« 2010年6月 | トップページ | 2010年8月 »

2010年7月

「金融庁が来ました」という書きだしでふいにメールを消したくなりぬ(サラダ記念日/サボテン)

 ども、電子メールシステムの拡販担当のおぢさん、たいちろ~です。
 先日、日本振興銀行の木村剛前会長が逮捕されるというニュースが流れました(*1)。容疑は、金融検査の際に意図的に不都合な電子メールを削除するなどした銀行法違反(検査忌避)。一般の人にはなじみがないかもしれませんが、銀行には金融庁、日本銀行が定期的に検査が入って業務内容をチェックするというルールがあって(*2)、金融庁のルールブックが「金融検査マニュアル」。木村前会長という人は金融庁の顧問時代にこの「金融検査マニュアル」の作成をした関係者の一人です。金融機関向けシステムの拡販担当をしているので、このマニュアル関連でいろいろお仕事してました。
 それだけに、なんだか隔世の感があります。


Crocus01


写真は”花と少年”のhpより。クロッカスです。


【本】サラダ記念日(俵 万智 河出文庫)
 1987年の発刊の初版に挟まっていた広告には「俵 万智 異色歌集。短歌も俳句も劇画調がウケる”新人類時代”」とあるように、当時としては異端でしたが、これが大ヒット。よもや国語の教材にまで載るようになるとは・・・
【花】クロッカス
 アヤメ科クロッカス属の内で花を楽しむ園芸植物の流通名。別名”花サフラン”と呼ばれるようにスパイスのサフランの仲間です。
 花言葉は”青春の喜び、あなたを待っています、私を裏切らないで”など。


 ”電子メールシステムの拡販担当”というのは本当で、メールアーカイブと呼ばれるシステム扱ってました。電子メールは必ずサーバを介してやりとりをされるのですが、これに証拠能力を持たせるためには”改ざんされていない、消されていない”ことが必要になります。今回の木村前会長がやったのは、この”メールを消す”ことを意図的にやったから。メールアーカイブというのは、メールが改ざんされないようにするためのシステムです。極論すれば”金融検査マニュアル”への対応のために売れたようなモンなんですがねえ・・・

 電子メールってのは、すぐに相手に届くとか、一斉同報で複数の人に送れるとか、携帯電話なら何時でも何処でも出せるとか、便利な機能もいっぱいあってかなり一般化してますが、日本で普及しだしたのは1980年代の後半から。その前はナンだったかと言うと”手紙”であります。ということで、前置きが長くなりましたが、今回ご紹介するのが手紙時代の短歌集”サラダ記念日”であります。

  手紙には愛あふれたりその愛は消印の日のそのときの愛
  書き終えて切手を貼ればたちまちに返事を待って時流れだす
  待つことの始まり示す色をして今日も直立不動のポスト

 ”サラダ記念日”に載っている”手紙”を題材にした短歌ですが、こうやって見ると手紙って”ゆったり時間が流れる”感がありますね。手紙を書いて出す、数日して相手に届く、そこから相手が返事を書いて数日後に届く、っていうみたいにやりとりに時間がかかって、待っている間のどきどき感とか、その間の感情のゆれだとか・・・
 ほんの20年ちょっと前のことですが、時間はまったり流れてたんですねぇ。今なら早ければ数分以内に返事がきますので、消印の日の愛じゃなく”現時点の愛”。まあ、情緒がないっていえばそれまでですが、愛を確かめ合うにはいいのかなあ。もっとも、いろいろ思い悩む時間もないので、即ケンカにもなりそうですが。
 電子メールでもどれぐらいで返事がくるかは相手次第。私も高校時代の友人と今でもメールのやりとりをしてますが、返事が来るのが1週間とか1ケ月先なんてのもざら。まあおぢさん世代の時間感覚でいうと、これもありかと。

  「クロッカスが咲きました」という書きだしでふいに手紙を書きたくなりぬ

 今回の表題”「金融庁が来ました」という書きだしで~”のオリジナルがこれ。今ならツイッターなんかでありそうだなあ。クロッカスの花言葉は”あなたを待っています”ですが、待っている間もなくすぐフォローするのがお約束みたいです。
 メールやツイッターとかですぐ返事を返すのは”つながってる感”を確かめたいからっていう話を聞いたことがありますが、せわしない時代ではあります。

 ケータイ小説が文学として認知されてきているように、携帯電話のメールのやりとりなんかが”往復書簡集”なんて形で発表される時代がもうすぐくるんでしょうか? 以前、ツイッターが文学になるんじゃないかというブログを書いたことがありますが(*3)、感性っていうのはメディアの変遷に伴って変わってくる可能性は充分にあります。
 ただ、恋の終わりはこんな風にならないようにね。

  「元気でね」マクドナルドの片隅に最後の手紙を書き上げており

 ”サラダ記念日”は今読んでも充分に面白い短歌集です。おぢさん世代が読んでも気分が青春しちゃいます。メールやツイッターといった”短いコトバ”で気持ちを伝えることが当たりまえの昨今、再注目されても良い本だと思います。

 最後に、木村前会長向けにはこんなのもどうぞ。

  出張先の宿より届く絵葉書を見ておりアリバイ写真のように

《脚注》
(*1)日本振興銀行の木村剛前会長が~
 詳しくは「“木村銀行”の終焉と振興銀を待つ不透明な先行き」(ダイヤモンドオンライン 2010年7月20日配信掲載)でどうぞ。
(*2)金融庁、日本銀行が定期的に検査が入って~
 金融庁(旧大蔵省)の検査を”大蔵検査”、日銀の検査を”日銀考査”と言います。この日程を探り出すのが、かつて銀行のエリートであったMOF担の仕事でした。(MOF=Ministry of Finance,大蔵省)
(*3)ツイッターが文学になるんじゃないか~
 ”ツイッターは種田山頭火の夢を見るか”、”ブログって灰も残らないんだ・・・”の2本。興味のある方はこちらもご一読のほどを。

ローマ皇帝も家来でも、お風呂入るときゃみな裸♪(テルマエ・ロマエ/越後湯沢駅酒風呂)

 ども、温泉大好きおぢさん、たいちろ~です。
 先日、炎天下の中、庭の草むしりをやっとりましたがあまりの暑さで1時間でダウン。”こんな日は、風呂いくべ!”と近くの銭湯へ。するとイタリア人がいるではありませんか!(*1)
 ”へ~、イタリアの人も銭湯に入るんだ”と思いましたが、考えてみればイタリア人のお風呂話のベストセラーがあるではないですか。ということで、今回ご紹介するのはお風呂建築技師のお話”テルマエ・ロマエ”であります。


03250322
写真はたいちろ~さんの撮影。JR越後湯沢駅の酒風呂です。


【本】テルマエ・ロマエ(ヤマザキマリ エンターブレイン)
 時は古代ローマ、ハドリアヌス帝のころ、失業中の風呂建築技師”ルシウス”はなぜだか、現代日本のお風呂にタイムスリップ。カルチャーショックを受けながらもそれを古代ローマのお風呂に流用することで皇帝にも信頼される風呂建築技師に・・
 題名の”テルマエ・ロマエ”は、”ローマの浴場”という意味。
 2010年マンガ大賞、第14回手塚治虫文化賞受賞の名作です。
【旅行】JR越後湯沢駅 酒風呂
 JR越後湯沢の駅ナカ温泉です。越後湯沢は東京から北陸方面に行く乗換え駅ですので待ち時間をちょっと長めにとればすぐ入れるので乗り鉄派の出張の折にはどうぞ。
 入浴時間は10:30~17:30(冬は19:30まで)。
 同じく駅ナカで日本酒のテイスティングのできる”越の室”もお勧めです。

  お殿さまでも家来でも、お風呂に入るときゃみな裸、
  裃脱いで刀も捨てて、歌の一つも浮かれ出る

   (中略)
  狭いお風呂も楽しい我が家

 これは映画”東京五人男”の中で、焼け跡のお風呂で古川ロッパが歌っている曲。1945年の映画ですので、さすがにリアルタイムで聞いてたとは思えませんが、妙に心に残ってます。(ニコニコ動画の映像はこちら
 なんとなく”起きて半畳寝て一畳、天下取っても二合半(*2)”的な達観がいいのかも。銭湯に行くと、話好きなご隠居さん、いなせな大工の棟梁っぽい人がけっこういますが、まあ人となりがわからなくても面白いおっちゃんの社交場ではあります。古代ローマもこんな感じだったんでしょうかね。

 さて、”テルマエ・ロマエ”ですが、エンターブレインのhpでは”ギャク漫画”になっていますが、秀逸なコメディでしょうね。日常目にしているものが異文化から見るととんでもなく映るというシチュエーションが楽しいです。
 フロ上がりの牛乳を腰に手を当てて飲むとか、シャンプーハットに感動するとか、ウォシュレットに”クセになりそう”するとか。
 笑いという意味ではこのへんなんでしょうが、風呂礼賛としては意外とマジ。ハドリアヌス帝が戦場で

  もう、風呂に入れぬ生活には耐えられん!!
  湯にさえ浸かる事ができれば 頭も今以上にさえるはずだろうし
  何よりも この疲労感と全身にこびりついた砂を洗い流してしまいたい・・・
  兵士達も風呂にさえ入れば 再び力を蓄えられるであろうに・・・

 といってますが、そのために風呂技師のルシウスまで戦場につれてっちゃって、大浴場からオンドルまで作っちゃうって発想がさすがに皇帝!

  ローマ人の力の源泉は浴場(テルマエ)にあり

 名言です。

 写真にあるJR越後湯沢駅の酒風呂は、富山出張の帰りに寄ったもの。だいたい東京~富山だと飛行機で移動する人が多い中、電車移動は少数派。でも、こういう余禄もあるんですね~
 爆弾おにぎりとか食べさせてくれるレストランもあるし、聞き酒もできるというベストな駅ナカです。仕事の疲れもふっとびます。ただ、お風呂の終わりが早いのがちょっと難点。せめて21時ぐらいまで開けててくれるともっとゆっくりできるのに・・・

  日本人の力の源泉は銭湯にあり

 ”テルマエ・ロマエ”をもってまた行きたいものです。

《脚注》
(*1)イタリア人がいるではありませんか!
 別に本人に確認したわけではありませんが、ジローラモさんとそっくりだったので。
 ちなみに、ジローラモさんのお父さんは建設会社社長、本人もナポリ建築大学中退とのこと。
(*2)起きて半畳寝て一畳、天下取っても二合半
 人間が必要な広さは、起きている時が半畳、寝ても一畳あれば足りるし、天下人でも一食に食べられる飯は二合半が限度。つまり、富貴や地位や物質的な欲望に対する批判的なご意見です。
 ”俺の空”(本宮ひろ志)で使われていたのが印象的。

ちょうど就職氷河期だったんで、コミュニケーション能力が必要でした(Googleに学ぶ幸福な職場/センダン)

 ども、人材育成担当のおぢさん、たいちろ~です。
 先日、中堅社員向けの”コミュニケーション能力強化研修”があるので、誰を出席させるかという話題になりました。入社年次順に並べて30代前半の同僚とあ~じゃこ~じゃ話をしていて気がついたんですが、異様に元気がある世代と、わりとおとなしいのがいる世代が分かれるんですね。特に00年以降に入社しているのにとんがってるヤツが多い。ちょうど話をしていたのがこの世代だったので聞いてみたら

  私達の時代はちょうど就職氷河期だったんで、
  コミュニケーション能力がないと就職がままならない時代でした
  なので、学校でもこの強化に力を入れてました

 とのこと。なるほどね~~~
 大学で真面目にベンキョしてなかったおぢさん世代には耳の痛い話です。


0270

写真はたいちろ~さんの撮影。埼玉県清水公園の”センダン”です。


【本】Googleに学ぶ幸福な職場(きよみ ハッチングス 朝日クリエライブラリー)
 著者は日米グローバル企業の企業内教育コンサルタントの人。なので内容は”幸福な職場を実現するための教育”の重要性に重点をおいて書かれています。
 表題が”Google”ですが、”Googleだからできた”んじゃないことを理解させてくれる本。
【花】センダン(栴檀)
 センダン科の落葉高木。大成する人は幼少のときからすぐれているというたとえ”栴檀(せんだん)は双葉より芳(かんば)し”に出てくる木ですが、このセンダンは白檀(びゃくだん)(*1)のことで別物だそうです。
 ま、珍しいので載せてみました。


 今回ご紹介する”Googleに学ぶ幸福な職場”ですが、その中でGooglegが優良企業ランキングの上位に入っている理由として以下の3つをあげています

1.企業文化に5つのキーとなる要因が入っている

 信頼、尊重、公正、プライド、仲間と楽しく仕事ができる
2.従業員のやる気を醸成する職場環境がある
 従業員への感謝の気持ちとしてのベネフィット、ワークライフ・バランス、
 ダイバーシティ(多様性の尊重)、従業員流出率の低さ
3.企業の成長を促す文化がある
 自由な発想の奨励をイノベーションにつなげる、社会・地域貢献、
 双方向でオープンなコミュニケーションの浸透、
 社内外のコラボレーションの奨励
 グローバルな視野のある従業員育成

 まあ、言うだけならどこの会社でも言ってる内容ですが、実行できるかどうかが重要。そこでポイントになるのが”企業文化”。文化ってのはお題目だけでは文化にならないんでしょうから、文化として定着するためのは教育とかの努力が必要になります。
 この本では従来型の会社提供型の教育カリュラム(フォーマル・ラーニング)や自分で率先して学ぶ(インフォーマル・ラーニング)に加えソーシャル・ラーニングが重要と説明しています。
 ソーシャル・ラーニングってのはカリキュラムがあって先生から教えてもらうんじゃなく、わいわいがやがやあ~でもない、こ~でもないと話合いながら学ぶやり方。これによってコラボレーションに必要なソーシャルスキル、コミュニケーションスキルを身に付けると言うもの。
 上記の30代以降のとんがってるヤツってのは、これが上手いんですな。いわゆる自己主張がちゃんとできてる。自分の意見を自分の言葉で相手を納得させられる能力ってのはなかなか得がたいものです。年のわりに偉そなヤツがいるのも確かですが(*2)

 まあ、私の会議のやり方は”言いたいことははっきり言ってみそ!”ってのが基本にあるので、とにかくコミュニケーションできなければ話にならない。私自身が”座ってるだけなら会議に出るな!(*3)”と教育されて来ているので、ちゃんと自分の意見を言えるスキルが大前提になるのは理解しやすいトコロであります。
 今後、グローバルに展開していかなかれば日本の国自体が成り立っていかないご時勢、”沈黙は金”とか”以心伝心”なんてのは通用しなくなってくんでしょうね。そういう意味ではちゃんと双葉の時代から鍛えてかないと難しいスキルではあるかもしれません。

 ”Googleに学ぶ幸福な職場”は教育担当者というより幹部社員に読んで欲しい本。会社の雑談ってのも決してムダでゃないし、言いたいことを言い合える環境をちゃんとつくれば、以外と面白いアイデアってのが出て来るモンです。
 耳が痛いのも多いけど、これを受け止められるかどうかが会社と人間の度量ってものですぜ!

《脚注》
(*1)白檀(びゃくだん)
 ビャクダン科の熱帯性常緑樹。良いにおいがするのでお香などに使われます。発芽のころから香気を放つことから、この例えに使われているとのこと。
(*2)年のわりには偉そなヤツがいるのも確かですが
 誤解したいでいただきたいですが、これは最大級の賛辞なんですよ。
 ”あしたのジョー”の中で矢吹ジョーが少年院でのボクシング対決前に大口叩いているのを見て白木財閥の総帥が”相手が自分より実力が上と判っていて強がるのは覚悟がいる。負けたときに大恥をかくことになるから”といった趣旨のことを言ってます。
 単なるビックマウスが評価されるほど、会社は甘くありません。
(*3)座ってるだけなら会議に出るな!
 配属が関西でしたので、黙っている人間なんてほとんどいませんでしたが・・・

ハイエンドマシンなんて飾りです。偉い人にはそれがわからんのです(ジオン軍の失敗/腋芽(わきめ))

 ども、パッケージ拡販担当をやってたおぢさん、たいちろ~です。
 まがりなりにもコンピュータ用のアプリケーション販売ってをやってますが、これには2つの流れというか考え方があります。ひとつは”お客様の仕様(*1)にあわせてカスタマイズを加える”ってやり方と、もうひとつは”お客様の仕様をパッケージに反映させる”というやり方。言い換えると、前者はバリエーションを増やす、後者はバージョンをUPするということになります。
 まあ、一長一短あるんですが、どちらも上手くやらないとコストばっかかかることになります。で、うまくやらなかった事例として参考になりそうなのが、今回ご紹介する”ジオン軍の失敗”であります。

0398

写真はたいちろ~さんの作成。庭のトマトにできた腋芽です。


【本】ジオン軍の失敗(岡嶋 裕史 アフタヌーン新書)
 ”機動戦士ガンダム”の一年戦争時のジオン公国において、なぜかくも多様なモビルスーツが開発されたのか?(*2)
 プラモを売りたいが為のバリエーションではなく(たぶん)、いろんな種類の機体を作ってしまう技術屋さんの性に政治決着の尻拭いと、製品開発のリアルでもありがちな失敗を描いた本です。
【家庭菜園】腋芽(わきめ)
 トマトなんかを育てると、本枝と支枝の間に第三の枝が出てきます。これを腋芽といって、ちゃんととらないと、ムダな枝ばっかり増えて実が充実しなくなります。家庭菜園の基本ですが、ついついサボりがち(反省しています)


 バリエーションを増やすというやり方は、良く言うと状況に合わせて個別に改良を加えていくことなので、短期的には効果が上がります。上記の例でいうとお客様の固有事情に合わせて変更をするので、その分のお金がもらえれば売上も上がりますし、お客様にとってパッケージより使いやすいものになります。
 ただ、このやり方の問題は、複数のバリエーションが同時に存在するので共通的な仕様変更(法制度対応とか)があると短時間で複数のお客様に対応する必要があるし、ソースコードの管理も大変になるので、長期的には利益を圧迫することになりかねません(*3)。
 ガンダム世界でのこの例が大戦初期の名機”MS-06F ザクⅡ”。当時のTVアニメ版では通常の緑ザクとシャア専用の赤ザク(MS-06S)ぐらいですが、後のOVAを含めるとかなりのバリエーションが存在するとのこと。まあ、ガンダムってオープンソース的なところがあるので(*4)、全てが製作者側の意図ではないんでしょうが、本書では生産ラインの増殖や、開発リソースの分散の問題点を指摘しています。
 実際のビジネス現場から見ても、この指摘は正鵠を得ていると思います。

 じゃあ、バージョンアップ型がいいかというと、長期的にはソースコードが少なくメンテナンスコスト自体は減少するとか、先行のお客様のノウハウが反映されているので使いやすいとかのメリットはありますが、短期的にはお客様の要望に対応しないことになるので、基本性能がそれなりのレベルに達していないと売れないという課題もあります。また、仕様に対するある程度の割りきりがないと、限りなく肥大化するリスクがあるし、旧バージョンのサポート問題もあります。一般のパソコンユーザの方はピンとこないかもしれませんが、ビジネスユースではけっこう古いOSが現役で動いていたりするので、どこまで過去に遡ってサポートするかを見極めないと、こちらも動作保障のためのテスト工数が膨らみかねません(*5)。その辺は割り切りの良い外資系とウェットになんとかしようとする国産系の違いが如実に出たりなんかがでて面白いですが。

  ガンダム世界でのこの例が水陸両用機の最高傑作”MSM-07 ズゴック”。優秀性を評価されながらも、現場の意見を取り入れたための開発遅れとか、高コスト化とか、作者の岡嶋 裕史の採点は辛め。

  だが、やはり技術開発はどこかで見切りをつけなければならない。
  製品というものは、精査すれば常に問題点を内包するものだし、
  改善の余地のあるものである。
  しかし、改善要求にすべて対応していては、いつまでたっても製品は完成しない。
  完成したとしても、あらゆる機能を盛り込んだ使いにくい
  あるいは現実的な値段でないものになる。

              (本書より抜粋)

 つまり意味のないハイエンドなシステムってのは、フラッグシップ的な位置づけはともかく、ビジネスには寄与しないことになりかねません

 誤解の無いように言っときますが、実際に会社の中でものづくりをやっている人は真摯に取り組んでいるんでいて、より良い製品を作ることに情熱をかけています。ただ、腋芽をちゃんと取らないとムダなエネルギーばっかり使って実を結ばないように、適度な剪定をしないと良い結果には結びつきません。これは技術者の問題というよりマネジメントの問題。なので、マネジメントについては開発をしない営業とか、予算責任者を参加させないとまずいんじゃね? と思うのはそんなに間違っちゃいないと思うんですが・・・(*6)。

 ”ジオン軍の失敗”という名前からオタク本かと思われるかもしれませんが、立派な失敗学のビジネス書です。裏表紙の解説に”立てよ! エンジニアよ!”とありますが、ガンダムファンであればエンジニア以外の人にも読んで欲しい本であります。

《脚注》
(*1)仕様
 まあ、コンピュータ業界でこれほど便利な言葉はありません。
 設計フェーズにおいて、どのようなインプットでどのように処理してアウトプットを出すかとかを決めるのを”仕様決め”と言います。すべての仕様を決められれば理想的ですが、なかなかそうはいかないのがプロジェクトの常。そうなると人間は往々に自分の都合の良いように解釈するので出来上がってみて”それはこうじゃない”といった齟齬が発生してしまいます。なので、仕様を最初にいかにきっちり決められるかがリスク回避の最重要課題。
 とはいってもバグを”仕様だ!”と言い切るのは論外ですが・・・
(*2)なぜかくも多様なモビルスーツ開発が開発されたのか?
 とはいえ一点もののマシンがバトルする従来のアニメから見れば、同一機種を複数で運用するとか補給とかいう兵器運用思想を持ち込んだのは画期的ではありました。
(*3)長期的には利益を圧迫することになりかねません
 あえて売上と利益を別けて書いているのは、いったん作ったアプリケーションにも維持するためのメンテナンスコスト(要員の人件費や管理費等)がかかっているので、売上が上がってもそれ以上にコストがかかって利益が上がらないという状況が発生するからです。
(*4)オープンソース的なところがあるので
 簡単に言うと、ソースコードを公開し大勢の人間がアプリケーションを開発して再頒布できるのがオープンソースです。
 今でこそメジャーな設定の”ミノフスキー物理学”ってのも、元々は発行の雑誌”月刊OUT 別冊 ガンダムセンチュリー”(みのり書房)に掲載された解説が後付けで公式設定となったもの。
 同人誌活動のハイエンドといえなくもないですが・・・
(*5)動作保障のためのテスト工数が膨らみかねません
 ビジネスユースのサーバーではデータベースソフトやミドルウェアがからんで来るのでかなり条件が複雑。とりあえず動くけどバグが出ても直せないとかいう状況も発生します。
(*6)開発をしない営業とか、予算責任者を~
 一般論ですが、営業は”この機能だと幾らぐらいで、これぐらいのユーザにしか売れない”という総売上側からものを考えるのに対し、開発者は”この機能を作るにはこのぐらいの費用がかかるので、それを回収できるには幾らぐらいの金額で何ユーザに売る必要がある”的なコストありきの考え方をします。
 なので、マネジネントの人はこの両方から落とし所を考えないと、結果的にとんでもないビジネスプランが出来かねません。

ブログを書く理由? ヒマつぶしですが、何か?(ウェブを炎上させるイタい人たち/ひなげし)

 ども、社内ブログの管理人のおぢさん、たいちろ~です。(これは本当)
 正確にいうと、今年の4月から本部内にブログを立ち上げまして、そのセットアップとコンテンツの作成をいうとのやっています。まあ、本部といっても250人程度のメンバーですが場所としては全国にちらばっておりますので、”メンバの情報共有の場を作る”ということになっております。
 立上げ時に問題になったのは、”フリーにコメントを書き込めるようにしてもいいのか?”ってことですが、まあ”炎上するようなことがあれば、そん時考えよう”ということにいたしました。


0301
写真はたいちろ~さんの作成。近所の道端に咲くポピーです。

【本】ウェブを炎上させるイタい人たち(中川 淳一郎 宝島社新書)
 ネットに関する本はというのは極端に”楽観的”なものと、”悲観的”なものに分かれる傾向がありますが(*1)、これは後者。でもその理由が個人情報の流出とかバッシングではなく、”ヒマ人のストレスのはけ口にいちいち付き合ってられるか!”という論調はなかなかユニークです。
【花】ヒナゲシ(雛芥子)
 名前のとおりケシ科の一年草です。英名はCorn poppy
 園芸種や自生してるヒナゲシですが、同じケシでも阿片ケシ(アヘンケシ)なんかを植えていると、あへん法違反で罰せられます。


 実際問題として、アドレスもわかっているし、ログも取っている状況で誰がコメントを書いているかなんて調べれば判る状況の中で(*2)、炎上の前提である匿名性がないのにそんなことをわざわざやる人間なんてそうそういやしませんて。それに、書いている人の顔と名前が一致する程度の組織なんだから、電話一本かければすむ話です。

 まあ、これが不特定多数のネットだとこうはいかないんでしょう。で、今回ご紹介するのが”ウェブを炎上させるイタい人たち”であります。
 炎上に関する本ってのも何冊か読んでみなしたが、この本がユニークなのはネットに巣くう人をカテゴライズして、一部の人達がヒマつぶしやっている(*3)というという論を展開している点。

  1)ネット教教祖(社会的に地位のあるネット界のオーソリティ)
  2)ネット教信者(ネットに詳しい普通の人)
  3)一般企業(特に大企業)
  4)普通のネットユーザー
  5)ネットサービス運用会社
  6)ネットに慣れた暇
  7)賢いリア充(リアルな生活が充実した人)ネットユーザー

 で、勝ち組はネットで儲けている”ネットサービス運用会社”とネットを上手く使っている”賢いリア充ネットユーザー”、被害者は”一般企業”(*4)。で、一番こまったちゃんはだれかというと、”ネットに慣れた暇人”。このカテゴリの代表として上げられているのがロストジェネレーション(ロスジェネ)と言われる20~30年代の人達です。就職氷河期だわ、先行逃げ切りの中高年とゆとり世代の間に挟まれているわと、リアル生活にあまり恵まれなかった世代(*5)。
 で、所得が低くヒマをもてあました人達がネットにのめり込んでいくっていうのは、この世代だけではなくてもありそうだな~というのが正直な感想。もちろん、全員ではなく突出した一部でしょうが。
 本書の中に書かれている

  インターネットなんて何もすごくないんだ
  いいか、インターネットよりも女のおっぱいのほうがすごいんだ。

 っていうのは至言。インターネット=バーチャルより、”女のおっぱい=リアル”のほうが重要ってことをここまでわかりやすく表現した言葉ってのはなかなかないですね。
 それにバーチャルですらアクセス数を(単純に)上げたいだけなら、エロネタのほうが効果があります(*6)。
 まあ、アンパンに芥子粒がいくつついているかなんて、あなたが目がテンのディレクターでもない限り(*7)意味がないように、リアルが有意義でなければ、バーチャルでもあまり意味がないのではないかと・・・
 それに芥子粒をいくつ集めても、現実逃避のアヘンにはならないんですから・・・

 まあ、世代論としてひとつだけ反論すれば、おぢさんだって定年してヒマをもてあませば、ロスジェネ化する可能性だって充分あります。なまじ社会的な地位があったとか、頭が固くなっているとか、よけいにタチ悪そうだし

 ”じゃあ、なんでオマエはブログを書いているんだ?”と聞かれそうですが、これは単なるヒマツブシです、はい。

PS.
 "芥子粒をいくつ集めてもアヘンにはならない"は単なるネタです。麻薬には絶対に手をださないように。バーチャル、リアルにかかわらず身の破滅です。

《脚注》
(*1)極端に”楽観的”なものと、”悲観的”なものに~
 最近読んだ楽観論のものとしては”Twitter革命”(神田 敏晶  ソフトバンク新書)。ブログに書きましたので、詳しくはこちらから
 Twitterの可能性を否定はしませんが、ここまで楽観的なのはちょっと・・・
(*2)調べれば判る状況の中で
 こう書くときは大体”めんどくさいから、そんなことやりたくない”という本心が見え隠れします。だから、しょ~もないことするんじゃね~ぞっと!
(*3)一部の人達がヒマつぶしやっている
 本人は”正義”とか”社会貢献”と思っているかもしれませんが、客観的に見てもそうはなっていはいない事例もいっぱいありそう。個人的に考える正義と社会一般での正義(そんなものがあればですが)が一致しないなんてのは事例にこまんないぐらい山ほどあるし。
(*4)被害者は”一般企業”
 大企業の社長が”Twitterやってる”ともてはやされる事例もありますが、これは本人の影響力をうまく行使するすべを知っているということもありますが、それ以前に社長ならだれも文句を言えねいし、いざとなれば弁護士をてんこもりで雇えるという前提があるから。
 上司が縦横斜めにいっぱいいるサラリーマンが同じことをやろうものなら、社内から何が飛んでくるかわかったもんじゃありません。
(*5)リアル生活にあまり恵まれなかった世代
 中川 淳一郎は1973年生まれで、一橋大学商学部卒、博報堂入社と一般論で言えば勝ち組。それでも”ほんの数年前まで、一橋大学という大学名だけで簡単に都市銀行や総合商社に入れた”と言っているんですから、他の人は推して知るべしです。
(*6)エロネタのほうが効果があります
 このブログでは、エロネタは扱っていませんが、一度だけ”モザイクの向こう側”というお題で”アダルトビデオ30年史”というDVDネタを書いたらアクセスの多いこと多いこと。たぶん、内容は期待したものとはでんでん違っていたはずですが・・・
(*7)あなたが目がテンのディレクターでもない限り
 日本テレビの科学番組”所さんの目がテン”で、実際に数えてました。
 ちなみに、平均で1803個だったそうです。

« 2010年6月 | トップページ | 2010年8月 »

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

無料ブログはココログ