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リアルアバター開発史かな?!(おれたちのピュグマリオン/スイセン)

 ども、ナルキッソスの化身のおぢさん、たいちろ~です。
 このブログでは花言葉をよく引用します。この花言葉の由来ってのは神話の中で”○○の花はXXの化身(生まれ変わり)”みたいのが良く出てきます。代表的なものとして”スイセンは美少年ナルキッソスの化身(*1)”ってのがあります。
 まあ、魔法や呪文でナルキッソスばりの美少年に変身するってのは難しそうですし、整形手術で綺麗になるといっても、元々の土台が土台だし・・
 ということでこれをロボットでやってみましようってのが今回ご紹介する”おれたちのピュグマリオン”であります。

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写真はたいちろ~さんの撮影。近所のスイセンです。

【本】おれたちのピュグマリオン(小川 一水 光文社)
 一角電機工業特殊機械開発部の吉崎は、後輩で生粋の工学オタクの稔が倉庫で密かに開発していたメイドコスチュームのロボット”ミナ”を発見する。
 ”できません、わかりません”を連発し、簡単に転んでしまうという優秀でないロボットだか、これが後にロボット社会を到来させる第一歩だった・・・
 ”煙突の上にハイヒール”に収録。
【花】スイセン(水仙)
 ヒガンバナ科スイセン属の総称。下を向いて咲く花が特徴的な可憐な花ですが、ヒガンバナ科だけあって有毒植物。
 花言葉は”神秘、うぬぼれ、我欲、利己主義自己愛、自尊心”など。

 ロボットを遠隔操作して人間の変わりにするというアイデアは映画の”アバター”や、”サロゲート”(*2)などで最近ではよく見かけるアイデア。で、この小説は何が違うかと言うと、ロボットを”開発する”過程を描いたもので、そういう意味では同じ作者の”第六大陸(*3)”の系譜に位置するものです。

 意外なようですが、この遠隔操作型のロボットは物語の最終段階で登場するもので、ネタバレになりますが、あらすじで追っかけていくとこんな感じです

〔ミナ(開発機)〕
 上記にあるように必ずしも優秀ではないんですが、開発者の稔が自慢するように”えっ、できません”、”ごめんなさい、わかりません”といえること。それを人間的な心情をかきたてるような動作でカバーすることで”無能さを補っている”(吉崎談)点。
 これは、けっこう面白い考え方です。コンピュータでプログラムを組まれたことがある方には”無限ループ(*4)”と言えば解りやすいでしょうか。これに陥るとフリーズ(見た目動かなくなる)してしまうので、無理してがんばるより甘えて”できませ~ん”なんて言われるほうがシステムとしては望ましいかも(人間も同じか!)

〔芳乃(よしの)〕
 自分で判断をする量産型・自立型ですが、人間の動作を反復させるという物まね(ミミック)機能を共有することができる、いわばオープンソースなロボット(*5)。
 コンピューターやiPodもそうですが、利用者がいろんなツールを提供するようなやり方は実はそのプラットフォームを普及させるにはとっても有効な方法で、これを無料でやるっていう点ではビジネス的にツボを押さえた発想ではあります。

〔美奈(みな)〕
 思考能力はないけど、まる一日野外で活動できて遠隔操作のできる量産型ロボット。
 ロボットの視点から鏡を見ると、完璧なプロポーションを持った髪の長い美少女が映るというシロモノ。このロボットを購入した女性たちは

  電車に乗り、店に入った。たくさんの人の目が集まった。
  経験したことのない眼差し。
  賞賛と嫉妬の視線だ。
  それを味わったユーザーは二度と美奈を手放さなくなった。
  服を買い、靴を買い、つま先から頭まで美奈を磨き上げた。

になります。まあ、コスメやファッションですら熱心なお嬢さんですから、そうなるんでしょうなぁ。男の人でも女装趣味が満足できそうだし、美少年型だったらおぢさんがナルキッソスしそうだし・・・

 ただ、こんな社会が広がると少子化がすすみそうだなぁ
 この小説の表題にある”ピュグマリオン”はギリシア神話に登場するキプロス島の王様の名前。現実の女性に失望して自ら理想の女性”ガラテア”を彫刻し、愛した人です。まあ、ゲームのキャラを”俺の嫁”する人の元祖とも言えますが・・
 この小説のシチュにしても、オンラインゲームのアバター同士でネット上の恋愛する人みたいなもんだし・・・

 小川 一水も新進SF作家の中でもはずれのない人なので、他の本も含めて安心してお勧めできます。ぜひご一読のほどを。

《脚注》
(*1)スイセンは美少年ナルキッソスの化身
 ギリシャ神話に登場する美少年ナルキッソスは、復讐の女神ネメシスにより水鏡に映った自分自身に恋してしまう。水面の姿はナルキッソスの想いに決して応えることなく、そのまま憔悴して死んでしまい、体は水辺でうつむきがちに咲くスイセンに変わっってしまった。
(*2)”アバター”や、”サロゲート”
 ”アバター”ジェームズ・キャメロン監督、サム・ワーシントン、シガニー・ウィーバー主演の映画。3D画像が話題になりました
 ”サロゲート”はジョナサン・モストウ監督、ブルース・ウィリス主演の映画及びアメコミ。
 両方とも2009年公開ですが、まだ見てませんので今度見てみましょう。
(*3)第六大陸(小川 一水 ハヤカワ文庫)
 極限環境下での建設事業で実績のある御鳥羽総合建設が受注したのは、月面での結婚式場”第六大陸”。依頼主はレジャー企業の会長、桃園寺閃之助とその孫娘 妙。工期10年、総工費1500億円の民間企業版宇宙開発の行方は? そして妙と現場監督(?)青峰との恋の行方は?
 2004年、第35回星雲賞日本長編部門を受賞した名作です。
 詳しくはこちらをどうぞ
(*4)無限ループ
 たとえば
  (1)aに1をセットする
  (2)aに2を足す
  (3)a=100になったら終了する。ならなければ(2)を繰り返す
  (4)aが200を超えたら、(1)に戻る
 というブログラムを実行すると、a=100にならないので無限に繰り返します。
この状態を回避するには別のプログラムで監視して一定以上の時間が経つと強制終了するなどの対応が必要です。
(*5)オープンソースなマシン
 オープンソースとは著作者の権利を守りながらソースコードを公開すること。
 フィクションではなく現実社会でも川田工業と産業総合研究所が共同開発したロボットはLinuxとOpenRTM―aistというオープンソースのソフトウェアが採用されています。

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