« インターネットははたして純粋経験なりや?(善の研究/哲学の道) | トップページ | 聖地巡礼、横須賀に”海の底”の舞台を見に行く―前編(海の底/潜水艦おやしお) »

しわくちゃのおばあさんになって、言ってやるのよ(”文学少女”見習いの初戀/相生)

 ども、単身赴任も長くなりましたおぢさん、たいちろ~です。
 最近、高年齢者の所在不明が多数発見されてるというニュースが流れています。一人身でおりますと、ころっと逝っちゃった時に誰がが発見してくれるかというのは実は切実な問題(*1)。最期は奥様か子供か孫か愛人かはわかりませんが、誰かには看取って欲しいものですが、残されたほうはどうなるかってのはあります。
 じゃあ、一緒に死んでしまえばいいかというとそれもまた問題。
 ということで、今回ご紹介するのは若者向けの心中のお話、””文学少女”見習いの初戀。”であります。

写真はたいちろ~さんの撮影。下賀茂神社の相生。ご神木の連理の賢木(さかき)」です。

【本】”文学少女”見習いの初戀。(野村 美月 ファミ通文庫)
 聖条学園に入学した菜乃(なの)は、文芸部部長、井上心葉(いのうえこのは)と出会う。心葉先輩に心惹かれる菜乃は勢いで文芸部に入部するが、まるで相手にされず落ち込む日々を過ごしていた・・・
 遠子先輩の登場する名作”文学少女シリーズ”の番外編。
 でも、デミアンとダミアンの区別のつかない文学少女ってどうよ・・(*2)
【花】相生(あいおい)
 一つの根元から二つ幹が分かれて伸びる、または2本の幹が途中で一緒になっていることを相生といいます。同じく、木の枝が他の木の枝と連なって木目が通じ合っているのが”連理(れんり)”。転じて夫婦・男女の間の深い契りをたとえていう言葉です。
 「長恨歌」にある”比翼連理”です(*3)。高校の教科書にあったはずですが覚えてますか?

 ”文学少女シリーズ”というのは、古典文学をモチーフにいろんな事件を解決するというライトノベル系推理小説。このシリーズはけっこうお気に入りでよくブログにも書きますし(*4)、この本がきっかけで原典を読んだりしています。
 ホームズ役が本書には登場しない遠子先輩で、ワトスン役が心葉ですが、今回は心葉がホームズで、菜乃がワトスンという設定。
 で、今回モチーフになるのが、元禄期に活躍した近松門左衛門の”曽根崎心中”。
 大阪堂島新地の女郎はつと醤油商の徳兵衛がで情死した事件をもとに書かれたいた人形浄瑠璃や歌舞伎の演目。自殺した露天神の森が”お初天神”で、大阪もこっちの名前のほうがとおりがよいです。
 実際にこの作品の大ヒットの影響もあって心中ブームが起こってしまって、上演を禁止されたそうです。まあ、”非実在青少年(*5)”の禁止よりはロマンのある話ですが。

 お話は菜乃が友達になった心中にあこがれるなごむさんと、相生の木にもたれかかるように心中した高校生の男女の謎とき。読んだ時に”相生の木”ってのがわからなかったので調べたのが上。”曽根崎心中”のはつと徳兵衛も二人で相生の木のもとで心中していますので、愛する二人の重要な舞台設定です。
 下賀茂神社で写真を撮ってたのは偶然ですが、こちらは縁結びの神さまなので、本来はこっちでしょうね。

 話が戻って、なごむさんが心中にあこがれる理由がこれ。

  なら、二人にとって一番幸せなときに死ぬのが、きっと最高のハッピーエンドだわ
  (中略)
  長い長い年月を、出会った頃と変わらない気持ちで愛し続けるなんて・・・

 まあ、菜乃の

  百歳のわたしが、百二歳の心葉先輩をほおずき市に誘うんですけれど、
  心葉先輩は耳が遠いフリをして、知らんぷりで短冊に俳句を書いているんです

 というツッコミの想像もかわういんですけどね。
 今でも奥様から”ブログ用の写真ばっかり撮ってて、一緒にいてもつまんない”と怒られているので、私んちも将来はこんなもんでしょうか・・・

 ”お前百まで、わしゃ九十九まで、ともに白髪の生えるまで”てなことを言いますが、まあ、長寿で添い遂げられれば良いことなんでしょうが、相方だけあっても長生きはして欲しいものです。なごむさんも最後には

  じゅうぶんに生きて、生きて、生き続けて、しわくちゃのおばあさんになって、
  そうしてなごむくんに会ったとき、言ってやるのよ
  わたしは、ずっとあなたを愛していたわって

 人を愛するにはこれぐらいのバイタリティが欲しいものです。
 もっとも、これが男女入れ替わると

  どうせ余もあとから行くのだ。まだ充分に美しい姿で待っているがよい(*6)

 とちょっとエゴイスティックになっちゃいますけど。

 ところで、”相生”にかけた言葉で”相老(あいおい)”という言葉もあって、これは”夫婦が仲よく連れ添って長命であること”という意味。まあ、これが理想なんでしょうなぁ、たぶん。
 ということで、”どんなに苦しくても頑張って生きていきましょい!”というのが今回の結論であります。

PS.恋人がいないと、心中以前の話だぞ。わかってるか、○○!

《脚注》
(*1)ころっと逝っちゃった時に誰がが発見してくれるか~
 寮生活ですので、朝に寮のおじさんかおばさんがチェックに各部屋を回ってくれますので生死の確認はできてます。が、ドアを開けるときはちょっとどきどきするとおばさんは言ってました。
(*2)デミアンとダミアンの区別のつかない~
 デミアンは、ドイツの作家ヘルマン・ヘッセの小説。偉そうに書いてますけど読んだことありません。
 ダミアンは、1976年に製作されたホラー映画に登場する悪魔の子の名前。すいません、これも見てません。一人暮らしにホラーはタブーです。
(*3)白居易「長恨歌」にある”比翼連理”です(*2)。
 中国唐の詩人、白居易によって作られた玄宗皇帝と楊貴妃のエピソードを歌った漢詩。
  在天願作比翼鳥   天に在りては 願わくば 比翼の鳥と作(な)り
  在地願爲連理枝   地に在りては 願わくば 連理の枝と為(な)らんことを

 全文の解説は”花と詩と音楽と”のHPでどうぞ。
(*4)よくブログにも書きますし
 ”文学少女と死にたがりの道化”、”文学少女と穢名の天使”、”文学少女と月花をだく水妖”など。このシリーズがきっかけで”人間失格(太宰治)”や、”夜叉ケ池(泉 鏡花)”なんてのも読みました。
(*5)非実在青少年
 ”東京都青少年の健全な育成に関する条例”の2010年改定案に出てくる言葉。
 簡単に言うと18歳未満に見える人がエッチする表現を規制対象にしようというもの。”見える”というのが恣意的とか、小説はOKで漫画やアニメ、ゲームはNGと問題含みで廃案に。
 しかし、もうちょっとましなネーミングはなかったのかいな。
(*6)どうせ余もあとから行くのだ~
 ”銀河英雄伝説 外伝”(田中芳樹 徳間文庫)より
 自裁した愛人に対して老齢の皇帝がつぶやいた言葉です。

« インターネットははたして純粋経験なりや?(善の研究/哲学の道) | トップページ | 聖地巡礼、横須賀に”海の底”の舞台を見に行く―前編(海の底/潜水艦おやしお) »

小説」カテゴリの記事

恋愛」カテゴリの記事

旅行・地域」カテゴリの記事

」カテゴリの記事

コメント

ほっといてくれ!相手がいようがいまいが、心中・自殺なんてしてたまるかい!!たしかに今は仕事が無い・借金があるなどマイナス要素てんこ盛り状態だけど、なんの根拠も無く将来への期待感は捨ててないよ。なんとかならぁね、生きてさえいればね!!!

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/528774/49080474

この記事へのトラックバック一覧です: しわくちゃのおばあさんになって、言ってやるのよ(”文学少女”見習いの初戀/相生):

» 子供 言葉 [子供 言葉]
子供 言葉についての情報です。 [続きを読む]

« インターネットははたして純粋経験なりや?(善の研究/哲学の道) | トップページ | 聖地巡礼、横須賀に”海の底”の舞台を見に行く―前編(海の底/潜水艦おやしお) »

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

無料ブログはココログ