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2010年8月

正しいライトノベルの書き方、中年編(メイド・ロード・リロード/オムライス)

 ども、ライトノベル作家志望のおぢさん、たいちろ~です。
 先日、今年度入社の新人と懇親の飲み会がありました。で、新人の一人から”飲み物が美味しくなるおまじない、知ってますか?”と言われたので、”どんなの?”と聞いたら、

  萌え、萌え、キュン♡(ハート)!

 おま~な~、関西から就職で東京出てきて、いきなりメイド喫茶かよ?!(*1)
 ということで、今回ご紹介するのはメイドさんとライトノベル作家のお話”メイド・ロード・リロード”であります。


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写真はたいちろ~さんの撮影。冷凍ピラフの上に卵をのっけたオムライスです。
これを作った時点で、おぢさんとして何か大切なものを失った気が・・・(*2)

【本】 メイド・ロード・リロード(北野 勇作 メディアワークス文庫)
 売れない中年SF作家湯浅は、出版社の都合でなんの因果かメイド喫茶地縛幽霊作家(言葉のママ)としてライトノベルを書くはめに・・・
 編集者の槇原、出版社二世社長、謎のメイドさんを巻き込んでのドタバタ系中年ライトノベル。
【グルメ】 オムライス
 チキンライスやバターライスを卵焼きでオムレツのように包んだ料理。メイド喫茶ではメイドさんがお絵かきしてくれるのがお約束らしいです。行ったことないから知らんけど・・・
 調べて初めて知りましたが、オムレツ(omelette)はフランス語、オムライス(omelet+rice)は和製英語です。


 さて、ライトノベル(和製英語)とは何ぞや? という話でありますが、まずこんな会話から。

  槇原:たしかちょっと前に、いったいそのラノベの定義っていうのは何なんだ?
     なあんて聞いてたじゃないですか。
     あのね、そこらへんからして、もう感覚が違うんですよ
      (中略)
  湯浅:ジュブナイルとは違うのか?
  槇原:明らかに違うでしょう
  湯浅:どのへんが?
  槇原:表紙の女の子とか
  湯浅:それはイラストレーターの仕事だろ
  槇原:イラストレーターじゃなくて、絵師って言うんですけどね

 いや、初めてラノベを読んだ時に(*3)”ジュブナイルとは違うのか?”は、おぢさんも同じこと思ってしまいました。むしろ今の若い人には”ジュブナイル”のほうがわかんないでしょうから、こっちの説明を。
 ジュブナイルあるいはヤングアダルトというのは1970~80年代あたりに流行したジャンル。今や古典となった”時をかける少女(筒井康隆)”とか、ソノラマ文庫(*4)とか、コバルト文庫(*5)なんてのを良く読みましたね。当然、絵師なんて言葉はなくて漫画家やアニメーターが表紙を描く例が多かったような気がします(*6)。
 おぢさん世代が中学・高校ぐらいだったので、現在のライトノベルとちょうどターゲットとしては同じようなもんです。

 ”メイド・ロード・リロード”で出てくる話題ってのが、”菊池桃子のら・むー(*7)”とか、”バビル二世(横山光輝)”とか”シャイニング(*8)”とか。まさにおぢさん世代のというかおぢさん世代でないと突っ込めない話題が満載。でも考えてみると、作者の北野勇作って1962年生まれとおぢさんとほぼ同じ世代(*9)。話題が合うはずです。
 もともと、本書を出している”メディアワークス文庫”っていうレーべルは

 ライトノベル系の文庫として創刊した『電撃文庫』を読んで大人になった読者の方々ずっと面白い小説を読み続けたいと思っている大人の方々へ向けて、アスキー・メディアワークスが贈る世代を超えたエンタテインメント・ノベルです。

 というコンセプト(アスキー・メディアワークスのニュースリリースより)。少年ジャンプに対するヤングジャンプ的な位置づけみたいなものです。なので、おぢさん受けするのももっともかも。考えてみるに、おぢさん世代(1960年前後生まれ)って、アニメ特撮といったサブカルチャーの第一世代みたいなもんなので、うまく育てればけっこう大きなマーケットなのかもしれません。

 ”メイド・ロード・リロード”はメイド喫茶のメイドと冥途を引っかけた、ただそれだけで1冊本を書いてみましたみたいな本。メイド喫茶にどん引きする中年作家がけっこうかわういです。

PS.最初は別のライトノベルの書き方みたいなのを読んでいて、流れでこの本を見つけました。決してメイド服絶対領域の表紙イラストで買った訳ではないので念のため。

《脚注》
(*1)関西から東京出てきて~
 これは、メイド喫茶のお約束だそうです。行ったことないから知らないけど・・・
 ちなみに、この新人は私の高校時代の先輩の大学での教え子だったとか
(*2)おぢさんとして何か大切なものを失った気が・・・
   You can't make an omelet(te) without breaking eggs.
  卵を割らなければオムレツはできない ⇒ 犠牲は目的達成にはつきもの

(*3)初めてラノベを読んだ時に
 ラノベとして意識して読んだのは”涼宮ハルヒの憂鬱”で、高校時代の友人のお子さんの紹介でした。その時はまさかこんなにヒットするとは思いませんでしたが・・・
(*4)ソノラマ文庫
 朝日新聞出版より1975年に創刊。”クラッシャージョウ(高千穂遙)”、”宇宙戦艦ヤマト(石津嵐)”、”機動戦士ガンダム(富野由悠季)”などSF系、”吸血鬼ハンターD(菊地秀行)”、”キマイラ・吼 シリーズ(夢枕獏)”などのホラー系なんてのをよく読みました。
(*5)コバルト文庫
 集英社より1976年に創刊。少女向きの作品が多かったですが、”星へ行く船シリーズ”の新井素子にはけっこうはまりました。
(*6)漫画家やアニメーターが表紙を描く例が~
 上記だと、クラッシャージョウはの安彦良和、機動戦士ガンダムは大河原邦男、吸血鬼ハンターD、キマイラ・吼は天野喜孝、星へ行く船は竹宮恵子とそうそうたるメンバーでした。
(*7)菊池桃子のら・むー
 本書に出てくる雑誌”ら・むー”は小学館のオカルト雑誌”ムー”のパロディーでしょうが、”ら・むー”はムー大陸の帝王の名前にして、当時トップアイドルだった”菊池桃子”を中心としたロックバンドの名前。1988~89年の活動なので、おぢさん世代しか知らんわなぁ。
(*8)シャイニング
 1980年に制作されたホラー映画。原作 スティーヴン・キング、監督 スタンリー・キューブリック、主演 ジャック・ニコルソン。
 主人公の小説家のジャックが、ホテルで書いている小説は
  仕事ばかりで遊ばない ジャックは今に気が狂う
 という文章が延々繰り返されているもの。けっこう怖い映画です。
(*9)作者の北野 勇作って1962年生まれと~
 Wikipediaで生年月日のわかるラノベ系作家をあげるとこんな感じ
  1960年生まれ 新井素子  グリーンレクイエム
  1960年生まれ 吉岡平   宇宙一の無責任男シリーズ
  1961年生まれ 野尻抱介  ロケットガールシリーズ
  1967年生まれ 橋本紡   半分の月がのぼる空
  1970年生まれ 谷川流   涼宮ハルヒの憂鬱
  1970年生まれ 三雲岳斗  アスラクライン
  1971年生まれ 桜庭一樹  私の男、赤朽葉家の伝説
  1973年生まれ 奈須きのこ 空の境界
  1977年生まれ 冲方丁   マルドゥック・スクランブル
  1981年生まれ 西尾維新  戯言シリーズ
  1986年生まれ 日日日   狂乱家族日記

この人の本質は”まあじゃんほうろうき”にあると思うんだが・・(西原理恵子の太腕繁盛記/まあじゃんほうろうき/金のなる木)

 ども、海外旅行の残りでまだドルがいくらかあったかな~~と考えるおぢさん、たいちろ~です。
 世の中には”金のなる木”という木がホントにあります。縁起ものではあるんですが、実際に黙ってても金がわいてくるわけじゃないです。失うのはすぐでも稼ぐのが大変なのがお金。円が1ドル83円とか、日経平均が9000円割れとか(*1)、景気の悪い話ばかりですが、どんな状況でもお金儲けをしようとする人がいるもの。
 ということで、今回ご紹介するのは前回のCDSの話”愚者の黄金(*2)”に続く経済ネタ”西原理恵子の太腕繁盛記”であります。


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写真はたいちろ~さんの撮影。北海道大学植物園のベンケイソウ(金のなる木)です。


【本】 西原理恵子の太腕繁盛記(西原理恵子 新潮社)
 アトリエ建築資金の自腹1000万円を元手に、人気の金融商品”FX”で一攫千金を狙う人気マンガ家”西原理恵子”の失望と破滅を描く実録?マンガ。
 相方兼この企画の立案者はIT企業社長の青山浩ですが、どう見ても人選が間違っていると思います。
【本】 まあじゃんほうろうき(西原理恵子 竹書房文庫)
 マージャン、パチンコで博打まみれ、カモられまくりの生活を描いた自虐的ギャクマンガ。”太腕繁盛記”のルーツとなる作品です。
  阿佐田 哲也の”麻雀放浪記”(角川文庫) とはまったく別物。
【花】金のなる木
 ベンケイソウ科クラッスラ属の多肉植物。葉が硬貨に似ているので英語では”dollar plant”。これにひっかけて日本ではお金がなったように見せかける縁起物として売ったとか。この人にとってはまさに金のなる木だったんでしょうなぁ。
 植物園では”ベンケイソウ科”としか書いてませんでしたが、さすがに金のなる木とは書けなかったのかな。

 さて、ここで言っている”FX”というのは”外国為替証拠金取引”というもので外国為替(FX Foreign eXchange)を扱う取引のこと。本来は外国為替相場に関する十分な知識や経験が必要なモンですが、なぜ人気かというと、”レバレッジ”という自分の持っているお金(証拠金)の何十倍、何百倍の掛け金で博打が張れるから。
 単純に言うと、100万円の証拠金で100倍のレバレッジをかけると1%価格変動するだけであっという間に倍の200万円になります。濡れてで泡の大儲け!
 でも、はずすと、証拠金(元手)がゼロになるというシロモノです。儲かった話が話題になってた時期もありますが破滅する人も大勢出てきて、さすがに2010年8月からMAX50倍(11年8月からは25倍)の規制がかかりました。それでも2%変動するとゼロになるんですけどね。

 で、西原理恵子の場合はどうだったかというと強制ロスカット(*3)でゲームオーバ。
 ”You are Lost!”
 まあ、手漕ぎボートで海に出てリーマンショックの大嵐にあったようなもんだもんなあ・・・
 青山社長の思いとしては”FXは儲からないという世間の間違った認識を払しょくしたいと思っていたので”西原理恵子に漫画を頼んだらしいですが、完全に裏目。そもそも、学生時代に読んだ西原の”まあじゃんほうろうきが大好きであれをFXでやって欲しかった”言ってますが、その時点ではずしていると思うぞ!

 もっとも、儲けようとする人にとっては相場が動かない時ではなくて乱高下していたほうが良いとも聞きます。ちょうど今は円高、株安と日本経済にとっては大変な時代ですが、それでも、儲ける人は儲けるんで儲けるんでしょうねえ。ただ、FXで一発当てたい人はあくまでも自己責任で

 本書中で西原、青山、森永卓郎(*4)の3人がFX取引で対談していますが、この中でこんな発言を。

 森永:勝っている奴というのは、さっきまでつきあっていた女を、
    平気で踏みつけて捨てることのできる人間なんです。
 西原:対して、100パーセント負ける人というのは、
    初恋の人がいまだに忘れられない人(笑)。こういう人は絶対勝てない。

 私は初恋を引きずるタイプなので(*5)、FXではやらないです。

 ことろでこの本、”FXでガチンコ勝負!編”ってありますが、他にもまだやる気でしょうか?! ほのぼの善人漫画化の仮面よりも”まあじゃんほうろうき”以来の懲りない性格てのが、この人の笑いの本質ではあるんでしょうが・・・

《脚注》
(*1)円が1ドル83円とか、日経平均が9000円割れとか
 2010年8月24日の相場です。
 まあ、政治的な無策だけが原因とは言いませんが・・・
(*2)愚者の黄金(ジリアン テット 日本経済新聞社)
 J・Pモルガンのデリバティブチームが創り出した革新的な金融技術CDS。銀行から信用リスクを移転し、経営の自由度を高めるはずのイノベーションなぜ金融業界の崩壊をもたらしたのか?
(*3)強制ロスカット
 未実現損が一定額以上拡大して、担保余力が一定水準を下回ると強制的にお客様が持っている全ポジションの決済を行いそれ以上損失が拡大しないようにするしくみ。
 損失を無制限に拡大しないためのブレーカーとも言えなくもないですが、負け組にとってはしょせん気休めではないかと・・・
(*4)森永卓郎
 「年収300万円時代」などのフレーズで有名な経済アナリスト。このフレーズに反して本人は東京大学卒業、三菱UFJリサーチ&コンサルティング入社、獨協大学経済学部教授と人生の勝ち組です。
(*5)私は初恋を引きずるタイプなので
 いや、あくまでブログのネタですから、奥様。

術者はおのれの秘術をあみだしたとき、その術をやぶる方法も考えるものだ(愚者の黄金/アロエ)

 ども、相変わらずビンボ~生活のおぢさん、たいちろ~です。
 先日、上司から”08年度から09年度に人が増えているのに人件費があまり増えていないのはなぜか調べて”という依頼があったので、データーをいろいろひっくり返してみました
 08年といえば、サブプライム問題で経済がガタガタだった年。というころで、今回ご紹介するのはサブプライム問題の一因であったCDSをめぐるお話、”愚者の黄金”であります。


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写真はたいちろ~さんの撮影。近所のアロエです。


【本】 愚者の黄金(ジリアン テット 日本経済新聞社)
 J・Pモルガンのデリバティブチームが創り出した革新的な金融技術CDS。銀行から信用リスクを移転し、経営の自由度を高めるはずのイノベーションなぜ金融業界の崩壊をもたらしたのか?
 邦題の副題は”大暴走を生んだ金融技術”ですが、原書の副題は”J・P・モルガンの小グループの革新的な技術は、ウォール街の強欲によってどのように歪められて金融危機をもたらしたのか”という”博士の異常な愛情(*1)”っぽいもの。でも、こっちのほうが内容には合ってるかな。
【花】アロエ
 アロエ科アロエ属の多肉植物の総称。ヨーグルトに入れたりやけどなどに効くなど健康食品の代名詞のようなアロエですが、とげとげ肉厚の葉っぱと実際に植えられているのを見るとかなり異形。でも、赤いきれいな花が咲きます。
 花言葉は”健康、健やか”の他に”信頼”も。

 金融に縁のない方には聞き慣れない言葉かもしれませんが”CDS”とはクレジット・デフォルト・スワップ (Credit default swap)の略。銀行などの貸出債権がデフォルト(回収不能)した時に発生する損失を補填してくれるというもの。簡単にいえば保険みないなもんですが、どうしてこのような取引が成立するかというと、

 銀行:デフォルトした時のリスクが回避できる、自己資本比率を高めることができる
 買う側:手数料を得ることができる、レバレッジで持ってるお金以上の取引が可能

と、いいことずくめ。ただし、デフォルトが発生しなければですが

 この取引のポイントは”どれぐらいの確率でデフォルトが発生するか、その時の損失額がどれぐらいか”を決定すること。物語の主人公であるJ・P・モルガンがこの手法を開発した時は、比較的このリスクがはっきり計算できる範囲でやってたんですね。
 当然、これを住宅ローンにも適用しようというアイデアが出るわけですが、当のJ・P・モルガンは開発自体を中止することにします。なぜかというと”データがない(モデルが組めない)”から。つまりリスクがわからないことはやらないという姿勢です。

 この本の中でポイントになっているのは実はここ。J・P・モルガンCOOだったジェイミー・ダイモンが示唆に富んだ指摘をしています

①銀行業は私の祖母でもわかるような事業でなければならない
 サブプライム問題に代表される金融危機の特徴は”リスクがどこにどんだけあるかわからない”ということ。金融工学の発達により、普通の人だけでなく、金融機関のトップですら内容がよく理解できない状態になっちゃたわけです。
 にもかかわらず、多くの銀行が儲かっているという結果だけで突っ走っちゃったんですね。他の銀行が大儲けしている中で、J・P・モルガンだけがちゃんとわかっていたので突っ走らななかった。そのため負け組の非難を受けた時期もあって風当たりも強かったようですが、結果的には最も損失が少なく、生き残るということになります。
 日本からアメリカのサブプライム問題で分かりにくい点の一つは”なぜああも早いスピードで金融機関が破綻したのか”という点ですが、本書を読むと、”知らない間にリスク威嚇がハンパじゃない規模に膨らんでいたから”ということみたいです。しかも、そのリスクというのが、想定できない状態になっていて、市場がパニックになってしまったとのこと(*2)

②数学的モデルはご宣託としてではなく、羅針盤として使ってこそ有益なツール
 金融工学で使われるモデルっていうのは簡単に言うと過去のデータを数学的に分析して将来の動きを予測するものなので、データの精度(数、正確性など)が低ければ結果もアバウトになるし、過去になかった事例についてはもっとアブナイ。J・P・モルガンが住宅ローンのCDSをやらなかった理由がこれです。にもかかわらず、数字で出てくると信じちゃう
 いみじくもJ・P・モルガンの調査担当者デビッド・リーが指摘しているように

  モデルの算出結果をだれもが無条件に信じるようになった時が一番危険だ

 の状態が発生してしまったわけですね。

 この本を読んで印象的なのは、J・P・モルガンのCDS開発チームのメンバーが”なぜ他の金融機関が危ないリスクを大量に抱えていたのか”を不思議に思っている点。開発チームにとって、そんなリスクを取ってはいけないのは自明の理のと考えていたようです。
 表題の”術者はおのれの秘術をあみだしたとき、その術をやぶる方法も考えるものだ”というのは、白土三平の”カムイ外伝(*3)”から。忍者カムイの必殺技”飯綱落とし”を破ろうとする敵対する忍者に対する一言です。つまり、技を開発する人間がその技の弱点を一番理解しているということです(そうでない例もありますが)。

 ”CDS”は金融危機を引き起こしたいわば”異形のもの”扱いされていますが、実際にちゃんと使えば有益なイノベーションと思います。そういう意味で形は不気味だけど実は役に立つアロエみたいなもんかもしれません。

 ”愚者の黄金”はファイナンシャル・ブック・オブ・ジ・イヤー賞を受賞しているだけあって、面白い本。サブプライム問題に興味のある人にはお勧めです。

PS.
 09年度に人件費が減っている理由ですが、月額給与の増加分以上に09年度のボーナスがガタ減りだったから。ボーナスは前年度の利益が反映されるのでこうなります。改めて愕然としました・・・

《脚注》
(*1)博士の異常な愛情
 核戦争が勃発しそうになり人類滅亡の危機が急迫する中、利己的な政府高官や軍の上層部のドタバタを描いたコメディ映画。監督 スタンリー・キューブリック、主演 ピーター・セラーズ。
 正式な題名は”博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか
(*2)想定できない状態になっていて~
 荒っぽく言うと、資産の価値というのは”いくらで売れるか”とうい情報があって初めて決まるので、売れない状態では損失が確定できたいと言えます。また、その資産が安全なのかヤバイのかがわからなければ、それを買う人自体がいなくなる、つまり”毒入り餃子事件”と同じです。
(*3)カムイ外伝
 1965年ごろに少年サンデーに不定期連載された白土三平の忍者漫画。
 カムイは非人部落の出身で抜け忍になった忍者の名前です。

課長さんになりたいという幻想(7割は課長にさえなれません/アネモネ)

 ども、万年課長のおぢさん、たいちろ~です。
 今年も、会社に新人が入ってきました。ここ数年新人のお世話係みたいなことをやっていますが、最近の新人は優秀な人も多く将来が楽しみです。
 というイントロを裏切って申し訳ありませんが、今回ご紹介するのは身も蓋もない会社生活のお話、”7割は課長にさえなれません”であります。


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写真はたいちろ~さんの撮影。近所のアネモネです。


【本】7割は課長にさえなれません(城 繁幸 PHP新書)
 40歳でも係長止まりの正社員、生活不安の派遣社員、二人目が産めない女性社員、窓際族の部長さん・・・ 
 閉塞する日本経済のなか、終身雇用に呪縛された雇用の問題点をまとめた本。
 著者は元富士通の人事部門にいた人で”内部から見た富士通「成果主義」の崩壊”を書いた人でもあります。
【花】アネモネ
 キンポウゲ科イチリンソウ属の多年草。美少年アドニスが流した血より産まれたとする伝説もあるきれいな花です。和名はボタンイチゲ(牡丹一華)などこちらも華麗。


 さて、この本それなりに売れているようで、会社経営のカテゴリで14位、総務・人事・労務管理のカテゴリで6位(2010年8月14日現在)。この分野では何冊も本を出している人ですが、やっぱり売れているのは”課長にさえなれません”という題名でしょうか。でもこの言葉の暗黙の了解として”せめて課長にぐらいはなりたい、なれそう、なったらいいことありそう”っていうのがあるんでしょうか。
 まあ、出世の第一歩みたいな扱いですが、なったからといっていいことばっかじゃないです、はい。なっていない人から見れば”何を贅沢な!”と言われそうですが、これは別に課長に限ったことじゃないと思います。

 さて、本書の中で登場する例として

  ・正社員になれない派遣社員(30歳)
  ・キャリアも収入もあきらめないと二人目の子供が産めない女性一般職(37歳)
  ・窓際族扱いの元やり手の営業部長(54歳)
  ・高学歴ワーキングプアーのポスドク(30歳)
  ・日本企業を見限るエリート留学生(28歳)

 などが出てきます。三者三様に不幸なのはその元凶が終身雇用や年功序列給与体系というのが、著者の主張と見受けられます。
 本書の中で”フレクシキュリティ(flexicurity)”というのが出てきますが、これは雇用や賃下げを柔軟に認め、労働市場の流動性を高めつつ、失業給付や職業訓練などのセーフティネットを整備するというもの。たぶん著者の提示する解決策はこれが一番近そうです。そのために会社は年功序列をやめて職能給に移行するというもの(*1)。
 職能給への期待の典型が本書に出てくる中国のエリート、李さんの発言です。

  十年以上も先の口約束を信じて働けというのですか? それはむちゃくちゃですね
  そもそも企業と労働者は対等なはずです
  私を評価しているのなら、明確な基準や適正な報酬を用意すべきでしょう

 まあ、おぢさんたちが就職したころはまだ経済成長のなごりがあったので(実際バブルに突入しましたが)、あながち先々の給与UPが期待できなかった訳ではありませんが、今では初手から空手形の可能性が高いので、今の若い人は納得しがたいでしょうね。

 じゃあ、本書の言っているように雇用流動性と職能給への移行が進めば問題が解決するかといえば、それもちょっと違和感があります。極論すれば、年功序列の”世代間格差”が”仕事間格差”に変わるだけの可能性もあります(*2)。
 あまり議論されることはありませんが”みんなが幸せだった時代”なんて今までは存在しないし、これからもあるとは思えません。

 今のおじいさんたちは戦争で生きるか死ぬかだったし、2007年前後に定年した人たちは”団塊の世代”といわれて同世代間の競争にさらされていたし(*3)、今は割をくってる代表のようなバブル世代だって、今の新人から見ればチョ~楽勝な就活だし、就職氷河期の世代でも、大学入試で二浪のおぢさんからはラッキーな世代に見えます。
 要は、経済面で少子化を防止できる程度のセーフティネットを整備した上で、みんながちょっとずつ痛みを分かち合うことで(*4)、多少ましな時代にしましょうぐいらいに考えたほうがいいんじゃないかなぁ。あんまし過度の期待を持たずに・・・

 それに、職能給が中心の社会ってのは年間億単位の金を稼ぐトレーダーと、数百万円以下の単純作業の人が同じ会社の中にいることを良しとする制度なので、単一の採用活動で会社に入ってからこんな振り分けをやったら暴動になります。はなから別の採用枠にするとかから手をつけないと問題は解決しないです。
 上記の李さんにしたところで、”自分の価値を主張できる”エリートだからであって、なんの実績もない新卒者がそんなこと主張したって聞けないし、馬齢だけを重ねたおぢさん(私のことです)はそんなこと言えません。

 まあ、経済的な側面としての雇用(収入)の安定ってのが大前提になるので、職能給の導入でも雇用流動化でも有効な手は打たないといけないでしょうが、ある程度以上は生き方をどう考えるかっていう哲学的な問題になるのかも。出世を目指す人生を否定するわけではないですが、私生活を金銭以外で充実させることを考えるとか。最近は”ワーク・ライフ・バランス”なんて便利な言葉もあるしね。

 ということで、新人ささげる花は”アネモネ”。
 花言葉は”期待”と”薄れゆく希望”だけどどっちやねん!
 そういえば、美少年好きっぽい女の子もいたけど、この子が一番人生楽しそうでしたね。”趣味が多すぎてお金が足りません”と言ってましたが。

《脚注》
(*1)年功序列をやめて職務給に移行するというもの
 年功序列のように職能や年齢があがると給料があがるのが職能給。従事する仕事の内容や職務の価値で給料が上がるのが職務給。
 一般的には職務給は説明性、客観性が高いことになっていますが、個人単位で実際にやるとなると難しいのが成果主義の失敗の原因でもあります。
(*2)年功序列の”世代間格差”が”仕事間格差”に~
 ほかの本で読んだんですが、格差論で難しいのは”どこまでの格差を許容するか”の社会的なコンセンサスを形成することだそうです。初任給と課長さんの年収が2倍ならOKで3倍はNGとかを決めろと言われてもねえ。
 それにおぢさんの”年収”ではなく”純粋可処分所得=おこづかい”と考えると若い人のほうが高所得なんてこともありそうだし。
(*3)2007年前後に定年した人たちは~
 戦後第一次ベビーブーム(1947年~1949年)に生まれた”団塊の世代”が大量に定年を迎えたのがこの年。この世代の持つ技術の継承ができなくなるんじゃないかと懸念されたのが”2007年問題”です。
(*4)みんながちょっとずつ痛みを分かち合うことで
 自分の給料が下がる覚悟をしろということです。
(*5)ワーク・ライフ・バランス (Work life balance)
 日本語では”仕事と生活の調和”。
 「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」(内閣府 仕事と生活の調和推進室のHPより)

ツイッターに謎なんかないと思うぞ(ウェブはバカと暇人のもの/熱帯雨林)

 ども、相変わらず暇つぶしにブログを書くおぢさん、たいちろ~です。
 ハマコーこと元衆院議員の浜田幸一(*1)が背任容疑で逮捕されました。
 ニュースで見ている限りだと、融資で担保としていた株券を無断で売却したという経済犯罪とすらいえないようなアバウトなものですが、それ以上に話題になっていたのがこのおぢいさんがツイッターをやっていたこと。でも、そんなに話題になるようなことかな~~
 ということで、今回ご紹介するのはネットの真相に迫る一冊”ウェブはバカと暇人のもの”であります。


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写真はたいちろ~さんの撮影。オーストラリア、ケアンズ近郊にあるキュランダ高原駅です。キュランダは世界自然遺産に登録されている熱帯雨林を気軽に楽しめる観光スポット。行ったことあるのでちょっと自慢げにのっけてみました。


【本】ウェブはバカと暇人のもの(中川淳一郎 光文社新書)
 ニュースサイトの編集者をやっている著者から見たネットのダークサイドのレポート。誹謗中傷、罵詈雑言、無意味、無理解、クレーマーとネット上の気持ち悪い人たち満載です。
 ウェブが暇人の暇つぶしであることには同意します、はい。
【花】熱帯雨林
 年間を通じて温暖で雨量の多い地域に形成される植生、またはその地域のこと。
 現在の地表に占める割合が14%から6%まで減少していて、このまま進むと40年で地球上から消滅するという予測だそうです。

 ニュースでは、”御歳80を超えるおぢいさんがツイッターをやっていた”、”フォロアーが20万人以上いた”という驚きと、”あの書き込みの意味はなんなんだ?”という謎ときが取り上げられていましたが、よくよく考えてみるとこれは変な話です。

 まず、お年寄りがツイッターを知っていたというのが変。仮にも政界にいた人がこんだけネットの選挙への扱いで盛り上がっているのに(*2)、知らないはずがないです。それに街中のおじいちゃんやおばあちゃんがインタビューに対して”ツイッター、何それ?”みたいなことを答えてますが、別に万人が森羅万象に興味を持って知っている必要なんてな~んもないはず。試しに新橋駅前のSL広場でおぢさんつかまえて”AKB48のメンバーの名前を3人答えてください(*3)”と聞いたらほとんどの人は答えられないと思いますよ。
 暴論を承知でいうなら、お年寄りがツイッターなんかにハマんないほうがいいんじゃないかなぁ。それでなくてもお年寄りは足腰が弱りがちなんだから、部屋にこもってツイッターをやっている時間があったら公園に散歩にでもいったほうがいいんじゃないかと。まあ、公園で短歌や俳句でもひねって、句帳のかわりに携帯電話からネットにアップするとかだったらありでしょうが。ただし、どんなコメントがついてもスルーする根性が必要です。

 ハマコー先生に20万人以上のフォロアーがいたってのも驚きをもって取り上げられていますがこれもなんなんでしょう? 本書の中でネットで受けるものを10ケあげていますが、ハマコー先生の場合はそのうち

  ①話題にしたい部分があるもの、突っ込みどころがあるもの
  ⑥芸能人関係のもの

でしょうか。
 ニュースで取り上げられた”金は汚く稼いで、きれいに使う”なんて①の典型。この言葉は昔からある別にオリジナリティーのあるものではありませんが、あのキャラで言ってるってのが突っ込みどころでしょう。逮捕の理由もあいまって後付けながらニュース性もでてきたし。
 ハマコー先生って、もう政界引退して15年以上経つんですね。今だにテレビにでてるんですが、完全にタレントです。(元)政治家としての存在感っていう意味でいえば、この人とタメはれるのは田中角栄とか小泉純一郎とかぐらいしかいない出色のキャラです。 でも、フォロアーがこの人に期待しているのは政治家としてではなくやっぱりタレント性なんじゃないかなあ。そういう意味では「おバカキャラ」で売った上地雄輔と似たようなもんかも。

 さらに変なのはツイッターへの最後の書き込みの意味さがし

  熱帯夜、熱帯魚、熱帯雨林、渡り廊下走り隊

 よっぽど暑かった日に思いついた”タイ”でそろえただけの言葉遊びと思うんだが。まあ”およげ!たいやきくん”じゃなくて”渡り廊下走り隊(*4)”を持ってくるとこなんか気持ちの若さは感じるけど。
 J-CASTニュース
  ”熱3→熱三→ねつぞう→捏造”+”タイ4→タイフォー→逮捕”で”捏造逮捕”
  渡り廊下走り隊のメンバーが5人なので”ごにん→誤認”
ってのが出てましたが、推理ごっことしては面白いけど、あんまし真面目に考えるようなこっちゃないんじゃないかと
 本書を読んでると、ネットの書き込みってのは確かに役に立つ情報発信っていうのはあるけど、多くは暇人が感じたことをうだうだ書いているのが大半ってことがわかります(このブログもそうですが)。バッシングやクレーマーは論外としても、そんなに深読みするようなモンを期待されてもねぇ。

 余談ですが、お仕事で”ツイッター風受注情報”っていう社内のブログを運営しています。これは、”どこそこのお客様でこんな商談を受注しました”というのを数行でまとめて社内のブログにのっけたもの。ところがどこでどんな話になったのか”たいちろ~さんは仕事でツイッターを利用していると聞いたので内容を教えて欲しい”とこられた人がいました。ぶっちゃけ”ツイッター風”とつけたのは、単に長い文章をレポートにまとるのが大変だけど、短いと文句がでそうなので”ツイッター”とつけてごまかしただけ。一応IT企業ではあるんですが、実態はそんなもんです。

 明るいネット論が跳梁跋扈する中、”ウェブはバカと暇人のもの”は反対のベクトルがあることを知る意味では良い本。光があるところには、闇もあるもんです(*5)

《脚注》
(*1)浜田幸一
 1928年生まれの自由民主党の元衆議院議員。当選は通算7回というベテランながら閣僚経験はなしとのこと。まあ、あのキャラだからわからんでもないけど。
 1993年に政界を引退。
(*2)こんだけネットの選挙への扱いで~
 公職選挙法でネットの扱いを改定するとか、オバマ大統領がインターネットで少額献金を集めたとか(実際は200ドル以下は1/4ぐらいしかなかったそうですが)。
(*3)AKB48のメンバーの名前を3人答えてください
 ちなみに、20年前に会社のおぢさんに”おニャン子クラブのメンバーの名前が3人言えますか”という質問に答えられた人はほとんどいませんでした。世間なんてそんなもんです。
 ちなみにSL広場はテレビのニュース番組などのサラリーマンへの街頭インタビューがよく行われるおぢさんの聖地です。
(*4)渡り廊下走り隊
 AKB48から結成された5人組のアイドルユニット。
 一度、雑誌のグラビアで見たことあるぐらいで良く知りません。ま、おぢさんなんてそんなもんです。
(*5)光があるところには、闇もあるもんです
 白土三平原作の忍者アニメ”サスケ”のオープニングです。画像はYouTubeでどうぞ。

聖地巡礼、横須賀に”海の底”の舞台を見に行く―後編(海の底/ヘリコプター SH-60/護衛艦 きりしま、たかなみ 他)

 ども、飛行機ヲタの知人を持つおぢさん、たいちろ~です。
 8月7日に横須賀の開国花火大会に行ってきました。でも本命はこっち、海上自衛隊横須賀地方総監部の基地解放”ヨコスカサマーフェスタ”とアメリカ軍横須賀基地の”ネイビーフレンドシップデー(*1)”。ということで、今回は前回に引き続き聖地巡礼シリーズ「横須賀に”海の底”の舞台を見に行く」の後編です。


【本】海の底(海の底 メディアワークス)
 桜祭りで開放されたアメリカ軍横須賀基地に、突如巨大な赤い甲殻類(レガリス)の大群が上陸した。遊びに来ていた子供たちを救助した為に、実習幹部の夏木、冬原は潜水艦”きりしお”に閉じ込められる。
 一方、状況を打開すべく奔走する警視庁の烏丸参事官、神奈川県警の明石警部、レガリス研究者の芹沢のとった行動とは・・・


 潜水艦ネタは”前編”に書きましたので、今回はそれ以外に登場するメカや場所を中心に。

【ヘリコプター SH-60】

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 夏木、冬原、そして子供たちがとじこめられた潜水艦”きりしお”から脱出するのに使われたのがヘリコプター。
 今回、ヨコスカサマーフェスタで展示、実演されたのは”SH-60J”、”SH-60K”(*2)。海難救助のデモンストレーションもやっていましたが本来は”哨戒ヘリコプター”というカテゴリーになります。
 で、一回目の救出作戦に登場するのは救難ヘリ”UH-60J(*3)”という別の機体。まっ、いいか、同じヘリコプターだし。(こういうこと書くと飛行機ヲタの知人に怒られそうですが)
 救助活動のために空中停止(ホバリング)できるのがヘリコプターのメリットですが、構造上真下に強烈な風が吹くことになります。これがダウンウォッシュ(吹き降ろし)で、本書でも”当機にダウンウォッシュに気をつけられたし”という会話をしています。どれぐらい強いのかは体験したことありませんが、写真を見ると相当な風で波が立っています。左は駆逐艦フィッツジェラルドの甲板から。後方のオレンジ色の船は砕氷艦しらせです。
(携帯電話のカメラなので望遠するとちょっとボケちゃってます。すいません)


【護衛艦”きりしま”、”たかなみ”】

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 本書の終盤でレガリス掃討作戦に登場するのが護衛艦隊。艦名は出てませんが今回体験乗艦ができた護衛艦がこの2艦。
 左の”きりしま”は”亡国のイージス”や”ジパング”で有名になったイージスシステム搭載艦(*5)。ブリッジ下方にとりつけられているSPY-1D多機能レーダーが、”あっ、イージス”って感じです。
 右の”たかなみ”(写真右側、奥は補給艦ときわ)は上記のヘリコプター”SH-60K”を搭載するために後方にヘリコプター用の格納庫がついています。

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 作中で”護衛艦から次々と対潜兵器が発射された”との記載がありますが、それがこれ。護衛艦きりしまの後方ミサイル垂直発射装置です。平常時は単なるハッチの集まりみたいですが、いざ発射されると隣のパネルのようななかなかに剣呑なシロモノです。
 こんなミサイルをくらったら、レガリスなんてイチコロでしょうねぇ。


【ヴェルニー公園、汐留ダイエー】

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 ここで横須賀地方総監部を離れてアメリカ軍横須賀基地へ。その途中にあるのがヴェルニー公園です。ばらが数多く植えられている美しい公園ですが、今は時期外れで咲いている花はちょっとだけ。自衛隊のレガリスへの攻撃でぼろぼろにされますが、もったいないな~
 その向こうにあるのが物語前半で民間人が避難する汐留ダイエー。自称”ウルトラ警備隊”こと神奈川県警第一機動隊第一中隊が向かう建物です。


【アメリカ軍横須賀基地、三笠公園】

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 左はアメリカ軍横須賀基地にて。設定では桜祭りの日なので、こんな光景があったんでしょう。屋台で売っている食べ物はアメリカ仕様なので、みんなビックサイズ。それをビックサイズのお兄さん達が焼いています。常々思うんですが、こんな山ほど肉喰ってるガタイのいいに~ちゃんと戦争なんかしちゃいけません。平和がなによりです。
 もう1枚がアメリカ軍基地から見る三笠公園。左側にある十字が付いているのが戦艦三笠。ここもレガリスに襲撃されます。
 この場所は開国花火祭のおすすめスポット。ちょうどま正面に花火が上がりますし、なにより喫煙場所の少ない基地内ですぐ近くでタバコが吸える場所があります。入口からはかなり奥のほうで、フードコートの先にあるポストオフィスの裏あたりです。


 本当は、桟橋の艦船見学にも行きたかったんでが、時間切れ。
 前の週(2010年7月31日)の”出没!アド街ック天国”が横須賀特集だったせいか、昨年とは比較にならないぐらいの人出。艦船見学は時間制限があるので桟橋までも行けませんでした。
 あと、神奈川県警側の舞台となっている横須賀アリーナや不入斗(いりやまず)公園にも行きたかったんですが、それはまた別の機会に。

 ”海の底”は掛け値なしに面白い小説。今回は登場しませんでしたが、烏丸参事官、明石警部の配役さえツボを外さなければ実写化しても面白いかも。自衛隊も協力してくれそうだし(神奈川県警はわかんないけど)。
 ぜひ、ご一読のほどを。

PS.写真については、著作権を主張しませんので、その道でお好きな方はご自由にお使いください。

《脚注》
(*1)ネイビーフレンドシップデー
 日本の海外、アメリカ軍横須賀基地に入れるというおいしいイベント。
 アメリカン屋台やフードコートで本場アメリカのステーキやピザなどが食べられます。味もアメリカ仕様なので大雑把ですけど。
 2010年度の体験乗艦はアーレイバーク級ミサイル駆逐艦”ラッセン”海上自衛隊護衛艦”はるさめ”。09年度は第7艦隊旗艦”ブルーリッジ”が来ていたのに乗り損ねました。返す返すも残念!!
(*2)”SH-60J”、”SH-60K”
 シコルスキー・エアクラフト社製”SH-60 シーホーク”をベースに開発されたのが”SH-60J”。wikipediaによると1機の製造価格は約50億円とのこと。哨戒能力の向上させた後継機種が”SH-60K”。
(*3)UH-60J
 シコルスキー・エアクラフトのが開発した”UH-60 ブラックホーク”を改良した救難ヘリコプター。航空自衛隊小松基地の小松救難隊の活躍を描いたアニメ”よみがえる空 -RESCUE WINGS-”に登場するのもこの機体。
 上記の知人にこのDVDを借りてくるよう頼まれて、お礼に貸してもらったのが”エリア88(*4)”。筋金入りです。
(*4)エリア88
 激しい内戦の続く遠く中東のアスラン王国のパイロット傭兵部隊の活躍と苦悩を描いた新谷かおるの漫画。のちにアニメ化。マニア垂涎の航空機オンパレードです。
(*5)”亡国のイージス”や”ジパング”で~
 ”イージスシステム”とは多数の飛行機やミサイルに対処するためにコンピュータにより高度に自動化された対空戦闘システムのこと。
 ”亡国のイージス(福井晴敏)”に登場するミサイル護衛艦”いそかぜ”や、”ジパング(かわぐちかいじ)”のイージス護衛艦”みらい”に搭載されているのがこれ。

聖地巡礼、横須賀に”海の底”の舞台を見に行く―前編(海の底/潜水艦おやしお)

 ども、軍事ヲタではありませんが、潜水艦好きのおぢさん、たいちろ~です。
 8月7日に横須賀の開国花火大会(*1)がありまして、朝から行ってきました。横須賀と言えば基地の街、そして有川浩の名作”海の底”の舞台になった街でもあります。
 ということで、今回は聖地巡礼シリーズ「横須賀に”海の底”の舞台を見に行く」であります。ぜひ、本書を読んでからお読みください。


【本】海の底(海の底 メディアワークス)
 桜祭りで開放されたアメリカ軍横須賀基地に、突如巨大な赤い甲殻類(レガリス)の大群が上陸した。遊びに来ていた子供たちを救助した為に、実習幹部の夏木、冬原は潜水艦”きりしお”に閉じ込められる。
 一方、状況を打開すべく奔走する警視庁の烏丸参事官、神奈川県警の明石警部、レガリス研究者の芹沢のとった行動とは・・・


 前編は夏木、冬原の乗艦する潜水艦”きりしお”をメインに。
 8月7日のよこすか開国祭とあわせて、海上自衛隊横須賀地方総監部の基地を解放するという”ヨコスカサマーフェスタ(*2)”が開催されます。普段は民間人が立ち入ることのできない場所ですが、この日は潜水艦”おやしお”目当てに朝から訪問いたしました。


【潜水艦”おやしお” 全景】

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 夏木、冬原、そして子供たちが乗艦する潜水艦”きりしお”潜水艦おやしお級の十一番艦という設定です。潜水艦というのは、船体の大部分が水の底に潜っているので、大きさの感覚は分かりにくいんですが、おやしお(=きりしお)のスペックは
  排水量 2,750t、全長     82m、全幅 7.4m
と、けっこう大きいんですね。
 形態が違うので一概には比較できませんが、全長だけでいうと東京ベイクルージングで使われている”モデルナ(*3)”とほぼ同じぐらいあります。桟橋上の人間と比べてみると、やはり大きいことがわかります。
 潜水艦ってどうしても”狭い”っていうイメージがありますが、それは葉巻状の筺体の中に居住スペースからエンジンから燃料からバッテリーからと船舶以上につめこまないといけないからでしょうからそうなるのであって、実際の大きさは思っている以上のものがあります。
 ちなみに、”海の底”ではほとんどアメリカ軍横須賀基地に停泊しているきりしおですが、物語の最後に横須賀地方総監部の吉倉桟橋に停泊するので、その時はこんな感じでしょうか。


【潜水艦”おやしお” 後部ハッチ】

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 物語の冒頭で、河邊艦長が子供たちを守るために命を落としたのがここ。後部ハッチとは書いてませんが”前部ハッチから回り込んで救出する”とうい下りがあるので、後部ハッチとしました。
 喫水線の高さや、装甲の傾きからレガリスがそんなに簡単に上がってくるようには見えませんが、小説の中では簡単に上がってきちゃいます。
 ちなみに、甲板上に人がいるのは特別公開で中に入れてくれるから。ただし、小学校4年生から高校生までが対象で事前申し込みが必要です。50歳すぎのおぢさんが学生服を着てもごまかせないので(非実在青少年か!?(*4))、中を見るのは断念です(*5)。


【潜水艦”おやしお” セイル】

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 潜水艦がでてくる物語では重要なポイントの一つ。
 子供たちが携帯電話をかけたり、ヘリからの救出に使っている場所です。潜舵の上に人が立っているので比べてもらうとわかりますが、けっこう大きいもんです。
 この人の後ろの部分に甲板から上がってくる取っ手があって、それをつたって潜舵に上がり、この人の前にある扉(写真からではわかりにくいですが)から中に入ってました。
 喫水線からでいうと、セイルまで7~8mあるそうで、子供たちが怖がるの怖がるのもわかります(上の写真を見ると確かに結構高い!)
 本書の中でレガリスが協調してセイルの上まで上がってくるシーンが何度か出てきますが、組み体操みたいにしたんでしょうか? だとしたら、かなり知能があると言えそうです。


 実は潜水艦ってけっこう好きなのかも。映画だけでも高校生の望ちゃんが見ていて”渋いもん観てるな”と夏木につっこまれている”眼下の敵”も観てるし、”ローレライ”も観たし、”真夏のオリオン”も借りてきています。(*6)
 思うに、潜水艦ってのは戦車と並んで民間人が一生乗ることがない乗り物で、そのステルス性とか、特殊な戦法とかミステリアスなイメージが面白いからかも。
 レゴリスに襲われたなんてシチュエーションでなければ一度は乗ってみたいものです。
 その他のシーンについては、後編で

PS.写真については、著作権を主張しませんので、その道でお好きな方はご自由にお使いください。

《脚注》
(*1)横須賀の開国花火大会
 2010年度は8月7日に開催。1万発の花火を打ち上げるというなかなか盛大なもの。HPはこちらから
(*2)ヨコスカサマーフェスタ
 今年見学可能だった艦艇は”護衛艦きりしま”、”護衛艦たかなみ”、”補給艦ときわ”、”駆逐艦フィッツジェラルド(アメリカ海軍)”,”砕氷艦しらせ”の5艦。その他にPAC-3(特殊軍事車輛)なども展示されいていて、軍事ヲタにはたまらないイベントです。
 2010年度のHPはこちらから。
(*3)モデルナ
 東京湾の日の出埠頭から出発するレストランシップ。一度はデートに使ってみたいものです。公式HPはこちらから。
 全長 83.2m、全幅 13.0m。一般的には、潜水艦は船に比べて全幅が小さいようです。
(*4)非実在青少年か!?
 年齢又は服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を想起させる事項の表示又は音声による描写から十八歳未満として表現されていると認識されるもの。
  ”東京都条例”に出てくるんで、ちゃんとした法律用語なんでしょうが・・・
(*5)中を見るのは断念です
 どうしても見たい方は、呉市にある海上自衛隊呉資料館”てつのくじら館”がおすすめ。展示してある本物のゆうしお型潜水艦”あしきお”に入ることができます。
(*6)”眼下の敵”も観てるし、
 眼下の敵:1957年の西ドイツ映画。監督 ディック・パウエル
      出演 ロバート・ミッチャム、クルト・ユルゲンス
      戦う男の魅力満載のお勧め映画です。
 ローレライ:福井晴敏の小説”終戦のローレライ”を原作とする日本映画。
      パウラ・A・エブナーの香椎・仮面ライダー妻・由宇がミステリアス
      原作は間違いなくお勧め。ぜひお読みください
 真夏のオリオン:2009年公開の日本映画。これから観ます。

しわくちゃのおばあさんになって、言ってやるのよ(”文学少女”見習いの初戀/相生)

 ども、単身赴任も長くなりましたおぢさん、たいちろ~です。
 最近、高年齢者の所在不明が多数発見されてるというニュースが流れています。一人身でおりますと、ころっと逝っちゃった時に誰がが発見してくれるかというのは実は切実な問題(*1)。最期は奥様か子供か孫か愛人かはわかりませんが、誰かには看取って欲しいものですが、残されたほうはどうなるかってのはあります。
 じゃあ、一緒に死んでしまえばいいかというとそれもまた問題。
 ということで、今回ご紹介するのは若者向けの心中のお話、””文学少女”見習いの初戀。”であります。

写真はたいちろ~さんの撮影。下賀茂神社の相生。ご神木の連理の賢木(さかき)」です。

【本】”文学少女”見習いの初戀。(野村 美月 ファミ通文庫)
 聖条学園に入学した菜乃(なの)は、文芸部部長、井上心葉(いのうえこのは)と出会う。心葉先輩に心惹かれる菜乃は勢いで文芸部に入部するが、まるで相手にされず落ち込む日々を過ごしていた・・・
 遠子先輩の登場する名作”文学少女シリーズ”の番外編。
 でも、デミアンとダミアンの区別のつかない文学少女ってどうよ・・(*2)
【花】相生(あいおい)
 一つの根元から二つ幹が分かれて伸びる、または2本の幹が途中で一緒になっていることを相生といいます。同じく、木の枝が他の木の枝と連なって木目が通じ合っているのが”連理(れんり)”。転じて夫婦・男女の間の深い契りをたとえていう言葉です。
 「長恨歌」にある”比翼連理”です(*3)。高校の教科書にあったはずですが覚えてますか?

 ”文学少女シリーズ”というのは、古典文学をモチーフにいろんな事件を解決するというライトノベル系推理小説。このシリーズはけっこうお気に入りでよくブログにも書きますし(*4)、この本がきっかけで原典を読んだりしています。
 ホームズ役が本書には登場しない遠子先輩で、ワトスン役が心葉ですが、今回は心葉がホームズで、菜乃がワトスンという設定。
 で、今回モチーフになるのが、元禄期に活躍した近松門左衛門の”曽根崎心中”。
 大阪堂島新地の女郎はつと醤油商の徳兵衛がで情死した事件をもとに書かれたいた人形浄瑠璃や歌舞伎の演目。自殺した露天神の森が”お初天神”で、大阪もこっちの名前のほうがとおりがよいです。
 実際にこの作品の大ヒットの影響もあって心中ブームが起こってしまって、上演を禁止されたそうです。まあ、”非実在青少年(*5)”の禁止よりはロマンのある話ですが。

 お話は菜乃が友達になった心中にあこがれるなごむさんと、相生の木にもたれかかるように心中した高校生の男女の謎とき。読んだ時に”相生の木”ってのがわからなかったので調べたのが上。”曽根崎心中”のはつと徳兵衛も二人で相生の木のもとで心中していますので、愛する二人の重要な舞台設定です。
 下賀茂神社で写真を撮ってたのは偶然ですが、こちらは縁結びの神さまなので、本来はこっちでしょうね。

 話が戻って、なごむさんが心中にあこがれる理由がこれ。

  なら、二人にとって一番幸せなときに死ぬのが、きっと最高のハッピーエンドだわ
  (中略)
  長い長い年月を、出会った頃と変わらない気持ちで愛し続けるなんて・・・

 まあ、菜乃の

  百歳のわたしが、百二歳の心葉先輩をほおずき市に誘うんですけれど、
  心葉先輩は耳が遠いフリをして、知らんぷりで短冊に俳句を書いているんです

 というツッコミの想像もかわういんですけどね。
 今でも奥様から”ブログ用の写真ばっかり撮ってて、一緒にいてもつまんない”と怒られているので、私んちも将来はこんなもんでしょうか・・・

 ”お前百まで、わしゃ九十九まで、ともに白髪の生えるまで”てなことを言いますが、まあ、長寿で添い遂げられれば良いことなんでしょうが、相方だけあっても長生きはして欲しいものです。なごむさんも最後には

  じゅうぶんに生きて、生きて、生き続けて、しわくちゃのおばあさんになって、
  そうしてなごむくんに会ったとき、言ってやるのよ
  わたしは、ずっとあなたを愛していたわって

 人を愛するにはこれぐらいのバイタリティが欲しいものです。
 もっとも、これが男女入れ替わると

  どうせ余もあとから行くのだ。まだ充分に美しい姿で待っているがよい(*6)

 とちょっとエゴイスティックになっちゃいますけど。

 ところで、”相生”にかけた言葉で”相老(あいおい)”という言葉もあって、これは”夫婦が仲よく連れ添って長命であること”という意味。まあ、これが理想なんでしょうなぁ、たぶん。
 ということで、”どんなに苦しくても頑張って生きていきましょい!”というのが今回の結論であります。

PS.恋人がいないと、心中以前の話だぞ。わかってるか、○○!

《脚注》
(*1)ころっと逝っちゃった時に誰がが発見してくれるか~
 寮生活ですので、朝に寮のおじさんかおばさんがチェックに各部屋を回ってくれますので生死の確認はできてます。が、ドアを開けるときはちょっとどきどきするとおばさんは言ってました。
(*2)デミアンとダミアンの区別のつかない~
 デミアンは、ドイツの作家ヘルマン・ヘッセの小説。偉そうに書いてますけど読んだことありません。
 ダミアンは、1976年に製作されたホラー映画に登場する悪魔の子の名前。すいません、これも見てません。一人暮らしにホラーはタブーです。
(*3)白居易「長恨歌」にある”比翼連理”です(*2)。
 中国唐の詩人、白居易によって作られた玄宗皇帝と楊貴妃のエピソードを歌った漢詩。
  在天願作比翼鳥   天に在りては 願わくば 比翼の鳥と作(な)り
  在地願爲連理枝   地に在りては 願わくば 連理の枝と為(な)らんことを

 全文の解説は”花と詩と音楽と”のHPでどうぞ。
(*4)よくブログにも書きますし
 ”文学少女と死にたがりの道化”、”文学少女と穢名の天使”、”文学少女と月花をだく水妖”など。このシリーズがきっかけで”人間失格(太宰治)”や、”夜叉ケ池(泉 鏡花)”なんてのも読みました。
(*5)非実在青少年
 ”東京都青少年の健全な育成に関する条例”の2010年改定案に出てくる言葉。
 簡単に言うと18歳未満に見える人がエッチする表現を規制対象にしようというもの。”見える”というのが恣意的とか、小説はOKで漫画やアニメ、ゲームはNGと問題含みで廃案に。
 しかし、もうちょっとましなネーミングはなかったのかいな。
(*6)どうせ余もあとから行くのだ~
 ”銀河英雄伝説 外伝”(田中芳樹 徳間文庫)より
 自裁した愛人に対して老齢の皇帝がつぶやいた言葉です。

インターネットははたして純粋経験なりや?(善の研究/哲学の道)

 ども、哲学するおぢさん、たいちろ~です。
 先日、京都の哲学の道に行ってきました。あいにくの雨でしたが、逆に考えると雨にけぶる疎水のほとりに咲くあじさいなんてのはかえって風情があり、世俗の塵芥にまみれたおぢさんも”哲学してみましょうか”って気になります。
 ということで、今回ご紹介するのは日本哲学の泰斗、西田幾多郎(*1)の”善の研究”であります。


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写真はたいちろ~さんの撮影。左は哲学の道とあじさい、右は哲学の道の碑です。


【本】善の研究(西田 幾多郎 岩波文庫)
 純粋経験の立場から、哲学の全領域にわたって整然と組織された哲学の本。のちに西田哲学の基礎となったそうです。初版は明治44年(1911年)と百年に及ぶロングセラー。解題を書いている下村寅太郎いわく”西田哲学の入門書に最適”とのことですが、とっても難しかったです。
【旅行】哲学の道
 京都の南禅寺付近から銀閣寺まで続く疏水のほとりの散歩道。西田幾多郎がこの道を散策しながら思索にふけったことからこの名がついたそうです。
 確かにこの閑静な小道を歩いていると哲学の気分にひたれます。派手さはないけど京都観光のお勧めスポット。


 さて、西田哲学の要諦にあるのが、”純粋経験”。本書から抜粋すると

  経験するというのは事実其儘(そのまま)に知るの意である。
  全く自己の細工を棄てて、事実に従うて知るのである。
  純粋というのは、普通に経験といっている者も
  その実は何らかの思想を交えているから、
  毫も思慮分別加えない、真に経験其儘の状態をいうのである。

 この色は何とかの判断もなく、こいつは何を言っておるのだという推理もない本当に感じたままの状態のこと。この上に”思惟”があり、”意思”があるらしい。で、ただ、”私は哲学の道を歩いている”という純粋経験から、”ここはひとつ西田幾多郎でも読んでみましょうか”ということになるわけです。
 正直言って、この本を読むまで”幾多郎”を”きたろう”ではなく”いくたろう”と読んでるぐらいで、”哲学の道”に行かなければこの本を読むことはなかったでしょうねぇ。

 さて、今回のお題の”インターネットははたして純粋経験なりや?”でありますが、ネット上のこんなブログを読んだりとか、バーチャルチアリティってのは”純粋経験”になるんでしょうか?
 ブログを読むこと、本を読むこと、あるいは映画を見ること、直接的には経験であることには変わりはありませんが、そこに誰かさんがした経験を切り出すという意思が入っているので、そういった意味では二次的な経験ともいえます。まあ、見た瞬間は”純粋経験”といえるでしょうが・・・
 本書の中で”個人あって経験あるのではなく、経験あって個人ある”といっているので、こういった駄文のブログを読む経験でも、誰かさんの個人形成や意思に影響してるんでしょうかねぇ。よくわからん。

 実は、”経験って何?”ってどんどん難しくなっている話です。かつて寺山修二が”書を捨てよ、町へ出よう(*2)”といった時代ほど簡単ではななってきています。インターネインターネットで世界中とつながるわ、コンピュータグラフィッスばりばりの映画がでてくるわ、テレビは3D化するわ(*3)、ものすごい勢いで現実をバーチャル技術が追っかけていて、部屋のにいても一昔とは比べられないくらい、いろんな経験ができるようになりました。
 まあ、現実の”哲学の道”に立ってみる経験から得る実感と、テレビから得られる実感は違いますが、そこに付帯する知識はテレビやインターネットのほうがはるかに上。娘が大学で”情報メディア論”ってのを受講していて、講義のテキストを見せてもらいましたが、情報メディアの高度化というのは、ある意味”現実感をどう表現するか”といった要素も大きいので、こういった哲学方向での素養も抑えておいたほうがいいのかな。点数にはならなさそうだけど。

 あと何十年もたたずしてマトリックス(*4)がリアルになりかねないような技術進歩の勢いなので、”経験”に対する社会的な評価のコンセンサスを作っとかないと、”実体験だけが正しい”みたいなことになりかねません。在宅のデイトレーダーがリアルに働いてる人より稼いでいるとか、テレビや本ばっかりみているオタクの人が実は知識(限定的だけど)が豊かとかに対する否定的なニュアンスって、実はそうじゃないと思う時もあったりなんかしちゃいます。

 ”善の研究”は、戦前の日本では学生の必読書だったそうですが、昔の学生は頭がよかったのか、おぢさんの理解力が貧困なのか、1回読んだぐらいじゃその深遠にふれることはできなさそう。でも、たまにはこういった浮世のしがらみから離れて哲学書に触れるのもいいかも。老眼入った人用にワイド版も出版されています。

 余談ですが、同じく歩いた奥様もブログを書いてますのでよろしければごらんください。ま、同じ経験をしてもこんだけアウトプットが違うってのは、人の多様性ということで・・・

《脚注》
(*1)西田幾多郎(にしだ きたろう)
 日本を代表する哲学者(1870年(明治3年)~1945年(昭和20年))。
 第四高等学校(金沢大学の前身)講師から、京都大学教授となり、京都学派を創始。
(*2)書を捨てよ、町へ出よう
 平均化された生活なんてくそ食らえ。本も捨て、町に飛び出そう。永遠の青春の旗手が贈る、自分を知る一冊。(Amazon.comより)
 高校の時ぐらいに読んだはすなんだが・・。こんとまた読んでみよう。
(*3)コンピュータグラフィッスばりばりの映画がでてくるわ~
 左右の眼球の視野差を利用して立体に見せる技術で、今後の家電メーカーの戦略商品となっている模様。
 かつてつくば博(1985年開催)の富士通パピリオンで世界初のCGによる全天周立体映を見たときは驚きましたが、当時は水の分子やDNAといった比較的幾何学的な画像を赤青(だったかな)の2色で表示させるだけでも超大型コンピュータを並列につないぐ必要がありました。そんなのをはるかに高度な表現で当たり前にやってるのを見ると隔世の感があります。
(*4)マトリックス
 1999年から公開されたウォシャウスキー兄弟が監督したアメリカ映画。
 現実と思っていた世界が、実はコンピュータの反乱によって作られた「仮想現実」だというお話。主人公のネオが超人的な動きをするとこを除けば、どれが現実でどれが仮想空間かの区別はつきません。

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