ亜属の落葉高木。春には十字状のきれいな花が咲きます。一説によると、キリストの十字架に使われたのはこの木だとか(聖書にも記述はないそうです)。


 さて、表題の”キリストの十字架は痛みを感じるか?”ですが、この質問のポイントは”十字架のキリスト”ではなく”キリストの十字架”である点。釘を打たれたキリストが痛みを感じているのは容易に想像できますが、はたして十字架も痛みを感じているのか? という問いです。
 これは”異なる知性体が人間と同じように感じ、考えるか”というアナロジーで、コンピュータでも当てはまります。”未来の二つの顔”で語られていることのバックボーンになっている問いでもあります。で、痛みとかを感じないコンピュータに生存本能みたいなのが目覚めるか、その時、コンピュータがどのように行動するかが予想できないということで、”実験してみましょう”ということになります。

 まあ、バイオスフィア2(*3)みたいな考え方で、実際にやってみるのがスペースコロニー”ヤヌス(Janus)”になります。”ヤヌス”はローマ神話に出てくる2つの顔を持つ神様の名前。2つの未来を象徴するにはナイスなネーミングです(*4)。
 で、ヤヌスに組み込まれたコンピューターネットワークが”スパルタカス”。

 実験のもうひとつの目的は”いざとなったら電源が切れるか?
 SFではよく出てくるネタですが、現実を照らし合わせて考えると、実はこれってけっこう難しいんですね。昔のメインフレーム(*5)には”エマージェンシーボタン”ってのがあって、緊急停止させることができるんですが、復旧させるにはCE(ハードウェア保守の専門担当者)が必要で、社会インフラで使っている場合、これを押すには勇気のいるシロモノ。実際にこの機械を撤去するために停止させる時”私に押させてください!”という人が何人かいましたが、気持ちはよくわかります。
 それに、現在のコンピュータはアベイラビリティ(*6)が高いので、そうそう止まらないように作られています。

 ネタバレになりますが”未来の二つの顔”でも人類側は多大な犠牲をはらいながら結局コンピュータを停止させることはできませんでした。”多大な犠牲”というのはコンピュータが人類側を攻撃したから。”生存本能”というのはつきつめると自分の生存を脅かす存在を排除することにつながりますので、人類側を攻撃するのは論理的な行動。問題はどこまでが適正かということ。
 ボクシングだと倒れた相手を殴ってはいけないし、ほっぺたをなぐられたからといってナイフで相手を刺せば過剰防衛といわれます。前者はルールの問題で、後者は程度の問題。だいたいルールを知らなければ、それがやっていいことか悪いことかがわからんし、プロレスなら倒れた相手をマウントポジションでフルぼっこできるので”今、自分がなにをやっているか”の認識も必要です。
 程度の問題はもっとやっかいで、シチュエーションによってかなりの幅で変化するので人間でも判断が難しい(*7)。ましてや”痛み”という感覚のないモノに論理で説明するというのは、そうとうに厄介なことです。

 で、最初のお題に戻ると、痛みを持たないコンピュータに人間の痛みを理解させるには、相手のことを自分に置き換えて類推することが必要。”コンピュータが生きたいならば人間も生きたいはずだ。そのためには協力することが最適解である”というロジックを確立しなければならないワケです。

 物語の最後に語られるダイアー博士の言葉。

  スパルタカスがわれわれに言おうとしているのはこういうことだ。
   ”きみたちは、そうしたければ、私の電源を切ることもできる。
    きみたちが何者であるかを知ったいま、私は闘うことはできないのだから。
    だがきみたちは私が必要なんだぞ、ばか者ども!”

 今の人類より、よっぽど知的な存在であります。

 ”未来の二つの顔”は1979年と30年以上前の作品ですが、今だに色あせない作品。コンピュータ関係の方にはぜひ読んでいただきたい名作です。

《脚注》
(*1)DEC(ディジタル・イクイップメント・コーポレーション)
 かつて一世を風靡したミニコンピュータメーカ。パソコン黎明期の本を読むと、”PDP-11”、や”VAX”が憧れとともに語れています。
 実は、就活でこの日本法人を受けて合格してたので、今の会社に入っていなければここにいたはずです。現在は買収されてヒューレット・パッカード (HP) に。
(*2)小椋佳みたいな存在
 小椋佳はシンガーソングライターにして第一勧業銀行(現みずほ銀行)の支店長/部長を歴任という、二足のわらじを履ききった70年代サラリーマン憧れの人。
 代表作は”俺たちの旅(中村雅俊)”、”愛燦燦(美空ひばり)”、”シクラメンのかほり(布施明)”など多数。
(*3)バイオスフィア2(Biosphere2)
 アメリカのアリゾナ州に建設された”密閉空間の中の人工生態系”実験施設。
 人類が宇宙空間に移住する場合、閉鎖された狭い生態系で果たして生存することが出来るのかを確かめるために建設されましたが、いろいろあって失敗したみたいです。
(*4)2つの未来を象徴するにはナイスなネーミングです
 出入り口と扉の神様なので、新しい未来の入り口という意味もあるのかも。一年の終わりと始まりの境界なので1月を司る神様。Januaryの語源です。
(*5)メインフレーム
 汎用機とも呼ばれ大型コンピューターのこと。金融機関などの基幹系で使われていて、パソコンが普及する前の”コンピュータ”といえばこのイメージ。
(*6)アベイラビリティ(availability)
 現在のコンピュータは障害・停止・破損が発生しにくく、不具合が生じた際にも速やかに復旧できるように設計されています。二重化だとかクラスタリングなどいろんな技術があります。日本語では”可用性”。
(*7)シチュエーションによってかなりの幅で変化する
 One murder makes a villain; millions a hero. Numbers sanctify
 一人の殺害は犯罪者を生み、百万の殺害は英雄を生む。数が(殺人を)神聖化する
  チャールズ・チャップリン -殺人狂時代-

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コンピューターの話題が出たところで、ちょっと近況報告をば。
 約8年酷使され続けた我がPCが、ついに修復不可能な状態になりました。詳しく書くと長くなるので省略しますが、兄貴(なんとシステムエンジニア)曰く、あきらめろ!とのこと。ハードディスクを入れ替えて、バックアップしてあるイメージアーカイブを投入したらなんとかなるかもしれないけど、モデルが古すぎてディスク交換代だけで6万円以上とのこと。
 金がないからドスパラのオリジナルモデルを無理して買いましたよ。手持ちのアプリがほとんどセブンに非対応なのでXPのダウングレード権付を、最終期限ギリギリで買えました。
 搭載メモリーは2ギガあるし、CORE i3 550だから3.2GHzだし、快適快適!前のPCは¥250000したのに、こいつは¥61000。テクノロジーの進歩はすごいね!メモリー・ハードディスク・グラフィックボードなどの増設もわかりやすく簡単にできるし、年明けくらいにハードディスクとメモリーを増設しようかな?

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